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レコードでも「Vivid & Spacious」、デノン本気のプレーヤー「DP-3000NE」

デノンがレコードプレーヤーの新フラッグシップモデルとして「DP-3000NE」を発表した。発売日は2023年10月上旬で、メーカー希望小売価格は385,000円(税込)。発売に先立って製品の内覧会が催されたので、その様子と製品の概要をお伝えしよう。

ダイレクトドライブ方式のレコードプレーヤー「DP-3000NE」。トーンアームにはスタティックバランスS字型を採用。ヘッドシェルのコネクターはユニバーサルタイプ。なお、写真のダストカバーのほか、アルミ製のヘッドシェル、ラインケーブル、アースケーブルも付属。別途「カートリッジさえ買えばすぐに使える」とのこと

ダイレクトドライブ方式のレコードプレーヤー「DP-3000NE」。トーンアームにはスタティックバランスS字型を採用。ヘッドシェルのコネクターはユニバーサルタイプ。なお、写真のダストカバーのほか、アルミ製のヘッドシェル、ラインケーブル、アースケーブルも付属。別途「カートリッジさえ買えばすぐに使える」とのこと

「DP-3000NE」の主なスペック
【トーンアーム部】
●型式:スタティックバランス型
●適合カートリッジ重量:25〜37g(補助ウェイト使用時、ヘッドシェルなど含む)、15〜27g(補助ウェイト未使用時、ヘッドシェルなど含む)
【ターンテーブル部】
●駆動方式:ダイレクトドライブ
●回転数:33 1/3、45、78rpm
●寸法:500(幅)×394(奥行)×185(高さ)mm(ダストカバーを含む)
●重量:18.5kg(ダストカバーを含む)

“アナログのデノン”による、新時代のフラッグシッププレーヤー

デノン(あるいはデンオン)と言えばアナログレコード周りの製品を思い出す、という古参のオーディオファンも多いはず。特にMC型カートリッジ「DL-103」は1970年に市場導入されて以来、現在も続くロングラン製品。2021年には、デノン110周年を記念して「DL-103」をベースとした記念モデル「DL-A110」が発売されたことも記憶に新しい。

デノンと言えばカートリッジを思い浮かべる人もいるはず。写真は専用設計のヘッドシェルが付属するカートリッジ「DL-A110」

デノンと言えばカートリッジを思い浮かべる人もいるはず。写真は専用設計のヘッドシェルが付属するカートリッジ「DL-A110」

「DP-3000NE」はそのデノンの新たなフラッグシップレコードプレーヤーだ。「より深いアナログ体験を、より多くの音楽愛好者へ」をテーマとして企画されたという。

“デノンと言えばアナログ”というファンがいるいっぽうで、デノンのレコードプレーヤーの状況は実は非常に偏ったラインアップになっている。手堅い定番製品として愛されてきた「DP-500M」「DP-1300MKII」は生産終了。その後のトップモデルは「DP-450USB」という希望小売価格84,700円(税込)の製品であり、10万円を超える価格の製品が存在しなかったのだ。新興メーカーであればともかく、デノンとしてはこの状況は不本意だっただろう。

デノンのレコードプレーヤー最上位機種に位置づけられる「DP-3000NE」の希望小売価格は385,000円(税込)。すぐ下の弟機が「DP-450USB」だが、こちらは希望小売価格84,700円(税込)。この間を埋めるモデルも期待されるところだ

デノンのレコードプレーヤー最上位機種に位置づけられる「DP-3000NE」の希望小売価格は385,000円(税込)。すぐ下の弟機が「DP-450USB」だが、こちらは希望小売価格84,700円(税込)。この間を埋めるモデルも期待されるところだ

そして、高級機不在の空白を埋めるべく企画されたのが「DP-3000NE」。この型番には1972年発売のターンテーブル「DP-3000」、1973年発売のレコードプレーヤー「DP-3700」への思いが込められているそうだ。

