交換レンズ図鑑

どっちを選ぶ?ニコンの中望遠レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」

大口径の中望遠レンズは、誇張のない自然な画角と、被写体が浮き上がるような大きなボケが魅力。適度な距離感で使えるのも特徴で、ポートレートやシチュエーションカットの撮影で活躍するレンズだ。今回は、ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」で使用する、純正の大口径・中望遠レンズとして、Zマウント用の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と、Fマウント用(一眼レフ用)の「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」をピックアップ。絞り開放での写りの違いをチェックした。

左がZマウント用の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」で、右がFマウント用の「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」。サイズ(最大径×全長)/重量は、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が約75×99mm/約470gで、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」が約94.5×106mm/約985g。開放F値が小さいこともあって、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが大きくて重い鏡筒になっている

左がZマウント用の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」で、右がFマウント用の「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」。サイズ(最大径×全長)/重量は、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が約75×99mm/約470gで、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」が約94.5×106mm/約985g。開放F値が小さいこともあって、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが大きくて重い鏡筒になっている

ベターな選択は「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」だが、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の写りも捨てがたい

はじめに、2022年1月6日時点での、ニコン純正の大口径・中望遠レンズ(開放F値がF1.8以下)のラインアップを整理し、今回「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」をピックアップした背景を紹介しておこう。

2022年1月6日時点でのニコン純正の大口径・中望遠レンズ
Zマウント用 NIKKOR Z 85mm f/1.8 S 93,900円 2019年9月発売
Fマウント用 AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G 51,940円 2012年2月発売
Fマウント用 AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G 188,442円 2010年9月発売
Fマウント用 AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED 198,800円 2016年8月発売
※価格は2022年1月6日時点での価格.com最安価格

上記の4本の中で、Zシリーズのミラーレス用としてファーストチョイスにしたいのは、やはり、マウントネイティブで装着できる「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」になる。2022年1月6日時点ではZマウント唯一の大口径・中望遠レンズというのもあるが、このレンズは、Zマウントの大口径・ショートフランジバックを生かした光学設計を採用しており、絞り開放から高い解像力を発揮するのが特徴。Zシリーズの高画質を存分に引き出せる1本で、価格.com最安価格で9万円台(2022年1月6日時点の価格.com最安価格を参考)という、比較的手に入れやすい価格も魅力だ。

ただ、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は開放F値がF1.8で、大口径・レンズとしては標準的な明るさになっている。より大口径の純正レンズを求める場合、2022年1月6日時点では、いずれも開放F1.4のスペックを持つ、Fマウント用(一眼レフ用)の「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の2本を選ぶことになる。

この2本の中でも、ユーザーから高く評価されているのが「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」だ。その魅力は何といってもボケの質の高さにある。焦点距離105mmで開放F1.4というスペックから得られるボケの大きさに加えて、「三次元的ハイファイ」というニコン独自の設計思想を採用しており、滑らかなボケ味を実現しているのが魅力。Fマウントレンズの中でも、特にユーザーから高く評価されている銘玉のひとつだ。ただし、価格は価格.com最安価格で約20万円(2022年1月6日時点の価格.com最安価格を参考)で、なかなかの高級レンズとなっている。

Zシリーズで使用するのなら、一般的には、マウントネイティブでより低価格な「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」を選択するのが無難ではある。しかし、Zシリーズに移行した人にとっても、これからという人にとっても、Fマウント史上最高の中望遠レンズと言っても過言ではない「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」がZシリーズでどのぐらい写るのかは気になるところだろう。あわせて、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の約半分の価格で手に入れられる、Zマウント用の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の画質も気になるというもの。実際、価格.com のクチコミ掲示板・ユーザーレビュー上でも、価格帯が異なるにもかかわらず、この2本のレンズのどちらを選ぶかで悩んでいる人をちらほら見かける。「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」を選ぶのがベターなのはわかっているものの、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の写りも捨てがたいという声が多いようだ。

