レビュー

ソニー「α7R V」ファーストインプレッション、新しい6100万画素機を写真家はどう評価する?

2022年11月25日に発売される、ソニーの新しいフルサイズミラーレスカメラ「α7R V」。高画素センサーを搭載する「α7Rシリーズ」の第5世代モデルで、この冬に登場するカメラの中でも特に話題を集める1台だ。その実力をいち早く検証した。

※本記事は発売前の試作機を使用して作成しています。製品版では仕様が変更される場合がありますのでご了承ください。

有効約6100万画素センサーを搭載するフルサイズミラーレス「α7R V」をいち早く試した(※「α7R V」は防塵・防滴に配慮した構造を採用していますが、ほこりや水滴の浸入を完全に防ぐものではありません。この画像は、カメラの防滴性能を超えない程度の適度な雨の中で撮影しています)

有効約6100万画素センサーを搭載するフルサイズミラーレス「α7R V」をいち早く試した(※「α7R V」は防塵・防滴に配慮した構造を採用していますが、ほこりや水滴の浸入を完全に防ぐものではありません。この画像は、カメラの防滴性能を超えない程度の適度な雨の中で撮影しています)

「BIONZ XR」を搭載し、「αシリーズ史上最高の解像性能」を実現

「α7R V」は、従来モデル「α7R IV」と同画素となる、有効約6100万画素の35mmフルサイズ裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーを搭載している。像面位相差AFの点数/カバー率が従来の567点/約74%から最大693点/79%に向上しているものの、ソニーの説明によると、撮像素子自体は「α7R IV」と同一とのことだ。

撮像素子は変わらないものの、「α7R V」は、それ以外の部分が大きく変わった。最も大きいのは、画像処理エンジンが一新されたこと。「α7R IV」に搭載されていた「BIONZ X」と比較して処理速度が約8倍に高速化された「BIONZ XR」を採用することで、有効約6100万画素の高画素を最大限に引き出すことができるようになったという。

特に低感度時の画質は「αシリーズ史上最高の解像性能」をうたっている。そのあたりは、以下に掲載する写真をご覧になってほしい。

掲載する作例について
「α7R V」を使用し、JPEG形式(ファイン)で撮影している。すべての作例で、周辺光量補正:オート、倍率色収差補正:オート、歪曲収差補正:オフ、Dレンジオプティマイザー:オートに設定している。

「α7R V」で撮影した写真をチェック

α7R V、FE 50mm F1.2 GM、F1.2、1/320秒、ISO200、ホワイトバランス:マニュアル(2900K A1.50)、クリエイティブルック:PT撮影写真(6336×9504、12.9MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 50mm F1.2 GM、F1.2、1/320秒、ISO200、ホワイトバランス:マニュアル(2900K A1.50)、クリエイティブルック:PT
撮影写真(6336×9504、14.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 50mm F1.2 GM、F1.2、1/320秒、ISO200、ホワイトバランス:マニュアル(2900K A1.50)、クリエイティブルック:PT撮影写真(6336×9504、17.4MB)※Photoshopで著作権情報を追加

α7R V、FE 50mm F1.2 GM、F1.2、1/320秒、ISO200、ホワイトバランス:マニュアル(2900K A1.50)、クリエイティブルック:PT
撮影写真(6336×9504、18.8MB、Photoshopで著作権情報を追加)

上の2枚の写真は、スタジオで撮影したポートレート写真。大口径・標準レンズ「FE 50mm F1.2 GM」の絞り開放での撮影だが、ピント精度にはまったく不満がない。バストアップはもとより全身でも絞り開放からしっかりと使える高性能レンズだ。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/400秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV撮影写真(9504×6336、23.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/400秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV
撮影写真(9504×6336、23.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

ISO200で撮影した紅葉。ホワイトバランスは太陽光にセットして、クリエイティブルックはVVを選択。6000万画素の高画素らしい精密な描写が感じられる1枚だ。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/125秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV撮影写真(9504×6336、15.4MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/125秒、ISO200、ホワイトバランス:太陽光、クリエイティブルック:VV
撮影写真(9504×6336、15.4MB、Photoshopで著作権情報を追加)

雨に濡れる紅葉を、「FE 24-70mm F2.8 GM II」の望遠端の絞り開放で撮影。ボケが美しく、このカメラとマッチングの取れたレンズだ。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/15秒、ISO100、ホワイトバランス:白熱灯、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、24.2MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/15秒、ISO100、ホワイトバランス:白熱灯、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、24.2MB、Photoshopで著作権情報を追加)

印象的な仕上がりにしたくてホワイトバランスを白熱灯にセット。三脚を使用して撮影している。周囲の岩の描写などはさすがの解像力だと感じる。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、14.7MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、14.7MB、Photoshopで著作権情報を追加)

