レビュー
単眼鏡のようなスタイルで「観る」と「撮る」の両方を気軽に楽しめる

自然観察やスポーツ観戦に役立つ望遠鏡型カメラ、キヤノン「PowerShot ZOOM」レビュー

キヤノン「PowerShot ZOOM」は、「観る」ことを楽しみながら「撮る」こともできる、これまでにはなかったコンセプトで商品化されたデジタルカメラ。片手で楽々とホールドできる小型・軽量ボディに超望遠性能を搭載し、自然観察やスポーツ観戦、旅行など、さまざまなシーンで活用できる便利ツールだ。その使い勝手を詳しくレビューする。

PowerShot ZOOMは、もともとはクラウドファンディングサイトにて限定1000台で販売された商品。昨年2020年12月に一般販売が開始されている

PowerShot ZOOMは、もともとはクラウドファンディングサイトにて限定1000台で販売された商品。昨年2020年12月に一般販売が開始されている

重量約145gの小型・軽量ボディながら最大800mmの超望遠撮影が可能

PowerShot ZOOMは、双眼鏡やデジタルカメラ、ビデオカメラのいいところを組み合わせて、1台で「観る」と「撮る」の両方を気軽に楽しめるように工夫されたデジタルカメラ。液晶モニターを省略した小型・軽量ボディを片手でホールドしながら電子ビューファインダーを覗くという、単眼鏡のようなスタイルで使うカメラとなっている。キヤノンは「望遠鏡型カメラ」と呼んでいるが、一般的なデジタルカメラとは大きく異なる設計だ。

サイズは約33.4(幅)×50.8(高さ)×103.2(奥行)mmで、重量は約145g(メモリーカードを含む)。ポケットに収まるコンパクトなボディで、片手で楽々とホールドすることができる

サイズは約33.4(幅)×50.8(高さ)×103.2(奥行)mmで、重量は約145g(メモリーカードを含む)。ポケットに収まるコンパクトなボディで、片手で楽々とホールドすることができる

スマートフォン(iPhone 8 Plus)と比較すると、ひとまわり以上小さいサイズ感になっている

スマートフォン(iPhone 8 Plus)と比較すると、ひとまわり以上小さいサイズ感になっている

重量約145g(メモリーカードを含む)の小型・軽量設計ながら搭載するレンズの望遠性能は高く、対応する画角は、35mm判換算の焦点距離で100mm/400mm/800mmの3種類。この3つの画角を、専用のズームボタンを押すことで段階的に切り替えられるようになっている。400mmは光学ズームで、800mmはデジタルズームだ。

レンズの絞り値は固定で焦点距離100mm時がF5.6、400mm/800mm時がF6.3。最短撮影距離は100mm時が1m、400mm/800mm時が4.5m。デジタルカメラとして見ると近接にそれほど強いわけではなく、遠くの被写体にピントを合わせて観察・撮影するのに向いた仕様になっている。

光学ズームで焦点距離100mmと400mmの切り替えが可能なレンズを採用。デジタルズームで800mmにすることもできる

光学ズームで焦点距離100mmと400mmの切り替えが可能なレンズを採用。デジタルズームで800mmにすることもできる

使ってみて便利だと感じたのは、中望遠域となる焦点距離100mmの画角が用意されていること。遠くの被写体を観察する場合、視界を少し広く取って被写体の位置を確認したいときがあるが、その際に100mmを選択できるのはとても役立つ。

片手でホールドしながら操作できるシンプルな操作性

PowerShot ZOOMは、片手でホールドしながらでも扱えるように、操作系はシンプルな内容になっている。画角を3段階で切り替えるズームボタン、電源ボタン、メニューボタンを本体の上側に、静止画のシャッターボタンと動画の録画ボタンを下側に搭載し、人差し指と親指でボタンを操作できるように工夫されている。

人差し指で操作するズームボタン、電源ボタン、メニューボタンを本体上側に搭載

人差し指で操作するズームボタン、電源ボタン、メニューボタンを本体上側に搭載

親指で操作するシャッターボタンと録画ボタンを本体下側に搭載する。ファインダーのすぐ下にあるのは視度調整ダイヤルだ

親指で操作するシャッターボタンと録画ボタンを本体下側に搭載する。ファインダーのすぐ下にあるのは視度調整ダイヤルだ

シャッターボタンは一般的なデジタルカメラと同様、2段階の操作になっていて、半押しでオートフォーカスが動作してピントを合わせて、全押しでシャッターが切れる。電子シャッターでシャッター音は鳴らないようになっている。

