スマホのためのイヤホン・ヘッドホンと言えば、今や完全ワイヤレスイヤホン(TWS)が当たり前。価格.comの「イヤホン・ヘッドホン」カテゴリーを見ても、「人気売れ筋ランキング」の上位20位中半分以上は完全ワイヤレスイヤホンで、残りはワイヤレスヘッドホン、首掛けタイプのワイヤレスイヤホンだ(2023年8月29日現在)。
完全ワイヤレスイヤホンの普及にともない、製品価格は非常に高価なものから安価なものまでとても幅広くなっている。そうした状況下で価格的インパクトがある製品はなかなかないものなのだが、「これは!」という製品が登場したので、真剣にレビューしてみたい。Xiaomi(シャオミ)から登場した「Redmi Buds 4 Active」がそれだ。
希望小売価格1,990円(税込)で発売されたXiaomiの完全ワイヤレスイヤホン「Redmi Buds 4 Active」
この「Redmi Buds 4 Active」の何にそんなにインパクトがあったかと言えば、希望小売価格1,990円(税込、Amazon限定販売)という値付けにほかならない。上記の価格.com「人気売れ筋ランキング」で言えば14位(2023年8月29日現在)に入っているGEOブランドの「GRFD-SWE100QT13」のほうが価格的インパクトがあるじゃないか、と言われそうだが、大きな家電メーカーが2,000円を切る価格で完全ワイヤレスイヤホンを出してきた、ということに意義があるだろうと思ったのだ。
なお、オフィシャルページを確認すると「GRFD-SWE100QT13」は「在庫限り」とのこと。それも「Redmi Buds 4 Active」に注目した理由だ。
この手の製品はチップセットや仕様の組み合わせをカスタムして工場にOEM/ODM生産の依頼も可能なわけで、かなり価格の安い製品が珍しいわけではない。ダイソーや3COINSから1,000円前後で完全ワイヤレスイヤホンが発売されているのがよい例だろう。
そこで「Redmi Buds 4 Active」はどうか。Xiaomiは総合家電メーカーであるうえ、2022年の完全ワイヤレスイヤホンの出荷台数シェア世界第3位(出典:Canalys Estimates、Smart Personal Audio Analysis、2023年2月)であるというから、そのほかの格安製品のよりもスケールメリットが出ているはず。それでいて1,000円前後の製品よりは高価な値付け。これはクオリティにも期待できるのではないか、というわけだ。
ここでは、既発売のインナーイヤー型モデル「Redmi Buds 4 Lite」とあわせてレビューしていくことにする。こちらの価格.com最安価格は2,480円(2023年8月29日現在)。こちらもインパクトのある価格だが、両機に違いはあるのか? 検証しよう。
カナル型の「Redmi Buds 4 Active」(左)とインイヤー型の「Redmi Buds 4 Lite」(右)。いずれも12mmのダイナミック型ドライバーを搭載している。そのほかのスペック詳細は以下のとおり
両機の仕様は共通している部分もあるが、「Redmi Buds 4 Active」は再生時間が長め。また、10分間の充電で約110分使用可能という急速充電に対応していることも「Redmi Buds 4 Active」のメリットだろう
まずは先行して発売されていたインイヤー型の「Redmi Buds 4 Lite」の音質を“おさらい”的に確認してみよう。対応コーデックはSBCのみなので、プレーヤーとして使ったのは「iPhone 13 mini」。接続は一般的なワイヤレスイヤホンと同様にとてもスムーズだった。
「Redmi Buds 4 Active」とはケース形状も異なる「Redmi Buds 4 Lite」。充電用の端子はどちらもUSB Type-C
そして音質はどうかと言えば、価格を考えれば予想以上にしっかりしていると感じた。中低域が多めで、ぼやっとした印象ではあるものの、「全体の解像度が低すぎて聴いていられない」というようなことはまったくない。
ジョン・バティステの「World Music Radio」から、「Raindance」を再生すると、ボーカルやそれに付帯するリバーブはそれなりに抜けよく響き、空間の広がりを感じられる。
ダイナミックレンジが狭そうな曲ということでサム・スミスの「Unholy」などもかけてみたところ、予想どおり充実した聴き応えだ。低音が深く沈むことはないが、中低域の量感で満足度は担保されているし、ボーカルが埋もれてしまうこともない。
生楽器の精妙な響きなどは望むべくもないとしても、それは価格を考えれば当然。至極まっとうな製品であるように思う。
また、中低域優勢のバランスは、カナル型のように耳をぴったりとふさがないインイヤー型では量感が稼ぎづらいと想定してのバランスかもしれない。コストとリソースが限られている中で、巧みにチューニングされているのだろう。「Redmi Buds 4 Active」よりも少し高価格設定の「Redmi Buds 4 Lite」も十分に高コスパ製品だと思う。
「Redmi Buds 4 Active」には大中小3種類のイヤーチップが付属する。充電のためのUSB Type-Cケーブルは付属しないことに注意
「Redmi Buds 4 Lite」を試してみて、これで特に文句はないのでは? と思ったが、「Redmi Buds 4 Active」はさらにひと味違った。
