レビュー
12万円超えの価値はあるのか?

高級志向の360°カメラ、リコー「THETA Z1」の動画性能をチェック!

「THETA Z1」のレビュー動画はこちらから!

リコーは、2013年に 初代「THETA」を発売し、「THETA m15」や「THETA S」などの派生モデルを次々と生み出し続けるなど、360°カメラの先駆者として市場を切り拓きました。その後も、エントリーモデルの「THETA SC」や、動画機能を強化した「THETA V」を発表し、2016年までは順調にラインアップの拡充を続けていました。

しかし、一転して2017年と2018年には新モデルの発表はなく、ファームウェアや対応アプリのアップデートのみに終始していました。「もしかして、THETAは終わったのか?」と言う声が聞こえる中、新興のShenzhen Arashi Visionの「Insta360」 シリーズやアクションカメラの老舗ブランドGoProの「Fusion」が360°カメラ市場を席巻。「THETA」シリーズの存在感はすっかり失われてしまいました。

しかし、「THETA」は終わってはいませんでした! 2019年5月24日にリコー がついにシリーズ最新モデルとなる「THETA Z1」を発売するのです。360°カメラとしては初(※業務用を除く)となる大型1インチセンサーの搭載を目玉に、126,900円(税込・メーカー直販価格)という“高級路線”で勝負に出る新生「THETA」。その実機を発売前にメーカーから借りることができたので、実際にフィールドに持ち出し、その動画撮影機能をメインにチェックしてみました!

リコー「THETA Z1」

リコー「THETA Z1」

「THETA Z1」で撮影した動画

どうも、お世話になっております。Vlogger(ビデオブロガー)の「楯」改め、「TATE」です。

今回は「THETA Z1」 をアウトドアや屋内撮影、そして夜間撮影に持ち出して実戦的なシーンでテストしてきました。以下の動画で見られる映像は、カット編集とトランジションの追加のみで、色やブレの補正などはしていません。「THETA Z1」の“撮って出し”映像がどんな感じになるのか?は、こちらでご覧ください。

ダイナミッレンジの広さが魅力

まずは、アウトドア(河原)での撮影。あいにくの曇り空ですが、空のハイライトが極端に白飛びすることなく、石と石の間などのシャドーもキレイに表現できています。橋の下のシャドーは黒つぶれしていますが、360°カメラで撮った動画としては十分なダイナミックレンジの広さです。

1インチセンサーの恩恵で階調表現は豊かです。ただし、あくまでも「このサイズのカメラとしては」という条件付きであり、フルサイズセンサーを積んだモデルなどと比べてはいけません

こちらはカラーやコントラストを補正した映像のスクリーンショット。データの素性がいいので、少しいじるだけで見栄えがします

マイクはノイズに強い

マイクの性能も優秀で「ザーザー」と川が流れるノイズがうるさい場所で話しても、きちんと声が聞き取れるレベルで録音されていました。風切り音が出やすい点はあるものの、「Insta 360 ONE X」よりいい音が撮れます

手ブレ補正は弱い

アウトドアでの撮影でも手ブレが気になっていましたが、さすがに凸凹の場所を歩きながら撮影した動画が手ブレするというのは仕方ありません。

そこで、場所を屋内に移して再度テストを行いました。結果、平らな場所を歩きながらの撮影でも手ブレが明確に感じられる映像となっていました。手ブレ補正に関しては、ファームウェアのアップデートで改善される可能性もありますが、現状は明らかな弱点でしょう。実売価格が、半値以下の「Insta 360 ONE X」と比べて、手ブレ補正性能が明らかに劣っているというのは残念です。

※記事作成時点のファームウェアバージョンは1.03.5

歩行しながら、手持ち(延長スティックなし)の撮影では、かなり手ブレが気になる結果に

歩行しながら、手持ち(延長スティックなし)の撮影では、かなり手ブレが気になる結果に

エスカレーターで撮影した映像は滑らか。このことから、「映像そのものの動きに弱い」というよりは「歩行時の振動に弱い」ことがわかります

夜景動画を撮影

同クラスの360°カメラとしては最大となる1インチセンサーの実力を試すべく、夜景撮影にも挑戦してみました。

その結果ですが、評価がなかなか難しいところです……。

当たり前ですが、非360°のカメラ全般(10万円前後)も含めて比べれば「THETA Z1」の夜景動画の画質は決してすぐれたモノではありません。いっぽうで、手軽に携行できる360°カメラとしては優秀です。

