交換レンズ図鑑
ボケの描写を変えられる新機能にも注目

等倍を超えるマクロ撮影が可能! キヤノン「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」レビュー

キヤノン「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」は、2021年7月15日に発売になった、「RFマウント」用の中望遠マクロレンズ。等倍を超える最大撮影倍率1.4倍のマクロ撮影を実現したほか、ボケの描写をコントロールできる機能も搭載するなど見どころの多い製品だ。その画質と使い勝手を詳しくレビューしよう。

キヤノンのミラーレスカメラ「EOS Rシステム」の交換レンズ「RFレンズ」として初めて等倍以上の撮影倍率を実現したRF100mm F2.8 L MACRO IS USM(カメラボディは「EOS R5」)

キヤノンのミラーレスカメラ「EOS Rシステム」の交換レンズ「RFレンズ」として初めて等倍以上の撮影倍率を実現したRF100mm F2.8 L MACRO IS USM(カメラボディは「EOS R5」)

最大撮影倍率1.4倍を実現。ボケの描写を変化できる「SAコントロールリング」も搭載

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの主な特徴
・RFマウント用の、焦点距離100mm/絞り開放F2.8の中望遠“L”マクロレンズ
・最大撮影倍率:1.4倍、最短撮影距離:0.26m(26cm)
・ボケの描写を変えられる「SAコントロールリング」
・13群17枚の新規光学設計、「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」と同等の高画質
・絞り羽根枚数:9枚
・角度ブレとシフトブレを同時に補正する「ハイブリッドIS」
・手ブレ補正効果:レンズ単体5.0段分、ボディ内手ブレ補正との協調制御時8.0段分
・「ナノUSM」による高速かつ滑らかなAF
・フォーカス時に全長が変化しないインナーフォーカス方式
・フルタイムMF対応、コントロールリング搭載
・防塵・防滴構造、フッ素コーティング
・フィルター径:67mm
・サイズ:81.5(最大径)×148(全長)mm、重量:約730g
・価格.com最安価格163,350円(2021年8月12日時点)

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの特徴の中で特に注目したいのは、一般的なマクロレンズを超える近接撮影性能を持っていること。マクロレンズは通常、最大撮影倍率が等倍(1.0倍)というのが基本的なスペックになるが、このレンズは、RFマウントのショートバックフォーカスを生かした新しいフローティング方式を採用することで、等倍を超える1.4倍の最大撮影倍率を実現。撮影倍率1.4倍時の最短撮影距離は26cm、ワーキングディスタンスは8.6cmで、より被写体に近づいて迫力のあるマクロ写真を撮ることが可能だ。

さらに、ボケの描写をコントロールできる新機能を搭載するのもユニーク。専用の「SAコントロールリング」を操作することで球面収差(Spherical Aberration)をあえて発生できるようになっていて、フォーカス位置を前後してボケの輪郭をやわらかくしたり、硬くすることが可能。詳細は後程レビューするが、好みにあわせて、より多彩なボケ表現を楽しむことができる。

鏡筒の先端側からコントロールリング、フォーカスリング、SAコントロールリングの3つのリングを搭載。なお、本レンズは別売の「リング式三脚座E(B)」の装着に対応しており、SAコントロールリングの近くに三脚座アダプターを取り付ける溝が用意されている

鏡筒の先端側からコントロールリング、フォーカスリング、SAコントロールリングの3つのリングを搭載。なお、本レンズは別売の「リング式三脚座E(B)」の装着に対応しており、SAコントロールリングの近くに三脚座アダプターを取り付ける溝が用意されている

鏡筒右手側にSAコントロールリングのロックスイッチを搭載

鏡筒右手側にSAコントロールリングのロックスイッチを搭載

左手側に撮影距離範囲の切り替えスイッチ、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチを搭載する

左手側に撮影距離範囲の切り替えスイッチ、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチを搭載する

レンズ構成は新設計の13群17枚で、最前面を凹面で開始することで近接撮影時の球面収差を抑制するなど、諸収差を低減する工夫によって高画質を実現。最大撮影倍率を1.4倍に高めながら、一眼レフ用の中望遠マクロレンズ「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」と同等となる、画面全域で収差の少ない描写を実現しているという。

手ブレ補正機能の性能も高く、レンズ単体で5.0段分の補正効果を実現。ボディ内手ブレ補正機能を搭載する「EOS R5」「EOS R6」と組み合わせた場合は、協調制御により8.0段分という非常に高い補正効果を発揮する。

