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ニコンのミラーレス「Zシリーズ」なら他マウントのMFレンズを存分に楽しめる!

ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」は、大口径・ショートフランジバックのZマウントの採用によって、レンズの光学性能が大きく向上し、従来以上に高画質な撮影が可能となっている。加えて、ショートフランジバックゆえに、サードパーティー製のマウントアダプターを介してさまざまなマウントのレンズを装着できるのも見逃せない特徴。本記事では、「Zシリーズ」で他マウントのMFレンズを楽しむための基本的な情報をお伝えしよう。

マウントアダプターを使って他マウントのレンズを装着しやすいのも「Zシリーズ」の特徴のひとつ

マウントアダプターを使って他マウントのレンズを装着しやすいのも「Zシリーズ」の特徴のひとつ

フルサイズミラーレスの中で最もフランジバックが短い「Zマウント」

ミラーレスは、ミラー構造と光学ファインダーを搭載する一眼レフに比べて、フランジバック(レンズのマウント面から撮像面までの距離)が短い設計になっている。

ミラーレス(左)と一眼レフ(右)のフランジバックの比較
ニコン Zマウント16mm  Fマウント46.5mm
キヤノン RFマウント20mm  EFマウント44mm
ソニー Eマウント18mm  Aマウント44.5mm

フランジバックが短いことのメリットは、まず、レンズの光学設計の自由度が上がることがあげられる。具体的には、特に広角レンズの設計がやりやすくなり、より小型で高画質なものを製品化することが可能になる。最近のミラーレス用レンズの性能の高さを見ても、ショートフランジバックが絶大な効果をもたらしていることがわかるはずだ。

また、フランジバックの短いミラーレスは、マウントアダプターを介して他マウントのレンズを装着するのにも有利だ。その点で、数あるミラーレスの中で特に注目したいのが、ニコンの「Zシリーズ」である。Zマウントはフランジバックが16mmとフルサイズミラーレスの中で最も短く、一眼レフ用やレンジファインダー用など幅広いマウントのレンズを装着することが可能。サードパーティーから多くのマウントアダプターが製品化されており、マウントアダプターを使って他マウントのレンズを楽しみたい場合に、最も使いやすいミラーレスとなっている。

さらに、「Zシリーズ」は撮像素子のカバーガラスが薄く、他マウントのレンズを使用する際にも周辺まで高画質に撮ることができる(と言われている)。レンズの描写力を引き出すのにも適した設計になっているのだ。

Zマウントは内径55mmの大口径と16mmのショートフランジバックを採用。フルサイズミラーレスの中では最も口径が大きく、またフランジバックが短いマウントだ

Zマウントは内径55mmの大口径と16mmのショートフランジバックを採用。フルサイズミラーレスの中では最も口径が大きく、またフランジバックが短いマウントだ

シンプルなマウントアダプターは比較的安い。「Zシリーズ」のEVFはMF撮影との相性が抜群

最近のマウントアダプターは高機能化が進んでいて、電子接点を搭載し、レンズ情報を画像のExifに記録したり、AFの動作に対応するものが登場している。そうした高機能なマウントアダプターを使うのも面白いが、今回、「Zシリーズ」との組み合わせで提案したいのが、付加機能を持たないMFレンズ用のシンプルなマウントアダプターだ。

まず、シンプルなマウントアダプターは、高機能なものに比べて価格が安い。高機能なマウントアダプターは3〜5万円程度の価格のものが多いいっぽうで、MFレンズ用のマウントアダプターは、装着するレンズのマウントや、マウントアダプターとしての精度によって変わるものの、安いものなら3,000〜5,000円程度、精度にこだわった高品位なものでも1万円台の価格で手に入れることができる。無限遠がきちんと出るかどうかには注意が必要だが、安いものはかなり安い。

さらに、これが特に重要なのだが、「Zシリーズ」は電子ビューファインダー(EVF)がとても見やすく、MF撮影との相性がよい。周辺まで明るくクリアな見えなので、MFでのピント合わせがやりやすく、ファインダーを覗いてMFでピントを追い込む楽しさを味わうのにもってこいなのだ。

