レビュー
発売から約3か月。価格も下がってそろそろ買い時?

キヤノン「EOS RP」レビュー、魅力的な価格のフルサイズミラーレスの気になるポイント

フルサイズ機ながらボディ単体で約13万円(価格.com最安価格、2019年6月11日時点)という手ごろな価格が魅力のキヤノン「EOS RP」。発売から約3か月が経ち、価格も落ち着いてきている。そこで改めて、カメラマンの吉村永氏にレビューしてもらった。

約485gの小型・軽量ボディを実現したEOS RP(装着しているレンズはレンズキットの「RF35 MACRO IS STM」)

約485gの小型・軽量ボディを実現したEOS RP(装着しているレンズはレンズキットの「RF35 MACRO IS STM」)

フルサイズ機としては安くて軽い

EOS RPは35mm判フルサイズセンサーを搭載するレンズ交換式ミラーレスカメラ。昨秋発売された「EOS R」の下位機種にあたるモデルだ。有効2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーと最新の映像エンジン「DiGIC 8」を搭載している。

このモデルの一番の特徴は、なんといってもその価格。今年3月の発売日の量販店価格でも税込17万円前後。価格.comの最安価格では約13万円と、旧モデルを除くとフルサイズ機の中ではダントツの安さが目を引く。

有効2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載

有効2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載

また、小型・軽量ボディも特徴で本体重量は約440gと、同社のデジタル一眼レフカメラの入門機でベストセラーの「EOS Kiss X9i」の約485gよりも大幅に軽量化されている。小型で安価なフルサイズ機として定評のあるソニー「α7III」と比べてもボディ単体の実売価格は6万円ほど安く、重量は125gも軽いのだからその徹底ぶりがわかるだろう。それでいて、本体は防塵・防滴を考えた設計になっているので天気が少し心配な梅雨時期も安心だ。

本体は、レンズの真上にファインダーを装備した一眼レフスタイルなのだが、ファインダーの高さを極力抑えたデザインとなっている。バッグへの収納性もよく、普段使いのバッグに入れて連れ出す機会も多くなりそうだ。グリップは深めに取られており、手にするとEOSシリーズ共通の安心感を得られる点には感心した。

ただし、ボディの高さを抑えた設計なので右手小指が余ってしまうように感じる人もいるだろう。そういった人向けには、別売りでボディ底面に取り付けることで高さ方向を数cmだけ長くする「エクステンショングリップEG-E1」が用意されている。純正のグリップアクセサリーでカラーバリエーションが用意されるのは世界初で、ブラック/レッド/ブルーの3色の展開。このグリップはバッテリーやボタンを追加するものではなく、純粋にボディの高さを増すことによってホールディングをよくする目的のもの。取り付けてもあまり重量が増えず、バッテリーやSDメモリーカードの交換、三脚への取り付けも可能なので気軽に使える。

ボディ下部に装着する専用の「エクステンショングリップ EG-E1」。ブラック、レッド、ブルーの3色のカラーバリエーションを選べる(写真はレッド)。キヤノンオンラインストアでの価格は9,500円(税別、2019年6月11日時点)

ファインダーとシャッターをチェック

ファインダーだが、約236万ドットの有機ELとスペックとしては低価格クラスミラーレスの標準的なものだが、画面の部分によって明るさ、色むらを感じた。また、ファインダー光学系の内面反射も多めで、夜景などの撮影時には内面反射によるゴーストが発生することも多かったが、作画や露出判断が不自由になるような印象はなかった。

それよりも特徴的なのがシャッターを押した時のファインダー像で、多くのミラーレスカメラがシャッターを押した瞬間、ファインダーがブラックアウトするのに対しEOS RPはブラックアウトフリー。シャッター音はするが、視界はずっとライブビューが見えているのだ。一眼レフもミラーレスも、基本的に「撮影した瞬間」はブラックアウトして見えないのがカメラの基本。本モデルはブラックアウトがないので撮影の瞬間が見えているのかと期待したが、じっくりと使ってみると、シャッター直前の映像が数十分の一秒だけ固定して表示され、撮影した瞬間は見られないことがわかった。動きものを撮影すると、ファインダー像がシャッターと同時に一瞬だけ静止するのだが、その直後が写っていると考えればいいだろう。

上位機種のEOS Rでは電源オフでメカニカルシャッターが閉まり、レンズ交換時の埃混入などを防ぐ仕様だったがEOS RPではこれが省略され、レンズ交換時もセンサーが見える他社と同じ方式になった。先幕シャッターは完全に電子化され、後幕はメカシャッターというシンプルな構成にしたためだろうと考えられる。また、完全電子シャッターによるサイレント撮影も行えるが、これはスペシャルシーンモードの中のサイレントモードという位置付けなので、露出モードはPに固定される。