「Redmi Buds 4 Active」はカナル型なので、原理的に音質には有利だろうとは思っていたが、帯域バランス自体が違っていたのだ。中低域優勢のバランスが落ち着き、さっきまで「望むべくもない」と思っていた楽器の精妙な響きの一端が出てくる。もちろん、こちらもリソースが限られているのは間違いないわけで、その中でうまく聴かせる「ドンシャリ」なバランスではある。
アデルの「Easy on me」など、ピアノ、ボーカルそれぞれの響きが醸す「空間感」を予想以上に再現してくれるし、ジョン・バティステの「Raindance」でも「Redmi Buds 4 Lite」とはまったくクオリティが違う。冒頭でベースの弦が弾かれるニュアンスが出てくるので、音楽の表情がわかるようになるのだ。
もちろん、インイヤー型には耳をふさぎすぎないというメリットがあるのだが、こと音質だけを考えれば、価格が抑えられた「Redmi Buds 4 Active」が「Redmi Buds 4 Lite」よりも完全に上。2,000円を切る値付けでここまでの音質の完全ワイヤレスイヤホンが手に入ってしまう、この事実には驚くしかない。
録音レベル(音量)の低い古めの音源をかけると力不足を露呈するが、それはまた当たり前のこと。ザ・バンドの「The Weight」では音量を稼ぎきれないし、キックドラムがゆるく、高音は抜けきらないため、各人のボーカルとオルガンが非常に遠く感じられ、どうしても物足りない。これは1960年代の音源という特有の事情があるためだ。録音レベルが高めの最近のポップスしか聴かない、という人は気にならないだろう。
そのほかの楽曲を聴いていくと、再生帯域が狭い、低域が飽和気味になりがち、という“足りない”部分がより浮き彫りになっていくが、それはただの揚げ足取りというもの。ダイナミックレンジ狭め、音圧高めの最新のポップスを聴く分には不満なく使えそうだということもよくわかった。
Amazonプライム・ビデオでいくつかの映画も再生してみたところ、動画コンテンツとの相性も良好。通常モードであっても、見ていられないほどの映像とのズレは感じられなかったし、中低域のゆるさがよい意味でエンタメ的要素を強化していたからだ。爆発などの轟音があるコンテンツでは、ハイファイ再生であればタイトに低音が鳴り響くところ、「Redmi Buds 4 Active」では爆発音が広がるように鳴り響くイメージ。これはこれで悪くない。
音質には価格以上の価値があると感じたが、完全ワイヤレスイヤホンでは接続の安定性も気になるところ。実際に人通りの多い繁華街で「Redmi Buds 4 Active」を通常モードで使ってみると、音切れが頻発してしまった。椅子が埋まり、立っている乗客もいるくらいの電車内では音切れはほぼなかったので、使い方次第というレベルだろう。
ただし、いついかなるときも安定してつながる接続性を求めるならば、期待しないほうがよい。また、タッチセンサーの反応もイマイチで、曲の再生/停止だけでもミスしてしまうことが多かった。このあたりが1,990円の完全ワイヤレスイヤホンで割り切るべき要素ということだ。
なお、通話クオリティについては可もなく不可もないと言ったところ。人の多い中でも特に問題なく通話ができた。
専用アプリ「Xiaomi Earbuds」(写真はiOS版、Android版もあり)で操作できる点は、幅広い製品ラインアップを持つ大手メーカーならではの対応力だと言える。低遅延モードの設定などが可能だ。もちろん、スマホと「Redmi Buds 4 Active」の接続はスムーズだった
せっかくなので、ダイソーの「TWS001」と音質を比べてみることにした。充電用USBケーブルが付属するところは立派だが、ケースを開けるとフタがカチャカチャと遊んでしまうなど、コストダウンの跡が見える。加工精度の高さもXiaomiに軍配が上がるところだ
ちなみにということで、冒頭で触れたダイソーで1,100円(税込)で販売されているカナル型の完全ワイヤレスイヤホン「TWS001」を聴いてみたところ、シビアに比べるまでもなく「Redmi Buds 4 Active」の圧勝と言ってよい内容だった。
「TWS001」は全帯域において解像感不足があり、音楽に没頭できるクオリティに届いていないように思う。特に問題なのは中低域の解像感不足で、そもそもの量感が多いことと相まって、楽曲のすべてをマスキングしてしまう。
ダイソーからは完全ワイヤレスイヤホン「TWS002」という最新モデルがやはり1,100円(税込)で発売されているようだが、「Redmi Buds 4 Active」を上回るのはちょっと難しいだろう。価格が倍近いので仕方のないことかもしれないが、「音楽を聴く」という用途を考えている人は「Redmi Buds 4 Active」を選ぶのが無難だと思う。
というわけで、「Redmi Buds 4 Active」は1,990円(税込)という価格から考えれば期待以上の音質で聴かせてくれる満足度の高い製品だった。多くを求めないのであれば、「これでいいじゃないか」とすら思ってしまう。
これまでもとにかく安い完全ワイヤレスイヤホンはあったものの、「Redmi Buds 4 Active」こそ、高コスパ完全ワイヤレスイヤホンの真打ちと言うべき存在ではないか。
AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。