レビュー
ラグビーの撮影体験会でAFの追従性をテスト

キヤノンの新フラッグシップ「EOS-1D X Mark III」の“進化したAF”を体験した!

2020年2月某日、キヤノンマーケティングジャパン主催による、スポーツカメラマンや報道関係者向けの「EOS-1D X Mark III」撮影体験会が開催された。国内社会人ラグビーの最高峰リーグ「ジャパンラグビートップリーグ」に所属する「キヤノンイーグルス」の練習風景をEOS-1D X Mark IIIで撮影できるという貴重なイベントで、EOS-1D X Mark IIIの進化したAFを体験することができた。実写作例を交えて、どう進化したのかをレポートしよう。

2020年2月14日に発売になったEOS-1D X Mark III。撮影体験会では30名を超える参加者全員にEOS-1D X Mark IIIが貸し出され、キヤノンイーグルスの練習風景を撮影することができた

画質やAF、動画など全方位で大幅に性能が向上

EOS-1D X Mark IIIは、撮像素子や映像エンジン、AFセンサーなどのキーデバイスを一新しており、あらゆる点で大きく性能が向上している。撮影体験会に先立ち、キヤノンマーケティングジャパンの製品担当者からEOS-1D X Mark IIIの特徴について説明があったので、まずはその内容をもとに、EOS-1D X Mark IIIの数多くの進化の中から特に押さえておきたい点を紹介しよう。

EOS-1D X Mark IIIの背面。ボタンレイアウトは従来モデルとほぼ変わらないが、AFスタートボタンはスマートコントローラーという新しい操作部材になった。また、AFメニューボタンやインフォボタン、クイック設定ボタンなどはバックライトを搭載しており、表示パネル照明ボタンを押した際などに点灯するようになった

画質面では、有効約2010万画素のフルサイズCMOSセンサーと、新開発の映像エンジン「DIGIC X」を搭載し、常用で最高ISO102400、拡張で最高ISO819200相当の高感度に対応するようになった。モアレを抑えつつ解像感をキープする新開発の「GDローパスフィルター」も搭載しており、解像力、ダイナミックレンジ、高感度のすべてにおいて従来を上回るレベルを実現しているとのことだ。

さらに、画質調整機能としてエッジ部のコントラストの調整する「明瞭度」を新たに搭載したのもトピック。±4段階で効果を設定してメリハリ感をコントロールできるのが便利で、JPEG撮って出しで納品するケースが多いプロカメラマンにとっては利用頻度の高い機能になりそうだ。

静止画のHDR撮影に対応するのも新しい要素で、ITU-R BT.2100が定義するPQ規格に準拠したHDR画像を10bitのHEIFで記録することが可能。高輝度側・階調優先と組み合わせて利用することでHDRの効果を高められるとのことだ。RAWからHEIF画像を出力したり、HEIF画像をJEPG画像に変換することも可能となっている。

画質調整機能として、±4段階で効果を調整できる明瞭度を新たに搭載。マイナス側に設定するとソフトな印象に、プラス側に設定するとくっきりとした印象の画像となる。なお、ライブビュー映像に明瞭度の効果は反映されない

静止画のHDR撮影にも対応。HDR対応ディスプレイでの表示に印象が近づくように、撮影時ならびに再生時に画像を変換してモニターに表示する機能も備わっている

AFは、デバイスの刷新と最新アルゴリズムの搭載によって被写体追従性がさらに向上し、カメラまかせのAFが進化したことを強調していた。「AIサーボAF」は最新の「AIサーボAF IV」になり、遠距離で測距が安定しにくかった被写体や、遠ざかる被写体に対する測距安定性と追従性が向上。ライブビュー撮影時のサーボAFにも同様の予測演算アルゴリズムを採用し、動体の追従性を高めているという。

AF関連の機能では、ファインダー撮影時のAF・AE処理用に「DIGIC 8」を、ライブビュー撮影では「DIGIC X」に専用回路を搭載することで、人物の顔検知に加えて、頭部検出を実現したのも見逃せない。新しい顔検知/頭部検出は、顔や頭が頻繁に見え隠れするスポーツシーンにおいて、従来の人体検知を超えるすぐれた追従性を発揮するという。