コントロールダイヤルは便利だが……

操作系はシンプルな入門機といった印象。上級機のEOS Rで象徴的だった撮影モードの電子ダイヤルは入門機で一般的なメカニカルダイヤルに改められ、横スライド&プッシュの「マルチファンクションバー」も省略されている。デジタル一眼レフカメラ「EOS」の象徴とも言えた、背面の大型ホイールもEOS Rに引き続き採用されず、十字キーの装備となっている。絞りとシャッター速度、露出補正などは前後の電子ダイヤルで操作できるという基本思想だ。

上部に撮影モードダイヤルを搭載

上部に撮影モードダイヤルを搭載

背面に十字キー

背面に十字キー

3.0型・104万ドットのバリアングル液晶モニターを搭載

3.0型・104万ドットのバリアングル液晶モニターを搭載。前方向約180°、後ろ方向約90°、水平方向約175°動く

そしてEOS Rシリーズの特徴とも言える操作系が、レンズ先端部に装備された「コントロールダイヤル」。撮影時に使う、第3のダイヤルとして用意されたものだ。さまざまな機能をここに割り当てることができるのだが、自分は頻繁に変える「ISO感度」を設定した。こうすると露出の三要素である「絞り/シャッター速度/ISO感度」のすべてがダイレクトにダイヤル操作だけで変更できるので快適。

RFレンズ(写真はRF35 MACRO IS STM)には、ISO感度や露出補正、絞りやシャッタースピードを割り当てられるコントロールリングが搭載される

だが、一眼レフのEOSのレンズ資産を持っている人にとっては少々の問題が残っていることも確か。レンズマウントアダプターとして「マウントアダプターEF-EOS R」を使うと、コントロールリングがないために一気に不便に感じるのだ。EOS RPには個別のISO感度ボタンはないので、液晶画面に設定項目すべてを一覧表示する「クイック表示画面」にて設定するか、一部のキーに「押しながらダイヤル操作でISO感度変更」を設定するしかない。前者はわかりやすい表示だが設定の迅速性に欠け、後者はボタンを押してから操作することはできず、押しながらのダイヤル操作なのでカメラのホールディング状態によっては操作しづらい。そして多くの場面でなんの機能も割り振られていない十字キーにはISO感度を割り当てることが不可能。初級モデルに複雑なカスタマイズは不要とも考えられるが、あまりにも限定された使い勝手ではもったいない気がしてしまう。

この一眼レフ用EFレンズ使用時の問題は、アダプターを「コントロールリングマウントアダプターEF-EOS R」にすれば解決しそうに思える。だが、EOS R用RFレンズはすべてコントロールリングがレンズ先端に装備されているのに対し、このアダプター使用時には当然、リングは根元に装備される形になる。素早く、感覚的に操作できることを売りにした装備だが実使用時にはレンズを交換するごとにリングの位置が変わるのでストレスを感じた。

「コントロールリングマウントアダプターEF-EOS R」を介してデジタル一眼レフ用レンズ「EF24-70mm F2.8L USM II」を装着。コントロールリングがレンズ根元に位置してしまう

AFや画質は?

世界最速0.05秒とキヤノンが謳うAF(オートフォーカス)は、レンズにより条件が変わるので、今回試したRF35mm F1.8 IS USMでは特別に速くはないものの、ストレスを感じさせないレベル。ピント合焦の精度は十分に高かった。また、うれしいのは従来のEFレンズをアダプターで装着した時にもそれほど速度が落ちない点。前述のコントロールリングの問題以外は、RFレンズとEFレンズを混在させて使ってもそれほど違和感を覚えないで済むだろう。

人物の顔や瞳を自動的に認識して合わせる瞳AF機能も搭載し、サーボAFにも対応しているので、動いている人物の瞳に常にピントを合わせながらの撮影も可能だ。縦位置バストアップぐらいの大きさで人物をとらえている時にはかなりよく追従してくれるのだが、全身サイズくらいに小さくとらえた場合は瞳の認識が難しかった。

瞳AFを使わない場合のAFポイントは、画面の縦約88%、横100%の領域で最大4779ポジションと広範囲で自由度が高い。このポジションは十字キーで選択できるのだが、さすがにこの多さでは細かく選ぶのには時間がかかってしまう。そこでファインダー撮影時には背面液晶部分を指でなぞるとAFポイントが連続的に動かせる「タッチ&ドラッグAF」機能を装備。“左指で操作したい”、“大きな液晶画面全体をなぞるのは面倒”といったユーザーの操作スタイルに合わせて画面を4分割し、左上エリアでの操作、右上エリアでの操作といったぐあいに操作エリアを指定できるのが便利だ。

