レビュー

「Zシリーズ」の入門モデル、ニコン「Z 30」の動画機としての魅力を深掘りレビュー

充実した動画撮影機能を搭載する、ニコン「Z 30」

充実した動画撮影機能を搭載する、ニコン「Z 30」

前回の「静止画編」に続いて、今回はニコン「Z 30」の動画撮影機能に注目したレビューをお届けする。

近年はYouTubeやInstagramなど、動画をSNSにアップする人が増えてきている。私自身もYouTubeチャンネルを持ち、カメラのレビューや使いこなし、撮影テクニックなどを紹介しているが、始める前は何となく動画への苦手意識があった。

ただ、一見敷居が高そうに見える動画撮影だが、実際にやってみると意外に難しくない。1本の動画ができたときの達成感があり、写真撮影と違って、画に追加して動きや音で伝えられる面白さがある。

私のように「動画を始めたいけど、難しそう」思っている人も多いことだろう。そこで、今回の「動画編」では、動画撮影の面白さや、動画撮影を重視した場合のカメラ選びで重要なポイントを伝えつつ、「Z 30」の動画機としての魅力をレビューしよう。

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動画撮影では音声機能が重要。「Z 30」は大型のステレオマイクとマイク入力端子を搭載

気軽に動画を撮りたい人のカメラ選びは、カメラ本体が小型・軽量で、かつ動画撮影の機能がしっかりと備わっているかどうかがポイントになる。

機能面で注目してほしいのが「音声」だ。動画撮影は、映像だけでなく、音声も非常に重要。製品を選ぶ際は、内蔵マイクのスペックと合わせて、外部マイクを接続できるマイク入力端子が備わっているのかをチェックしてほしい。小型・軽量モデルの中にはマイク入力端子が付いていないものもあるので注意が必要だ。

その点、「Z 30」は小型・軽量ながら、高音質なステレオマイクとマイク入力端子をしっかりと搭載しているので安心だ。内蔵マイクは、ほかのDXフォーマット機の「Z 50」や「Z fc」と比べて大型で、音をクリアに収録できるようになっている。

左が「Z 30」で、右が「Z 50」。それぞれ、黄色い矢印の位置にステレオマイクを搭載。「Z 30」は「Z 50」と比べて大型のマイクを採用している

左が「Z 30」で、右が「Z 50」。それぞれ、黄色い矢印の位置にステレオマイクを搭載。「Z 30」は「Z 50」と比べて大型のマイクを採用している

「Z 30」は、大型のステレオマイクのほかにも、上面右側のコマンドダイヤルの近くに大きな動画撮影ボタンを搭載するなど、動画撮影がやりやすい工夫が施されている

「Z 30」は、大型のステレオマイクのほかにも、上面右側のコマンドダイヤルの近くに大きな動画撮影ボタンを搭載するなど、動画撮影がやりやすい工夫が施されている

「Z 30」の内蔵マイクを使用して料理の様子を撮影してみた。内蔵マイクとは思えないほどクリアな音を収録できている

上に掲載した動画をご覧いただきたいが、「Z 30」は、内蔵マイクでもかなり高音質な記録が可能だ。近接域での音の収録であれば内蔵マイクでも十分。少し離れた被写体の音を撮りたい場合は、外付けマイクを使ったほうが便利だろう。マイク入力端子が備わっているため、ガンマイクやワイヤレスマイクなど、シーンに合わせて活用できる。

また、「Z 30」は、別売オプションとして用意されている専用のウィンドマフを使用することで、外で撮影しているときに発生する風切り音を防ぐことができる。ホットシューに装着して使用するため扱いやすく、ウィンドマフ自体が劣化しにくいのがありがたい。

ホットシューに装着して使用する専用のウィンドマフ「SmallRig ウィンドマフ3859」が別売オプションで用意されている

ホットシューに装着して使用する専用のウィンドマフ「SmallRig ウィンドマフ3859」が別売オプションで用意されている

ウィンドマフのあり・なしを比較した動画。ウィンドマフを使うことで風切り音を軽減できる

小型・軽量なのでジンバルが扱いやすい

動画撮影においては、カメラが小型・軽量だと周辺機器もコンパクトにできるというメリットがある。

特に、小型・軽量なカメラはジンバルが扱いやすくなるのがよい。歩いて動画を撮影したいときや、カメラをスムーズに動かしたいときはジンバルがあると便利だが、ジンバルの大きさはカメラの重量に比例する。適切なジンバルを使用しないとブレを抑制することはできないのだ。

つまり、カメラが小型・軽量だとジンバルも小さくでき、全体の重量を軽くできるのである。重量約405g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディキャップを除く)の小型・軽量な「Z 30」であれば長時間撮影していても疲れにくく、女性の私でも手軽にジンバル撮影を行えるのはうれしい。

