Insta360が手がける360度カメラシリーズの最新モデル「Insta360 X3」。センサーサイズが大きくなり、HDRの強化やアクションカムのように使える撮影モードなど多彩な機能を備えています。本レビューでは、「Insta360 X3」の新機能や注目ポイントを中心に解説します。
360度カメラの性質上、動画のほうがより特徴が伝わりやすいので、こちらのレビュー動画も合わせてご確認ください。
※記事に掲載している画像は、上記のレビュー動画(フルHD)から切り出したスクリーンショットになりますので、実際の画質とは異なる点があることをご了承ください。
360度カメラとは、画角が180度以上のレンズを2枚搭載して、上下左右すべての方向の景色をひとつの動画や、1枚の写真に収めることができるカメラです。360度のすべてを映す動画や写真が撮れるのも特徴なのですが、主な用途は撮影した動画や画像から好きな視界の位置(アングル)で切り出し、普通のカメラで撮影するのが難しい映像を作れることでしょう。
InstagramやTikTokなどで「#360度カメラ」と検索すれば、面白い映像がヒットするはずです。こういった動画を撮れるのが360度カメラであり、その360度カメラの中でも高画質、多彩な撮影機能、そしてカメラにあまり詳しくない人でも使える親切設計を取り入れたのが「Insta360 X3」です。
では、「Insta360 X3」は何がスゴいのか、そして既存モデルからどのような点が進化しているのか。その点を中心に解説します。
360度カメラで重要なのが有効画素数です。撮影者の周囲すべてを収めるため、高解像度でないと、切り出したときの画質も低くなってしまいます。「Insta360 X3」の有効画素数は、既存モデルの「Insta360 ONE X2」と同じ5.7Kとなっています。動画の滑らかさを表すフレームレートも30fpsとまったく同じです。
何が進化したのかというと、イメージセンサーのサイズです。「Insta360 ONE X2」の1/2.3インチから1/2へと大きくなったことで、受光量も大きくなり、画質が向上しているほか、ダイナミックレンジも広くなっています。簡単に言うと、高精細で白飛びや黒つぶれ、ノイズを抑えたキレイな360度動画や写真が撮れるようになったというわけです。
5.7K/30fpsの動画のスクリーンショット。さすがに、遠くいに木の葉っぱなどはつぶれてしまっている部分もあるのですが、一般向けの360度カメラとしては十分キレイなレベルを保っています
360度カメラらしい全天球のスクリーンショット。こういった特殊なアングルだと、5.7Kでも十分見栄えがあります
夜の撮影にもチャレンジ。かなり低照度の環境だったため、画質が劣化してノイズの乗りがち。夜に撮影するなら、もう少し明るい場所のほうがいいかも
街灯の近くなど、強い光が近くにある環境であれば、画質の劣化も軽減されます
センサーサイズが大きくなったメリットとしては、ダイナミックレンジが拡張され、HDRが強化された点もあります。HDRは明るさの幅を広く表現できる機能のことなのですが、「Insta360 X3」は、このHDRが強化されて、激しく動きながらでもHDRと画質の両方を安定させる「アクティブHDR」という機能が利用できます。
この機能をオンにして撮影すると、明るい空の白飛びを抑えつつも、影の部分の明るさを持ち上げ、空も日陰も両方キレイに映し出し、かつ、画質の乱れも少なくなります。
以下の画像を見ていただくと違いが顕著なのですが、「アクティブHDR」をオンにするだけで、動画の印象がかなり変わります。
左が「アクティブHDR」をオン、右がオフ
「Insta360 X3」は端末の両面にレンズを1枚ずつ、合計2枚のレンズを備えていることはお伝えしましたが、このうちの1枚だけで撮影することでアクションカムのような使い方ができる撮影モード「4Kシングルレンズモード」が利用できます。つまり、360度カメラながら、アクションカムとしての機能も備えるというわけです。
このモードでは、4Kと2.7Kの解像度が選べますが、HDRは利用できません。また、4Kはカメラ内手ブレ補正、2.7Kは専用ソフトウェア、もしくは専用のアプリで補正を行う「ソフトウェア手ブレ補正」と、カメラをどれだけ傾けても水平を保ってくれる水平維持が利用できます。加えて、2.7Kだと視野角が170度になるという特徴もあります。
