交換レンズ図鑑
「新次元の光学性能」を実感できる1本

開放で使いたくなる“超優秀”な標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」実写レビュー

ニコン初のフルサイズミラーレスとして昨年デビューした「Zシリーズ」。「新次元の光学性能」の実現を目指した新開発の「Zマウントシステム」を採用し、第1弾モデルの「Z 7」「Z 6」はともにその画質力が高く評価されている。Zシリーズ用のレンズ(Zマウントレンズ)はこれまでに3本発売されているが、今回は、その中から昨年12月に発売になった標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」を取り上げたい。

3本目のZマウントレンズとして登場したNIKKOR Z 50mm f/1.8 S(ボディは「Z 6」)。新たに設定されたグレード「S-Line」に属する標準レンズだ

新しいレンズ配置などによって高い光学性能を実現

まずは、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sのスペック上の特徴を紹介しよう。

レンズ構成はEDレンズと非球面レンズを含む9群12枚。レンズ最前面に凹レンズを配置するなど、内径55mm/フランジバック16mmのZマウントだからこそ実現できる新しいレンズ配置を採用することで、軸上色収差の効果的に抑制。画面中心だけでなく周辺でも高い解像力を発揮する。加えて、2枚の非球面レンズによって、開放でもサジタルコマフレアを効果的に抑制。画面全域で色滲みが少なく、芯を確保した点像が得られるという。開放F1.8の大口径ならではの自然で柔らかなボケ味を追求しているのも特徴で、前ボケ、後ボケともに色付きを抑え、均質な形状のボケが得やすくなっている。フレア・ゴーストを抑制する「ナノクリスタルコート」も採用しており、光学性能に妥協はない。

AF駆動には、高い駆動力と静音化を実現する新しいSTMを採用。鏡筒は防塵・防滴に配慮した設計で、絞りは電磁絞り機構となっている。サイズは約76.0mm(最大径)×86.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)で、重量は約415g。フィルター径は62mm。約0.4mと最短撮影距離が短いので、テーブルフォトにも使いやすいレンズだ。

鏡筒側面にAF/MF切り替えスイッチを装備。MF時にフォーカスリングとして動作するコントロールリングは大きな形状で、操作感も滑らか

このように特徴をまとめると、レンズ構成に特徴はあるものの、これまでにもあった「描写力に優れた標準レンズ」とそれほど変わらないという印象を持つかもしれない。だが、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、83,500円(税別)という価格のレンズとしては、従来の概念を覆すような高い描写力を持っている。詳しくは次項目で掲載する「絞り開放での実写作例」をご覧いただきたいが、開放から解像力が高いだけでなく、ボケも自然で美しい。これまでにはなかったような、絞り開放で非常にバランスのよい描写を実現しているのだ。

バヨネットフード「HB-90」が付属する

バヨネットフード「HB-90」が付属する

絞り開放での実写作例

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/160秒、ISO100、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、9.79MB)

窓からの光がテーブルに反射している状況で撮影した1枚。強い光が反射するエッジ部で色収差が発生しやすい状況ながら、ピント位置の前後でごくわずかに色付き(手前は紫、後ろは緑のフリンジ)が見られる以外は気になるような色収差は見られない。ボケも滑らかな印象を受ける。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/60秒、ISO3200、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、10.7MB)

暗い屋内で、感度をISO3200に上げてガラス越しのグラスを撮影した1枚。エッジ部で色収差が出やすい被写体だが、どこを見ても色付きは見られない。前ボケも比較的滲みが大きくて印象的だ。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/50秒、ISO100、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、9.16MB)

背景を大きく取って、ボケ味をチェックした作例。若干硬いような印象も受けるが縁取りはそれほど強くなく、比較的滑らかなボケが得られた。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/50秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、8.97MB)

淡い光が差し込む薄暗い屋内でシャッターを切ったのだが、その場の雰囲気がとてもうまく再現されていて、撮った後に驚いた写真。Z 6の画像処理能力の高さもあるのだが、極端な画像処理をした感じがなく、上質な仕上がりとなった。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/25秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(4024×6048、8.95MB)

暗い屋内で光を拾う感覚でシャッターを切った1枚。NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは開放からシャープというだけでなく、コントラストが高いのも特徴だ。

Z 7、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/320秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:オート、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(8256×5504、19.6MB)

こちらはZ 7で撮影した作例。強いスポットライトが当たっているが、ピント位置ではまったくと言っていいほど色収差は見られず高い解像感が得られている。ピント位置の前後でも気になるような色付きはない。微妙なボケのニュアンスも表現できており、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの光学性能の高さを感じる写真となった。

Z 7、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/800秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:オート、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(8256×5504、22.2MB)