ピントを合わせたい場所を液晶モニター上でタッチして撮影した1枚。少しローアングルでの撮影だったので、液晶モニターを上方にチルトさせてフレーミングしている。このあたりの使い勝手は実によい。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、13.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/160秒、ISO100、ホワイトバランス:日陰、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、13.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)

小雨が降るどんよりとした重たい空。木の枝にピントを正確に合わせながらも、こういう質感の空を再現してくれるのが最新モデルのよいところかもしれない。

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST撮影写真(9504×6336、15.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST
撮影写真(9504×6336、15.6MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/80秒、ISO400、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST撮影写真(6336×9504、25.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1/80秒、ISO400、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:ST
撮影写真(6336×9504、25.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

後述する「AIプロセッシングユニット」と「可視光+IRセンサー」の働きによって、「α7R V」は、特に日陰のシーンでのオートホワイトバランスがよくなったという。上の2枚の写真は、小雨の降る中で撮影しているが、オートホワイトバランスでも青や黄色に転ぶことなく、正確な色を再現してくれた。

動く被写体にも対応する新しい「ピクセルシフトマルチ撮影」

「α7R V」は、より高解像度な写真を生成できる「ピクセルシフトマルチ撮影」機能も進化している。4枚または16枚の写真から1枚の写真を合成・生成するため、従来モデル「α7R IV」では、木の葉など動きのある被写体はぶれてしまったのだが、「α7R V」は、動きを自動検出して補正してくれるようになった。このため、風景撮影などでも、この機能が使いやすくなったのだ。

「ピクセルシフトマルチ撮影」機能は、撮影メニューのドライブモードで選択できる。ここから4枚撮影や16枚撮影、撮影間隔などの設定が行える。なお、「ピクセルシフトマルチ撮影」は、PC用ソフト「Imaging Edge Desktop」の「Remote」を使ってのリモート撮影でも利用できる。リモート撮影の場合は、撮影後に自動で合成データが生成される

「ピクセルシフトマルチ撮影」機能は、撮影メニューのドライブモードで選択できる。ここから4枚撮影や16枚撮影、撮影間隔などの設定が行える。なお、「ピクセルシフトマルチ撮影」は、PC用ソフト「Imaging Edge Desktop」の「Remote」を使ってのリモート撮影でも利用できる。リモート撮影の場合は、撮影後に自動で合成データが生成される

「ピクセルシフトマルチ撮影」機能を使った作例

「ピクセルシフトマルチ撮影」を使った合成・生成した写真。シャッタースピードが1/5秒と遅い設定のため、一部の草木は風に揺られてブレているが、それでも16枚を合成したとは思えないほど自然な仕上がりだ。これならば“ここいちばんの撮影”でも活用できるだろうα7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/5秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:VV撮影写真(19008×12672、70.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

「ピクセルシフトマルチ撮影」を使った合成・生成した写真。シャッタースピードが1/5秒と遅い設定のため、一部の草木は風に揺られてブレているが、それでも16枚を合成したとは思えないほど自然な仕上がりだ。これならば“ここいちばんの撮影”でも活用できるだろう
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、24mm、F2.8、1/5秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:VV
撮影写真(19008×12672、70.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

ただし、16枚の画像を合成するにはそれなりの時間がかかることは覚えておいてほしい。撮影したデータの合成は、PC用ソフト「Imaging Edge Desktop」の「Viewer」上で行うのだが、元画像の容量によるものの、M1 Maxプロセッサー/32GBメモリー搭載の「MacBook Pro」を使用した場合、16枚合成でだいたい3分弱くらいの時間がかかった。約2億4080万画素もの画像データとなるので致し方ないところだ。

より多彩な被写体認識に対応するAF。ボディ内手ブレ補正も進化

「α7R V」は、AFシステムに「AIプロセッシングユニット」を新たに搭載することで人物や動物、鳥に加えて、昆虫、車/列車、飛行機などの被写体を認識できるようになった。

試作機でのテストのため詳しくは評価しないが、被写体が小さい状態だと認識できない場合があったり、人物を認識してから顔や身体にAF枠が合うまでに一瞬もたつく場合があったりしたのが少し気になったものの、認識精度は十分に高かった。特に、被写体を一度認識してからの追従性の高さは特筆すべきものがある。液晶モニターをタッチしてAFエリアを決めるタッチトラッキングも快適に動作した。

「AIプロセッシングユニット」による被写体認識機能を搭載。認識する対象によって、認識部位の切り替えや優先度などを設定できる

「AIプロセッシングユニット」による被写体認識機能を搭載。認識する対象によって、認識部位の切り替えや優先度などを設定できる

この程度の被写体距離なら問題なく顔/瞳を認識してくれた。ただし、薄暗い状況だったためか、認識までの時間に一瞬の間があるのが少し気になった

この程度の被写体距離なら問題なく顔/瞳を認識してくれた。ただし、薄暗い状況だったためか、認識までの時間に一瞬の間があるのが少し気になった

「AIプロセッシングユニット」の搭載によって、人物の胴体や頭部などの位置の認識にも対応するようになった。この写真では、被写体に後ろを向いてもらったが、この状態での人物認識が働いた

