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ついにニコンとキヤノンが参入。パナソニックも開発を発表

戦国時代に突入! フルサイズミラーレス最新動向まとめ

2018年は、一眼レフからミラーレスへの転換を象徴する年として語り継がれるかもしれない。今年8〜9月にかけて、2大カメラメーカーのニコンとキヤノンから初となるフルサイズミラーレスが発表になったうえ、パナソニックもフルサイズミラーレスの開発を発表した。この市場はこれまでソニーが先行していたが、ここにきて一気に複数メーカーの参入が決定し、カメラ業界はここ数年で一番と言っていいほどの盛り上がりを見せている。本記事では、ニコンとキヤノンのフルサイズミラーレス第1弾製品の特徴紹介を中心に、フルサイズミラーレスの最新動向をまとめよう。

左上がニコンの「Z 7」、右上がキヤノンの「EOS R」、左下がパナソニックの「LUMIX S1R」、右下がソニーの「α7 III」

ニコン、キヤノンともに光学性能の向上を実現する新システムを採用

ニコンは8月23日、キヤノンは9月5日に、かねてから噂されていたフルサイズミラーレス市場への参入を正式に発表した。両社とも、既存の一眼レフのシステムをベースにするのではなく、ニコンは「Zマウントシステム」、キヤノンは「EOS Rシステム」という、完全新設計のカメラシステムをフルサイズミラーレスに採用。ほぼ同時期にニコンとキヤノンから新しいカメラシステムが登場するのは知る限り初めてで、これだけでもインパクトがあるニュースだったことがおわかりいただけるだろう。

Zマウントシステムは、「新次元の光学性能」「ニコンクオリティの継承」「未来の映像表現の進化への対応」の3つをコンセプトに掲げて開発されている

EOS Rシステムは、30年以上続く「EOSシステム」のコンセプト「快速・快適・高画質」を追求することで、さらなる撮影領域の拡大を目指しているシステムだ

両社の新システムのコンセプトを見ると、ともに「光学性能の向上」を強くアピールしている点が共通している。そのキーとなるのが新設計のレンズマウントで、ニコンは、55mmの大きなマウント径でフランジバックを16mmまで縮めた「Zマウント」を採用。キヤノンは、EFマウントの54mm径を継承しつつ、ショートバックフォーカス(フランジバックは20mm)を実現した「RFマウント」を採用。ともに、一眼レフ用のレンズマウントと比べてフランジバックを短くすることで光学設計の自由度を上げたのがポイントだ。ボディの操作性や剛性を確保できる限界を探りつつ、最大限の光学性能を発揮するマウント設計にこだわった点も共通している。

ニコンは、55mm 径でフランジバック16mmのZマウントを採用

ニコンは、55mm 径でフランジバック16mmのZマウントを採用

キヤノンは、54mm径(EFマウントと同様)でショートバックフォーカス(フランジバック20mm)のRFマウントを採用

新しいレンズマウントによって、両社は、一眼レフでは実現できなかったようなスペックのレンズの開発が可能になったとしている。ニコンは、同社史上最高の開放F値「F0.95」を実現する「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」の開発を発表している。キヤノンは、開放F2通しの標準ズームレンズ「RF28-70mm F2 L USM」をボディの発売から約2か月後の12月下旬に発売する。マウントの設計を競っているわけではないが、両社のどちらの新システムも、画質面では今後の発展が大いに期待できる仕様になっている。

ミラーレスは一眼レフのようなミラー駆動がない分、メカによる制限を受けにくく、処理速度の向上によって連写やAFなどのレスポンスが向上するのがメリットだ。事実、ミラーレスはここ数年で性能が一気に向上した。画質の進歩ももちろんあったが、どのメーカーも画質と同じくらい連写やAFの高速化に注力。撮像素子と画像処理の性能向上によって一眼レフを超える高速性を実現し、ミラーレスでも本格的な動体撮影が可能なモデルが登場するようになった。フルサイズミラーレスに限れば、フルサイズセンサーを搭載する初のミラーレス「α7」「α7R」を2013年11月に登場して以降、ソニーが新モデルをリリースするたびに連写やAFの高速化を実現してきた。

