富士フイルムは、2022年7〜9月にかけて、APS-Cサイズの撮像素子を採用する「Xシリーズ」の最上位「X-Hシリーズ」を刷新。高速モデル「X-H2S」と高解像度モデル「X-H2」という、どちらもフラッグシップに位置付けられる2機種のミラーレスカメラを市場に投入した。今回は、2022年9月29日に発売された高解像度モデル「X-H2」を取り上げる。有効約4020万画素の撮像素子による「新世代の高画質」を中心にレビューしよう。
高速モデル「X-H2S」と並んで、「Xシリーズ」の新しいフラッグシップとして登場した「X-H2」
「X-H2」のスペックで特筆すべきは、なんといっても、APS-Cサイズの撮像素子を採用するミラーレスとして最高画素数(2022年10月24日時点)となる、有効約4020万画素の撮像素子を採用したことだ。
フルサイズ機だと4000〜6000万画素の高画素は珍しくないが、APS-C機では、最新モデルでも2000万画素台が一般的なスペックで、これまでの最高画素数は3000万画素台であった。APS-C機で4000万画素台のスペックを持つのは「X-H2」が初。撮像素子に合わせて画像処理エンジンも第5世代の「X-Processor 5」に刷新しており、まさに「新世代の1台」と言えるだろう。
ここで勘違いしたくないのは、必ずしも「画素数は多ければ多いほどよい」というわけではないこと。いっぽうで、細部まで緻密に再現できる点においては、画素数が多いにこしたことがないのも、また事実だ。
まずは、「X-H2」と同じタイミングで発表・発売になった、大口径・中望遠レンズのリニューアルモデル「XF56mmF1.2 R WR」と組み合わせて撮影した写真などを掲載しながら、「X-H2」の画質力をお伝えしていこう。
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F1.2、1/2500秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ、ダイナミックレンジ:100%、スムーススキン・エフェクト:強
撮影写真(5152×7728、21.7MB、Photoshopで著作権情報を追加)
4000万画素で記録される「X-H2」は、立体感が感じられるほど高精細な写真を生み出してくれる。このポートレート写真では、ピントが合った部分の描写に注目してほしい。新しい中望遠レンズ「XF56mm F1.2 R WR」の性能の高さもあって、非常に高い解像感が得られている。
もちろん、「X-H2」でも、富士フイルムらしいナチュラルな発色は健在だ。撮像素子が新しくなると「発色は変わっていないのか?」と心配になる人もいるようだが、「X-T4」まで歴代の「Xシリーズ」を使ってきた私から見ても、まったく違和感がない肌色だ。多くの人にとって発色は問題ないだろう。高解像かつ色再現性にすぐれた写真を撮影できるカメラと言えよう。
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F1.2、1/3200秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ、ダイナミックレンジ:100%、スムーススキン・エフェクト:強
撮影写真(5152×7728、15.2MB、Photoshopで著作権情報を追加)
絞り開放F1.2で全身を撮っても、「X-H2」と「XF56mm F1.2 R WR」の組み合わせなら、ここまでしっかりと解像してくれる。「X-H2」でボケを生かしたポートレートを撮るなら、「XF56mm F1.2 R WR」は押さえておきたいレンズではないだろうか。
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F2.8、1/3000秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、19.2MB)
こちらは、「XF56mm F1.2 R WR」と「X-H2」の組み合わせでの解像力をチェックした1枚。線が細い、すばらしい描写が得られた。4000万画素のポテンシャルを余すことなく引き出すには、やはり、「XF56mm F1.2 R WR」など、最近続けてリニューアルされている、最新の単焦点レンズと組み合わせるのがベストなのだろう。
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F1.4、1/125秒、ISO1250、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、24.6MB)
この写真は、大口径・広角レンズ「XF18mm F1.4 R LM WR」の絞り開放F1.4で撮影したもの。広角レンズで風景を撮影しても、ここまで高い解像力を得られるのが「X-H2」の魅力だ。レンズの光学性能も相まって、周辺でも像が流れることはなく、きっちりと写しきってくれた。
スムーススキン・エフェクト オフ
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F2、1/100秒、ISO200、ホワイトバランス:3100K(R:+1、B:+1)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、20.2MB、Photoshopで著作権情報を追加)
スムーススキン・エフェクト 弱