撮影する被写体の動きにあわせてAIサーボAF/サーボAFの特性をカスタマイズできる「AFカスタム設定ガイド機能」も機能を絞るようにチューニングされており、6種類だった設定は4種類になり、調整できる特性も「被写体追従特性」「速度変化に対する追従性」の2種類になった。4種類の設定とは別に、カメラが被写体の動きを解析して追従特性を調整する、いわゆるオート設定のCaseAも追加になっている。なお、従来モデルにあった「測距点乗り移り特性」は、「被写体追尾の詳細設定」としてAFカスタム設定ガイド機能とは別の独立した機能になっている。

AFカスタム設定ガイド機能は、汎用性の高い「Case1」、障害物が入るときや被写体がAFフレームから外れやすい場合に適した「Case2」、急に現れた被写体に素早くピントを合わせたい場合に適した「Case3」、被写体が急加速/急減速する場合に適した「Case4」、被写体の動きにあわせて特性を自動で切り替える「CaseA」を選択できる

新設された被写体追尾の詳細設定では、人物優先の有無と被写体乗り移りの特性(しない、緩やか、する)を選択できる

AF関連の操作性では、従来のAFスタートボタンが、指の動きを光学的に検出して測距点を移動できるスマートコントローラーという新しい操作系に進化した。AFスタートボタンと兼用になっており、測距点を移動しながらボタンを押し込むことでAFが動作するのが特徴。実際に試してみたが、これまで別々の操作で行っていた測距点の選択とピント合わせがシームレスに完結するのがとても便利。動体撮影においてより直感的なAF撮影を可能にする、画期的な操作性だと感じた。

なお、スマートコントローラーで測距点を移動するには、初期設定では、AFフレーム選択ボタンを押して測距点選択状態にする必要があるが、ボタンカスタマイズでスマートコントローラーに「AFフレームダイレクト選択」を割り当てれば、測光中ならびに測光タイマー中に測距点をダイレクトに移動できるようになる。スマートコントローラーをフル活用するなら、この設定は割り当てておきたいところだ。

AFスタートボタン兼用のスマートコントローラーを新たに装備。測距点の選択とAF動作をシームレスに行えるのが便利だ

スマートコントローラーの設定メニュー。機能を無効にできるほか、縦位置のみ有効にすることもできる

スマートコントローラーの設定メニュー。機能を無効にできるほか、縦位置のみ有効にすることもできる

スマートコントローラーを指でスライドした際の移動量の大きさ(敏感度)を設定できる

スマートコントローラーを指でスライドした際の移動量の大きさ(敏感度)を設定できる

このほか、動画撮影も大幅な進化を遂げており、5.5K(5472×2886)/60p 12bitのRAW動画(CRM形式)を本体内部に記録できるようになったほか、フルフレームでの4K DCI(4096×2160)/60p記録や、ほぼフルフレームでの4K UHD(3840×2160)/60p記録など多彩な記録に対応。RAW動画を除いたすべての動画記録で、ポストプロダクション向けのガンマカーブCanon Logも設定できるようになった。

5.5K/60p 12bitのRAW動画など多彩な動画記録に対応

5.5K/60p 12bitのRAW動画など多彩な動画記録に対応

Canon Logにも対応するようになった

Canon Logにも対応するようになった

記録メディアは高速書き込みが可能なCFexpressメモリーカード(Type B)のデュアルスロット仕様。使用可能なカードはCFexpressメモリーカードのみで、同じ形状のXQDには非対応となる

圧倒的なAF性能と連写性能を体験。ライブビュー撮影のAFもハイレベル

続いて、撮影体験会のレポートに移ろう。EOS-1D X Mark IIIを試用してみて感じたAFの進化をまとめる。

撮影体験会は、キヤノンイーグルスの練習場となっている「キヤノン スポーツパーク」(東京都町田市)で行われた。EOS-1D X Mark IIIとあわせて、「EF600mm F4L IS III USM」など高性能な超望遠レンズが多数用意されていて自由に選ぶことができたが、筆者が選択したのは、価格.comで人気の高い望遠ズームレンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」。この組み合わせでどのくらいの性能が出るのかを試してみた。

撮影できたのは、日没直前から日没後までの40分程度と短い時間だったが、光学ファインダー撮影、ライブビュー撮影ともに、驚きの被写体追従性を発揮してくれた。測距エリアを絞ることはほとんどせず、光学ファインダー撮影では自動選択AF、ライブビュー撮影では顔+追尾優先AF、AFカスタム設定ガイド機能もオート設定のCaseAにしてサーボAFを試してみたが、主要被写体を読み取る能力が非常に高く、完全にカメラまかせのAFでも狙った被写体に対して高精度にピントを合わせ続けてくれた。以下に掲載する連写作例はすべてカメラまかせのAFで撮ったものになる。