フルサイズミラーレス市場に参入したニコンとキヤノンが、新システムにおいて、カメラの本質は画質で、新レンズマウントによる光学性能の向上を前面に出してアピールしているのは光学メーカーとしてのプライドと意気込みが強く感じられる部分。ソニーがフルサイズミラーレスで連写やAFなどの高速性の進化をアピールする中で、後発の2大カメラメーカーがそれとは違う価値を提案しているのはおもしろい構図だ。

なお、両社が掲げる新システムのコンセプトは似ている部分が多いが、異なるのは、ニコンが「ニコンクオリティの継承」を掲げるのに対して、キヤノンが新製品発表会で「EOSシステムの発展」をアピールしたこと。ともに将来的なカメラの視野に入れつつ、どちらかというと、ニコンは「これまで培ってきたものをしっかりと受け継ぐ」、キヤノンは「撮影領域の拡大を標榜するEOSシステムから新しい価値を提案する」という意識が強いように感じる。

ニコンは高品位なEVF、キヤノンはバランスのよさが特徴。ともに“新時代の高画質”を実現

次に、ニコンとキヤノンのフルサイズミラーレス第1弾製品の主な特徴を紹介しよう。 ニコンは、Zマウントシステムの第1弾として、有効4575万画素の高画素モデル「Z 7」(9月28日発売)と、有効2450万画素の下位モデル「Z 6」(11月下旬発売)の2モデルをラインアップした。どちらもフルサイズの裏面照射型CMOSセンサーを採用し、Z 7はローパスフィルターレス仕様となっている。画像処理エンジンは最新の「EXPEED 6」だ。

9月28日に発売になったZ 7。撮像素子の有効画素数やAF性能、連写性能などは異なっているが、Z 7とZ 6は共通のボディ構造と操作性を採用している

両モデルの共通点として注目なのは、なんといっても電子ビューファインダー(EVF)の見えのよさだ。約369万ドットの有機ELファインダーで倍率約0.8倍という、高解像度で大きな表示もさることながら、光学系にこだわることで隅々まで明るく、歪みの少ない自然な見え方を実現している。これまでのEVFとはひと味違う見え方で、ファインダーの見やすさでは、現時点でフルサイズミラーレスとして間違いなくナンバーワンだ。

AFシステムは、ニコンのフルサイズ機として初めて像面位相差AFを搭載。コントラストAFと像面位相差AFを組み合わせた新開発のハイブリッドAFで、AF画素は撮像素子全面に配置した。AFポイント数はZ 7が493点、Z 6が273点となっている。

さらに、ニコンのカメラらしい操作性のよさも特徴。両モデルともに、ホールドしやすいグリップ、静かで軽快なシャッター音など使いやすさにこだわった設計となっている。新しい「NIKKOR Zレンズ」には、絞りや露出補正などの機能を割り当てられるコントロールリングを新設した。また、両モデルとも5軸対応のボディ内手ブレ補正を搭載するほか、フルサイズ一眼レフ「D850」と同等の防塵・防滴性能も実現。液晶モニターは約210万ドットの3.2型チルト式タッチパネル液晶。記録メディアはXQDカードのシングルスロットだ。

動画はフルフレームでの4K UHD/30p記録に対応。全画素読み出しによる4K UHD/30p記録はZ 7がAPS-Cベース、Z 6がフルフレームで可能となっている。10 bitでのHDMI出力時には、ニコン独自のLogガンマカーブ「N-Log」にも対応する。

両モデルともバッテリーは、同社一眼レフで採用されてきた「EN-EL15」系との互換性を確保。付属バッテリーは最新の「EN-EL15b」だ。CIPA基準の撮影可能枚数は、Z 7が約330コマ(ファインダーのみ使用時)、約400コマ(モニターのみ使用時)で、Z 6が約310コマ(ファインダーのみ使用時)、約380コマ(モニターのみ使用時)。スペック上の撮影可能枚数は一眼レフと比べると少ないが、実際に使ってみるとZ 7では1200枚以上の静止画撮影が行えた。

ボディと合わせて2018年内に登場するレンズは、標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」、広角単焦点レンズ「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」、標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」の3本。一眼レフ用の「Fマウントレンズ」を装着できる「マウントアダプター FTZ」も用意する。