そうした声を踏まえて、今回は「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の2本をピックアップした次第だ。

フルサイズミラーレス「Z 7II」に「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」を装着したイメージ。最新の光学設計を採用した、重量約470gのコンパクトな大口径・中望遠レンズだ

フルサイズミラーレス「Z 7II」に「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」を装着したイメージ。最新の光学設計を採用した、重量約470gのコンパクトな大口径・中望遠レンズだ

「Z 7II」に「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」を装着イメージ。マウントアダプターは新タイプの「FTZ II」を使用している。「FTZ II」は、従来の「FTZ」から三脚座を取り除くことで小型・軽量化を図ったのが特徴だ

「Z 7II」に「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」を装着イメージ。マウントアダプターは新タイプの「FTZ II」を使用している。「FTZ II」は、従来の「FTZ」から三脚座を取り除くことで小型・軽量化を図ったのが特徴だ

次項目からは、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の写りの違いを見ていこう。今回は、すべて絞り開放でのテストとし、ポートレートならびにシチュエーションカットの比較作例をいくつか撮影してみた。どの比較でも、レンズの角度が極力変わらないように配慮しながら、メインの被写体の大きさが揃うように両レンズの撮影距離を調整している。

※次項目以降で掲載する比較作例は、フルサイズミラーレス「Z 7II」に「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」ならびに、新型のマウントアダプター「FTZ II」を装着した「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」を組み合わせて撮影しています。すべてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。

比較1 全身ショット

撮影状況・設定
状況:屋外晴天、日陰
ホワイトバランス:色温度設定(7000K、M0.50)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:弱め
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/320秒、感度ISO100
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/500秒、感度ISO100

光量がそれほど多くない状況だったことと、画像周辺部に近いところに人物の顔を配置したこともあって、両レンズともピント位置はややソフトな描写になった。ただ、絞り開放であることを考慮すると十分な解像感が得られている

光量がそれほど多くない状況だったことと、画像周辺部に近いところに人物の顔を配置したこともあって、両レンズともピント位置はややソフトな描写になった。ただ、絞り開放であることを考慮すると十分な解像感が得られている

両レンズとも輪郭の色付きはよく抑えられている。焦点距離・開放F値のスペックからもわかるように、ボケは「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが大きい

両レンズとも輪郭の色付きはよく抑えられている。焦点距離・開放F値のスペックからもわかるように、ボケは「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが大きい

今回の比較は、メインとなる被写体の大きさをそろえたうえで、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の写りの違いをチェックするものになる。この作例では、人物の全身が同じくらいの大きさになるように両レンズの撮影距離を調整して撮影している。

わかりやすい違いは背景の写り具合で、焦点距離85mmの「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は背景がより広く、状況が伝わりやすい写真になっている。比べると焦点距離105mmの「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は背景がより圧縮されていて、人物の姿を強調するような写真になっている。画角的には、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は周りの状況や雰囲気を残したい場合に使いやすく、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は背景を整理しやすいのがポイントとなる。

描写の傾向については、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、解像力が高いということもあるのだろうが、どちらかというと硬い感じに見える。いっぽうの「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、より大きなボケと合わせて、背景のハイライト部を広く取れていることが大きく、人物がふわっと浮き上がるような感じに仕上がっている。

また、微妙な違いになるが、両レンズで全身のラインが異なっているのも押さえておきたい。この作例では、少しだけ下からあおるようにして撮っているが、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」と比べて角度が付いているのがわかりやすく、わずかではあるが足の先から頭に向かって収縮するような絵になっている。いっぽうの「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、より平面的で実際のシルエットに近い感じだ。どちらがよいというものではないが、焦点距離85mmと105mmの画角による違いと理解してほしい。

なお、今回はどの比較でも、ホワイトバランスの色温度をそろえているが、共通して「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はややマゼンタ寄りのクールな色調で、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」はややグリーン寄りのウォームな色調になったことも付け加えておこう。オートホワイトバランスで試してみても同様の結果になったので、レンズ固有の描写傾向と言えるだろう。