「Z 30」にジンバルを組み合わせたイメージ。カメラが小型・軽量なのでジンバル撮影もやりやすい(使用しているのはZHIYUNのジンバル「WEEBILL-S」)

「Z 30」にジンバルを組み合わせたイメージ。カメラが小型・軽量なのでジンバル撮影もやりやすい(使用しているのはZHIYUNのジンバル「WEEBILL-S」)

また、動画撮影ではファインダーを使用しないため、ファインダーを省略し、さらに小型・軽量化を実現しているのも「Z 30」のポイント。実は、ジンバル撮影においてもファインダーがないのはメリット。カメラの重心が低くなるため、ジンバルのバランスが取りやすくなるからだ。

左の「Z 30」は、ファインダーを省略することで、右の「Z 50」よりもコンパクトなサイズ感を実現している。カメラの重心が低く、ジンバル装着にもバランスが取りやすい

左の「Z 30」は、ファインダーを省略することで、右の「Z 50」よりもコンパクトなサイズ感を実現している。カメラの重心が低く、ジンバル装着にもバランスが取りやすい

「逆REC」を防ぐのに重要な「RECランプ」を装備

「Z 30」は、「Z 50」とは異なり、Nikonのロゴの下にRECランプを搭載している。動画撮影がスタートしたら、赤く光るというシンプルなものだが、「逆REC」を防ぐためには必要不可欠な機能だ。

逆RECとは「動画を撮り終わったと思って、RECボタンを押したら録画が始まる、つまり動画撮影を開始したはずが、なんらかのミスで動画が撮影できていなかった」という恐怖のミスである。

Nikonのロゴの下にRECランプを搭載。動画撮影において非常に重要な機能だ

Nikonのロゴの下にRECランプを搭載。動画撮影において非常に重要な機能だ

私は夫婦で「写真家夫婦上田家」というYouTubeチャンネルを運営しているが、夫が話しているシーンを「逆REC」してしまい、怒られたことがある。やり直せるシーンならいいが、一度きりしかないワンシーンを逆RECしてしまったときの恐怖を考えるとぞっとする。

RECランプが赤く光ってくれるだけで、目視で撮影中であることを確認できるため、自分撮りや遠隔で撮影するときにも安心感がある。「Z 30」のRECランプは、ガラス越しで被写体を撮影する時やRECランプの光がじゃまになるシーンではオフの設定ができ、ランプ自体の明るさも3段階で変更可能だ。

簡単設定で撮影が可能。多彩な絵作りを楽しめる機能も面白い

「Z 30」は、動画の設定を簡単に変更でき、さまざまな絵作りを楽しみながら撮影できるのも魅力だ。

動画を撮影する際は、記録するフレームレートや光源の周波数を見ながらシャッター速度を調整する必要があるが、「Z 30」は、動画撮影時にモードダイヤルを「Sモード(Pモード)」にすると、設定に合わせてシャッター速度を自動で設定してくれるのが便利。静止画撮影時の「Sモード」はシャッター速度を自分の好きなように変更できるモードだが、動画撮影の場合はシャッター速度が固定になり、環境や設定に適したシャッター速度で記録できる。

さらに、「Z 30」は、小型・軽量ながらフルフレームでの4K(4K UHD 30p)撮影が可能。「静止画編」でもご紹介したように、高感度性能が高いため、暗いシーンでも高精細な動画を楽しめるのがよい。スローモーションやタイムラプスなども簡単に撮影できる。さらに、最長記録時間が125分になり、給電しながらの撮影も可能で、長時間の撮影に対応できるのもうれしい。

絵作り機能が充実しているのも「Z 30」の魅力で、「静止画編」でご紹介した「クリエイティブピクチャーコントロール」を動画撮影でも使用できる。カメラの中でさまざまな絵作りを楽しめるため、撮って出しで思い通りの動画を撮影できるのがよい。また、静止画と動画を同じテイストで撮影できるため、動画の中に静止画を入れ込んだりしても、違和感のない動画に仕上げられるので、さまざまな表現を楽しめそうだ。

なお、「ピクチャーコントロール」の「AUTO」については、絵作りが静止画と動画で異なっている。静止画撮影、動画撮影のそれぞれに適した絵作りになっているため、「AUTO」のまま撮影しても十分に美しい映像を記録できる。

「クリエイティブピクチャーコントロール」を使って撮影。「クリエイティブピクチャーコントロール」を使い分けることで多彩な表現を楽しめる

手持ちでの動画撮影では手ブレの発生が気になるが、「Z 30」は、コンパクトながら深みのあるグリップなのでしっかりとカメラをホールドできるうえ、電子手ブレ補正を搭載しているため、より安定した映像を記録できる。階段を上ったり、激しい動きをしたりする場合はジンバルを活用したほうがよいが、大きくカメラが揺れないように気をつけ付ければ、ある程度の手ブレはカメラのみでしっかりと補正できる。