Z 7/ Z 6の大きな魅力となるのが、大きくて自然な見えを実現したEVF(倍率約0.8倍、約369万ドット)。液晶モニターは3.2型チルト式タッチパネル液晶(約210万ドット)となっている

キヤノンは、EOS Rシステムの第1弾として有効約3030万画素の「EOS R」(10月25日発売)を用意する。最新の映像エンジン「DIGIC 8」を採用するうえ、新システムによる通信速度の向上もあって、キヤノンのミラーレスとしては全体的に性能の底上げを図った、バランスのよいモデルとなっている。

有効約3030万画素のフルサイズCMOSセンサーやDIGIC 8を採用するEOS R。画質やAFなどトータルバランスにすぐれたフルサイズミラーレスだ

AFシステムは、1つひとつの画素が撮像と位相差AFの両方を兼ねる「デュアルピクセルCMOS AF」の最新バージョン。最大で画面の約88%(横)×約100%(縦)のエリアでの像面位相差AFが可能で、AFスピードはフルサイズカメラとして世界最速の0.05秒を達成したとしている。さらに、中央測距点において、フルサイズセンサー搭載のデジタルカメラとして世界初となる低輝度合焦限界「EV-6」を実現したのも特徴だ。

操作性では、約369万ドットの有機ELデバイスを採用した、倍率約0.76倍のEVFを搭載。こちらもニコンと同じように、光学系にこだわったEVFだ。アイポイントが約23mmと長く、メガネをかけたままでも使いやすいファインダーと言える。

さらに、ボディ背面にタッチ操作(スライド操作と左右のタップ操作)による「マルチファンクションバー」を新たに搭載したのも操作性の特徴。AFや感度、ホワイトバランスといった機能を割り当てておいてタッチ操作で設定を変更したり、再生時には画像送りなどの操作が行える。物理的なボタンではなく無音で操作できるので、動画撮影時にも便利に使うことが可能だ。また、ニコンと同様、新レンズ「RFレンズ」には機能の割り当てが可能なコントロールリングを装備。液晶モニターは約210万ドットの3.15型バリアングル式タッチパネル液晶。記録メディアはSDメモリーカード(UHS-II対応)でシングルスロット。ボディは防塵・防滴構造を実現した。

動画はクロップでの4K UHD/30p記録が可能。「CINEMA EOS」で実績のある独自のLogガンマカーブ「Canon Log」の選択も可能だ。HDMI出力時は4:2:2 10bitに対応し、BT.2020の色域も選択できる。

バッテリーは、「EOS」シリーズ一眼レフの中上位モデルと同じ「LP-E6N/LP-E6」に対応。「LP-E6N」使用時の撮影可能枚数は約370枚となっているが、こちらもニコンのZ 7と同様、実際はそれ以上の枚数を撮影できる。スナップ撮影や動体撮影で試した限りでは、1回の充電で1500枚を超える静止画を撮ることができた。

RFレンズの第1弾として登場するのは、「RF24-105mm F4 L IS USM「RF28-70mm F2 L USM」の標準ズームレンズ2本と、「RF50mm F1.2 L USM」「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」の単焦点レンズ2本。一眼レフ用の「EFレンズ」「EF-Sレンズ」を装着できるマウントアダプター「EF-EOS R」には、コントロールリングを装着するモデルや、ドロップインフィルターを装着できるモデル(PLフィルター付属、もしくは可変式NDフィルター付属の2種類)が用意されるのがユニークだ。フロント側にフィルターが装着できないEFレンズの超広角レンズやフィッシュアイレンズなどでも、ドロップインフィルター付きのマウントアダプターを使うことでフィルター効果を使った撮影ができるようになるのはとてもおもしろい。

ボディ背面に、タッチ操作の「マルチファンクションバー」を新たに搭載。EVFは倍率約0.76倍で約369万ドット表示に対応。液晶モニターは3.15型バリアングル式タッチパネル液晶(約210万ドット)となっている

すでにZ 7についてはチェック済で、EOS Rもベータ機を試用中なのだが、両モデルともに新マウントレンズを使ったときの画質は非常に高い。解像力・コントラストにすぐれるうえ、画面の隅々までクリアで抜けのよい画質が得られるのは、新しい時代を感じさせるものだ。両社の一眼カメラとして史上最高の画質と言ってもけっして言い過ぎではないくらいのインパクトがある。