比較2 全身ショット

撮影状況・設定
状況:屋内、半逆光
ホワイトバランス:色温度設定(5000K、M1.50)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:より強め
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/100秒、感度ISO320
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/125秒、感度ISO280

この作例では、「アクティブD-ライティング」を「より強め」に設定してシャドーを持ち上げている。そのため、両レンズともノイズがやや目立ち、ディテールの再現性が落ちているところがあるが、ピント位置は十分なシャープさを保っている

この作例では、「アクティブD-ライティング」を「より強め」に設定してシャドーを持ち上げている。そのため、両レンズともノイズがやや目立ち、ディテールの再現性が落ちているところがあるが、ピント位置は十分なシャープさを保っている

気になるような色収差は両レンズでほぼ見られない。ただ、わずかではあるが、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」では、ピント位置の奥にグリーンの色付きが残っている

気になるような色収差は両レンズでほぼ見られない。ただ、わずかではあるが、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」では、ピント位置の奥にグリーンの色付きが残っている

比較1と同じく、人物の全身が同じくらいの大きさになるように調整して撮影した作例になる。注目してほしいのは、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうが背景をより広く写せているため、奥行き感のある写真に仕上がっていること。全身のシルエットは「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが自然で、被写体が浮き上がる感じもよいのだが、画角が狭い分、どうしても平面的に見える。どちらがよいというものではないが、こういった背景が奥に流れていくようなシーンで全身を撮る場合は、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうがフレーミングしやすく、背景の取り方を工夫できるという印象を受けた。

比較3 ウエストショット

撮影状況・設定
状況:屋外晴天、日陰
ホワイトバランス:色温度設定(8300K、M0.25)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:弱め
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/250秒、感度ISO64
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/400秒、感度ISO64

両レンズともピント位置の解像感は十分。細かいところを見ると、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、大口径レンズの絞り開放とは思えないくらいのシャープな仕上がりになっている

両レンズともピント位置の解像感は十分。細かいところを見ると、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、大口径レンズの絞り開放とは思えないくらいのシャープな仕上がりになっている

この作例では、どちらのレンズでも気になるようなボケの色付きは見られない

この作例では、どちらのレンズでも気になるようなボケの色付きは見られない

この作例はウエストショットになるため、人物の顔を意識して、できる限り同じ大きさになるように調整している。比較1、比較2の全身ショットと比べると撮影距離が短く、大きな背景ボケをともなう写真になっている。

両レンズで背景の処理に違いがあって、画角の狭い「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうが背景の明るい部分が広い。比べると、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は背景がややざわついた感じに見える。背景をシンプルに収めてメインの被写体を強調するのなら、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の焦点距離105mmという画角はとても使いやすい。また、比較1と同様に、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、ボケが大きいというものあるのだろうが、ハイライトのトーンがとてもキレイに出るのが印象的だ。

比較4 バストアップショット

撮影状況・設定
状況:屋内、反逆光
ホワイトバランス:色温度設定(5500K、M0.75)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:弱め
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/125秒、感度ISO100
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/200秒、感度ISO100

ピント位置の解像感は「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が上回る結果になった。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」も十分なレベルではあるが、こうして見比べると少しソフトな感じだ。また、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、ピント位置手前にマゼンタの軸上色収差がわずかに残っている

ピント位置の解像感は「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」が上回る結果になった。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」も十分なレベルではあるが、こうして見比べると少しソフトな感じだ。また、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、ピント位置手前にマゼンタの軸上色収差がわずかに残っている

「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、輝度差のある部分でボケの輪郭に色付きが見られる。「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はよく抑えられている

「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、輝度差のある部分でボケの輪郭に色付きが見られる。「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はよく抑えられている