シンプルなマウントアダプターは価格が比較的安い。左は、精度の高さで定評のある宮本製作所の「RAYQUAL LM-NZ」を、右は焦点工房の「SHOTEN CY-NZ」をレンズに装着したイメージになる。いずれもZマウント用のマウントアダプターで、実売価格は「RAYQUAL LM-NZ」が15,000〜16,000円程度、「SHOTEN CY-NZ」が5,000円程度

シンプルなマウントアダプターは価格が比較的安い。左は、精度の高さで定評のある宮本製作所の「RAYQUAL LM-NZ」を、右は焦点工房の「SHOTEN CY-NZ」をレンズに装着したイメージになる。いずれもZマウント用のマウントアダプターで、実売価格は「RAYQUAL LM-NZ」が15,000〜16,000円程度、「SHOTEN CY-NZ」が5,000円程度

「Zシリーズ」で他マウントのレンズを使用するための設定

「Zシリーズ」には、レンズ未装着時のレリーズのオン・オフを切り替える、いわゆる「レンズなしレリーズ」に相当する設定はなく、マウントアダプターを介して他マウントのレンズを装着している状態(カメラがレンズの装着を認識できない状態)でも、基本的にそのままシャッターが切れるようになっている。他の一眼カメラと同様、電子接点のないマウントアダプターだとレンズ情報がカメラに伝わらないため、カメラのモニター画面に絞り値は表示されないものの、M(マニュアル)やA(絞り優先オート)などのモードで撮影が可能。オート感度や露出補正も利用できる。絞りリングのあるMFレンズを使って撮る限りは、画面上で絞り値を確認できないこと以外、これといった問題なくシャッターを切ることが可能だ。

ただし、セットアップメニューの「レンズ情報手動設定」については、使用する前に忘れずに登録しておきたい。この設定は、非CPUレンズを使用する際に、あらかじめレンズ焦点距離と開放絞り値を入力しておくことで、ボディ内手ブレ補正などカメラの一部機能を適切に使えるようにするというもの。Exifにレンズ焦点距離と開放絞り値の値も記録されるようになる。他マウントのレンズに対しても有効なので、忘れずに情報を登録しておいて、使用する際に呼び出すようにしよう。

また、「Zシリーズ」で他マウントのレンズを使用する場合、白飛び・黒潰れを抑えて見た目のコントラストに近い仕上がりにする画質調整機能「アクティブD-ライティング」は、レンズとボディの組み合わせで得られる画質の傾向がつかめるまでは、とりあえずオフにして使うといいだろう。ニコン純正の電子接点搭載レンズに対して有効な「ヴィネットコントロール」や「自動ゆがみ補正」といったレンズ関連の補正機能も念のためオフにしておきたい。

「Zシリーズ」では、セットアップメニューの「レンズ情報手動設定」に計20個のレンズの情報(焦点距離と開放絞り値)を登録しておいて呼び出すことができる。非CPUレンズを使用する場合だけでなく、マウントアダプターを介して他マウントのレンズを使う場合にも忘れずに登録しておきたい

「Zシリーズ」では、セットアップメニューの「レンズ情報手動設定」に計20個のレンズの情報(焦点距離と開放絞り値)を登録しておいて呼び出すことができる。非CPUレンズを使用する場合だけでなく、マウントアダプターを介して他マウントのレンズを使う場合にも忘れずに登録しておきたい

使い始めは「アクティブD-ライティング」をオフにしてレンズの描写を確認しておこう。傾向がわかってきたら設定を見直して画質を追い込むようにしたい

使い始めは「アクティブD-ライティング」をオフにしてレンズの描写を確認しておこう。傾向がわかってきたら設定を見直して画質を追い込むようにしたい

他の一眼カメラでも同じことだが、ピントが合っている部分の輪郭に色を付けて表示するフォーカスピーキング機能を活用すれば、MFでのピント合わせがやりやすくなる。拡大表示時にもフォーカスピーキングは有効だ

他の一眼カメラでも同じことだが、ピントが合っている部分の輪郭に色を付けて表示するフォーカスピーキング機能を活用すれば、MFでのピント合わせがやりやすくなる。拡大表示時にもフォーカスピーキングは有効だ

