交換レンズ図鑑
圧倒的にワイドな130°の画角を実現!

世界最広角レンズ「フォクトレンダー HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical」実写レビュー

少し前に発売になったレンズになるが、今回はコシナ製のフォクトレンダーレンズ「HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical」を取り上げたい。Eマウント用の超広角レンズを探していた筆者が実際に購入した製品だ。発売から3年近くが経過しているが、現在でも世界最広角の焦点距離を誇る個性的なレンズとなっている。

2016年5月発売のHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical(カメラボディは「α7R III」)。コシナ製のレンズは、厳密な品質管理のもと、レンズの研磨からコーティング、組み立てまで一貫して自社工場で生産されており、非常に高品位な仕上がりとなっている

Eマウントに最適化したコンパクトな超広角レンズ

価格.comマガジンでコシナ製のフォクトレンダーレンズを紹介するのは初めてなので、まずは、その特徴を簡単に紹介したい。

そもそもフォクトレンダー(Voigtländer)とは1756年に創業した光学機器メーカーで、世界最古のカメラメーカーのひとつ。ツァイス・イコンとの吸収合併(1969年)を機にメーカーとしての役割は終えたが、数学的計算に基づいた世界初の写真用レンズを装着したカメラを1841年に発売して以降、100年以上にわたって独創的なメカニズムのカメラや高品位な写真用レンズを生み出した、写真・カメラ史に残るメーカーである。

コシナは、そんな老舗メーカーの商標権を1999年に獲得し、フォクトレンダーの名を冠するカメラおよびレンズの開発・販売を開始した。写真愛好家から高い支持を得たレンジファインダーカメラ「BESSA(ベッサ)」シリーズは残念ながら2015年に生産終了になったものの、レンズはVMマウント用にはじまり、一眼レフ用、マイクロフォーサーズ用、Eマウント用と幅広いマウントで製品を展開。超広角の「HELIAR(ヘリアー)」、大口径の「NOKTON(ノクトン)」、高性能なマクロレンズ 「MACRO APO-LANTHAR(アポランター)」といったように、かつての銘玉の名を継承した、個性的なレンズを数多くラインアップしている。

コシナ製のフォクトレンダーレンズの最大の特徴は、人間の手で操作する心地よさを重視し、「絞りリングを持つMF(マニュアルフォーカス)の単焦点レンズ」にこだわっていること。AF機構を持たないこともあってどのレンズもコンパクトなサイズに収まっているのも特徴だ。さらに、クラシックな光学設計をそのまま継承しているものもあるが、特に最近のモデルはレンズの“味”を持ちながらも、現代的な解像力をあわせ持つ上質な写りを実現。クラシックで高品位なデザインと、総金属製で非常に精巧な作りの鏡筒も魅力的で、歴史あるフォクトレンダーの独創性と品質をしっかりと受け継いだレンズブランドとなっている。

今回紹介するHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalは、HELIAR の名を持つ超広角レンズ。2019年1月時点では魚眼レンズを除いてフルサイズ対応レンズとして世界最広角となる、焦点距離10mmを実現しているのが特徴だ。Eマウント用とVMマウント用が用意されているが、今回はEマウント用をレビューする。

Eマウント用のサイズは67.4(最大径)×68.5(全長)mmで、重量は375g。開放F値がF5.6に抑えられているものの、世界最広角レンズとしては非常にコンパクト。総金属製の鏡筒は非常に高品位な仕上がりだ。レンズフードは一体型で、フィルターの装着は不可となっている

HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalのレンズ構成は10群13枚。130°という圧倒的に広い画角を実現しながらも、非球面レンズを採用するなどしてディストーションを徹底的に排除。加えて、Eマウントのフルサイズセンサーに最適化した光学設計によって、色被りを抑え、周辺まで高い解像力を実現しているという。

操作性では、高精度に加工・調整した総金属製ヘリコイドユニットと高品質なグリースの採用により、滑らかな操作感のフォーカシングを実現。絞りリングにはクリックの有無を選択できる切り替え機構が備わっている。

このほか、電子接点を搭載しており、カメラボディ内のレンズ補正に対応するうえ、絞り値などの情報は画像データのExifに反映される。内蔵の距離エンコーダーによってカメラボディ側の5軸手ブレ補正にも対応。フォーカスリングの操作に連動しての拡大表示も可能で、ソニーのEマウントミラーレスに最適化した仕様となっている。

絞りリング、フォーカスリングに加えて、被写界深度の目安が書かれた深度リングも搭載。絞りリングはクリックの有無を切り替えることが可能だ。細かいところではEマウント用とVMマウント用は絞りリングの回転方向が逆になっている

フォクトレンダーのロゴがプリントされた金属製のレンズキャップが付属する

フォクトレンダーのロゴがプリントされた金属製のレンズキャップが付属する

実写作例

※以下に掲載する作例は、α7R IIIとHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalを組み合わせてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影したもの、もしくはRAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(Adobe Lightroomを使用)になります。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