発色は鮮やかですが、どうしてもシャドーはノイズが目立ちます

発色は鮮やかですが、どうしてもシャドーはノイズが目立ちます

暗いところは360°カメラが共通して苦手とする場所であり、それは「THETA Z1」にも当てはまります。しかし、筆者の個人的な印象としては「思い出と、その場の雰囲気を記録するには十分」だと感じました

暗所ノイズはある意味“仕方ない”問題ではあるものの、それとは別に気になったのはカメラを動かすと映像が大きく乱れる現象です。明るい場所での撮影ではこれほどのノイズは見られませんでしたが、暗所で撮影した映像の場合はちょっとした揺れや歩行の影響により「ブルンッ」と揺れるようなノイズが発生することがあります。

乱れが生じているカット。これが頻発すると、見ていてツラい結果に……

乱れが生じているカット。これが頻発すると、見ていてツラい結果に……

今後、カメラ本体のファームウェアアップデートにより、手ブレ補正などが改善されることを期待します。特に、暗い場所で歩きながら動画を撮影するとノイズ出る問題はなんとかならないかなぁ、と思うところ。

特に乱れのない状態。高感度撮影した動画特有の濁りやノイズはありますが、実用レベルではあります

特に乱れのない状態。高感度撮影した動画特有の濁りやノイズはありますが、実用レベルではあります

動画の編集環境

今回「THETA Z1」で撮影した動画を「MacBook Pro (15-inch, 2016)」で編集しました。

少し前に発売されたノートPCではありますが、コマ落ちなどもなくスムーズに作業ができました

少し前に発売されたノートPCではありますが、コマ落ちなどもなくスムーズに作業ができました

編集に使用したソフトウェアはアップル「Final Cut Pro X」です。

テロップを入れている最中にソフトが1度“落ちる”ことがあったものの、プレビューなどがカクカクとすることはなく、十分に実用的なレベルでした。

作業を行う前は「ノートPCだとマシンスペックが足りるか心配……」と思っていましたが、結果としては、問題なく編集ができました。「THETA Z1」の360°映像データは「モンスタースペックのPCでないと編集できない」というレベルではありませんでした。

「THETA Z1」で撮影した写真

「THETA Z1」で撮影した写真は、「デジタル一眼カメラとは別物という視点で見る」という前提は必要ですが、とてもキレイに写っています。6720×3360ピクセルで取り込まれた上下左右360°の世界にはリアリティがあり、リコーが「写場」と表現するコンセプトが実現された仕上がりになっている、と感じました。

360°写真の編集は、撮影用のiPhone/Androidアプリ「THETA」とは別の、編集用アプリ「THETA +」で加工が可能。明るさやカラー、シャープネスといった基本的な補正からフィルター追加などができます。

そこそこ大胆に加工をしても大きく破綻せず補正ができました。このあたりは元データのよさが強みになっています

編集用アプリ「THETA +」では、写真を回しながら表示する「アニメーション」を付加することも可能です

編集用アプリ「THETA +」では、写真を回しながら表示する「アニメーション」を付加することも可能です

また「THETA Z1」はRAW形式での写真撮影にも対応しており、プラグインをインストールしたAdobe「Lightroom Classic CC」による編集にも対応しています。

「THETA Z1」を実際使ってみた感想

長年360°カメラを販売し続けてきたリコーの製品だけあって「THETA Z1」のハードウェアの使い勝手は洗練されています。

シャッターボタン以外は本体側面にまとめらており、電源のオン/オフやWi-Fi接続、モード切り替えなどは側面のボタンで行います。あえてハードウェアボタンにすることで必要な操作が1発でできる点や、クリック感のあるボタンは、フィールドですばやく操作したい時に便利。アプリとの接続もスムーズでストレスなく撮影が可能でした。