まずは手持ちのレンズで試してみて、徐々に楽しみ方の幅を広げていこう

他マウントのレンズを「Zシリーズ」で使ってみたいと思ったら、まずは手持ちのレンズを装着するためのマウントアダプターを手に入れて試してみてほしい。それで面白さを知ってから、いろいろなレンズに楽しみ方を広げていくといいだろう。「NIKKOR Zレンズ」にはない画角のレンズを使うのもいいし、オールドレンズでレンズの味を楽しむのもいい。他マウントの最新レンズの描写力を「Zシリーズ」で試してみるのも面白いだろう。楽しみ方は人それぞれだ。

筆者の場合、カールツァイスブランドを中心に、ライカMマウント互換のMFレンズをいくつか所有していることもあって、ライカMマウントレンズをニコンZマウントに変換するマウントアダプターをよく使用している。Mマウント互換のMFレンズは比較的手に入れやすい価格帯で個性的なものが多く、マウントアダプターを介して楽しむのにもってこいだ。

ライカMマウントのレンズをニコンZマウントに変換するマウントアダプター「RAYQUAL LM-NZ」(宮本製作所)を使って、ZMマウントの標準レンズ「Planar T* 2/50 ZM(シルバー)」を「Z 7II」に装着。安定した描写を楽しめる、万能な標準レンズだ

ライカMマウントのレンズをニコンZマウントに変換するマウントアダプター「RAYQUAL LM-NZ」(宮本製作所)を使って、ZMマウントの標準レンズ「Planar T* 2/50 ZM(シルバー)」を「Z 7II」に装着。安定した描写を楽しめる、万能な標準レンズだ

「Planar T* 2/50 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Planar T* 2/50 ZM(マウントアダプター使用)、F5.6、1/160秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、20.4MB)

「Planar T* 2/50 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Planar T* 2/50 ZM(マウントアダプター使用)、F5.6、1/160秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、20.4MB)

「Planar T* 2/50 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Planar T* 2/50 ZM(マウントアダプター使用)、F2、1/320秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、16.8MB)

「Planar T* 2/50 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Planar T* 2/50 ZM(マウントアダプター使用)、F2、1/320秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、16.8MB)

ZMマウントの準広角レンズ「Biogon T*2/35 ZM(シルバー)」を「Z 7II」に装着。対称型のレンズ構成で歪曲収差が少ないのが特徴の1本だ

ZMマウントの準広角レンズ「Biogon T*2/35 ZM(シルバー)」を「Z 7II」に装着。対称型のレンズ構成で歪曲収差が少ないのが特徴の1本だ

「Biogon T*2/35 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Biogon T*2/35 ZM(マウントアダプター使用)、F2、1/800秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、18.4MB)

「Biogon T*2/35 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Biogon T*2/35 ZM(マウントアダプター使用)、F2、1/800秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、18.4MB)

「Biogon T*2/35 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Biogon T*2/35 ZM(マウントアダプター使用)、F2.8、1/50秒、ISO320、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、18.0MB)

「Biogon T*2/35 ZM」を使用して撮影した作例。Z 7II、Biogon T*2/35 ZM(マウントアダプター使用)、F2.8、1/50秒、ISO320、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、18.0MB)

ヤシカ・コンタックスマウントのレンズをニコンZマウントに変換するマウントアダプター「SHOTEN CY-NZ」(焦点工房)を介して、CONTAXブランドの広角レンズ「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を「Z 7II」に装着。30年ほど前に発売されたレンズだが、「Z7 II」との組み合わせでは思った以上によく写る

ヤシカ・コンタックスマウントのレンズをニコンZマウントに変換するマウントアダプター「SHOTEN CY-NZ」(焦点工房)を介して、CONTAXブランドの広角レンズ「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を「Z 7II」に装着。30年ほど前に発売されたレンズだが、「Z7 II」との組み合わせでは思った以上によく写る

「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を使用して撮影した作例。Z 7II、Distagon T* 25mm F2.8 MM J(マウントアダプター使用)、F11、1/500秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、22.7MB)

「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を使用して撮影した作例。Z 7II、Distagon T* 25mm F2.8 MM J(マウントアダプター使用)、F11、1/500秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、22.7MB)

「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を使用して撮影した作例。Z 7II、CONTAX Distagon T* 25mm F2.8 MM J(マウントアダプター使用)、F8、1/50秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、22.6MB)

「Distagon T* 25mm F2.8 MM J」を使用して撮影した作例。Z 7II、CONTAX Distagon T* 25mm F2.8 MM J(マウントアダプター使用)、F8、1/50秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、22.6MB)

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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