画質はフルサイズらしい滑らかな階調が感じられるもので、発色は鮮やかだが、色が濃すぎたりはせずに抜けのいい印象。オートホワイトバランスでも発色が寒色に偏りすぎないところも好印象だ。高感度でのノイズも少ないが、ISO100といった低感度では、上位機種のEOS Rと比べてわずかに暗部にカラーノイズが残るが、多くのシーンで気にならないレベルだ。

入出力端子として、USBはType-Cを採用。バッテリーの充電も可能だが、カメラを動作させながらの給電はできない。ほかにHDMIミニ出力や、マイク、ヘッドホン端子も装備しているので本格的な動画撮影でも便利に使えそうだ。

バッテリーは薄型の「LP-E17」を採用。公称で約250枚の撮影が可能と少なめだ。本体底面のバッテリー収納ドア内に、SDメモリーカードスロットもシングルで併設されている。

USB Type-C、HDMIミニ出力、マイク入力、ヘッドホン出力、リモコン端子を備える

USB Type-C、HDMIミニ出力、マイク入力、ヘッドホン出力、リモコン端子を備える

バッテリーはLP-E17。シングルードスロットで記録メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-II、UHS-Iカード対応)

まとめ

一番気になってしまったのはレンズのラインアップ。まだ若いシステムなので本数が少ないのは理解できるのだが、そのほとんどが超高画質を狙った高価で大きなレンズで、この軽快な”カジュアルフルサイズ“に似合うレンズが乏しいのだ。特に、各社ともに揃えている「標準ズーム」と呼ばれる28〜80mm前後の使いやすい焦点域の安価なレンズが用意されていないのが気になる。「RF24-105mm F4L IS USM」という高画質タイプのレンズが標準ズームとして用意されているが、これは価格.com最安価格で113,000円前後と高価で、重量も700gとせっかくのEOS RPの軽快さを生かせるとは言い難い。

キヤノンとしてはRF35mm F1.8 IS STMを標準レンズとして推奨しているのだが、初心者も大きなターゲットとして考えているとみられるEOS RPのキャラクター的には単焦点広角レンズだけで撮影をしろというのは不親切に感じる。できることなら明るさと外装の質感をちょっと妥協してでも、ボディとセットで実売20万円以下くらいで揃えられる入門用標準ズームレンズを用意してほしい。

朝焼けの時刻に公園でのスナップ。暗めの露出でも、暗部の階調がとても豊かで影の部分のディテールがよく再現されている
RF28-70mm F2L USM使用、ISO100、F5.6、1/320秒、ホワイトバランス:太陽光、JPEG
撮影写真(6240×4160、12.8MB)

逆光状態で池の鴨を撮影。揺れる水面の質感描写に満足。絞り開放状態での撮影だが、AFは逆光状態でもスムーズに動作した
RF28-70mm F2L USM使用、ISO100、F2、1/1250秒、ホワイトバランス:太陽光、JPEG
撮影写真(6240×4160、6.05MB)

フルサイズ用で驚きのF2.0を実現したレンズで人物を撮影。肌の質感の滑らかさ、髪の毛の柔らかな再現、コートの生地の細かな折り目の再現など、バランスのよさが際立つ。モデル:山口奈々美
RF28-70mm F2L USM使用、ISO125、F2、1/200秒、ホワイトバランス:5500K、Adobe Photoshop Lightroom Classic 8.3.1で現像
撮影写真(6240×4160、11.3MB)

カフェ店内でのひとコマ。キットレンズの35mmF1.8は、0.5倍までのマクロ撮影が可能。広角レンズだが、近接撮影と明るいF値と併せてボケを生かした表現も楽しみやすい
RF35mm F1.8 MACRO IS STM使用、ISO320、F1.8、1/80秒、ホワイトバランス:オート、JPEG
撮影写真(4160×6240、4.63MB)

晴天の日の撮影。キットの35mmレンズは絞り込んでシャープな表現も楽しみやすい。もちろん、カメラの解像力も十分だ
RF35mm F1.8 MACRO IS STM使用、ISO100、F9、1/320秒、ホワイトバランス:太陽光、JPEG
撮影写真(6240×4160、19.5MB)

曇りの日に、街角の植え込みの花を撮影。35mmキットレンズとの組み合わせは軽快で、街歩き撮影の時にも気軽に連れ出せる。発色のビビッドさにも満足だ
RF35mm F1.8 MACRO IS STM使用、ISO100、F4、1/125秒、ホワイトバランス:オート、JPEG
撮影写真(6240×4160、4.60MB)

吉村 永

吉村 永

テレビ番組制作から雑誌編集を経てフリーランスに。音楽ものVideoClipの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真のカメラマン。カメラグランプリ2018選考委員。最近はドローンも飛ばしてます!

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