交換レンズ図鑑
PENTAX伝統のスターレンズに新モデルが登場!

最高峰の標準レンズ「HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW」実写レビュー

「HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW」は、PENTAX(ペンタックス)ファン待望の新しい「 ★(スター)」レンズ。2018年7月20日に発売されたばかりの新モデルだが、デジタル設計で35mmフルサイズ対応の「D FA」レンズとしては初の単焦点スターレンズということで人気が高く、一時は供給不足がアナウンスされていたほど。ここでは、この人気レンズの特徴と描写力を詳しくレビューしよう。

HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AW(ボディはPENTAX K-1 Mark II)。スターレンズとしては、2016年3月発売の望遠ズームレンズ「HD PENTAX-D FA★ 70-200mmF2.8ED DC AW」以来の製品となる

HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWの絞り開放で撮影した作例。ボケがうるさくなりそうな背景だが、非常に柔らかいボケ味が得られた
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/2500秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、13.5MB)

新世代スターレンズの第1弾製品

PENTAXの交換レンズは、高品位レンズとして「Limited」レンズと「 ★(スター)」レンズの2つのシリーズを展開している。いずれもフィルム一眼レフ時代から続く、PENTAX伝統のレンズ群だ。Limitedレンズは、PENTAXが得意とする小型かつ高品位なレンズで、独特の“レンズの味”を楽しめる描写力で人気だ。スターレンズは、光学性能に徹底的にこだわり、“最高性能”を目指して設計されているのが特徴。防塵・防滴性を併せ持つ、PENTAXレンズの最高峰シリーズとなっている。

今回紹介するHD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWは、PENTAXレンズの最高峰・スターレンズの新しい標準レンズ。注目したいのは、本レンズは「新世代のスターレンズ」の第1弾製品として開発されたこと。スターレンズは理想的な描写を目指し、妥協のない光学性能を追求してきたが、本レンズからその基準がさらに上がったのだ。今後カメラボディの性能が進化することを想定し、特に解像力の向上にこだわり、従来のスターレンズを超える高い光学性能を持つ標準レンズとして開発したという。その描写力は、ページ下部に掲載する実写作例をご覧いただきたいが、高級な単焦点レンズらしく、絞り開放から解像力が高く、かつナチュラルなボケ味が得られるのが特徴となっている。

本レンズの光学設計で注目したいのは、レンズ前群を補正レンズ群、後群をフォーカス群としたレンズ構成だ。前群は、大きな補正レンズを搭載し、主に各種収差の補正を行う役割を担う。後群は変形ガウスタイプとし、全体でフォーカシングを行うようになっている。こうすることで、一般的な変形ガウスタイプの標準レンズでは補正し切れない球面収差やコマ収差、像面湾曲といった収差を効果的に補正し、画像中心から周辺部にかけて均一な解像性能とコントラストを実現。さらに、後群全体がフォーカス群となるため、収差補正のバランスを変えることなくフォーカスが行えるのもポイントで、至近から無限遠まで安定した描写も確保したという。近距離撮影時の性能も向上しており、最短撮影距離は40cmを達成した。

前群を大きな補正レンズ、後群を変形ガウスタイプのフォーカス群とした9群15枚のレンズ構成を採用。異常低分散ガラスを3枚使用しているほか、最終レンズに非球面レンズも採用している

スターレンズの質実剛健なイメージを踏襲しつつ、ボディラインをなだらかに仕上げることで一体感あるデザインを実現。スターレンズの象徴であるゴールドのリングや、PENTAXレンズではおなじみのグリーンのリングの配置や色調にもこだわったという

PLフィルター窓を搭載する付属のレンズフード「PH-RBB72」を装着したイメージ。PENTAXのレンズで、着脱式のレンズフードを鏡筒と一貫してデザインしたのは本レンズが初めてとのこと

本レンズは後群全体がフォーカス群となっており、フォーカス時には、枚数が多く、重量のあるレンズ群を駆動させる必要がある。そのため、オートフォーカス(AF)の駆動モーターには、パワーのあるリング型の超音波モーター(SDM)を搭載。従来の「DA★レンズ」に採用している小型のSDMと比べて約7.5倍の高トルク化を実現したモーターで、高速かつ滑らかなAF作動を可能にした。