写真左がターンテーブルのみの「DP-3000」、右がレコードプレーヤー「DP-3700」

写真左がターンテーブルのみの「DP-3000」、右がレコードプレーヤー「DP-3700」

1971年当時、デノンは「DP-5000」「DP-5500」というターンテーブル/レコードプレーヤーで家庭用製品へ参入。当時としてはかなり高価な値付けだったため、それに次いでパフォーマンスはそのままにコストダウンを図った「DP-3000」「DP-3700」を発売。それが爆発的ヒットとなったという。

デノンにおける象徴的モデルを踏襲すべく、よい音を「より多くのアナログ愛好家が楽しめる価格で実現する」という50年以上前と変わらない思いで企画されたのが今回の「DP-3000NE」というわけだ。

キャビネットを含めていちから設計された「DP-3000NE」

上述のとおり、「DP-3000NE」は「DP-3000」にインスパイアされたモデルではあるが、基本的にはモディファイ版というよりはいちから作り上げられた新モデルだ。キャビネット、トーンアームといった主要部分が新たに設計されており、内覧会では「ダイレクトドライブ方式を継承すること」「新設計のトーンアーム」「目指す音は一貫してVivid & Spaciousであること」がポイントとしてあげられた。

以下に各要素をスライドとあわせて紹介しよう。

「DP-1300MKII」(左)と「DP-3000NE」(右)

「DP-1300MKII」(左)と「DP-3000NE」(右)

角がラウンド処理してあるなど、「DP-3000NE」の仕上げは「DP-1300MKII」とはひと味異なる

角がラウンド処理してあるなど、「DP-3000NE」の仕上げは「DP-1300MKII」とはひと味異なる

「DP-3000」を受け継ぐ意欲作とあって、キャビネット製作からさまざまな可能性が模索された。ヘッドホン「AH-D9200」での成功を受けて竹キャビネットの試作もしたが、量産が難しく断念。最終的にはエボニーの突き板仕上げとなった

「DP-3000」を受け継ぐ意欲作とあって、キャビネット製作からさまざまな可能性が模索された。ハウジングに「孟宗竹」を使ったヘッドホン「AH-D9200」での成功を受けて竹キャビネットの試作もしたが、量産が難しく断念。最終的にはエボニーの突き板仕上げとなった

もちろん、キャビネットの作りは音質への影響を徹底的に考慮されたもの。MDF(繊維板)をくり抜いた一枚板に各種パーツがインストールされている。フットはスプリングを内蔵したインシュレーター。個別に高さの調整も可能だ

もちろん、キャビネットの作りは音質への影響を徹底的に考慮されたもの。MDF(繊維板)をくり抜いた一枚板に各種パーツがインストールされている。フットはスプリングを内蔵したインシュレーター。個別に高さの調整も可能だ

ダイレクトドライブ方式を継承

かつての「DP-3000」同様、ダイレクトドライブ(ターンテーブルのシャフトを直接回転させる)方式を採用。当時はACモーターを使用していたところ、「DP-3000NE」ではDCモーターを使用する。そのほか、大きく変わったのは回転の制御方法だという。「ベクトル制御法」という低速での制御にすぐれた方法を導入した。駆動回路が煩雑、ソフトウェアの開発が必要というデメリットはあるものの、これは開発でしっかりとフォローされているとのこと。

新設計のトーンアーム

トーンアームはデノンの伝統に則ったスタティックバランス型だが、あくまで新設計品。R&Dの本拠地白河工場にある設計図を見直しつつ、OBの設計者にもアドバイスをあおぎ、完成にこぎつけた。アームパイプはアルミ製で、トラッキングエラー最小化のためのS字カーブも入念に再検討されているという

トーンアームはデノンの伝統に則ったスタティックバランス型だが、あくまで新設計品。R&Dの本拠地白河工場にある設計図を見直しつつ、OBの設計者にもアドバイスをあおぎ、完成にこぎつけた。アームパイプはアルミ製で、トラッキングエラー最小化のためのS字カーブも入念に再検討されているという