このバストアップショットでは、比較3のウエストショットと同様、人物の顔の大きさが揃うように調整した。背景まで距離があるとはいえ、両レンズとも、うるさくなりそうな背景をうまく処理してくれている。いずれも、二線ボケのような感じがなく、ボケの質は絞り開放から高いレベルにあると言えよう。

ボケの質とあわせて、この作例で注目してほしいのが人物の顔のラインだ。いずれも中望遠レンズらしい自然なラインになっているが、見比べると、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はわずかに収縮したような感じになっている。これを取るに足らない違いと捉えるか、興味深い違いと捉えるかは判断の分かれるところだが、実際のシルエットに近いのは「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」のほうではないだろうか。

以下に、顔の部分を切り出した比較画像を掲載するので違いをチェックしてほしい。

比較5 クローズアップショット

撮影状況・設定
状況:屋内、反逆光
ホワイトバランス:色温度設定(5200K、M1.00)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:標準
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/200秒、感度ISO100
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/320秒、感度ISO100

比較4のバットアップショットと同様、わずかではあるが「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうがピント位置の解像感は高くなった

比較4のバットアップショットと同様、わずかではあるが「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうがピント位置の解像感は高くなった

この作例では、強い光が当たる部分のボケの描写で違いが出た。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は輪郭に色付きが残っている

この作例では、強い光が当たる部分のボケの描写で違いが出た。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は輪郭に色付きが残っている

撮影距離が短いため調整が難しかったが、このクローズアップショットでも、人物の顔の大きさに注意しながら、できる限り同じ大きさになるようにしている。ほかの比較と同様、背景の写り方やボケの大きさ、輪郭の色付きなどで違いが見て取れるが、この作例も比較4のバストアップショットと同じく、顔のラインに注目してほしい。レンズの位置が微妙に変わっているためわかりにくいかもしれないが、被写体に近付いている分、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は収縮した感じが強くなっている。いっぽうの「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、より平面的で自然なシルエットだ。好みにもよるが、こうしたクローズアップショットでは顔のラインは自然なほうがよく、その点で「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」はポイントが高い。

比較6 シチュエーションカット

撮影状況・設定
状況:屋外晴天、斜光
ホワイトバランス:色温度設定(5000K)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:標準
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/160秒、感度ISO64
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/250秒、感度ISO64

やや強い光が人物に当たる状況だったこともあって、どちらのレンズでも輪郭に色にじみが見られるが、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はよく補正されている

やや強い光が人物に当たる状況だったこともあって、どちらのレンズでも輪郭に色にじみが見られるが、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はよく補正されている

ボケの輪郭に色付きがあると、ディテールがどうしてもざわついた感じになる。この切り出し部分を見ると、わずかな違いではあるものの、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうがすっきりとした描写になっている

ボケの輪郭に色付きがあると、ディテールがどうしてもざわついた感じになる。この切り出し部分を見ると、わずかな違いではあるものの、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のほうがすっきりとした描写になっている

この作例は、スマートフォンを使用しているシーンをイメージした撮影したシチュエーションカットになる。ポートレート作例とは異なり、メインの被写体はスマートフォンになるため、スマートフォンの大きさが両レンズでできる限り同じになるように調整している。

注目はボケの輪郭の描写。「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は色収差が徹底的に抑えられており、どんな状況でも気になるような色付きがほぼ見られないのがすごい。全体的なボケの大きさは「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」に譲るものの、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、Zマウントだからこその高い光学性能を生かした現代的な写りに魅力を感じるレンズだ。

比較7 シチュエーションカット

撮影状況・設定
状況:屋外晴天、日陰
ホワイトバランス:色温度設定(5000K、M0.75)
ピクチャーコントロール:スタンダード
アクティブD-ライティング:標準
ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
NIKKOR Z 85mm f/1.8 S:絞り値F1.8、シャッタースピード1/640秒、感度ISO100
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED:絞り値F1.4、シャッタースピード1/1000秒、感度ISO100