今回のテストでは、かばんの中で勝手に電源がオンになってしまうことはありませんでした

今回のテストでは、かばんの中で勝手に電源がオンになってしまうことはありませんでした

スマートフォンへのファイル転送はWi-Fiで行います。これがなかなかのクセモノで、一気にバッテリーを消費します。数分の動画撮影であってもデータがGB単位になるため転送にはそこそこ時間がかかり、その間にみるみる電池残量が減るのはストレスでした。

本体全面にあるディスプレイでは、カメラのモードやWi-Fiの接続状況がわかるというメリットがあり基本的に便利なのですが、データ転送時ばかりは電池の減りが可視化されてツラい気持ちになりました

PCなどにデータを送る場合は、カメラ本体にあるUSB-Type Cポートで有線接続すると充電を行いながら、高速でデータが転送できるので、こちらを使ったほうがよいでしょう。

なお、ストレージは内蔵の19GBのみでmicro SD カードなどによる拡張はできません。動画撮影を行った場合は約40分の記録(4K,H.264)が可能なので、旅行やイベントの思い出を残すとためには十分かもしれませんが、長丁場の撮影では不足しそうです。長時間の撮影を行う場合は、モバイルバッテリーを持っていくのがいいでしょう。

「THETA Z1」は1インチセンサーの強みを生かすことで、動画でも写真でも、コンパクトサイズの360°カメラとしてはすぐれた性能を発揮してくれます。

写真撮影においてはダイナミックレンジの広さやRAW形式による柔軟な編集が行える点が強みです。動画撮影においては、ブレ補正の弱さ、特に暗所で振動が加わった際に独特のノイズが出るのが難点ですが、静止した状態での撮影では問題はありません。「THETA Z1」で動画と写真を両方撮ってみた結果、このカメラは「“写真最優先”のユーザー向けに作られた」モデルであるという感想を強く抱きました。

ただし、忘れてはならないのが「THETA Z1」は126,900円(税込)という高級な360°カメラであるという点です。

競合の製品では、センサーサイズこそ小さいものの5.7Kで360°動画が撮れる「Insta 360 ONE X(32GB microSDカード付き)」が56,330円(税込※)、5.2Kでの撮影ができ圧倒的なブレ補正能力を持つGoPro「Fusion(32GB microSDカード×2枚付き)」が76,000円(税込※)で購入できます。

※上記は記事作成時点のメーカー直販価格です。

「THETA Z1」の価格は、「Insta 360 ONE X」の約2.3倍、「Fusion」の約1.7倍というクラス最高値になっていますが、実際に使用した感想として、それを正当化するほどにすぐれた映像が撮影できたとは思えませんでした。

非常にざっくりとした表現をするなら「倍の値段を払って、1.2倍くらいキレイな動画を撮影する」という結果になってしまうため、コストパフォーマンスの悪さを感じてしまったというわけです。動画性能に大きな期待をすると、肩すかしをくらうかもしれません。

ただし、360°写真については多くの人が満足できる仕上がりです。また、RAW形式で保存できるので、撮影後にじっくり編集したいという人にはいい選択になるでしょう。動画よりも写真をメインに撮影するなら、1度チェックしてみてはいかがでしょうか。

リコー「THETA Z1」の基本スペック

本体サイズ:横48×縦132.5×厚さ29.7mm
公称重量:約182g
センサーサイズ:1インチ
マイク:4チャンネル
動画:最大4K(3840×1920/29.97fps)
写真:6720×3360
内蔵ストレージ:約19GB(拡張不可、SDカードなど非対応)
公称バッテリー駆動時間:写真約300枚、動画約60分

リコー「THETA Z1」と360°カメラ関連記事

なお、新製品発表会の様子やファーストインプレッションについての記事は以下のリンク先で公開済みです。動画以外の性能をもっと知りたい人は、以下の記事をあわせてお読みいだければ、よりおわかりいただけると思います。

・リコー新型360°カメラ「THETA Z1」誕生、1.0型センサー搭載で画質がアップ!

また、リコー以外の360°カメラのレビュー記事もありますので、ぜひ、チェックしてみてください。

・1台2役で5万円台!180°VR&360動画を撮影できる変幻自在のカメラ「Insta360 EVO」最速レビュー
・360°カメラ「Insta360 ONE X」で手軽にマトリックス風動画を撮影!

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Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週間アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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