パイプ部分が板バネで接合され、フローティング状になっていることもポイントだとしている。その結果、「DP-1300MKII」で見て取れた特定帯域でのピークやディップを解消したという

パイプ部分が板バネで接合され、フローティング状になっていることもポイントだとしている。その結果、「DP-1300MKII」で見て取れた特定帯域でのピークやディップを解消したという

約8mmの高さ調整機構を装備。使用するカートリッジやマットの厚みに応じてアームの高さを調整できる

約8mmの高さ調整機構を装備。使用するカートリッジやマットの厚みに応じてアームの高さを調整できる

レコードでも目指す音は「Vivid & Spacious」

「Vivid & Spacious」とは、デノンがブランドをあげて掲げているサウンドコンセプトのこと。デノンの“音決め”を行う「サウンドマスター」山内慎一氏が提唱するもので、文字通り鮮やかで空間を感じさせる解像感があること。「音楽に没頭できる音」ともされている。

レコードプレーヤーでも当然にこのコンセプトは貫かれており、そのためにプラッターを始め、配線材やネジの1つひとつにいたるまで、細かなサウンドチューニングが施された。果ては音声信号の通らない電源用モーターのコンデンサーも指定するなど、「サウンドマスター」のこだわりが詰め込まれているという。

プラッター素材はアルミだが、制振のための貼り付け材として異種金属を検討した。当初は比重の重い鉛などを検討していたそうだが、サウンドマスターの試聴を経て選ばれたのはステンレス。さらに、固定するためのネジは銅メッキされている。この一連の検討は、かなり時間がかかった部分だという

プラッター素材はアルミだが、制振のための貼り付け材として異種金属を検討した。当初は比重の重い鉛などを検討していたそうだが、サウンドマスターの試聴を経て選ばれたのはステンレス。さらに、固定するためのネジは銅メッキされている。この一連の検討は、かなり時間がかかった部分だという

ソースの情報をしっかりと引き出す、間違いないクオリティ感

試聴はD&Mホールディングスの試聴室にて。プリメインアンプはデノン「PMA-A110」、スピーカーはBowers & Wilkinsの「801 D4」。なお、カートリッジはデノン「DL-103R」。「DP-3000NE」とこのカートリッジとの組み合わせは、「サウンドマスター」山内氏もお気に入りだという

試聴はD&Mホールディングスの試聴室にて。プリメインアンプはデノン「PMA-A110」、スピーカーはBowers & Wilkinsの「801 D4」。なお、カートリッジはデノン「DL-103R」。「DP-3000NE」とこのカートリッジとの組み合わせは、「サウンドマスター」山内氏もお気に入りだという

最後に、「DP-3000NE」の音を体験できたので、そのインプレッションを記しておこう。「サウンドマスター」山内氏の選曲でのデモンストレーションはいつも幅広い。スクリッティ・ポリッティの「The Word Girl」がかかると、アナログらしいと言うべき凝縮感のある音だとすぐに感じられた。耳に痛いところのない清廉な響きが気持ちよい。

いろいろと再生された中で、「Vivid & Spacious」を特に感じられたのは、渡辺貞夫の「RENDEZVOUS」。スクリッティ・ポリッティと同じく1980年代の録音だが、マーカス・ミラーのベースのアタック感と広がりはまさに「Vivid & Spacious」。

いずれからも再生機としてソースの情報を引き出す、というオーディオ機器的クオリティの高さを感じられた。こういうしっかりとしたレコードの再生に触れるにつけ、「アナログレコードの音は暖かい」という言説はなじまないな、と思う。

レコードの再生はデジタルファイルの再生よりも面倒で難易度が高く、厳しい。その代わりにレコードが持つ特性をダイレクトに再生できれば、メディア特有の厳かさが表れる……。そういう趣味としての楽しさがマニアを引きつける理由なのだろう。

「DP-3000NE」のテーマは冒頭のとおり「より深いアナログ体験を、より多くの音楽愛好者へ」。おしゃれで終わらない、本当のレコードの魅力を伝えるための1台が「DP-3000NE」なのだ。

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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