交換レンズ図鑑
究極の性能を追求して開発された注目のMFレンズ

フォクトレンダー史上最高の標準レンズ「APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical」実写レビュー

サードパーティー製を含めるとAFレンズ、MFレンズともに豊富なラインアップが揃うソニーEマウント用の標準レンズに、また魅力的な1本が加わった。コシナが2019年12月12日に発売した、フォクトレンダー(Voigtländer)ブランドの「APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical」は、コシナ創業60周年とフォクトレンダー復活20周年を記念し、究極の性能を追求して開発されたMFレンズ。同社が「フォクトレンダー史上最高の標準レンズ」と自信を持つ1本だ。標準レンズが好きな方や、フォクトレンダーファンにとってかなり気になる存在のはず。実写作例を交えて、この注目レンズの描写力をレビューしよう。

フォクトレンダーの新モデルAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical。鏡筒先端部に、往年のAPO-LANTHARに施されていた装飾へのオマージュとしてRGBの差し色が入っている

色収差を徹底的に抑える光学設計と、F2.8でも円形になる絞り形状を採用

コシナは1999年にフォクトレンダーの商標権を獲得し、以降20年にわたり「絞りリングのあるMFの単焦点レンズ」にこだわって高品位な製品を提供し続けてきた。APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalは、その20年にわたる開発で培った技術を集結した、コシナ渾身の標準レンズだ。特に高性能な製品を意味するAPO-LANTHAR(アポランター)の名を持つ1本である。

APO-LANTHARの特徴は、軸上色収差を限りなくゼロに近づけるアポクロマート設計によって抜群の解像力を持つこと。Eマウント用のAPO-LANTHARとしては本レンズより前に、ハーフマクロレンズ「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」と等倍マクロレンズ「MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5」の2本が発売されているが、いずれもすばらしい写りを実現している。本レンズについても高い描写力が期待できるというものだ。

今回、「α7 III」との組み合わせでAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalを試した

今回、「α7 III」との組み合わせでAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalを試した

本レンズのレンズ構成は8群10枚。MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Asphericalに近い構成に見えるが、本レンズでは色収差の抑制に徹底的にこだわり、非球面レンズを除いた前群4枚すべてに異常分散性ガラスを採用。後玉も非球面レンズになっている。フォクトレンダーのレンズとしては珍しく製品ページでMTFを公開していることからも、コシナが性能の高さに自信を持っていることがうかがえる。

ボケ表現にもこだわっており、絞り羽根は12枚で、開放F2だけでなくF2.8でも円形になるという特殊な形状を採用。点光源などを背景にした場合にF2.8でも玉ボケを生かした写真が撮りやすくなっているという。

左はフォーカスリングを無限遠に合わせた状態で、右は最短撮影距離(0.45m)に合わせた状態。総金属製ヘリコイドユニットと高品質グリースの採用により、滑らかな操作感のフォーカシングを実現している。絞りリングをクリックなしに設定できる絞り切り替え機能も備わっている

F2.8に絞った状態。絞りが円形になっていることがわかるはずだ

F2.8に絞った状態。絞りが円形になっていることがわかるはずだ

サイズは62.6(最大径)×61.3(全長)mmで重量は364g。フィルター径は49mm。MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical(画像右)と比べると、ひとまわり以上コンパクトな鏡筒になっている

付属のフードを装着したイメージ

付属のフードを装着したイメージ

実写作例

※以下に掲載する作例は、α7 IIIとAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalを組み合わせてJPEG形式の最高画質(エクストラファイン)で撮影したもの、もしくはRAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(Adobe Photoshopを使用)になります。

α7 III、F4、1/640秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.7MB)

チルト液晶を使ってローポジションで撮影した作例。猫の左目にピントを合わせたが、ピント位置は非常にシャープで、とても抜けのよい描写になった。毛並みの質感もよく再現できている。

α7 III、F8、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、22.0MB)

F8まで絞って画面のやや奥にピントの芯が来るようにした。APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalは解像力が高いこともあってか、特に5m〜20mくらいの被写体距離においてピントが非常にシビアな印象。ある程度距離のある被写体を絞って撮る場合でも、狙ったところにしっかりとピントの芯が来るようにする必要があると感じた。

α7 III、F2、1/8000秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、11.5MB)