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F2、1/100秒、ISO200、ホワイトバランス:3100K(R:+1、B:+1)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%、スムーススキン・エフェクト:弱
撮影写真(5152×7728、23.3MB、Photoshopで著作権情報を追加)
スムーススキン・エフェクト 強
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F2、1/100秒、ISO200、ホワイトバランス:3100K(R:+1、B:+1)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%、スムーススキン・エフェクト:強
撮影写真(5152×7728、23.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)
「スムーススキン・エフェクト」の効果の比較
「X-H2」の撮影機能では、ラージフォーマット機「GFXシリーズ」ではおなじみの「スムーススキン・エフェクト」が、「Xシリーズ」として初搭載された点に注目したい。この機能は、ポートレート撮影において肌を滑らかにするもので、「オフ」「弱」「強」から効果を選択できる。
実際に撮影した写真を見てみると、オフと弱の違いはごくわずかだが、強にすると明らかに肌が滑らかに仕上がる。輪郭部分のシャープさは変わらないので、ポートレート撮影では積極的に使いたい機能だ。
撮像素子のサイズが変わらずに画素数が増えるのは、1つひとつの画素サイズが小さくなるため、微弱な光を取り込むのが難しくなる。そのため、「X-H2」の高画素化に対して、高感度の画質に不安を持つ人もいることだろう。
結論から言えば、「X-H2」の高感度画質については、まったく心配する必要がない。以下に掲載する感度別写真を見ていただきたいが、「X-H2」は、「X-T4」などと比べて、ISO6400あたりの高感度画質は同等か、むしろ向上していると感じるほどのクオリティだ。同じセンサーサイズの4000万画素機が2600万画素機に匹敵するだけでも、新世代の撮像素子と画像処理エンジンの威力を実感できるというものだ。
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、8.5秒、ISO125、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、14.8MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、2.6秒、ISO400、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、16.8MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1.4秒、ISO800、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、16.8MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/1.5秒、ISO1600、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、15.0MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/3秒、ISO3200、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、16.0MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/6秒、ISO6400、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、17.0MB)
X-H2、XF18mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算27mm相当)、F5.6、1/10秒、ISO12800、ホワイトバランス:5000K、フィルムシミュレーション:クラシッククローム、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(7728×5152、19.7MB)
ISO125/ISO400/ISO800/ISO1600の切り出し画像
ISO3200/ISO6400/ISO12800の切り出し画像
「X-H2」では、基本感度が従来機のISO160からISO125に変更された。感度を上げていけば当然、シャドー部のノイズは増えていくが、ISO6400までは緩やかにノイズ量が増加していく感じ。ISO12800ではさすがにザラザラとしたノイズが大きく目立つ。ハイライト部の緻密さでいえば、ISO1600までがきわめてシャープで、ISO3200ではノイズリダクションの働きのためか、少しシャープ感に欠ける印象だ。
X-H2、XF23mmF1.4 R LM WR、18mm(35mm判換算35mm相当)、F4、1秒、ISO400、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、19.3MB)
「X-H2」は、最大7段分の効果を発揮するボディ内手ぶれ補正機能を搭載しており、手持ち撮影でもスローシャッターを積極的に使用できる。この写真は、シャッタースピード1秒で手持ち撮影しているが、細部はぶらさずに、電車や車など動いている被写体だけをぶらすことができた。