一般的なアクションカムと比べると本体が大きいため、アクションカムをメインとした利用はおすすめできないものの、360度カメラとアクションカムの両方が使えるというのは、ほかの機種にはない特徴です。
「4Kシングルレンズモード」の動画から切り出した静止画。上が4K、下が2.7Kです。画質を優先したい場合は4K、より広い視野角でアクションカムっぽい映像が撮りたい場合は2.7Kで撮るのがいいと思います
次に解説するのはまったく新しい撮影モードの「ミーモード」です。これは、撮影者だけに焦点を合わせるように構図を固定して撮影できるモード。自撮り棒も処理で消してくれるため、あたかも第3者やドローンが撮影者を追尾しながら撮っているような映像が撮れます。
これがすごく面白くて、自分専用のカメラマンが撮ってくれているような映像が撮影できるんですよね。これ、アイデア次第では、めちゃくちゃ映える絵が撮れると思います。
「Insta360 X3」を装着した自撮り棒を肩に載せて撮影すると、自分の背後からのアングルで撮影できます。自撮り棒もキレイに消えていますね
次は、写真撮影の機能について解説しましょう。「Insta360 X3」は7200万画素という高解像度の360度写真が撮影できるように進化しました。ものすごく高精細な写真が撮れるので、あとから好きな構図に編集しても高解像度を保ったまま切り出せます。ただし、ファイルサイズが非常に大きくなるので、その点は注意が必要です。
7200万画素の360度写真の作例
360度のタイムラプスは8K画質へと進化しています。走る自動車のライトを映したかったので、夕方から夜にかけて撮影したのですが、やはり画質の劣化とノイズが発生していました。昼間であれば、より高画質なタイムラプスが撮れるはずです。
8Kタイムラプス動画のスクリーンショット
このほか、10mの防水ボディ(専用ケース着用時は50m)や、2.29インチの大きなタッチディスプレイも「Insta360 X3」の特徴です。水中に沈めて撮影することもできますし、大きなディスプレイは撮影モードを選んだり、プレビューをチェックしたりするのに便利だと感じました。
10mの防水ボディのため、雨天時の撮影はもちろん、多少水に沈めても問題なし。TikTokなどでよく見る、海に飛び込みながらの360度動画も安心して撮れます
ディスプレイは2.29インチと非常に大きいうえに、強化ガラスでカバーされているため、耐衝撃性や耐傷性も備えます
360度カメラって、普通のカメラにはない特徴があって、ものすごく面白いのですが、撮った後の動画を編集するのが大変っていうイメージがあると思います。「Insta360 X3」の場合は、編集用にPC向けソフトウェア「Insta360 Studio」とスマホ向けアプリ「Insta360」が用意されており、これが結構使いやすくて初心者にもやさしいと思いました。
レビューでは、「Insta360 Studio」を使って編集したのですが、動画のよきところでキーフレームを打ち、見せたい画角にクリック&ドラッグで合わせるだけで、きれいにつながった動画に編集することができます。操作が直感的に行えるので、専門知識は必要ありません。
もちろん、より高度な編集も行えますが、サクッとSNSに動画をアップロードするならこれで十分ですし、同じことがスマホ向けアプリの「Insta360」でも行えます。このあたりは、記事だと伝わりづらい部分があるので、本記事冒頭のレビュー動画をぜひご覧ください。
「Insta360 Studio」で動画を編集しているところ。タイムラインの好きなところで画角を調節するだけでも、イイ感じの動画に仕上がります
また、アプリ「Insta360」には、手順に従って撮影と編集を行うだけで面白い動画が作れるテンプレートが数多く用意されています。360度動画は、アイデア次第でクリエイティブな動画が撮れますが、そのアイデアをひねり出すのはなかなか大変です。
こういった初心者ユーザーのために用意されているのがテンプレートで、カメラの設定方法や撮影方法、編集方法までしっかりとレクチャーしてくれます。これは、非常に親切だと感じました。
撮影から編集までを動画で解説してサポートしてくれるアプリ「Insta360」のテンプレート
これだけの機能を備えながら、希望小売価格は68,000円(税込)。360度カメラに加えて、アクションカムとしての機能を備えることを考えると、むしろお得なのでは? と思ってしまうのは、僕だけでしょうか。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。