ニコンは2022年6月29日、ミラーレスカメラ「Zシリーズ」の新モデルとして、APS-Cサイズ(DXフォーマット)の撮像素子を採用する「Z 30」を発表した。Vlog撮影で使いやすい機能を搭載するなど、これまでの「Zシリーズ」にはなかった特徴を持つエントリーモデルだ。その概要を速報でお伝えしよう。
※2022年6月30日 外観画像を追加しました。
エントリーモデルとして「Zシリーズ」のラインアップに追加された「Z 30」。装着しているレンズは、キットレンズとして用意されている「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」(レンズを繰り出した撮影可能な状態)。35mm判換算で焦点距離24〜75mm相当の画角をカバーする標準ズームレンズだ
ニコンのミラーレス「Zシリーズ」と言えば、ユーザーから高く評価されているクリアな見えの電子ビューファインダー(EVF)や、光軸上で角度を調整できるチルト式の液晶モニターに代表されるように、2018年9月に第1弾モデル「Z 7」をリリースして以降、一貫して静止画撮影での使いやすさを重視したモデルを展開してきた。動画撮影機能もハイレベルではあるが、どちらかと言えば、静止画撮影のほうにウェイトを置くラインアップであった。
今回発表になったDXフォーマットの新モデル「Z 30」は、これまでに登場した「Zシリーズ」の他モデルとは趣の異なるカメラだ。「Zシリーズ」の中では最も初心者向けのモデルで、より動画撮影を重視した小型・軽量ミラーレスとなっている。特にVlog撮影を強く意識した設計を採用しているのがポイントだ。
大きなところでは、まず、これまでの「Zシリーズ」では搭載が当たり前であったEVFを省略している。液晶モニターもチルト式ではなく、動画撮影で使いやすい横開きのバリアングル式だ。
3.0型で約104万ドットのバリアングル液晶モニターを採用。「Zシリーズ」の中では、クラシックな雰囲気のデザインが特徴のDXフォーマット機「Z fc」に続く、バリアングル液晶モデルだ
EVFをなくしたことでボディはよりコンパクトにまとまっており、サイズは約128(幅)×73.5(高さ)×59.5(奥行)mmで、重量は約405g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディキャップを除く)と小型・軽量。同じくDXフォーマットを採用する「Z fc」「Z 50」と比べると、ボディの高さが約20mm抑えられているほか、重量は「Z fc」比で約40g、「Z 50」比で約45g軽くなっている。「Z fc」「Z 50」も軽くて持ち運びやすいのが魅力だが、「Z 30」はそれ以上に携帯性にすぐれるカメラとなっている。
「Zシリーズ」のDXフォーマット機のサイズ・重量
※いずれも重量はバッテリーとメモリーカードを含む、ボディキャップを除く
Z 30
サイズ:約128(幅)×73.5(高さ)×59.5(奥行)mm
重量:約405g
Z fc
サイズ:約134.5(幅)×93.5(高さ)×43.5(奥行)mm
重量:約445g
Z 50
サイズ:約126.5(幅)×93.5(高さ)×60(奥行)mm
重量:約450g
性能面では、撮像素子に、「Z fc」に搭載したAPS-Cサイズ(DXフォーマット)の有効2088万画素CMOSセンサーを採用。画像処理エンジンも「Z fc」と同じ「EXPEED 6」で、基本的なところは同等と見てよいだろう。連写速度も共通で最大約11コマ/秒となっている。AFは、「Z 30」ではAF補助光ランプが省略されているものの、209点のフォーカスポイントを持つ位相差AF/コントラストAFのハイブリッドAFで、「ローライトAF」時の低輝度限界が-4.5EV(通常時-3EV)というスペックは「Z fc」と同じだ。動画撮影時を含めて人物、犬、猫の顔や瞳を検出する「瞳AF/動物AF」にも対応している。
「Z fc」と同じ、APS-Cサイズ(DXフォーマット)の有効2088万画素CMOSセンサーを採用
動画撮影は、クロップなしでの4K UHD 30p/24p記録に対応。フルHD 120pでのスローモーション動画や、タイムラプス動画の撮影も可能だ。Vlog撮影を意識した操作性を取り入れており、バリアングル液晶モニター(3.0型、約104万ドット)は、タッチ操作に対応するほか、モニターを180°回転させると自動的に「自分撮りモード」に切り替わるようになっている。さらに、ボディ上面には、より大きくて視認性の高い動画撮影ボタンと大型のステレオマイクを搭載。マイクは、パートナーブランドのウィンドマフ(SmallRig社の「ウィンドマフ3859」、別売)が装着しやすくなっている。また、前面には、動画撮影中に赤く点灯する「RECランプ」が備わっており、動画記録中であることがひと目でわかるようになっている。このほか、フルHD/24p設定時は最長125分の連続動画記録が可能(※4K UHD設定時の目安は約35分)。「Z fc」や「Z 50」と比べると、動画撮影時の使い勝手は大幅に強化されていると言えよう。
上面に大きな動画撮影ボタンとステレオマイクを搭載