太陽を画面に入れて絞り開放で撮影してみた。厳しい条件下だが、画面全体で気になるような色収差は発生していない。ピント位置だけでなくアウトフォーカスの輪郭部でも色付きがほとんど見られないのがすごい。なお、逆光に非常に強いレンズというわけではないようで、さすがに強い光源が画面内にあるとゴーストやフレアが出る。ただ、破綻するような出方はしない印象だ。

α7 III、F5.6、1/1250秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、19.5MB)

斜光下で撮影した1枚。ピント位置でのディテールの再現性が非常に高いうえ、壁の質感もうまく描写できている。青空の色もディープで印象的だ。

α7 III、F2.8、1/2000秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、9.2MB)

開放にしたらごくわずかに口径食が見られたので、F2.8に絞って撮ってみた。滑らかなボケ質で、わずかに見られる玉ボケもキレイに出ている。

α7 III、F2.8、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、10.0MB)

この作例もF2.8で撮ったもの。背景の被写体はススキで、ボケがうるさくなりやすい状況だが、色付きが少なく比較的すっきりとまとまっている。周辺に近いところでもキレイな玉ボケが見られる。

α7 III、F8、1/400秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、12.3MB)

アンダー目に露出を設定してシャッターを切った1枚。カメラ側の画像処理もあると思うが、本レンズはシャドウ側が粘ってくれる印象。開放から高いコントラストが得られるが、簡単に黒潰れすることなく階調をしっかりと出してくれる。

α7 III、F2、1/1600秒、ISO100、ホワイトバランス:オート、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、19.5MB)

中央下部にピントの芯が来るようにして開放で撮ってみた。この作例は元の撮影写真をぜひチェックしてほしい。被写体が少し曲がっているため左上のほうはややアウトフォーカスになっているが、周辺まで非常に高い解像力を発揮するレンズであることが伝わるはずだ。

α7 III、F5.6、1/50秒、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブスタイル:スタンダード、Dレンジオプティマイザー:オート、歪曲収差補正:オート、倍率色収差補正:オート、周辺減光補正:オート、JPEG
撮影写真(6000×4000、15.4MB)

夕暮れの逆光下でフレアを生かして撮影。シャドウが浮いてコントラストが落ちやすい状況だが、抜けのよい描写が得られた。わずかにゴーストが出ているが画像編集で処理できるレベルだ。

α7 III、F4、1/15秒、ISO100、RAW現像(Photoshopでディテールを調整して現像。内蔵のレンズプロファイルを自動適用)
撮影写真(6000×4000、11.2MB)

ピントの追い込みがやや甘かったため、RAW現像にてシャープネスが強めに出るように調整して出力した作例。内蔵のレンズプロファイルが自動的に適用されていることもあって歪曲収差はよく抑えられている。

まとめ 「フォクトレンダー史上最高の標準レンズ」に偽りなし。繊細で緻密な描写を楽しめる

APO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalは、画面中央の軸上色収差だけでなく、周辺の倍率色収差もよく抑えられており、開放から非常にシャープな写りを実現したレンズだ。解像力は開放からほぼピークの性能が出ていると言っていいだろう。輪郭の線が細いのが印象的で、レンズのサイズを考慮するとディテールの再現性は圧倒的だ。

また、コントラストも十分に高いが極端な感じではなく、最新レンズとしては比較的あっさりとした色乗りなのも好印象。描写の傾向はVoigtlander Macro Apo-lanthar 65mm F2 Asphericalに近いイメージで、繊細で緻密な描写を楽しめるレンズだと思う。ボケも開放からF2.8くらいの滑らかな感じがとてもよい。「フォクトレンダー史上最高の標準レンズ」というのも納得で、ここまでの高い描写力を全長61.3mmのコンパクトな鏡筒で実現したのは、コシナの技術力の高さを物語っていると言えよう。周辺光量落ちはボディ側で補正しきらずにあえて残しているようで、開放からF2.8付近だと相応に発生し、F5.6でほぼ改善するようになっている。現代的な写りの最新レンズだが、どこかオールドレンズの味わいを感じるときがあるのも面白いところである。

Eマウント用の標準レンズはサードパーティー製も含めて多くの製品が用意されているが、開放F2でMFレンズというスペックからはカールツァイスの「Loxia 2/50」と比較する方も多いのではないだろうか。Loxia 2/50はプラナータイプをEマウントに最適化したレンズでコントラストの高さが特徴。いっぽうのAPO-LANTHAR 50mm F2 Asphericalは、やはり圧倒的な解像力が魅力となるレンズだ。撮りたいイメージにあわせて自分に合ったほうを選択してもらえればと思う。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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