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8K動画で新しい映像の世界を楽しもう

キヤノン「EOS R5」で8K/RAW動画の撮影&編集をやってみた

高価な業務用カメラでしか撮影できなかった8K/RAW動画が、キヤノン「EOS R5」の登場により手が届くものになりました。しかし、「これまで通りの撮影方法と同じでよいのだろうか?」「重たいデータを編集できるかな?」といった疑問や不安がわいている人もいるかと思います。そこで、本記事では実際に「EOS R5」で8K動画を撮影し、編集してインターネットへ公開するまでのプロセスを実際に体験してみることにしました。

できるだけ手軽かつシンプルに始める方法を見つけるべくトライしてみたので、これさえ読めばきっと8K動画の入門はバッチリなはずです!

「EOS R5」で8K/RAW動画を撮影してみた

キヤノン「EOS R5」は、約4500万画素フルサイズセンサーを搭載し、RFマウントのレンズに対応するミラーレス一眼カメラの最高峰モデルです。8K動画に関しては、MP4形式で撮影できますが、撮影後により編集の幅が広がるRAW形式で、かつ24/30fpsでも撮影できるのが大きな特徴です。

まずは、実際にキヤノン「EOS R5」で撮影した8K/RAW動画をご覧ください。

高解像度の8Kで何を撮るのか悩むこともあるでしょう。もし「何を撮ろうか迷ってしまう」という場合は風景の撮影から始めてみてはいかがでしょうか。人物撮影などは解像度が上がるとディテールが見えすぎて難しくなることがありますが、風景は基本的に細部が見えれば見えるほど見栄えがします。

8Kで撮影する際の注意点ですが、撮影した動画はデータサイズが大きいため、書き込み速度が速く大容量の記録メディアとストレージを用意するのがベターです。具体的には400MB/秒以上の書き込みに対応する「CFexpress」カードが必須となります。容量は、撮りたい動画の尺によりますが、512GB以上は欲しいところです。

ちなみに、今回実際に撮影してみた結果としては、1カット1分前後で気ままに風景を撮影するだけでも、512GBを半日で使い切ってしまいました。長めに録画したい場合は大容量カードを複数枚用意するか、ノートPCなどにデータを取り込む準備をしておくとよさそうです。

事前に「風景メイン、細かい部分が見えると楽しめそうな場所を撮る」と決めていたので、その通りに撮り進めていきました。

「EOS R5」で撮影する際に注意すべきこととしては、解像度が上がるほどフォーカスの甘さやブレが目立つという点があげられます。また、8K撮影時には「EOS R5」のセンサーシフト式の手ブレ補正は作動しない点にも注意が必要です。

そこで、最初は三脚に固定して撮影しました。しかし、レンズ側の手ブレ補正がかなり優秀なので、これがオンになっていれば(用途にもよりますが)、手持ちでも実用範囲の映像が撮れることに気づきました。これはうれしい誤算です。

8K/RAW動画の編集

撮影が終わったら、データを編集用マシンに取り込みます。カードリーダーを使用することも可能ですが、記事作成時点ではCF Express対応のリーダーは7000円〜とそれなりにいいお値段となっています。

そこで、今回は「EOS R5」に付属するUSB Type-CケーブルをPCに直接差し込み、キヤノン製のソフトウェア「EOS-Utility(無料・Windows/Mac対応)」を使用して撮影したデータを取り込みました。

ここからはいよいよ、動画の編集です。まず、8K/RAWの編集と書き出しに対応するおもなソフトウェアをチェックしてみましょう。

8K動画を編集できるソフトウェア
・Adobe「Premiere Pro」:Windows/Mac対応
・Apple Final Cut Pro X:Mac対応
・Blackmagic Design「DaVinci Resolve 17 Studio」Windows/Mac/Linux対応

8K/RAW動画を編集する際には、モーショングラフィックやエフェクトが8Kでの書き出しに対応していない場合があるので注意が必要です。そういったわずらわしさを避けるため、今回はシンプルに映像をつないで、BGMとあわせるだけにしました。

また、音声に関しては、現地で撮影した音(環境音)を生かすのもアリですが、周囲の状況に左右されやすかったり、風除けをつけたマイクを使わないとノイズが出やすかったりする、といったデメリットがあるので、手軽に撮影を楽しむなら「現場の音はあまり使わない」と決めてしまうのもありでしょう。


ちなみに、BGMは個人や家庭内で楽しむだけ(私的利用)であれば何を使ってもOKですが、インターネット上で公開したりイベントなどで上映したりする場合はライセンス問題がクリアになっている音源を使用しなければなりません。

インターネット配信可能なライセンスでBGMを取得できるサービス
・YouTubeサウンドライブラリ(無料):YouTubeでの公開に使える音源ライブラリ。
・Artlist(有料):YouTubeのみならず、TV、ラジオ、ポッドキャスト、SNSなどあらゆる公開方法、配信形態で使用できる最も汎用性の高い音源のライブラリ。
・Epidemic Sound(有料):チャンネル登録者数などによって価格が変わりYouTubeやSNS用のサウンドライブラリ。月額支払いで使用可能。
・Music Bed(有料):テック企業のCMで見るようなスタイリッシュな音源などが手に入るサービス。