SmallRig社の「ウィンドマフ3859」を装着したイメージ。なお、ニコンは、「Z 30」の発売を記念して、このウィンドマフとサンディスクのSDメモリーカード(64GB、UHS-I)が同梱する数量限定キャンペーンを実施する
静止画撮影関連のスペックは、シャッタースピードが1/4000〜30秒に対応。フラッシュ同調は1/200秒以下。シャッター方式はメカニカルシャッターと電子先幕を選択でき、電子シャッターにも対応している。対応する感度はISO100〜51200で、ISO51200に対して約1段(ISO102400相当)、約2段(ISO204800相当)の増感が可能。
操作性は、EVFが非搭載なものの、上位モデルの要素を継承しているのがポイント。ボディ上面に感度ボタン、露出補正ボタン、コマンドダイヤルが配置されているほか、撮影モードダイヤルには、任意の設定を登録しておける「ユーザーセッティングモード」が3つ備わっている。背面には、静止画撮影/動画撮影のセレクターや、「iメニュー」を呼び出す専用ボタン(iボタン)、AE-L/AF-Lボタン、レリーズモード/セルフタイマーボタンなどを搭載。グリップ近くに2種類のファンクションボタンが備わっているのも特徴だ。なお、細かいところでは、「Z fc」と同様、オートモード時の露出補正も可能となっている。
静止画撮影/動画撮影のセレクターやiボタン、レリーズモード/セルフタイマーボタンなどを搭載しており、背面の操作系は、上位モデルの「Z 50」よりも「Z 5」などフルサイズミラーレスに近い内容になっている
左側面に外部マイク入力端子(ステレオミニジャック)、HDMI端子(Type D)、USB端子(Type-C)を装備。「Z fc」と同様、電源オン時のUSB給電にも対応している
底面。対応バッテリーは「Z fc」「Z 50」と同じ「EN-EL25」。1回の充電での撮影可能コマ数は約330コマ、動画撮影可能時間は約75分
キットレンズの望遠ズームレンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」(レンズを繰り出した撮影可能な状態)を装着したイメージ。35mm判換算で焦点距離75〜375mm相当の画角をカバーするレンズだ
35mm判換算で焦点距離27〜210mm相当の画角をカバーする高倍率ズームレンズ「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」を装着したイメージ
コンパクトな単焦点レンズ「NIKKOR Z 28mm f/2.8」を装着したイメージ。DXフォーマット機に装着すると焦点距離42mm相当の画角になる
「マウントアダプター FTZ II」を介して、Fマウント用のMFレンズ「Ai Nikkor 28mm f/2.8S」を装着したイメージ
「Z 30」の発売予定は2022年8月5日。ラインアップは、ボディ単体のほか、標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」が付属する「Z 30 16-50 VR レンズキット」、「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」と望遠ズームレンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」が付属する「Z 30 ダブルズームキット」が用意されている。市場想定価格(税込)は、ボディ単体が98,000円前後、「Z 30 16-50 VR レンズキット」が120,000円前後、「Z 30 ダブルズームキット」が150,000円前後。
あわせて、「Z 30」などと組み合わせて使用する別売アクセサリーとして、SmallRig社のトライポッドグリップと「リモコン ML-L7」のセット品「SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット」を用意。自分撮りを含めて手持ちでの動画撮影をサポートするアイテムだ。2022年8月5日の発売予定で、市場想定価格(税込)は10,000円前後。
「Z 30」に、SmallRig社の「ウィンドマフ3859」と「SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット」を組み合わせたイメージ
フルサイズ(FXフォーマット)対応の超望遠・単焦点レンズ「NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S」も発表になった(画像はフルサイズミラーレス「Z 7II」に装着したイメージ)。焦点距離400mm/開放F4.5以下のフルサイズ対応レンズとしてはクラス最軽量となる、重量約1160g(三脚座なし)、全長約234.5mmのコンパクトな鏡筒を実現。テレコンバーターの装着にも対応している。発売は2022年7月15日の予定で、市場想定価格(税込)は450,000円前後
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。