ここからは、画質以外の部分で、「X-H2」の特徴をレビューしていこう。
「X-H2」を使ってみて、画質とともに、確実な進化を感じたのがAF性能だ。高速AF&高速連写がウリの「X-H2S」から採用された被写体検出AFを搭載するうえ、ポートレート撮影で便利な顔検出/瞳AFの精度・速度も大幅に向上している。「X-H2S」との同時比較は行えなかったが、「X-H2S」の新世代AFのパワーを「X-H2」でも同様に感じることができたので、従来機から確実に進化していると言ってよいだろう。
従来モデルは前面左側にAF-S/AF-C/MFの切り替えレバーを搭載していたが、「X-H2」では、この位置の操作系がファンクションボタン(Fn3ボタン)に変更された。フォーカスモードの切り替えは、設定メニューを呼び出して行う方式だ。なお、Fn3ボタンには、初期設定でフォーカスモードの呼び出しが割り当てられている
「X-H2」の顔検出/瞳AFは、とにかく検出能力の高さに驚かされる。街中でスナップ撮影をしていると、はるか遠くにいる人を検出してしまうため、スナップ撮影でのピント合わせに支障が出てしまうほどだ(私の場合、スナップ中は顔検出をオフにすることにした)。
以下に掲載する2枚の写真で、検出能力の高さを紹介しよう。上の写真は手前から2本目のポールにピントを合わせたもの。下の写真も、同じ場所にピントを合わせようとしたのだが、顔検出/瞳AFがオンになっていたため、はるか先に歩く人にAF枠が移動してしまった。これくらいの遠い距離でも小さい人物を認識するのはすごい。
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F1.2、1/18000秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、16.8MB)
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F1.2、1/20000秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、16.2MB)
さらに、強い逆光下でも顔検出/瞳AFがしっかりと動作するのも驚かされた。以下の写真は、逆光下で撮影したものだが、手前の自転車に乗る人物を検出し、ピントを合わせてくれた。
X-H2、XF56mmF1.2 R WR、56mm(35mm判換算85mm相当)、F2、1/10500秒、ISO125、ホワイトバランス:オート(ホワイト優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード、ハイライトトーン:-0.5、シャドウドーン:+0.5、ダイナミックレンジ:100%
撮影写真(5152×7728、20.8MB)
続いて、「X-H2」のボディと操作性をチェックしていこう。
ボディは、「X-T4」などと比べると、全体的にやや大きくて分厚く感じる。「X-T4」と比べて幅が約1.7mm、高さが約0.1mm大きくなっただけなので幅と高さはほとんど変わらないのだが、厚みがかなり違う。これによって、ずいぶんと大きくなった印象を受けてしまう。
その代わりといってはなんだが、グリップは、「X-T4」とは比べものにならないほど深い。「X-T4」のグリップはふっくらと膨らんでいる感じだが、「X-H2」はがっしりと握れるほどしっかりとした形状だ。長時間の連続撮影なら圧倒的に「X-H2」のほうが疲れにくいと言えるだろう。
グリップはかなり深めで握りやすい。長時間の撮影や望遠レンズなどを装着したときに、この大型グリップのありがたみを感じる
メモリーカードスロットは、CFexpress Type BカードとSDカード(UHS-II対応)のデュアルスロット。この組み合わせは「X-H2S」から導入されている。従来の「Xシリーズ」はSDカードのデュアルスロットだったが、4K以上の高解像度動画や超高速連写に対応すべく、より書き込み速度が速いCFexpressカードを採用したのだろう。
とはいえ、バッファーを使い切るまで連写し続けない限り、スロット2のSDカードへの記録でも、静止画の撮影中に、気になるような書き込みの待ち時間が発生することはまずない。シングルスロットとして運用するなら、SDカードの利用でも特に問題ないはずだ。もっとも、両スロットにバックアップ記録する場合などはCFexpress Type Bカードを使う必要があるので、静止画オンリーのユーザーでもCFexpress Type Bカードを購入しておいたほうがよいのは間違いない。
ボディ上面右側に、シャッタースピードや絞り値、感度などさまざまな情報が表示されるパネルを搭載。表示内容のカスタマイズも可能だ。電源オフ時は、挿入しているカードの残り撮影可能枚数と動画撮影可能時間が表示される
「X-H2」の操作性は、「X-H2S」と同様、感度やシャッタースピードなどのアナログダイヤルを廃し、多くの操作を電子ダイヤルとボタンで行うのが特徴だ。「Xシリーズ」のユーザーはアナログの操作感を好む人が多いため賛否両論だろうが、電子ダイヤルの操作に慣れてしまえば、撮影操作自体はむしろ快適だ。ファンクションボタンへの割り当て項目も非常に多彩なため、ボタン類にうまく機能を割り当てることで、個々の撮影者のスタイルに応じた操作が可能になる。
加えて、バリアングル液晶モニターも賛否が分かれるところだろう。バリアングル液晶は、どちらかといえば動画撮影時に恩恵を感じるが、静止画撮影だけでいえば、「X-T3」や「GFX100S」などの3軸チルト液晶のほうが、液晶を大きく動かす必要がなく便利かもしれない。バリアングル液晶は、しいて言えば、自分撮りや記念撮影のときに、被写体側に液晶を向けられるのがメリットというところだろうか。