ミラーレスらしい連写やAFの高速性はもうひとつ

ニコンのZ 7、キヤノンのEOS Rを試用した限りでは、ともに一眼カメラとして最高レベルの画質を実現しているうえ、EVFの見えも非常によく、グリップのホールド性などもすばらしい。防塵・防滴性能も確保したのもポイントで、第1弾製品としては申し分ない出来だ。特にZ 7はさすがにニコンが作ったカメラという印象で、シャッターのフィーリングなどの操作感が非常によいと感じた。

ただ、ソニーのフルサイズミラーレスの第3世代となる、有効約4240万画素の高画素モデル「α7R III」、有効約2420万画素のスタンダードモデル「α7 III」と比べると、ニコン、キヤノンともに連写やAFなどの高速性では見劣りするところがある。大きくて自然な見えのEVFはニコンだからこその部分だし、キヤノンも現状でナンバーワンの暗所性能を実現したAFを実現している。お互いの“らしさ”は感じるのだが、ミラーレスのメリットである高速性はソニーの最新モデルを上回るところが少なく、まだまだこれからという印象だ。

どのくらいの差や違いがあるのかは整理しておいたほうがいいだろう。以下に、使ってみてわかった点も含めて、ニコンとキヤノンのフルサイズミラーレス第1弾製品と、ソニーの第3世代の高速性に関する比較をまとめておこう。

まず連写速度だが、ニコンのZ 7はAF追従/AE 1コマ目固定で約9コマ/秒(14ビットRAW時:約8コマ/秒)、Z 6は同約12コマ/秒(14ビットRAW時:約9コマ/秒)、キヤノンEOS RはAF1コマ目固定/AE追従(※合焦後のAEロックを外せばAE追従可)で約8コマ/秒と、いずれもAFやAEの条件付きだとそれなりの速度を実現している。だが、AF/AEの両方が追従する場合は、Z 7が約5.5コマ/秒(14ビットRAW時:約5コマ/秒)、Z 6が同じく約5.5コマ/秒(14ビットRAWの制約なし)、EOS Rが約5コマ/秒にコマ速が落ちる。有効画素数の違いがあるとはいえ、ソニーは、上位モデルのα7R IIIだけでなく下位モデルのα7 IIIでも、メカシャッター・電子シャッターの両方でAF/AE追従で約10コマ/秒を実現しているのに比べると見劣りする。ちなみに、EOS Rは発売時点では電子シャッターでの連写に対応していない(※ファームウェアアップデートで後日対応予定)。

連写時のEVFの表示を加味すると、Z 7を試した限りでは、AF追従/AE 1コマ目固定の約9コマ/秒時はブラックアウトのないアフタービュー表示(1つ前のレリーズの撮影画像が表示されたり、レリーズ時の表示画像の更新が遅い方式)で、AF/AE追従の約5.5コマ/秒時はブラックアウトのあるライブビュー表示となる。EOS Rでも試したが、AF 1コマ目固定/AE追従の約8コマ/秒時、AF/AE追従の約5コマ/秒時ともにブラックアウトのないアフタービュー表示となるようだ。いっぽう、α7R III/α7 IIIは、AF/AE追従の約10コマ/秒時はブラックアウトのないアフタービュー表示だが、約8コマ/秒にコマ速を落とせば、AF/AE追従のまま短いブラックアウトでのライブビュー表示が可能となっている(※どのモデルも、ブラックアウトの有無はスペック通りのコマ速が出る場合の動作になります。極端にシャッタースピードが遅くなると動作が異なる場合もあります)。

ブラックアウトの有無は好みの分かれるところだろうが、アフタービュー表示よりもライブビュー表示のほうが遅延が少なく、動く被写体を追いかけやすい。なお、EVFの表示フレームレートは、ニコンとキヤノンはスペックを公表しているわけではないが、Z 7とEOS Rをチェックした限りでは60fps程度になっているようだ。いっぽうソニーは、α7 IIIは60fpsだがα7R IIIは120fpsに対応している。