AFは、フォーカスレンズとフローティングレンズを独立した2つの超音波モーター「ナノUSM」で制御する最新システムを搭載。素早く、かつ滑らかなAFが可能だ。フォーカスブリージング(フォーカシングによる画角変化)も低減しているという。

付属のフード「ET-73C」を装着したイメージ

付属のフード「ET-73C」を装着したイメージ

実写作例&レビュー

※以下に掲載する作例は、EOS R5にRF100mm F2.8 L MACRO IS USMを組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。すべての作例で、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ:する(標準)、周辺光量補正:する、歪曲収差補正:しない、の設定になっています。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO400、F4、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO400、F4、1/320秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO400、F6.3、1/500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、10.6MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO400、F6.3、1/500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、10.6MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/2500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/2500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、9.0MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/8000秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、14.5MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/8000秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、14.5MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/6秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、11.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/6秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、11.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F11、1/6秒、ホワイトバランス:色温度(5000K)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、12.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F11、1/6秒、ホワイトバランス:色温度(5000K)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、12.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:色温度(3500K)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG撮影写真(8192×5464、8.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/125秒、ホワイトバランス:色温度(3500K)、ピクチャースタイル:スタンダード、JPEG
撮影写真(8192×5464、8.8MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/160秒、ホワイトバランス:色温度(3800K)、ピクチャースタイル:スタンダード、SAコントロールリング:-1、JPEG撮影写真(8192×5464、9.4MB)

EOS R5、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、ISO100、F2.8、1/160秒、ホワイトバランス:色温度(3800K)、ピクチャースタイル:スタンダード、SAコントロールリング:-1、JPEG
撮影写真(8192×5464、9.4MB)

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、最新設計のマクロレンズらしく、絞り開放からピント位置はとてもシャープで、ボケの輪郭の色付きも少ない。さすがに、強い光が反射するような状況での絞り開放だと、軸上色収差による色付きがわずかに発生することもあるが、近接から遠景まで安定した高画質を実現している。最短撮影距離付近でも画質が落ちる感じがまったくなく、キレのある描写が得られるのがすごいところだ。

使いやすさの点では、1.4倍の最大撮影倍率を実現しているため、近接撮影時でも距離感に余裕を持てるのがいい。感覚的に「このくらいがピントの合う限界」と判断する距離以上に被写体に近づいても「ピントが合わせられない」ということがなく、近接撮影時のフレーミングにストレスを感じにくくなっている。特に、焦点距離100mm前後の一般的な等倍マクロレンズを使っている人であれば、使いやすさを実感できるはずだ。

さらに、AFがとても速いのもRF100mm F2.8 L MACRO IS USMの特徴として見逃せない。さすがに最短撮影距離から等倍付近での近接撮影時はピント合わせに迷いが生じることがあるものの、マクロレンズとしては「これまでに体感したことがない」と言ってもいいくらいの高速AFだ。一眼レフ用のEF100mm F2.8L マクロ IS USMと合焦速度・合焦率を比べると、大きな差があると感じた。

このほかでは、最大撮影倍率1.4倍というスペックからするとフォーカスブリージングもよく抑えられていて、ある程度距離を取った撮影であれば、ピント合わせによる画角の変化をそれほど気にせずに使うことができる。フォーカスリングは、やや段差のあるフィーリングではあるが、適度なトルク感があって操作しやすい。

参考画像 新旧モデルでの色収差の比較(絞り開放)

同じスペック(焦点距離100mm/絞り開放F2.8)の新旧モデルとなる、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMとEF100mm F2.8L マクロ IS USMを使って、同じ被写体を絞り開放で撮り比べた結果を参考までに紹介しよう。使用したカメラボディはEOS R5で、EF100mm F2.8L マクロ IS USMはマウントアダプター「EF-EOS R」を使ってカメラに装着している。

白枠の部分が以下に掲載する切り出し部。できる限り被写体の大きさがそろうように、レンズによって撮影距離を調整して撮影した。撮影設定はF2.8、ISO100、1/800秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ:する(標準)、周辺光量補正:する、歪曲収差補正:しない

白枠の部分が以下に掲載する切り出し部。できる限り被写体の大きさがそろうように、レンズによって撮影距離を調整して撮影した。撮影設定はF2.8、ISO100、1/800秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、デジタルレンズオプティマイザ:する(標準)、周辺光量補正:する、歪曲収差補正:しない

切り出し画像1(ピント位置)

切り出し画像1(ピント位置)