α7R III、F8、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(5304×7952、27.6MB)

水平・垂直を出すことを意識して東京国際フォーラムの内部を縦位置で撮影した作例。東京の建造物では定番の撮影スポットだが、130°という画角の広さが伝わるだろうか。描写面では、周辺部で光量落ちがやや目立つのと、倍率色収差が発生して少し流れているのが気になるかもしれないが、焦点距離10mmの超広角レンズとしては十分なクオリティではないだろうか。

α7R III、F8、1/100秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、27.5MB)

直線を意識して横位置で撮影した作例。中央の枠をフレームとして意識して、できるかぎり歪みが出ないように水平を出してシャッターを切っている。歪曲収差が非常に少なく、直線を直線として表現できるレンズだ。

α7R III、F8、1/250秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、31.8MB)

ローポジションからあおって撮影した1枚。少し角度をつけるだけでパースが強調されたような絵が得られるのもこのレンズの面白いところだろう。ただ、10mmという超ワイドな焦点距離の難しいところはわずかな傾きで被写体が歪むこと。ハイポジション・ローポジションから角度を付ける場合でも極力水平を出して撮りたい。

α7R III、F6.3、1/6秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(5304×7952、30.4MB)

屋内のスペースで撮影した作例。縦位置で少しだけレンズを下に向けて撮っている。1/6秒という遅いシャッタースピードだが、α7R IIIのボディ内手ブレ補正によって手ブレを抑えて撮ることができた。

α7R III、F8、1/500秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、27.1MB)

逆光耐性と周辺部の周辺光量落ちをチェックするために撮影した写真。光源をどの位置に配置するかにもよるが、超広角レンズとしては比較的逆光に強く、太陽を画面に入れても周辺部に配置する限りではゴーストを抑えて撮ることが可能だ。また、周辺光量落ちはそれなりに発生し、絞りを絞ってもあまり改善されないようだ。この作例では色収差も輝度差があるところで強めに発生している。

また、この作例では太陽の光芒の数にも注目してほしい。9枚羽根や11枚羽根の奇数枚だと光芒の数が倍になり、うるさいと感じるときがあるが、コシナ製のフォクトレンダーレンズは絞り羽根10枚にこだわって設計されている。この作例のように光芒が10本きれいに出るのは高ポイントだ。

α7R III、F8、1/320秒、ISO100、RAW現像(WB:カスタム設定、歪曲収差:レンズプロファイル使用、周辺光量補正:なし、色収差を手動で削除)
撮影写真(7952×5304、18.2MB)

レインボーブリッジのループ橋を見上げるようにして撮影してみた。焦点距離10mmだとここまで広く撮ることができる。なお、この作例はRAW現像で仕上げていて、倍率色収差は手動で削除している。シンプルな出方の色収差なので比較的簡単に取り除くことができた。

α7R III、F7.1、1/20秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(5304×7952、21.9MB)

このレンズが威力を発揮するのは屋内の狭いスペースでの撮影だ。狭いスペースを奥行き感のある絵で撮ることができるのが面白い。直線がスーッときれいに伸びる描写がすばらしい。

α7R III、F5.6、1/40秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、21.6MB)

テーブルの上に置いてある植物を最短撮影距離30cm付近で撮影した1枚。焦点距離10mmで被写界深度が深いとはいえ、さすがにここまで被写体に近づくとピント位置の前後でボケが発生するため、ピント位置を意識して撮る必要がある。ただ、開放F5.6なのでピントの山がつかみにくく、この作例ではフォーカスリングを最短撮影距離にあわせて被写体との距離を調整しながらピントを追い込んだ。広角レンズ特有のパースをつけるような写真が撮りやすいと考えるかもしれないが、画角が広すぎて水平・垂直を出すと最短撮影距離付近でも被写体はかなり遠くなることが多く、通常の広角レンズのような使いこなし方は難しいと感じた。

なお、以下の画像は、同じシーンを焦点距離28mmで撮ったものになる。上のマクロ作例はテーブルの縁付近から撮っているが、被写体の手前周辺部が極端に広く写っていることが伝わるだろうか。

上のマクロ作例と同じシーンを焦点距離28mmで撮影した画像

上のマクロ作例と同じシーンを焦点距離28mmで撮影した画像

α7R III、F8、1/40秒、ISO100、LightroomでRAW現像(WB:カスタム設定、歪曲収差:レンズプロファイル使用、周辺光量補正:なし、色収差を手動で削除)
撮影写真(7952×5304、20.3MB)

こちらも屋内の狭い空間を撮影したもの。水平・垂直を出したうえで、面を意識して一番奥の窓の部分に正対するようにシャッターを切ったが、わずかにレンズが右側に向いてしまい、奥の窓が少し歪んだ描写になってしまったのが残念。