メニュー画面の操作は、シャッターボタンと録画ボタンで項目を移動し、ズームボタンで決定する仕組みだ。メニューボタンは前の画面に戻る操作となる。また、再生機能を兼ねるボタンはなく、画像や動画の再生は、メニュー内から機能を呼び出すことで可能になる。

メニュー画面はキヤノンの他のデジタルカメラと同じデザイン

メニュー画面はキヤノンの他のデジタルカメラと同じデザイン

画像や動画の再生は、メニュー内から機能を呼び出して行う

画像や動画の再生は、メニュー内から機能を呼び出して行う

使ってみての印象は、ズームとシャッターボタンの操作はすぐに慣れるが、メニューの操作は、どのボタンがどの機能なのかを直感的に把握しにくく、スムーズに設定を変更するのはなかなか難しいというのが正直なところ。具体的には、本体上側にあるズームボタンとメニューボタンを押し間違えて、意図せずに前の画面や撮影画面に戻ってしまうことがあった。ただ、ボタンの数は限られているので、時間はかかるかもしれないが、使い込むことでスムーズに操作できるようになるはずだ。

電子ビューファインダーは0.39型で約236万ドットという、最新のデジタルカメラとしては一般的なスペック。想像していたよりもクリアで歪みが少なく、見やすいファインダーだと感じた。視度調整ダイヤルが付いているので、視力にあわせて、より見やすく調整できるのがいいところ。

約236万ドットの電子ビューファインダー。クリアで歪みが少ない見え方を実現している

約236万ドットの電子ビューファインダー。クリアで歪みが少ない見え方を実現している

撮影機能もシンプル。観ることと撮ることに集中できる

PowerShot ZOOMは、難しい操作をすることなく超望遠の世界を気軽に楽しめるのが特徴。そのため、操作性だけでなく撮影機能もシンプルな仕様になっていて、撮影モードはカメラまかせのオートモードのみとなっている。露出補正には対応しているが、それほど頻繁に使うことを想定しているわけではなく、いったんメニューを呼び出して補正値を設定する必要がある。観ることと撮ることに集中できるように、ファインダーのライブビュー映像に表示される撮影情報も最小限で、シャッタースピードや感度などの値は表示されない。

撮影モードはオートモードのみ。ファインダーのライブビュー映像に細かい撮影情報はなく、バッテリー残量と焦点距離(※画角変更時に一時的に表示)が表示されるようになっている(※画像はファインダー内をスマートフォンで撮影したものです。実際のファインダーの表示品質を示すものではありません)

撮影モードはオートモードのみ。ファインダーのライブビュー映像に細かい撮影情報はなく、バッテリー残量と焦点距離(※画角変更時に一時的に表示)が表示されるようになっている(※画像はファインダー内をスマートフォンで撮影したものです。実際のファインダーの表示品質を示すものではありません)

シャッターボタンを半押しすると記録可能枚数などが表示されるが、シャッタースピードや感度などの情報は表示されない(※画像はファインダー内をスマートフォンで撮影したものです。実際のファインダーの表示品質を示すものではありません)

シャッターボタンを半押しすると記録可能枚数などが表示されるが、シャッタースピードや感度などの情報は表示されない(※画像はファインダー内をスマートフォンで撮影したものです。実際のファインダーの表示品質を示すものではありません)

オートフォーカスは「顔認識+追尾優先AF」と「中央1点AF」の2種類の選択が可能。構図を考えながら使うものではなく、基本的に画面の中央で被写体を捉えることが多くなるため、機能性としてはこの2種類で十分だ。さらに、レンズシフト方式の手ブレ補正機能も搭載していて、手ブレを抑えながら使えるのも特徴。ただ、焦点距離400mm/800mm時にシャッターボタンを押すとさすがに画面がブレてしまうときがある。観察するときは片手でもいいが、しっかりと撮りたいときは両手で持って構えたほうがいいように感じた。