ショートクリップをつなぎ合わせて1本の動画に仕上げる

最後に、「Z 30」を使って撮影・制作した1本の動画を紹介しよう。

この動画は、5つのカットをつなげたものになる。「動画撮影を始めてみたいけど、どうしたらいいのかわからない」という人におすすめしたいのが、ワンカットを長く撮影するのではなく、この動画のようにショートクリップを撮影し、つなぎ合わせること。こうすることで、その場の情景が伝わりやすくなり、印象的な動画に仕上がる。

今回は、高精細な動画に仕上げたいと思い、4K解像度で撮影している。そして、海辺の雰囲気を演出するために「クリエイティブピクチャーコントロール」の「デニム」を使用し、適用度は70に設定。そうすることで、青に深みが出て、おしゃれな印象にまとめることができた。

「クリエイティブピクチャーコントロール」は、撮って出しでイメージ通りの動画に仕上がるので、複数のカットを撮影した場合でも、それぞれのカットをつなぎ合わせるだけで編集が完了するのが便利。何かと難しい印象のある動画編集を簡単にする機能なので、積極的に活用してほしい。

以下に、5つのカットそれぞれの設定や狙いをまとめる。

1カット目

1カット目のキャプチャー画像

1カット目のキャプチャー画像

始まりはタイムラプス動画から。雲の流れを表現したいと思い、撮影間隔を2秒に設定。露出平滑化機能を「する」に設定しておくと、露出のばらつきを抑えてくれて、明るさの変化をスムーズに記録できる。朝日や夕日など、撮影中に明るさが変化する被写体を撮影するときに活用したい。

2カット目と3カット目

2カット目のキャプチャー画像

2カット目のキャプチャー画像

3カット目のキャプチャー画像

3カット目のキャプチャー画像

動画を撮影するときは「寄り」と「引き」で同じシーンを撮影しておくと臨場感が生まれやすい。2カット目で「引き」で船が移動する全景を、3カット目で「寄り」で海の水面を撮影し、海の雰囲気が伝わりやすい構成にした。

4カット目

4カット目のキャプチャー画像

4カット目のキャプチャー画像

「Z 30」には、被写体を検出してピント合わせを自動的に行う機能が搭載されている。被写体が「人物」の場合は顔や瞳を検出し、「動物」の場合は犬や猫の顔・瞳を検出してピントを合わせてくれる。このカットでは、こちらに向かってくる犬にしっかりとピント合わせ続けていることがわかる。

5カット目

5カット目のキャプチャー画像

5カット目のキャプチャー画像

エンディングには海の全景のカットを選んだ。全カットを「Z 30」のキッドレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3」で撮影している。このレンズは、小型・軽量ながら高画質、静止画だけでなく動画の撮影にも適した万能レンズだ。ズームレンズを使用することで、さまざまなバリエーションを撮影することができる。

動画に苦手意識のある人は短いカットを撮影して、1本の動画につなげると、動画への理解が深まっていくだろう。まずは、10秒程度の短い動画を撮影して、つなぎ合わせてみてほしい。カットを並べる順番を工夫したり、動画のイメージに合わせて音楽を選んだりと、静止画と違って制作の工程は増えるが、1本の動画が完成したときの達成感はかなり高い。ぜひ、ここに掲載した動画を参考にして、動画撮影にもチャレンジしていただきたい。

まとめ 静止画も動画も存分に楽しめる小型・軽量モデル。サブ機にもおすすめ

「ニコンVlogカメラ」として2022年8月に登場した「Z 30」。本記事では「Z 30」の動画機としての魅力をレビューしたが、動画初心者でも扱いやすいカメラということが伝わっただろうか? 簡単設定で動画を撮影できるように設計されているうえ、多彩な機能を搭載しており、「これから動画を始めてみたい!」という人にぴったり。小型・軽量ながら高画質な動画撮影を楽しめるので、サブ機としてもおすすめだ。

さらに、前回の「静止画編」でも紹介したように、「Z 30」は静止画撮影のレベルも高い。「静止画も動画も両方楽しみたい!」という人にとってもおすすめのカメラと言える。

私自身も発売日に「Z 30」を購入し、静止画用としても動画用としても使用している。気軽に持ち運べるサイズ感と、「Zシリーズ」ならではの高画質を持ち合わせており、撮りたい瞬間を美しく表現できる1台だ。

コムロミホ

コムロミホ

文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。
また、YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。

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