α7R III、F8、1/20秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(5304×7952、21.9MB)

奥の窓の部分が極力歪まないように水平・垂直を調整してカメラを構えて、手前のテーブル・椅子に近づいて撮影した作例。一見すると普通の広角レンズで撮っているように思うかもしれないが、奥の窓のフレームをほぼ歪みなく写しつつ、手前のテーブルの脚と椅子は広角レンズ特有のパースが効いたような描写になっているのが面白い。焦点距離10mmの超広角だからこそ得られた絵だ。

α7R III、F5.6、1/6秒、ISO1600、LightroomでRAW現像(WB:カスタム設定、周辺光量補正補正・歪曲収差補正:レンズプロファイル使用、色収差手動で削除)
撮影写真(7952×5304、22.7MB)

みなとみらいの施設が全館点灯の日に、ホテルの室内から手持ちで撮影した作例。部屋に飾られた額縁のようなイメージでシャッターを切り、RAW現像でシャドウを持ち上げるなどして仕上げてみた。この作例も一般的な広角レンズで撮れるように思うかもしれないが、16mm程度の焦点距離だと窓から離れて撮る必要があり、窓のフレームで囲まれた夜景部分がここまで広く写らない。この作例も10mmの焦点距離だから得られる絵だと思う。

α7R III、F8、1/1.6秒、ISO640、ホワイトバランス:蛍光灯:白色、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オフ、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(7952×5304、21.6MB)

日没直後に、手前にらせん状のジェットコースターを、奥に観覧車を配置して撮影した1枚。焦点距離16mmくらいの広角レンズでも似たよう構図の写真は撮れると思うが、10mmだとここまでダイナミックな印象の面白い絵になる。

まとめ 歪曲収差を徹底的に抑え、直線を直線として写せる優秀な超広角レンズ

筆者は、かねてよりEマウントの超広角レンズがほしいと考えていて、HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalを購入したが、とてもよい選択だったと思っている。このレンズを選んだのは、他のレンズでは得られない「世界最広角10mmの世界」で撮ってみたいと思ったことが大きい。また、普段の作品作りはスナップが中心で超広角レンズの出番がそれほど多くなく、極力コストをかけたくないと思っていたことも理由のひとつだ。Eマウントの純正レンズでは超広角ズームレンズとして「FE 12-24mm F4 G」が用意されているが、価格が17万円程度と少々高い。かたやHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalは11万円程度(いずれも2019年1月18日時点での価格.com最安価格)でFE 12-24mm F4 Gよりも手に入れやすい。

また、10mmという短い焦点距離なので、絞りをF8くらいまで絞れば深い被写界深度が得られ、MFでも撮りやすいのもポイント。開放のF5.6でもフォーカスリングを2mに設定すれば、あくまでも理論上の話になるが約0.5mから無限遠までピントが合う。マクロ撮影時にピントの山がつかみにくいところはあるが、MFレンズに慣れていない方でもストレスなく使い始められると思う。

描写面では歪曲収差が徹底的に抑えられており、直線を直線として写せるのがすばらしい。周辺の細かいところまでまっすぐ写したいという場合以外は、カメラボディ側の歪曲収差補正を使う必要はないだろう(※普通に撮る分には少し歪曲があったほうが自然な絵になる)。ただし、HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalは描写面で目をつむらないといけないところがある。10mmという焦点距離のレンズとして中央部は十分な写りなのだが、周辺部はどうしても画質が落ちる。絞っても周辺光量落ちや倍率色収差がそれほど改善されないので、JPEG撮って出しで納得いく作品に仕上げるのは難しく、RAW現像は必須。周辺光量落ちについてはRAW現像でもカバーしにくく、光量落ちを作画に生かして撮りたいところだ。

なお、HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalのような超広角レンズは、水平・垂直を出して撮るのが基本で、被写体探しが難しいことを理解したうえで選んでほしい。特に建造物など直線の多い被写体だとちょっとした傾きで歪みが出るので、被写体を面で捉えてきっちりと正対して撮りたい。筆者はこのレンズを使ってみて、普段いかに被写体に正対することを意識して撮っていないのかを痛感した。あえて水平を取らずに傾かせて撮るのも面白いとは思うが、この撮り方だと超広角レンズでは絵にするのが非常に難しい。目についた被写体をなんとなく撮っていると、使い始めは驚きがあって面白いのだが、魚眼レンズと同じようにすぐに飽きてしまうだろう。

とはいえ、超広角レンズは、特に自然風景や建築物をメインの被写体にして作品作りをするなら1本は持っておきたいところ。とりあえず手に入れて使ってみてからでもいいのだが、超望遠レンズと同じように、レンズの特徴を作品にどう生かすかを追求し、撮りたい絵のイメージをしっかりと持つことが使いこなしのポイントになる。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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