2022年9月29日、タムロンから小型・軽量な望遠ズームレンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」のニコンZマウント用が発売された。同社初のZマウント用レンズということで注目度が高く、価格.comでも人気を集めている。コンパクトな望遠ズームが活躍する動物園での撮影を通じて、本レンズの特徴をチェックした。
小型・軽量ながら写りのよい望遠ズームレンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」に、ニコンZマウント用が追加された(カメラボディは「Z 7II」)
「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」は、2020年10月29日に、ソニーEマウント用として登場した、フルサイズ対応の望遠ズームレンズだ。「手軽に望遠300mmを楽しめる」というコンセプトで開発された普及タイプの製品で、マウント部の部材に、特殊処理を施した高強度なAl-Mg 系合金(マグネシウム含有量の高いアルミニウムを主成分とした合金)を採用するなど小型・軽量化を徹底。発売当時、焦点距離300mmに対応するフルサイズミラーレス用の望遠ズームレンズとして世界最小・最軽量を実現したことをウリにしていた。
今回紹介するのは、そんな「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」のZマウント用。Eマウント用の発売から約2年後の2022年9月29日、光学設計などの基本性能はそのままに、Zマウント用がラインアップに追加された。
70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD(ニコンZマウント用)の主な特徴
・70〜300mmの焦点距離をカバーする望遠ズームレンズ
・開放絞り値:広角端F4.5、望遠端6.3
・77(最大径)×148(全長)mm/580gのコンパクトな設計
・望遠端で高い解像性能を発揮する10群15枚のレンズ構成(LDレンズ使用)
・最短撮影距離:広角端0.8m、望遠端1.5m
・反射防止効果の高い「BBARコーティング」
・絞り羽根枚数:7枚(円形絞り)
・ステッピングモーター「RXD」による高速AF
・フィルター径:67mm(シリーズ共通)
・「瞳AF」やカメラ内レンズ補正などカメラの主な機能に対応
・PCソフト「TAMRON Lens Utility」経由でのファームウェアアップデートに対応
・価格.com最安価格:70,020円(税込、2022年10月13日時点)
2022年10月13日時点でも、本レンズのEマウント用は世界最小・最軽量をキープしている。それと比べると、Zマウント用はわずかに大きくて重い。Zマウント用のサイズは77(最大径)×148(全長)mmで、重量は580g。Eマウント用よりも全長は2.5mm長く、重量は35g重い。ZマウントはEマウントに比べてマウント径が大きいため、この差が生まれるのは致し方ないところ。
ただ、世界最小・最軽量はEマウント用に譲るものの、Zマウント用も、焦点距離300mm対応の望遠ズームレンズとしてコンパクトなサイズ感に収まっているのは変わらない。鏡筒が比較的スリムなので、より軽い力でホールドできるのがポイントだ。
全長148mmというのは、普及タイプの望遠ズームレンズとしては標準的な長さだが、このサイズ感で焦点距離300mmに対応するのがポイント。比較的スリムな鏡筒なので、レンズをホールドした際の負担は少ない
望遠端300mm時は相応にレンズが繰り出す。レンズ先端からマウント面までは実測で約210mm
タムロンが手がけるレンズなので当然なのだが、本レンズのZマウント用は、ニコンとのライセンス契約に基づいて開発されている。調べる限り、Zマウント用のAFレンズとしては、初のライセンス契約モデルだ。「ヴィネットコントロール」や自動ゆがみ補正といったカメラボディ側の各種補正機能に対応するほか、「瞳AF」の利用も可能で、ニコン純正レンズとそん色ない使い方ができる。
また、Zマウント用とEマウント用の性能は同等だが、Zマウント用は、鏡筒に通信用のコネクターポート(USB-C端子)を搭載しており、専用のPCソフト「TAMRON Lens Utility」を使うことで、カメラ本体を通さずにレンズ本体のファームウェアアップデートが行える。
ただし、フォーカスセットボタンは非搭載のため、「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」など「TAMRON Lens Utility」対応の他モデルのような、各種機能の割り当てや、フォーカスリングの回転方向・レスポンスの設定には対応していない。
鏡筒左手側に通信用のコネクターポート(USB-C端子)を搭載。専用ソフト「TAMRON Lens Utility」経由で、レンズのファームウェアをアップデートできる
付属の丸型フード(HA047)を装着したイメージ
掲載する作例について
フルサイズミラーレス「Z 7II」に「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」を組み合わせてJPEG形式で撮影している(JPEG撮って出し)。すべての作例で、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、に設定した。
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/320秒、ISO400、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、20.9MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/200秒、ISO160、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、21.9MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/200秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(5504×8256、17.8MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/125秒、ISO64、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、16.0MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/500秒、ISO400、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、23.0MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、300mm、F6.3、1/200秒、ISO800、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、21.4MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、222mm、F6、1/500秒、ISO200、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、30.6MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、99mm、F6、1/500秒、ISO200、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、22.1MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、70mm、F4.5、1/640秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、23.3MB)
Z 7II、70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD、70mm、F5.6、1/800秒、ISO100、WB:オート1、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、18.7MB)
「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」のZマウント用の画質は、Eマウント用と同様に、コンパクトながら画像中央部の解像感にすぐれるのが特徴だ。普及タイプの望遠ズームレンズとしては絞り開放から軸上色収差がよく抑えられており、ピント位置はとてもシャープ。タムロンのレンズらしい、繊細な描写を楽しめる1本だ。さすがに、近接の開放だとわずかにソフトな感じになるのと、相応の周辺光量落ちは発生するものの、サイズを考慮するとよく写る。
使っていて気になったのはAF。静止物や、遠くをゆっくりと動く被写体に対しては十分な性能だが、さすがに、素早く動く動物を狙った際は、AFのレスポンスにストレスを感じた。使用したカメラボディ「Z 7II」との組み合わせの問題があるのかもしれないが、全体的に、被写体への食いつきがもうひとつ。AFに関しては、普及タイプなりの性能と理解してほしい。
2022年10月13日時点でのニコン純正のZマウントレンズのラインアップを見ると、焦点距離300mmをカバーするフルサイズ対応の望遠ズームは、高性能な「S-Line」シリーズの「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」のみ。気軽に使える望遠ズームレンズというと、APS-C用の「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」くらいしか選択肢がない状況だ。フルサイズに対応する普及型の望遠ズームレンズが、ぽっかり空いているのである。
マウントアダプターを介してFマウント用を使ってもよいが、せっかくのZマウントなので、できればマウントネイティブのフルサイズ対応レンズを使いたい。でも、まだ気軽に選べる選択肢がない。そう考えていたZマウントユーザーにとって、「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」のZマウント用はぴったり。動物園などで気軽に望遠撮影を楽しみたい人にとって待望の小型・軽量モデルだ。2022年10月13日時点での価格.com最安価格は70,020円(税込)。価格を考慮するとよく写るレンズである。
これまで、Zマウントでは、ニコンとのライセンス契約を基に開発されたAFレンズは存在しなかった。その意味でも、このレンズが登場した意味は大きい。タムロンを含めて、今後、サードパーティーからどういったZマウント用レンズが登場するのかにも注目だ。
フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。