シャープから、薄型テレビ「AQUOS」の2023年新モデルが発表された。同社は直近で、mini LEDバックライトを採用する4K/8K液晶テレビのフラッグシップライン「AQUOS XLED」、4K有機ELテレビ「AQUOS OLED」、通常のLEDバックライトを採用する4K液晶テレビ「AQUOS 4K」という3つのブランドにて薄型テレビを展開しているが、今回発表されたのは4K液晶テレビ「AQUOS 4K」の新モデル。「FN1ライン」「FN2ライン」「FL1ライン」の3ライン、42V型から75V型までの全9モデルの4K液晶テレビが投入される。
■AQUOS FN1ライン
4T-C75FN1(75V型、6月10日発売、市場想定価格385,000円前後)
4T-C65FN1(65V型、6月10日発売、市場想定価格286,000円前後)
4T-C55FN1(55V型、6月10日発売、市場想定価格253,000円前後)
■AQUOS FN2ライン
4T-C55FN2(55V型、6月10日発売、市場想定価格209,000円前後)
4T-C50FN2(50V型、6月10日発売、市場想定価格187,000円前後)
4T-C43FN2(43V型、6月10日発売、市場想定価格176,000円前後)
■AQUOS FL1ライン
4T-C65FL1(65V型、6月10日発売、市場想定価格198,000円前後)
4T-C50FL1(50V型、9日16日発売、市場想定価格138,000円前後)
4T-C42FL1(42V型、6月10日発売、市場想定価格121,000円前後)
2023年の4K液晶AQUOSのラインアップを簡単に整理すると、「AQUOS XLED」を除く4K液晶テレビの最上位モデル「FN1ライン」、倍速液晶パネルを搭載したハイミドルモデル「FN2ライン」、等倍液晶を搭載したエントリーモデル「FL1ライン」という松竹梅の3グレード展開となっている。
進化点はいくつかあるが、なかでも注目してもらいたいのが、AIプロセッサーを採用した画像処理エンジン「Medalist S4」。mini LEDバックライトを採用する4K/8K液晶テレビのフラッグシップライン「AQUOS XLED」で使われている画像処理エンジン「Medalist S4X」をベースに新たに開発した最新の画像処理エンジンで、これを最上位モデルの「FN1ライン」からエントリーモデルの「FL1ライン」まで全モデルで搭載しているのだ。
同社はすでに2022年モデルでAIプロセッサーを活用してコンテンツに合わせて画質を最適化する「AIオート高画質」を実装していたが、最新の画像処理エンジン「Medalist S4」では、AIを使った最適化を画質だけでなく音質にまで拡張。新たに実装された「AIオート高音質」で、映像の画質だけでなく音質も自動で最適化できるようになった。
2023年の4K液晶AQUOSに搭載された「Medalist S4」では、画質だけでなく音質も自動で最適化してくれるのがポイント。ちなみに、「AQUOS XLED」で使われている画像処理エンジン「Medalist S4X」には、現時点で音質を自動で最適化する「AIオート高音質」は実装されていないので、この部分だけは「Medalist S4」のほうが頭ひとつ抜けている状態だ
さらに、昨年末に発売された最新の「AQUOS XLED EP1ライン」で実装された、周囲の明るさに応じて輝度や階調レベルを自動で調整してくれる「環境センシング技術」も全モデル搭載。「AIオート高画質」「AIオート高音質」と組み合わせることで、視聴環境に左右されず、常にテレビまかせで最適な画質・音質でコンテンツを楽しめるようになったというわけだ。
周囲の明るさに応じて輝度や階調レベルを自動で調整してくれる「環境センシング技術」。こちらもエントリーモデル含めて全モデルに搭載されている
スマートテレビ機能は「Google TV」プラットフォームを採用し、テレビ放送波だけでなく、動画配信サービスなどの多彩なコンテンツを楽しめるのは2022年モデルと同じ。新たに、内部UIをいくつか改善したそうで、誤操作による大音量を抑制する「最大音量の制限」機能や、外付けUSB HDDを用いたテレビ録画機能に録画番組をタイトル名ごとに表示する「まと丸」機能など、使い勝手をさらに高める機能を新たに追加したという。
外付けHDD録画の「まと丸」機能や、誤操作による大音量を抑制する「最大音量の制限」機能、LED消灯機能など、使い勝手を高める機能を新搭載
また、スマートウォッチや体重計、血圧計などの「Google Fit」対応機器と連携し、歩数や心拍数、体重、血圧などの変化をわかりやすくグラフで表示する健康管理アプリ「AQUOSヘルスビューアー」や、テレビ放送や動画配信サービスのアプリごとの視聴時間をグラフ表示してくれる「AQUOSスクリーンタイム」など、同社独自のアプリを新たに追加。市販のWebカメラを接続して利用できるカメラアプリ「リビングカメラ」も、Webカメラで撮影した内容とYouTubeを同時に表示できるようになるなどの強化が図られている。