切り出し画像2

切り出し画像2

切り出し画像3

切り出し画像3

切り出し画像4

切り出し画像4

新旧モデルともに色収差がよく抑えられていて、両モデルともピント位置では高い解像感が得られている。輪郭部の細かいところを見るとRF100mm F2.8 L MACRO IS USMのほうがわずかに色付きが少ない結果になっているが、仕上がりに大きな差を生むほどの違いではなく、新旧モデルで画質はほぼ変わりないと言っていいだろう。RF100mm F2.8 L MACRO IS USMのポイントは、EF100mm F2.8L マクロ IS USMと同等の高画質が最大撮影倍率1.4倍の近接から遠景まで得られることだ。

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの撮影写真(9.1MB)
EF100mm F2.8L マクロ IS USMの撮影写真(9.2MB)

「SAコントロールリング」詳細レポート

最後に、注目の新機能SAコントロールリングの詳細をレポートしよう。

SAコントロールリングは、+側と−側に回転させることでボケの描写(球面収差の発生具合)を調整することができる機能。通常撮影の「0」から、効果が最も大きい「+4」もしくは「−4」までの調整が可能だ。リングを+側/−側に回転させた状態でもAFは動作する。

リングには効果量を測る目安となる目盛が用意されていて、目盛ごとにクリックはなく滑らかに動く。「0」の位置にはクリックがあるので、直感的に通常撮影に戻すことができる

リングには効果量を測る目安となる目盛が用意されていて、目盛ごとにクリックはなく滑らかに動く。「0」の位置にはクリックがあるので、直感的に通常撮影に戻すことができる

効果は、SAコントロールリングを+側に回すと、ピント位置よりも手前のボケの輪郭が柔らかくなり、後方のボケの輪郭が硬くなる。−側に回すと、+側とは逆になり、ピント位置よりも手前のボケの輪郭が硬くなり、後方のボケの輪郭がやわらかくなる。また、+側/−側ともに効果量を高めるとピント位置はシャープさがなくなっていき、ソフトフォーカスのような効果が得られるのも面白いところだ。

SAコントロールリングの効果(+側)

SAコントロールリングの効果(−側)

SAコントロールリングの効果は、撮影距離や絞り値などの条件によって変わってくる。撮影距離は無限遠から近づくほど効果が大きくなり、0.5mのときに最大となる。0.5mよりも撮影距離が短くなると効果は小さくなり、最短撮影距離の0.26mでは効果がなくなる。絞り値については、絞り値が小さいほど効果は大きくなり、絞り開放のときに最大となる。撮影距離にもよるがF5.6あたりまで絞ると効果はかなり小さくなくなる。ざっくりとした印象としては、0.4〜0.7mくらいの、ある程度距離を取った状況で絞り開放付近で使うと、効果がわかりやすいと感じた。

なお、SAコントロールリングは意図的に球面収差を発生させる機能のため、通常の撮影とは使い勝手が異なる部分がある。以下に、細かい点を含めて、使ってみてわかった点をいくつか挙げておく。

・SAコントロールリングの操作によって画角が変化し、+側だと狭く、−側だと広くなる。あわせて露出が変わる場合もある。特に撮影距離が短い場合は、SAコントロールリング操作後に構図や露出の調整が必要になることもある
・+側だと後方、−側だと前方のボケが硬くなるため、「0」の位置でピントを合わせてからSAコントロールリングを回すと、ピントの芯が手前や奥に移動したように見えることがある。気になる場合はMFでピント位置を微調整する必要がある
・SAコントロールリング操作時は、合焦位置への調整方向と調整量を視覚的に表示する「フォーカスガイド」機能のガイド枠が正しく表示されない場合がある。MFでのピント合わせは、拡大表示を活用して感覚的に行ったほうがよい結果が得られる
・効果を高めすぎるとソフトフォーカス効果によってピント位置の精細感が失われる。ピント位置のシャープさをある程度保ったままボケの描写を変えたいのであれば、目盛の±1〜2くらいまでが限度

まとめ 高画質はそのままに、さらに使いやすく進化した“100マクロ”

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、フルサイズミラーレス用のAFレンズとして初となる、等倍を超える1.4倍の最大撮影倍率を実現したマクロレンズ。等倍を超える領域でも高画質に撮れるうえ、高速AFを実現しているのがほかにはない魅力だ。EF100mm F2.8L マクロ IS USMも高画質で完成度の高いレンズだったが、それよりもさらに使いやすくなったという印象。EOS Rシステムのユーザーなら、撮影の幅を広げる意味でも押さえておきたい1本である。

SAコントロールリングについては、あくまでも付加機能であり、難しく考えずに気軽に使ってみるのがいいだろう。マクロだけでなくポートレートやスナップの撮影で活用しても面白い効果が得られるはずだ。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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