「AIプロセッシングユニット」の搭載によって、人物の胴体や頭部などの位置の認識にも対応するようになった。この写真では、被写体に後ろを向いてもらったが、この状態での人物認識が働いた

暗いシーンでもこれくらいの距離感なら瞳を瞬時にとらえてくれた。ピントが見えにくい暗い場所でこそ、この機能の有り難みを感じるというものだα7R V、FE 85mm F1.4 GM、F1.4、1/250秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:PT撮影写真(6336×9504、19.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

暗いシーンでもこれくらいの距離感なら瞳を瞬時にとらえてくれた。ピントが見えにくい暗い場所でこそ、この機能の有り難みを感じるというものだ
α7R V、FE 85mm F1.4 GM、F1.4、1/250秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート(標準)、クリエイティブルック:PT
撮影写真(6336×9504、19.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

また、「α7R V」のボディ内5軸手ブレ補正機能は、「α7R IV」の5.5段から8段へと補正効果が大幅に進化している。今回、手持ちでのスローシャッター撮影を試してみたが、焦点距離70mmの中望遠で、遠景の風景を撮った場合、シャッタースピードが1秒くらいまでであれば、高い確率でブレのない写真が撮れた。シャッタースピードが2秒になると、さすがに歩留まりが悪くなった。

手持ちでのスローシャッター撮影に挑戦してみた。シャッタースピードが1秒だと5枚中4枚がこの程度の仕上がりになった。三脚を使った場合ほどのシャープさではないが、手持ちでこの結果なら十分だα7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1秒、ISO250、ホワイトバランス:蛍光灯(温白色)、クリエイティブルック:VV撮影写真(6336×9504、20.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

手持ちでのスローシャッター撮影に挑戦してみた。シャッタースピードが1秒だと5枚中4枚がこの程度の仕上がりになった。三脚を使った場合ほどのシャープさではないが、手持ちでこの結果なら十分だ
α7R V、FE 24-70mm F2.8 GM II、70mm、F2.8、1秒、ISO250、ホワイトバランス:蛍光灯(温白色)、クリエイティブルック:VV
撮影写真(6336×9504、20.1MB、Photoshopで著作権情報を追加)

若干ボディが重くなったものの、4軸マルチアングル液晶は便利

最後に、「α7R V」の操作性を簡単にレポートしておこう。

操作性で最も評価したいのが、新たに搭載された4軸マルチアングル液晶モニター。横位置での上下チルトに加えて、横開きのバリアングルにも対応している。チルト派、バリアングル派の両者とも納得できるモニターだ。

私の場合、ファインダーを覗いて撮ることが多いため、液晶モニターを動かすことはあまりないが、それでもポートレートなどでローアングル撮影をするときなどは、この4軸マルチアングル液晶モニターは使いやすいと感じた。

独自構造の4軸マルチアングル液晶モニターを採用。チルト液晶としてもバリアングル液晶としても使えるのが便利だ

独自構造の4軸マルチアングル液晶モニターを採用。チルト液晶としてもバリアングル液晶としても使えるのが便利だ

ただし、4軸マルチアングル液晶モニターを搭載したためか、「α7R V」は、従来モデル「α7R IV」と比べて、ボディの厚みが5mmほど増し、重量も60g近く重くなっている。グリップはより握りやすくなっていてよかったのだが、「意外に大きくて重たいボディだな」というのが率直な感想だ。

まとめ より幅広いシーンで活用できる、使い勝手のよい高画素機

以上、駆け足になるが、「α7R V」のファーストインプレッションをお届けした。

このカメラのポイントは、高速化した画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載することで、より幅広いシーンで活用できる、使い勝手のよい高画素機に進化を遂げたことだと思う。「ピクセルシフトマルチ撮影」は動く被写体に対応可能となり、風景撮影で活用しやすくなった。さらに、多彩な被写体認識が可能なAFシステムを搭載し、人物や動物など、動く被写体に対する撮影のしやすさも向上している。

撮影を通じて、「αシリーズ史上最高の解像性能」をうたうモデルとしてとても魅力のあるカメラに仕上がっていると感じた。特に全体的なレスポンスとAFは大きく進歩しているので、従来モデル「α7R IV」のユーザーで、これらの点に不満を持っているのなら、買い替える価値は十分にあると言えるだろう。

撮影モデル:進藤もも

塙 真一

塙 真一

東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。海外での肖像写真撮影や街風景スナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。noteやYouTubeチャンネルも開設。
Twitter:@hanawa_pixels
note:https://note.com/hanawa_shinichi
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCzAp8D-yOMf6CebPVvq2w6g

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