連写作例1

ウォーミングアップでダッシュする選手をライブビューで連写撮影してみた。焦点距離は400mmで感度はISO12800〜ISO32000。デュアルピクセルCMOS AFの追従性が向上しており、画面の端になってもしっかりとピントが追従してくれた。ここでは連続した45コマをピックアップしているが、実際は前後の動きを含めて120コマほど連写している。そのうち1コマも被写体からピントが外れていなかった。光学ファインダーほどの食いつきではないが、EOS-1D X Mark IIIではライブビュー撮影時のAFの追従性がかなり改善されている。

連写作例2

移動しながらパスを受ける選手を光学ファインダーで連写撮影。連続する27コマをピックアップしている。こちらの作例も焦点距離は400mmで感度はISO25600〜ISO32000となる。前後に被写体があってピントが外れやすい状況だが、カメラまかせのオートAFで狙った選手の一連の動きを収めることができた。頭部検出によって、帽子をかぶった状態にもかかわらず確実に追従できている。

連写作例3

遠くにいる選手がボールを持って走る様子を光学ファインダーで連写撮影したものから連続31コマをピックアップした。焦点距離は400mmで、感度はISO25600〜40000。日没後の薄暗くてAFには厳しい状況だが、手前に被写体が重なっても、一度とらえた選手からピントが外れることなく追従してくれた。

撮影体験会を通して、光学ファインダー撮影のAFも印象に残ったが、ライブビュー撮影のAFもすばらしい仕上がりだった。被写体への食いつきは光学ファインダー撮影のAFほどではないものの、被写体をつかんでからの追従性が大幅に向上している。「デュアルピクセルCMOS AF」としては過去最高の性能を達成していると断言できる。

機能面では、頭部検出の性能が高く、後ろ姿やフードをかぶっている状態でも追尾してくれることに驚いた。顔検知と連携して動作するのがいいところで、頭部検出によって、顔を認識できない状況になっても狙った人物からピントが外れにくく、ピントの抜けが少なくなった印象。頭部そのものを撮るための機能というよりは顔検知をアシストする機能であり、スポーツやポートレートの撮影において、動きの中で一瞬の表情をより確実にとらえるのに威力を発揮すると感じた。

さらに、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは決して開放F値が明るいレンズではないが、特にライブビュー撮影において、日没後の薄暗い状況になってもAF速度・精度が極端に落ちなかったことも報告しておきたい。カメラ側の暗所AF性能が大きく向上している。

AFの被写体追従性とあわせて、連写速度とその持続性の高さにも強烈な印象を持った。光学ファインダー撮影では最高約16コマ/秒、ライブビュー撮影ではメカシャッター/電子シャッターの両方で最高約20コマ/秒を実現。高速なCFexpressカードの採用と、バッファメモリーの容量アップなどが大きいのだろうが、連続撮影可能枚数はRAW+JPEGラージの記録でも1000枚以上と驚異的なスペックで、連写の詰まりを気にすることなく高速連写を続けられるのもすごいところだ。

まとめ 一眼カメラ最高峰のAF性能を実現。今後登場するキヤノンの新製品にも注目

短い時間ではあったがEOS-1D X Mark IIIを試用してみて、期待以上の圧倒的なAF性能を実現していると感じた。光学ファインダー撮影だけでなくライブビュー撮影のAFも進化しており、キヤノンの一眼レフとして最高というのはもちろんのこと、2020年2月時点ではミラーレスも含めた一眼カメラ全体で最高峰のAF性能を持つモデルの1つと言っていいだろう。圧倒的な高速連写と連写持続性によって躊躇なく高速連写を続けられるのもほかを圧倒する部分だ。

もちろんEOS-1D X Mark IIIのすべてのスペックが引き継がれるわけではないが、いくつかの性能・機能は今後登場するキヤノンのハイアマチュア向けミラーレスや一眼レフにも展開されていくことだろう。先日開発が発表された、最高20コマ/秒連写と8K動画撮影を実現する高性能フルサイズミラーレス「EOS R5」など、今後登場するキヤノンの新製品がEOS-1D X Mark IIIの性能をどう引き継いで、どういったカメラになるのかにも注目していきたい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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