レンズコーティングもハイレベルで、特に斜めからの光の反射を抑える効果が高い低反射特性の「エアロ・ブライト・コーティングII」と、可視光域の平均反射率を大幅に低減したマルチコーティング「HDコーティング」を併用し、逆光などでのゴーストやフレアの発生を抑制。最新のスターレンズらしく、全体の8か所にシーリングを施した防塵・防滴構造の「AW(All Weather)」タイプになっているのも特徴だ。

このように本レンズは、従来のスターレンズ以上の基準で最高性能を目指して作られており、光学設計にもAF性能にも妥協はない。高い堅ろう性も実現している。そうした性能面を考慮すると致し方ないのだが、決して軽いレンズではない。サイズは約80(最大径)×106(長さ)mmで、重量は約910g。50mm単焦点レンズとしては最重量クラスとなっている。

側面にAF/MF切り替えスイッチを装備。「D FA★」のロゴも側面に用意されている

側面にAF/MF切り替えスイッチを装備。「D FA★」のロゴも側面に用意されている

マウント外周にも防塵・防滴のための赤いシーリングが施されている

マウント外周にも防塵・防滴のための赤いシーリングが施されている

●主な仕様
・焦点距離:50mm
・レンズ構成:9群15枚
・絞り羽根枚数:9枚円形絞り
・最小絞り:F16
・最短撮影距離:0.4m
・最大撮影倍率:0.18倍
・フィルター径:72mm
・サイズ:約80(最大径)×106(長さ)mm
・重量:約910g

実写作例

※以下に掲載する作例は、PENTAX K-1 Mark IIとHD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWを組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)、もしくは、RAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(Digital Camera Utility 5を使用)になります。細かい設定はカメラの初期設定のまま(D-Rangeハイライト補正:オート、D-Rangeシャドー補正:オート、周辺光量補正:オフ、ディストーション補正:オフ、倍率色収差補正:オン、回折補正:オン)としました。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

玉ボケを狙って絞り開放で撮影した作例。周辺部でわずかに口径食が見られるが、全体的にはエッジの色付きがほとんど見られず、均一で美しい玉ボケが得られた。ピント位置はややソフトな印象だが解像感は十分だ
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/60秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、JPEG
撮影写真(4912×7360、12.5MB)

こちらも絞り開放で撮影した1枚。非常に滑らかな背景ボケに仕上がった。こうしたガラスの被写体を絞り開放で撮るとフリンジが出やすくなるが、この作例では気になるようなフリンジは見られない
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/40秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、15.9MB)

最短撮影距離(40cm)付近で絞り開放で撮影した作例。こうした撮り方をすると極端にボケが大きくなってしまい、立体感のない不自然な写真になりがちだが、この作例では、ピント位置からなだらかにボケていく柔らかなボケ味が得られた
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/50秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、14.3MB)

絞り開放でもコントラストが高く、十分なシャープネスが得られるのもこのレンズの特徴
PENTAX K-1 Mark II、ISO400、F1.4、1/40秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、JPEG
撮影写真(7360×4912、11.8MB)

このレンズは背景ボケだけでなく前ボケもキレイ。今回は周辺光量補正を初期設定のオフで撮ってみたが、絞り開放時に周辺がナチュラルに減光していく感じも好印象
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/50秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、13.1MB)

少し気になったのは、絞り開放時にピント位置を前後してエッジの色付き(手前は紫、後ろは緑のフリンジ)が目立つときがあること。この作例では前ボケに紫のフリンジが出ている。ただ、出方はシンプルなのでRAW現像ソフトで補正するのはそれほど難しくない。この作例ではフリンジの出方をチェックしてほしく、あえてJPEG撮って出しを掲載しているが、フリンジは純正のRAW現像ソフト「Digital Camera Utility 5」で除去することができた
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F1.4、1/200秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、JPEG
撮影写真(7360×4912、14.8MB)