連写の持続性を示す撮影可能枚数は、最高のコマ速で使ってみるとその差がわかりやすい。JPEG記録で比較すると、Z 7は約9コマ/秒連写が3秒程度、α7R IIIは約10コマ/秒連写が7〜8秒程度、EOS Rは約8コマ/秒連写が12〜13秒程度、Z 6は12コマ/秒連写が4秒程度、α7 IIIは約10コマ/秒連写が16秒程度持続する。EOS Rは申し分ないが、この中ではニコンの2モデルの持続性がやや低くなっている。α7R III/α7 IIIはメモリカードへのデータ書き込み中に一部のメニュー項目を操作できないという制限はあるものの、AF/AE追従連写であることを考慮すると十分な性能だ。圧縮RAW記録時の持続性もニコン、キヤノンよりすぐれている。

ニコン、キヤノン、ソニーの連写性能をまとめた表

AFは、スペックを見るとニコン、キヤノンともにライブビューAFとしては両社のフルサイズ機として最高の性能となっている。Z 7とEOS Rを試してみた限りでは、AF-Sのワンショット撮影ではほとんどストレスを感じないレベルで、狙ったところにすばやくピントが合う。画面の広いエリアで位相差AFを使えるので、一眼レフよりも使いやすいと感じるところもある。

ただし、連写撮影時にAF-Cを使って被写体を追いかける場合は、食いつきや追従性がもうひとつという印象。AFの機能面でも、α7R III/α7 IIIがAF-C対応で検出精度の高い瞳AFを搭載するのに対して、Z 7/Z 6は瞳AFが非搭載で、EOS RはAF-Cでの瞳AFに対応していない。ソニーは、ドイツで開催されたカメラ・写真関連のイベント「フォトキナ2018」で瞳AFの動物対応を発表するなど、さらに機能を進化させようとしている。 このように連写やAFなどの高速性は、さすがに、フルサイズミラーレスをいち早く商品化して5年の歴史を積み重ねてきたソニーが一歩上回っている。

なお、こうして3メーカーのフルサイズミラーレスを比べてみると、ソニーのフラッグシップ級の高性能モデル「α9」(※ソニーはα9をフラッグシップモデルではなくプロフェッショナルモデルと呼んでいる)は、現時点では高速性において別格の存在なのがわかる。メモリー内蔵の積層型CMOSセンサーを世界で初めて採用するなどして、電子シャッターの動体歪みを抑えながら、ブラックアウトフリーで最高約20コマ/秒の超高速連写を実現したのは驚異的。イメージセンサーのリーディングカンパニーであるソニーだからこそ開発できた高速ミラーレスと言えるだろう。

一眼レフも含めた全体のラインアップの中で選びたいモデル

ニコンとソニーからフルサイズミラーレスが登場したということで、上で紹介したように、ニコン、キヤノン、ソニーの3社で細かいスペックを比べてみたくなるというもの。メーカー横断で性能・機能の差や違いを知っておくことは、自分に合ったカメラを選ぶための基本だ。だが、ニコンとキヤノンのフルサイズミラーレス第1弾製品に限っては、そうした差や違いを知ったうえで、一眼レフを含めたそれぞれ自社のラインアップの中で選択するカメラと捉えたほうがいいように思う。

というのも、新システムのコンセプトや新製品発表会のプレゼンテーションを見たり、実際にカメラを使ってみると、ニコンとキヤノンは、自社のフルサイズ一眼レフユーザーに新しい価値を提案するという狙いで、初のフルサイズミラーレスを商品化したように感じるからだ。新レンズマウントでの光学性能の向上をアピールしていることもそうだが、カメラに触ってみるとわかる操作性のよさなどは、一眼レフで培ってきた部分を大事にして開発したという印象。まったく意識していないというわけではないだろうが、対ソニーはそれほど強く意識せずに、自分たちのカメラに対する思想をぶらさずに作ったミラーレスという印象を強く受ける。