8K/RAW動画編集に使用できるPCの例

「EOS R5」で撮影した8K/RAWはデータサイズが大きいため、非力なマシンでは再生すらままなりません。編集となると、さらにハイスペックなCPUやグラフィックボードを搭載したマシンが必要になります。そこで、今回はASUS JAPANに協力を仰ぎ、以下のデスクトップPCとディスプレイをお借りしました。

協力:ASUS JAPAN

協力:ASUS JAPAN

8K/RAW動画のテスト編集に使用したのは、デスクトップPC「ROG STRIX GL12CX-I7KR2070」とディスプレイ「Pro Art PA32UCX 32インチ」です。PCのおもなスペックは、CPUが第9世代 インテル 「Core i7 9700K」、メモリー16GB、 ストレージはSSD256GB/HDD1TBで、 グラフィックボードがNVIDIA「GeForce RTX 2070」となっています。オリジナルの動画データが500GB超と巨大であったためHDDに格納して編集をしましたが、編集時のコマ落ちや書き出し速度の低下につながるので、できればこれは避けたいところ。できれば1TB以上の内蔵SSDを用意するほうがベターです。

ディスプレイはIPSパネルを採用した32インチの4K(3840×2160ドット)モデルで、応答速度は5ms、コントラスト比は1000000 :1 のHDR対応となっています。残念ながら、8K解像度ではありませんがそれでも十分に高精細さは体感できました。

実際に編集をした感想としては「8K/RAW編集はまだまだハードルが高い」というのが正直なところです。データの読み込みやバックアップにも時間がかかりますし、編集時にもマシンの反応が鈍くなることやコマ落ちが発生することがありました。

なお、「プロキシ編集」という、低解像度データを生成して編集に使用し、書き出しの時だけオリジナルの高解像度データを使う方法であればサクサクとカット編集などが行えるため、時間に余裕がある場合はこちらが便利です。

一般的に映像のエンコードの際にはCPUのパワーが重要になりますが、「Premire Pro」や「DaVichi Resolve」ではNVIDIA「CUDA(GPUを用いた汎用並列コンピューティング)」の恩恵が受けられるため、モーショングラフィックなどを多用しない場合でも予算が許すのであれば強力なGPUを用意したいところです。

書き出しの作業も特に変わったことはせず、ソフトウェアの設定で8Kを選ぶだけでOKです。ただし、書き出しにはそれなりの時間を要します。もちろん、編集用マシンの性能にもよりますが、エンコーディングの際には時間と心にゆとりを持つようにしましょう(笑)。

こうして、めでたくデータの書き出しが終われば、あとはクラウドストレージ経由などで納品をするか、YouTubeなどにアップロードをすれば作業完了です。

キヤノン「EOS R5」で8K/RAW動画の撮影や編集、公開までを行った感想

この記事を書いている2020年後半時点では、8K/RAW動画を撮影、編集、公開するまでのワークフローをつくるにはかなり手間がかかることは間違いありません。

4K映像ですらスマホ1台で編集・公開できてしまう今、8K映像の撮影・編集は「万人向け」と言えないことは確かでしょう。けれども、手間がかかるからこそ編集を終えたデータを見た時の感動はひとしおです。もちろん、映像そのものも高精細かつ低ノイズで、編集のしやすさやなども含めて「現時点のコンシューマー機材で撮れる最高クラス」のデータであることはまちがいありません。

カメラや記録メディア編集用マシン、ソフトウェアなどに投資が必要になりますが、映像にこだわりのある人にとってはその価値があると言えるのではないでしょうか。

ちなみに、8Kを表示(視聴)できるPCディスプレイは約50万円からと高価で、用意するハードルは高めです。

とは言え、4K解像度のディスプレイで試聴しても(完璧な状態ではないものの)8Kで撮影した映像のほうが4K動画よりも高精細です。

将来的にディスプレイが値下がりすることは間違いないので、「いま鮮明に撮りたいものがあるなら、ひとまず8Kで撮影しておく」という選択肢もあり。コンテンツに対する先行投資という意味で作品をつくり貯めておくのもよいでしょう。

「EOS R5」で撮影した8Kの動画データは、編集時には自由度がとても高く明るさや暗さ、色味などを調整できる幅が広くなっています。昨今の海外YouTuberのトレンドでもある「カラーグレーディング」と呼ばれる映画のように1カットずつ色を作り込みたい人にはこれ以上ないほど使い勝手のよい映像が撮影できます。同時にRAW動画の真価を感じるにはそれなりの技術と機材が必要になるため、撮影した後のお楽しみ(作業負担?)も大きいと言えるでしょう。

なお、「めんどくさいことは嫌だ」という場合は、RAWではなく MP4でも保存できるのでご安心ください。この場合、編集時の自由度は下がるもののデータサイズも1/4〜1/5程度にコンパクトになりますし、解像度そのものは変わらないので8Kの恩恵は十分に受けられます。

映像の基本のひとつは「肉眼で見たままを残す」ことだと思いますが、8K/RAW動画はその先にある「現実を超えた映像をつくる」ことができます。実写であっても、レンガの赤を強調したり、夜景のカラフルさを引き立たせるといった意図に応じて調整ができるため、完成した映像はもはや「肉眼でみた世界を超えている」とも言えます。もちろん、風の冷たさや街の匂いは映像には残りませんが、純粋な視覚情報としては「Beyond the real(現実を超えた先)」に到達していると言っても過言ではないでしょう。

Mr.TATE(Masahira TATE)

Mr.TATE(Masahira TATE)

世界50カ国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。

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