この作例でも、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」では気になるような色にじみは見られない。エッジがすっきりとした描写になっている

この作例でも、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」では気になるような色にじみは見られない。エッジがすっきりとした描写になっている

輝度差のあるところでは、どうしても色にじみが出やすい。スペックを考慮すると「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」もよく抑えられていると言える

輝度差のあるところでは、どうしても色にじみが出やすい。スペックを考慮すると「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」もよく抑えられていると言える

比較6と同様、スマートフォンを使用しているシーンのシチュエーションカット。ホワイトバランスの色温度を5000Kに下げることで、日陰で使用している雰囲気を強調してみた。背景と輝度差のあるシーンなので、ボケの輪郭の色付きや、エッジ部の色にじみなどが出やすい状況だが、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」はそれらが本当によく抑えられている。

まとめ 無難な選択は「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」もニコンファンなら押さえておきたい1本

以上、Zシリーズのカメラにおける、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」の写りの比較をお届けした。

レンズの使い方は人それぞれではあるが、一般的に大口径・中望遠レンズに求められるのは、「良質で大きなボケ」と「高い解像力」だろう。その点、「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」と「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、どちらもボケと解像力を高いレベルを両立しているので安心して選べる。

「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」は、Zマウントに最適化された光学設計による解像力の高さが特徴のレンズだ。さらに、中望遠レンズとしてはオーソドックスな焦点距離85mmの画角なので、より幅広いシーンで活用できるのも特徴。少しアングルを付けた場合にも絵にしやすいなど、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」と比べると構図の自由度が高い。ボケの質も十分なレベルで、大口径・中望遠レンズとしてはこれといった穴のない、完成度の高い1本に仕上がっている。価格は、価格.com最安価格で9万円台(2022年1月6日時点の価格.com最安価格を参考)。とりあえずZシリーズ用として大口径・中望遠レンズを1本持っておきたいのなら、このレンズを選ぶのがやはり無難だ。

いっぽうの「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、大きくて上質なボケ味が最大の特徴で、ハマったときの、このレンズでしか得られないと思わせる描写は絶対的な魅力がある。また、状況によっては画角の狭さが窮屈に感じることがあるものの、背景が整理しやすい点も特徴として挙げておきたい。ただし、Fマウントレンズのため、Zシリーズではマウントアダプター「FTZ II」「FTZ」を介しての使用になり、その分サイズが大きくなることは留意したい。なお、マウントアダプター経由とはいえ、「Z 7II」で「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」を試した限りでは、Zマウントレンズに見劣りしないくらいのAF速度・精度で使うことができたので安心してほしい。瞳AFも素早く動作し、快適なポートレート撮影が行えた。このあたりの機能性の高さは、さすがニコンといったところだ。

「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」を選ぶ場合にネックとなるのは、価格.com最安価格で約20万円(2022年1月6日時点の価格.com最安価格を参考)という価格だ。マウントアダプターを新規で購入するとなると、さらに3万円程度の予算が必要になる。もちろん、この価格に見合う価値のあるレンズなのだが、この価格帯になると、Zマウントレンズの開発ロードマップ(Ver.4.1、〜2023年)に掲載されている「85mm大口径レンズ」の存在が頭をよぎる。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」が気になっているZシリーズユーザーの中には、銘玉と名高いFマウントレンズを選ぶのか、それとも本命のZマウントレンズの登場を待つのかで悩んでいる人も少なからずいるはずだ。

そう悩んでいる人に伝えたいのは、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」は、ほかにはない独特の描写をするすばらしいレンズだということ。Zマウントレンズの開発ロードマップを見ても「105mm大口径レンズ」の存在はなく、Zマウントでこの画角の大口径レンズは、企画されているのかもわからない状況だ。その点を考慮すると、「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」はニコンファンにとって価値のあるレンズであり、Zマウントの「85mm大口径レンズ」とあわせて押さえておきたい1本になる。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間までカメラやレンズのことを考えながら生きています。

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