キヤノンの「RF1200mm F8 L IS USM」「RF800mm F5.6 L IS USM」は、2022年5月下旬に発売になる、「EOS Rシステム」の交換レンズ「RFレンズ」の新製品。発売前にこの2本の実機に触れる機会を得たので、簡単なインプレッションを交えながら特徴をレポートしたい。200万円を超える価格のニッチな製品ではあるが、合理的な設計によって小型・軽量化を実現するなど見どころの多いレンズである。
上が「RF1200mm F8 L IS USM」で、下が「RF800mm F5.6 L IS USM」。2022年3月23日時点での価格.com最安価格は「RF1200mm F8 L IS USM」が2,395,800円、「RF800mm F5.6 L IS USM」が2,039,400円(いずれも税込)
「RFレンズ」は、2018年10月に「EOS Rシステム」が誕生して以降、約3年半で26本(発売前の製品を含む、エクステンダー2本を除く)のレンズが登場している。その中でも特に充実したラインアップになっているのが、焦点距離400mm以上の超望遠域をカバーするレンズだ。まず、2020年7〜8月に、超望遠Lズームレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」と、小型・軽量な超望遠単焦点レンズ「RF800mm F11 IS STM」「RF600mm F11 IS STM」をリリース。その後、超望遠単焦点Lレンズ「RF600mm F4 L IS USM」「RF400mm F2.8 L IS USM」を2021年7月15日に発売している。2021年10月下旬には、普及タイプの超望遠ズームレンズ「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」も追加した。
今回取り上げる「RF1200mm F8 L IS USM」「RF800mm F5.6 L IS USM」の2本は、「RFレンズ」における超望遠レンズのラインアップをさらに拡充する新製品。「RF1200mm F8 L IS USM」は「RF600mm F4 L IS USM」の光学系を、「RF800mm F5.6 L IS USM」は「RF400mm F2.8 L IS USM」の光学系をベースに、本体後部に独自の拡大光学系を配置するという合理的な設計によって、焦点距離1200mm/800mmの超望遠レンズとしては小型・軽量なサイズ感を実現したのが最大の特徴だ。両レンズとも、重量はベースとなるレンズから250gの増加にとどまっており、「RF1200mm F8 L IS USM」は約3340g、「RF800mm F5.6 L IS USM」は約3140gと、いずれも3kg台に抑えられている。
「RF1200mm F8 L IS USM」
約168(最大径)×537(全長)mm/約3340g
「RF800mm F5.6 L IS USM」
約163(最大径)×432(全長)mm/約3140g
「EOS R3」に両レンズを装着してホールドしてみたところ、鏡筒の大きさからすると「意外に軽い」と感じた。手持ちで気軽に撮影できるものではないが、重量級の超望遠レンズとしては軽量で持ち運びやすくなっている。また、「EOS R3」との組み合わせで試した限り、AF速度が実用的だったことも報告しておきたい。「RF1200mm F8 L IS USM」では、「RF600mm F4 L IS USM」に2倍のエクステンダー「EXTENDER RF2x」を装着した場合よりもスピーディーな動作だった。このほか、再生リングの操作でスムーズなピント送りができるパワーフォーカスの動作も、一眼レフ用「EFレンズ」の超望遠レンズと比べてより滑らかに感じた。
レンズフード「ET-160(WIII)」を装着した状態の「RF1200mm F8 L IS USM」。最短撮影距離は4.3m(最大撮影倍率0.29倍)。フィルター径は後部差し込み52mm
こちらはレンズフード「ET-155(WIII)」を装着した状態の「RF800mm F5.6 L IS USM」。最短撮影距離は2.6m(最大撮影倍率0.34倍)。フィルター径は後部差し込み52mm
ちなみに、両レンズのサイズ・重量を「EFレンズ」と比べると、「RF1200mm F8 L IS USM」は「EF1200mm F5.6L USM」(1993年発売)より全長が299mm短く、重量が13160g軽い。開放絞り値が1段分異なるとはいえ、大幅な小型・軽量化を達成していると言えよう。「RF800mm F5.6 L IS USM」は「EF800mm F5.6L IS USM」より全長が29mm短く、重量が1360g軽くなっている。