オートフォーカスは「顔認識+追尾優先AF」と「中央1点AF」の2種類を選択できる。被写体に対しておおまかにピントを合わせ続けるコンティニュアスAFにも対応している

オートフォーカスは「顔認識+追尾優先AF」と「中央1点AF」の2種類を選択できる。被写体に対しておおまかにピントを合わせ続けるコンティニュアスAFにも対応している

連続撮影時は最高約10コマ/秒(フォーカスは固定)の高速連写に対応。一般的なデジタルカメラと同様、シャッターボタンを長押しすると連写撮影が行える

連続撮影時は最高約10コマ/秒(フォーカスは固定)の高速連写に対応。一般的なデジタルカメラと同様、シャッターボタンを長押しすると連写撮影が行える

このほか、スマートフォンと無線機能で接続して連携できるのも特徴。スマートフォン用アプリ「Camera Connect」上で、撮影した写真・動画を確認したり、PowerShot ZOOMのライブビュー映像を見ながら撮影することもできる。便利なのは、カメラ本体のファインダーに映像を表示しながら、同時にスマートフォンにも同じ映像を表示できること。複数人で映像をシェアしながら楽しむといった使い方にも活用できると感じた(※同時接続は本体1台に対してスマートフォン1台)。

Camera Connectの画面。撮影した写真・動画を確認したり、ライブビュー映像を表示しながらシャッターボタンを押すことができる。露出補正も可能だ

Camera Connectの画面。撮影した写真・動画を確認したり、ライブビュー映像を表示しながらシャッターボタンを押すことができる。露出補正も可能だ

対応する記録メディアはmicroSD/SDHC/SDXCカード。充電・給電用のUSB Type-C端子も備わっている。バッテリーは内蔵タイプだ

対応する記録メディアはmicroSD/SDHC/SDXCカード。充電・給電用のUSB Type-C端子も備わっている。バッテリーは内蔵タイプだ

観察・記録用として十分な画質

PowerShot ZOOMは、撮像素子に有効約1210万画素の1/3型CMOSセンサー(※1/2.3型CMOSセンサーの中央部分を使用)を採用している。映像エンジンは「DIGIC 8」だ。さすがに焦点距離800mmのデジタルズームだとややシャープさが失われるものの、100mm/400mmでは被写体の細かいところも写せる。若干画素数が少ないものの、画質は一般的なコンパクトデジカメと同等といったところで、観察・記録用としては十分なクオリティではないだろうか。動画は1920×1080/30pのフルハイビジョン記録に対応している。

100mm、F5.6、1/500秒、ISO320撮影写真(4000×3000)

100mm、F5.6、1/500秒、ISO320
撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/500秒、ISO160撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/500秒、ISO160
撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/500秒、ISO1600撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/500秒、ISO1600
撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO320撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO320
撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/250秒、ISO1600撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/250秒、ISO1600
撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO800撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO800
撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/800秒、ISO100撮影写真(4000×3000)

400mm、F6.3、1/800秒、ISO100
撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/1000秒、ISO100撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/1000秒、ISO100
撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO200撮影写真(4000×3000)

800mm、F6.3、1/500秒、ISO200
撮影写真(4000×3000)

まとめ 荷物にならずに持ち運んで、気軽に使える観察・記録ツール

今回、短い時間になるがPowerShot ZOOMを試用してみて、もっとも魅力を感じたのがそのサイズ感だ。ポケットに入る小型・軽量ボディで、荷物にならずに持ち運べるのがいい。ボタンの操作には慣れが必要なものの、使い方もシンプルで、カメラにそれほどなじみがないという人でも難しいことを考えずに使いこなせるはずだ。残念ながら防塵・防滴性能は備わっていないので、厳しいアウトドア環境下でアクティブに使えるわけではないが、自然観察やスポーツ観戦、レジャー、旅行など幅広いシーンで気になる被写体を気軽に観察・記録するのに便利なツールである。

注意したいのは、カメラとして高画質にデータを残すものではなく、あくまでも記録用として使うものだということ。また、暗いところだと電子ビューファインダーの視認性が落ちるなど本来の性能を発揮しないことも覚えておいてほしい。屋内でも体育館でのスポーツ観戦など明るい環境での使用であれば問題ないだろうが、基本的には明るい屋外での使用が前提となっている。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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