細かい機能性でも「自社のフルサイズ一眼カメラの中での新しい選択肢」という意識が垣間見える部分がある。たとえば、メモリカードのダブルスロットやシンクロ端子といったハイエンド向けの機能は、ニコンとキヤノンのフルサイズミラーレス第1弾製品では非搭載だ。ソニーの下位モデルα7 IIIでも搭載されているUSB給電中の撮影も実現しなかった。本気で対ソニーを意識したなら、このあたりの機能は外せないはず。プロやハイアマチュアから指摘されるのは承知のうえで、一眼レフを含めた自社のラインアップのバランスを考慮し、コストを優先してハイエンド向けの機能の搭載は優先順位を下げたのかもしれない。

記録メディアとしてZ 7/Z 6はXQDカード、EOS RはSDメモリーカード(UHS-II対応)を採用。ともにシングルスロット仕様だ(画像左がZ 7、右がEOS R)

一眼レフを含めたラインアップで見ると、ニコンのZ 7は、同画素となる高性能フルサイズ一眼レフD850よりも下位の位置付けになるだろう(※市場想定価格が44万円前後とD850より高いのでダブルスロットには対応してほしかったが)。Z 6はZ 7の下で、フルサイズ機としてはエントリーからスタンダードの位置づけになる。販売戦略的には市場想定価格25万円前後のZ 6が本命と見ていい。

キヤノンのEOS Rは、高性能フルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark IV」と、フルサイズ一眼レフのエントリー機「EOS 6D Mark II」の間を埋めるような存在だ。キヤノンオンラインショップでの価格は237,500円(税別)で、機能的にも価格的にも一眼レフを含めたラインアップの中でわかりやすいところに位置している。

ただし、新システムのコンセプトや新製品発表会のプレゼンを見る限りでは、ニコンもキヤノンも、この先の展開として目立つのは光学性能の部分で、連写やAFなどの高速性の向上を明確にうたっていないのは気になるところ。電子接点の増加での性能向上に含みは持たせているものの、ミラーレスのメリットである高速性についてどういうプランがあるのかは、はっきりとは見えてこない。

また、両社とも、フルサイズミラーレスの発表に合わせて、一眼レフとミラーレスを平行して開発していくことも公表しているが、ミラーレスでも一眼レフのフラッグシップに匹敵するようなハイレスポンスなプロ機の開発を目指すのか、それともプロ機はあくまでも一眼レフで、一眼レフとミラーレスをすみ分けるような展開にするのか、もう少し知りたかったところはある。一眼レフとミラーレスで全体のラインアップを構築するのであれば、ミラーレスはどういう立ち位置になるのか、どういう方向性になるのかのビジョンをもっと具体的に提示してほしかった。

パナソニックも高性能なフルサイズミラーレスを開発中。シグマからFoveonセンサーのフルサイズミラーレスも登場予定

ニコンとキヤノンからフルサイズミラーレスが発表になり、フルサイズミラーレスはソニーを含めた3社での展開になると思われた矢先、噂は出ていたものの、パナソニックがフォトキナ2018でフルサイズミラーレスへ市場への参入を発表したのは驚きだった。

パナソニックはマイクロフォーサーズ規格のミラーレスを手がけており、4K/60p動画撮影に代表される高速性に特徴のあるモデルを開発してきているが、同社初のフルサイズミラーレスは、これまでマイクロフォーサーズで積み上げてきた技術を生かしたような基本スペックにすぐれたモデルとなっている。フルサイズミラーレス「LUMIX S」シリーズとして、4700万画素モデル「LUMIX S1R」と2700万画素モデル「LUMIX S1」の2機種を2019年初頭に発売する予定だ(価格は未定)。

LUMIX S1R/S1は、レンズマウントに、ライカがミラーレス用に開発した「Lマウント」(※旧Tマウント。口径51.6 mm、フランジバック20mm)を採用。フルサイズミラーレスとして現時点では初めて4K/60p動画撮影に対応することを明らかにしたほか、ボディ内補正とレンズ側の光学補正を組み合わせる手ブレ補正「Dual I.S.」にも対応。液晶モニターは3軸チルト式で、記録メディアはXQDカードとSDカードのダブルスロット仕様だ。防塵・防滴仕様も実現する。