背景ボケを狙って、屋外で絞り値をF2にして撮影した作例。この作例でもピント位置手前でわずかにパープルフリンジが出ているが、どこかを境にしてボケ始めるのではなく、滑らかにボケていく感じがいい。クリアで抜けのよい描写も印象的だ
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F2、1/8000秒、ホワイトバランス:マルチパターンオート、カスタムイメージ:ナチュラル、JPEG
撮影写真(4912×7360、17.0MB)

F2.8まで絞って撮影。このくらいまで絞るとピント位置では非常に高い解像感が得られる
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:太陽光、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、15.0MB)

ガラスの机の表面に映り込む光の形が崩れないようにF4まで絞って撮影した1枚
PENTAX K-1 Mark II、ISO400、F4、1/50秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、RAW(露出とシャープネスを調整)
撮影写真(7360×4912、25.7MB)

窓から光が差し込む状況で撮った作例。絞り値はF5.6。ピント位置での解像感の高さと、全体的なコントラストの高さが印象的だ
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F5.6、1/100秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(4912×7360、18.9MB)

画面周辺での解像力をチェックするために撮影した作例。高性能な単焦点レンズらしく中央だけでなく周辺でもシャープでクリアな描写が得られる。ボディ側の補正はオフにしているが、歪曲収差がよく抑えられているのも注目してほしい点だ
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F8、1/320秒、ホワイトバランス:マルチパターンオート、カスタムイメージ:ナチュラル、ファインシャープネス選択、JPEG
撮影写真(7360×4912、17.8MB)

本レンズは逆光に強いことも特徴だ。この作例では太陽の手前に被写体を重ねることでフレア・ゴーストを抑えて撮ることができた。ただ、PENTAX K-1 Mark IIで試してみた限りでは、ほかの高性能な標準レンズと比べると、太陽など極端に強い光源をそのまま画面に入れると光源近くでややゴーストが出やすい印象を受けた
PENTAX K-1 Mark II、ISO100、F14、1/500秒、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:ナチュラル、JPEG
撮影写真(4912×7360、17.7MB)

まとめ:ナチュラルなボケ味を楽しめるK-1シリーズユーザー必携の1本

HD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWを使ってみて好印象だったのは、ボケ味と解像力のバランスのよさだ。特に、絞り開放でのナチュラルなボケ味は、このレンズならではのもの。近距離撮影時でもボケが破綻するような感じがなく、滑らかで自然なボケ味が得られる。解像力も、絞り開放だとわずかに落ちるものの、コントラストは十分で、開放でも描写が大きく崩れないのがいい。輝度差の大きいところでフリンジが出る場合があるのが気になったが、絞り開放F1.4の大口径レンズとしては致し方ないところではないだろうか。

さらに、AFのレスポンスが非常によく、ストレスのないAF撮影ができる点と、ピントリングの遊びが少なく、マニュアルフォーカスの操作感がいいのもこのレンズの特徴。高級なスターレンズらしく、細かい操作感にもこだわって作られている。

ただし、このレンズは重量約910gと大きくて重い。重量約1010g (バッテリー、SDカード含む)のPENTAX K-1 Mark II(※K-1も同じ重量)と組み合わせると2kg近い重量となる。正直なところ、最初にこの組み合わせでカメラをホールドしたときは「重い」という印象だった。だが、実際に使ってみると、重さよりも、光学ファインダーでの撮影のほうに楽しさを感じた。最近はミラーレスを使うことが多くなってきたが、あらためて、大口径レンズと一眼レフを組み合わせたときのクリアで明るい光学ファインダーのよさを実感した次第だ。

D FAレンズとしては初の単焦点スターレンズとなるHD PENTAX-D FA★50mmF1.4 SDM AWは、PENTAX K-1シリーズユーザー必携の1本と言っていい。価格は価格.com最安価格(2018年9月4日時点)で12万円台。PENTAXの単焦点レンズとしては決して安い製品ではないが、その高い描写力を考慮するとその価値は十分にある。PENTAX K-1シリーズのユーザーはぜひ手に入れて、新生代スターレンズの描写を味わってみてほしい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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