「Google Fit」対応機器と連携する健康管理アプリ「AQUOSヘルスビューアー」。アカウントごとに連携する形で、プライバシー保護のためにロック機能も利用できるとのこと
「AQUOSスクリーンタイム」。テレビ放送だけでなく、どのアプリでどれくらい視聴したのかひと目で確認できる
2023年モデルの付属リモコン。動画配信サービスを直接起動できるリモコンのダイレクトボタンは、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、Hulu、ABEMA、FOD、Net-VISION、TVer、YouTube、Disney+の10個にまで拡大
このように、さまざまな面で進化を遂げた2023年の4K液晶AQUOSだが、画質・音質部分におけるハードウェア構成はグレードごとに微妙に差が付けられている。
「FN1ライン」は、75/65/55V型の3サイズすべてで直下型LEDバックライトを採用。液晶パネルは倍速で、外光や照明の映り込みを抑える「N-Blackパネル」仕様となっており、直下型LEDバックライトの光量をエリアごとに細かく制御し、コントラスト性能を高める「アクティブLED駆動」も盛り込まれている。スピーカーシステムは、音を前方向に導くリフレクター構造と前面開口が特徴の「FRONT OPEN SOUND SYSTEM PLUS」。ツイーター×2、ミッドレンジ×4、サブウーハー×1の7スピーカー構成で、最大出力は50Wだ。立体音響技術のDolby Atmosにも対応する。なお、今回発表された新モデルで唯一、「Google TV」のハンズフリー操作にも対応する。
最上位モデルの「FN1ライン」(写真は65V型モデル「4T-C65FN1」)。センタースタンド仕様で、55V型と65V型はスイーベルも可能
最上位モデルということで、「N-Blackパネル」や「アクティブLED駆動」など、多彩な高画質技術が盛り込まれている
「FN2ライン」は、55/50/43V型の3サイズ展開で、55/50V型はエッジ型LEDバックライト、43V型は直下型LEDバックライトを採用。液晶パネルは倍速で、外光や照明の映り込みを抑える「N-Blackパネル」仕様だが、「FN1ライン」にあった「アクティブLED駆動」は非搭載となる。スピーカーシステムは「FRONT OPEN SOUND SYSTEM PLUS」。ツイーター×2、ミッドレンジ×2、サブウーハー×1の5スピーカー構成で、最大出力は35Wだ。こちらも立体音響技術のDolby Atmosに対応。
倍速液晶パネルを搭載したハイミドルモデル「FN2ライン」(写真は55V型の「4T-C55FN2」)。こちらもセンタースタンドを全画面サイズで採用する
「FL1ライン」は、65/50/42V型の3サイズ展開。等倍液晶のエントリーモデルだが、全画面サイズで直下型LEDバックライトを採用する。スピーカーシステムはフルレンジ×2、最大出力20Wのオーソドックスなタイプだが、立体音響技術のDolby Atmosにも対応している。
等倍液晶のエントリーモデル「FL1ライン」(写真は65V型の「4T-C65FL1」)。全画面サイズでサイドスタンドとなっている
ハードウェア的な部分を詳しく見ると、画質に直結する液晶パネルとバックライトに差が設けられているほか、音質面では「AQUOS XLED」を除く4K液晶テレビの最上位モデルとなる「FN1ライン」でも天井反射のハイトスピーカーなしの「FRONT OPEN SOUND SYSTEM PLUS」となったところが2022年モデルとの大きな違いと言える。画質・音質ではさらに上の「AQUOS XLED」という選択肢もあり、新たに「AIオート高音質」も実装したので、一般的なLEDバックライトを採用する4K液晶AQUOSではあえてコストのかかる大規模なスピーカーシステムは不要と判断したのだろう。
すでにさまざまなメーカーから2023年モデルのテレビが発表になっており、mini LEDバックライトを採用するテレビや4K有機ELテレビなどさまざまなバリエーションのモデルが新たに投入されているが、今回発表された同社の2023年モデルは4K液晶AQUOSのみとやや地味な印象を受けるかもしれない。
しかし、新モデルを詳しく見てみると、AIによる高画質・高音質化、視聴環境に合わせた画質調整機能、多彩なコンテンツにアクセスできる「Google TV」の採用など、昨今のトレンドはしっかりと押さられている。特に今回登場した最上位モデルの「FN1ライン」は、最新の画像処理エンジン「Medalist S4」と「アクティブLED駆動」で画質面もしっかりと作り込まれているし、なにより65V型で30万円切り、55V型なら25万円を切る絶妙な価格設定がうれしい。物価高の影響と製品のハイエンド化の影響で薄型テレビの価格も年々上昇しているが、高価なハイエンドモデルになり過ぎない“スペックと価格のバランスにすぐれたちょうどよいテレビ”として要注目のモデルと言えそうだ。
AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。