4K/60p動画撮影などのハイスペックを実現するLUMIX S1R/S1。2019年初頭の発売予定だ

4K/60p動画撮影などのハイスペックを実現するLUMIX S1R/S1。2019年初頭の発売予定だ

パナソニックは2020年の東京オリンピックをターゲットに8K撮影の実現を目指している

パナソニックは2020年の東京オリンピックをターゲットに8K撮影の実現を目指している

注目したいのは、パナソニックのフルサイズミラーレスは、ライカ、パナソニック、シグマの3社で協業する「Lマウントアライアンス」にもとづいて開発されていること。Lマウントアライアンスは、3社それぞれがLマウント互換のカメラやレンズを展開していくというもので、特にレンズのラインアップが充実する点で魅力的な協業だ。

なかでも、シグマがFoveon(フォビオン)センサーを搭載するLマウントのフルサイズミラーレスを2019年にリリースすると発表したのはビッグニュースだ。一般的なベイヤーセンサーとはまったく異なる解像力と画質が得られるFoveonセンサーがフルサイズになると考えるだけで期待が高まる。シグマの今後の動きからも目が離せない。

まとめ

2大カメラメーカーのニコンとキヤノンがフルサイズミラーレス市場に参入したのは、デジタル一眼カメラの歴史の中で大きなターニングポイントになるのは間違いない。両社とも今後の発展性に考慮したシステムを採用しているので、画質や性能がこれからどこまで向上するのか期待は膨らむ。第1弾製品については、まだ本格的なプロ機というわけではないが、ともにフルサイズ一眼レフよりも小型・軽量で、それでいてこれまで以上の画質力を備えている。最新の高性能ミラーレスを使い込んでいる方にすれば、ミラーレスらしさという部分ではややもの足りなさを感じるかもしれないが、EVFやシャッターフィーリングなどの操作感がよく、使えば使うほどによさがわかってくるカメラだ。一概にスペックだけで判断しないほうがいいところがあるので、機会があればぜひ実際に触ってみて判断してほしい。

パナソニックは、4K/60p動画撮影に対応するなど、スペック的にはニコン、キヤノン、ソニーを上回る性能のフルサイズミラーレスの開発を進めている。プロ向けとして開発しているのである程度の価格にはなると思われるが、ハイアマチュアユーザーにとって注目度の高いカメラなのは間違いない。さらにシグマからFoveonセンサー搭載のフルサイズミラーレスが登場するのも見逃せない。どんなカメラになるのか今から楽しみだ。

このように、これまではソニーが先行していたフルサイズミラーレス市場は、ニコン、キヤノンに加えて、ライカ、パナソニック、シグマによるLマウントアライアンスの参入によって複数のメーカー間での激しい競争が生まれことになる。次の大きな動きがみられるのは、来年2019年1月に開催される世界最大級の家電見本市「CES 2019」や、2月に開催されるカメラ・写真関連の展示会「CP+」になるだろう。おそらく、パナソニックはこのあたりに照準をあわせて開発を進めているはず。ソニーから新モデルが登場する可能性もあるし、ニコン、キヤノンも何か動きを見せるかもしれない。各社の今後の動きから目が離せない。

最後に、フルサイズミラーレスに関する最近の発表を見たり、ニコンやキヤノンの実機に触れてみて気になったことを付き加えておきたい。それは、ソニーも含めての話になるが、どのメーカーもボディやレンズの小型化をそれほど優先していないということ。フルサイズミラーレスはまだハイエンド向けの位置づけということもあり、操作性や機能性を重視してボディは少しずつ大きくなっている。描写力にすぐれる大口径レンズについては、ひとまわり小さくなったとはいうものの、一眼レフ用とそれほど変わらない大きさになっている。ある程度の大きさのフルサイズミラーレスに大きなレンズを何本が携帯しながら使っていると「システムとしての携帯性は一眼レフとたいして変らないのでは……」と感じることもある。操作性・機能性を追求するとボディが大きくなる。画質を追求すると光学性能を高める必要がありレンズが大きくなる。携帯性重視ならAPS-Cやマイクロフォーサーズを選べばいい。というのはわかるのだが、ある程度のラインアップがそろってきたら、改めてミラーレスのメリットの1つである小型・軽量を追求したフルサイズミラーレスとそれにフィットするレンズを作ってほしいと思う。スナップや旅行などで使いやすい、コンパクトで持ち運びやすい高画質フルサイズミラーレスの登場に期待したい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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