1993年発売の「EF1200mm F5.6L USM」。重量16500gの超重量級レンズだ。このレンズと比べると「RF1200mm F8 L IS USM」はコンパクトなサイズ感になっている
「RF1200mm F8 L IS USM」「RF800mm F5.6 L IS USM」のレンズ構成は、ともに18群26枚。ベースとなるレンズ「RF600mm F4 L IS USM」「RF400mm F2.8 L IS USM」の13群17枚(蛍石2枚とスーパーUDレンズ1枚を含む)に、5群9枚の拡大光学系を追加した構成だ。
「RF1200mm F8 L IS USM」のレンズ構成図。「RF600mm F4 L IS USM」をベースに拡大光学系を追加している
「RF800mm F5.6 L IS USM」のレンズ構成図。基本設計は「RF1200mm F8 L IS USM」と同様で、「RF400mm F2.8 L IS USM」に拡大光学系を加えた構成になっている
ベースとなる2本のレンズの光学系は、一眼レフ用「EFレンズ」の「EF600mm F4L IS III USM」「EF400mm F2.8L IS III USM」(いずれも2018年12月発売)を踏襲している。「RF1200mm F8 L IS USM」「RF800mm F5.6 L IS USM」では、それに拡大光学系を追加することで焦点距離を伸ばしている。
この説明だと、「最新の光学設計ではないのでEOS Rシステムの本領を発揮しないのでは?」「エクステンダーを追加しているようなものなので画質が落ちるのでは?」と疑問を感じるかもしれないが、キヤノンによると、「EFレンズ」の「EF600mm F4L IS III USM」「EF400mm F2.8L IS III USM」で採用した光学系は「超望遠レンズとしてベスト」と考えるものであり、それは「EOS Rシステム」でも変わらないとのこと。さらに、拡大光学系も各レンズに最適化した設計になっており、ベースとなるレンズに2倍のエクステンダーを装着した場合よりも高画質で、「Lレンズ」だからこそのクオリティが得られるようになっているとのことだ。
「RF1200mm F8 L IS USM」「RF800mm F5.6 L IS USM」は、エクステンダー「EXTENDER RF2x」「EXTENDER RF1.4x」の装着に対応しており、2倍の「EXTENDER RF2x」使用時は、「RF1200mm F8 L IS USM」で最大2400mm、「RF800mm F5.6 L IS USM」で最大1600mmの超望遠撮影が可能になる。エクステンダー装着時は開放絞り値が大きくなり、AFの測距エリアも狭くなるものの、AFや手ブレ補正機能の利用が可能だ。エクステンダーを加えてもレンズの総重量が3kg台をキープするのもポイントである。
「RF1200mm F8 L IS USM」
「EXTENDER RF2x」使用時 焦点距離2400mm/開放絞り値F16
「EXTENDER RF1.4x」使用時 焦点距離1680mm/開放絞り値F11
「RF800mm F5.6 L IS USM」
「EXTENDER RF2x」使用時 焦点距離1600mm/開放絞り値F11
「EXTENDER RF1.4x」使用時 焦点距離1120mm/開放絞り値F8
「RF1200mm F8 L IS USM」にレンズフード「ET-160(WIII)」と「EXTENDER RF2x」を装着
このほか、手ブレ補正機能は「RF1200mm F8 L IS USM」で4段分、「RF800mm F5.6 L IS USM」で4.5段分の補正効果を実現。超望遠の「Lレンズ」らしく、炎天下での長時間の使用でも温度上昇を抑制する遮熱塗料を採用するほか、マウント部やスイッチ部、フォーカスリングなどは防塵・防滴構造となっている。
操作性では、フォーカスプリセットボタン/スイッチやMFスピードスイッチなどを搭載。セキュリティースロットやレンズファンクションボタン(従来のAFストップボタン)なども備わっている
今回の新製品の追加によって、「RFレンズ」の超望遠単焦点Lレンズは1200mm/800mm/600mm/400mmの計4本のラインアップとなった
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。