レースカーテンも色付きが出やすい被写体だ。この作例ではレースカーテンにピントを合わせているが色収差は皆無。細かいところまでシャープに写せており、実在感のある写真となった。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/15秒、ISO100、WB:温白色蛍光灯、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、8.76MB)

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは開放だとそれなりに周辺光量落ちは発生する。ただ、ヴィネットコントールを標準設定で撮る分には、自然な減光になるので絵作りに活用しやすい。この作例のように、夕暮れ時のグラデーションなどとの相性がよいと思う。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/3秒、ISO100、WB:オート2、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、12.8MB)

停泊する大型客船と海面のリフレクションを手持ちで撮影。1/3秒という遅いシャッタースピードながら、Z 6のボディ内手ブレ補正によって手ブレのない写真を撮ることができた。画像の両サイドの光源部でコマ収差や色ずれがわずかに見られるものの、画面全域でシャープな描写が得られている。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/10秒、ISO100、WB:オート2、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(4024×6048、10.4MB)

イルミネーションを撮影した写真だが、色収差はまったく見られず、ピント位置ではシャープな描写が得られた。二線ボケが出そうな被写体だがボケも上質で、非球面レンズ特有の年輪ボケも見られない。

Z 6、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/10秒、ISO100、WB:オート2、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、回折補正:する、自動ゆがみ補正:する、JPEG
撮影写真(6048×4024、12.3MB)

背景がうるさくなりがちなイルミネーションでボケ質をチェックしてみた。背景に強い点光源が並んでいるため、さすがにこの作例ではボケの縁取りが強く出ているところがある。年輪ボケも見られるが、極端な出方はしていない。

開放での解像力をFマウントレンズと比較

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの開放F1.8での解像力の高さを、Fマウントの標準域レンズ3本「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」「AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G」「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」と比較してみたので、その結果を掲載しよう。

以下の画像は、ほぼ同じ距離から同じ被写体を4本のレンズで撮影した写真からの切り出し画像になる(※撮影写真を縦横1/2に縮小したうえでピント位置付近を切り出しています)。撮影はカメラボディに「Z 7」を使用し、絞り値はF1.8にそろえた。Fマウントレンズは「マウントアダプター FTZ」を使用してカメラボディに装着している。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 S AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gはボケ味を重視したレンズなので参考程度にとどめておいてほしいが、上の画像を比較すると、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの開放での解像力の高さが見て取れるはずだ。AF-S NIKKOR 50mm f/1.8GやAF-S NIKKOR 50mm f/1.4Gとは価格帯が異なるため、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sのほうが解像力で上回るのは当たり前ではあるのだが、それでもここまで違いが出るのはNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの光学性能の高さを裏付けていると言えよう。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、解像力の高さもそうだが、ピントが少し外れたところの小ボケの部分で滲みがないのが、これまでのFマウントの標準レンズとは性質が異なるところ。滲みがあったほうがボケは柔らかい印象になるので、これまでであれば「ボケが硬くなる」のが一般的なのだが、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sはそういったことはない。確かに、ピント位置前後の小ボケは滲みが少ないので、そこだけを見てこれまでのレンズと同じような評価をしてしまうと、「ボケの硬いレンズ」ということになってしまうが、背景の大ボケを含めて写真を全体的に見るとボケ味はとても自然だ。

まとめ 開放でのバランスのよい描写は特筆もの。Zマウントシステム必携の1本

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは、ボケ味を犠牲にせずに、開放から強烈な解像力を発揮する標準レンズだ。海外の一部メディアではボケが汚いという評価も見られるが、そんなことはない。ボケの美しさは人それぞれで好みが分かれるところではあるが、ピント位置はシャープで、その前後では滲みが少なく、前景・背景の大ボケ部では自然なボケ味が得られる描写は、Zマウントシステムが標榜する「新次元の光学性能」を感じさせるもの。もちろん、開放F値がF1.8に抑えられているのでとろけるようなボケ味というわけではないが、少なくともこれまでのFマウントの標準レンズにはない特性だ。開放での解像力の高さとボケ味のバランスが素晴らしく、「開放でどんどん使いたくなる超優秀な標準レンズ」に仕上がっている。

これまでいろいろな標準レンズを試してきているが、実売7〜8万円までという価格帯に限れば、現時点で最高の描写力を持つ1本だと断言したい。同じ価格帯では、ソニーの「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」がコストパフォーマンスの高い標準レンズとして人気が高く、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sと同じような立ち位置になると思うが、両方を使ってみた印象としては、画面全体での均一な特性とボケ質については、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sが上回っているように思う。

写りが素直で優等生すぎるため、各種収差を含めてのレンズ固有の“味”という部分でインパクトが薄いように思うかもしれないが、撮影した画像から得られる印象の深さは十分。今回は試せなかったが、ポートレートにも向いているレンズだと思う。Zマウントシステムを選ぶなら、持っておいて損のない必携の標準レンズである。 

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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