バリアングル液晶モニターを採用。3軸チルト方式からバリアングル方式に変更されたのは、動画撮影時の使い勝手を優先したからだと思われる
ファインダーは、約576万ドットの有機ELファインダーを採用。倍率は0.80倍だ。「X-T4」の約369万ドット/倍率0.75倍と比べて、より高精細で大きなファインダー像が見られるようになった。実際にファインダーを覗いてみても、表示はキレイで視認性も高い。とても満足できるファインダーという印象だ。
なお、「X-H2」を使ってみて1点だけ気になったのが、残暑が厳しかった9月の屋外での撮影だったとはいえ、1時間ほどポートレートを撮影していたときに、温度上昇による警告表示が出たこと。同じようなシーンで撮影していて「X-T4」では一度も温度警告が出たことがないので、ちょっと驚いた。勝手な想像ではあるが、高画素センサーを搭載し、さらに新しい画像処理エンジンによる高速処理によって、カメラ内部は以前よりも熱を持ちやすくなっているのかもしれない。
といっても、静止画撮影中に動作が完全に止まってしまうことはなく、しばらく温度警告が出たまま撮影を続けて、少しカメラを休ませると、また警告が消えているという感じではあった。夏場の連続使用ではちょっと注意する必要があるかもしれない。
「X-H2」は、APS-Cミラーレスとして初の4000万画素機で、カメラのポテンシャルを生かすにはレンズにも相応の性能が求められる。そういったこともあってか、富士フイルムは、「X-H2」の公式サイトで、「X-H2」の高解像をフルに楽しめる「40MP推奨レンズ」をリストアップしている。
最近、「Xシリーズ」のレンズ(主に単焦点レンズ)が続々とリニューアルされている。「40MP推奨レンズ」は、そうしたリニューアルモデルを中心に、光学性能にすぐれた比較的新しいレンズが中心のラインアップだ。いっぽう、「XF35mmF1.4 R」など発売から時間が経過した旧タイプのレンズは、リストから除外されている。やはり、4000万画素の高画素をフルに生かすには、最新設計のレンズが望ましいということなのだろう。
「X-H2」の公式サイトで確認できる「40MP推奨レンズ」。リストには、最新のリニューアルレンズを中心に比較的新しいレンズが並んでいる
もちろん、新しいレンズを使うのが理想的だが、旧タイプのレンズだと「X-H2」の性能を享受できないのかというと、決してそんなことはない。「XF35mm F1.4 R」など「Xシリーズ」の初期から用意されているレンズを使ってみても、4000万画素の高画素は十分に生かせる。
推奨かそうでないのかの違いは、使う側の判断によるが、私は「写真を等倍表示したときに細かい色収差などが目に付くかどうか」ということだと思っている。モニターの画面いっぱいに写真データを表示したり、プリントしたりして、写真として楽しむのであれば、旧タイプのレンズでも問題ない。旧タイプのレンズしか持っていない人でも、「X-H2」の高画素を存分に楽しめるので安心してほしい。
以上、画質を中心に「X-H2」の特徴をレビューした。
「X-H2」よりもひと足先に、2022年7月14日に発売された、「Xシリーズ」のもうひとつのフラッグシップ機「X-H2S」は、画素数よりも処理性能を重視した高速モデルだ。「X-TRANS CMOS 5 HS」と名付けられた高速センサーを採用し、画素数は有効約2616万画素にとどまっている。これに対して、今回の「X-H2」は、有効約4020万画素の高画素な「X-TRANS CMOS 5 HR」センサーを採用した高解像度モデルだ。
「X-H2」と「X-H2S」のどちらを選ぶかは、撮影する被写体やシーンによるだろう。スポーツや野鳥など動く被写体を撮るのであれば、やはり、高速性にすぐれた「X-H2S」がよい。いっぽう、風景やポートレートなど高い解像力を生かしたいのであれば「X-H2」を選びたい。どちらも、「Xシリーズ」が新時代に突入したことを実感できるカメラだ。
また、今回は静止画撮影のレビューのため詳しい説明は省略するが、「X-H2」は、4000万画素センサーを採用したことで、APS-Cミラーレスとして初めて8K動画撮影を実現したことも記しておきたい。動画撮影を意識する場合でも、「X-H2」は注目に値する製品と言える。
ちなみに、私は「X-T4」から「X-H2」に買い替えを済ませている。その大きな理由は、高画素センサーによる緻密な被写体再現力と、AFの高速化による撮影の快適さに魅力を感じたからだ。富士フイルムらしい発色と仕上がり、そして細部までしっかりと再現してくれる4000万画素センサー。加えて、これまでとは別次元のAF。これらを実現してくれているのが、「X-H2」というカメラだと思う。「Xシリーズ」のユーザーだけでなく他社ユーザーでも、富士フイルムの仕上がりに興味のある人は、ぜひ使っていただきたい。
撮影モデル:進藤もも
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東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。海外での肖像写真撮影や街風景スナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。noteやYouTubeチャンネルも開設。
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