特別企画

ソニー「α7 IV」と同時にCFexpress Type Aカードを買ったら快適すぎた話

この秋、ソニーのフルサイズミラーレスカメラを「α7R IV」から「α7 IV」に買い替えました。買い替えの理由はいろいろありますが、「α7 IV」は、自分にとって期待どおりの性能を持つカメラで、とても満足しています。特に感激したのが、同時に購入したCFexpress Type Aメモリーカードの使い勝手のよさ。本当に快適すぎたので、多くの人にこの喜びを共有したいと思い、原稿にまとめました。

「α7 IV」を通じて、CFexpress Type Aカードの使い勝手のよさを紹介します

「α7 IV」を通じて、CFexpress Type Aカードの使い勝手のよさを紹介します

CFexpressカードとは?

CFexpressとは、CompactFlash Association(CFA)によって、2019年2月に仕様が策定された次世代のメモリーカード規格。デジタルカメラのメモリーカードは、SDメモリーカード(以前にはCFカードも)が主流となって久しいのですが、カメラ機能の進化や高画素化、動画撮影機能の向上などから、より高性能かつ大容量なメモリーカードが求められるようになった結果、新しく登場した規格です。

CFexpressカードは、Type A とType Bの2種類があります。Type Aのサイズは20(幅)×28(高さ)×2.8(奥行)mmで、SDカードの24(幅)×32(高さ)×2.1(奥行)よりも少し小さいです。最高速度の理論値は1000MB/秒。今のところ、ソニーの最新フルサイズミラーレスカメラの多くが採用しています。

CFexpress Type A カード。SDカードよりもひと回り小さいサイズです

CFexpress Type A カード。SDカードよりもひと回り小さいサイズです

もう1種類のType Bは、38.5(幅)×29.8(高さ)×3.8(奥行)mmと、SDカードより大きく、CFカードより小さなサイズです。最高速度の理論値は2000MB/秒。Type Bを採用するモデルは比較的多く、現行機種では、キヤノン、ニコン、富士フイルムのミラーレスカメラの上位モデルが対応しています。

CFexpress Type B カード。SDカードよりひと回り大きいサイズです

CFexpress Type B カード。SDカードよりひと回り大きいサイズです

UHS-II対応のSDカードは最高速度の理論値が312 MB/秒ですので、1000MB/秒のType A、2000MB/秒のType Bの転送速度がどれほど速いかはわかってもらえると思います。

ただ、当たり前ではありますが、SDカードとは規格の異なるCFexpressカードには、対応したカードリーダーが必要となります。それも結構なお値段ですので、CFexpressカードを初めて導入する際に、思った以上の出費になってしまうのが玉にキズだったりします……。

大切なことですので初めに言っておきました。

信頼できるCFexpressカードリーダーはそれなりの値段がします。偉大な力を手に入れるためには大きな犠牲が必要なのですね

信頼できるCFexpressカードリーダーはそれなりの値段がします。偉大な力を手に入れるためには大きな犠牲が必要なのですね

中級機ながらCFexpressカードが使えるソニーの「α7 IV」

それでは、本題に入りたいと思います。

冒頭でも述べたように、私はこの秋、ソニーのフルサイズミラーレスカメラ「α7 IV」を購入しました。「α7シリーズ」の中では中級モデルに位置する製品です。

ソニー「α7 IV」。有効約3300万画素のフルサイズミラーレスカメラです。性能のバランスがよく気に入って使っています

ソニー「α7 IV」。有効約3300万画素のフルサイズミラーレスカメラです。性能のバランスがよく気に入って使っています

「α7 IV」は、中級モデルながらCFexpress Type Aカードが使えます。中級モデルだとCFexpressカードの採用は見送られ、SDカードのダブルスロットになることが多いので、個人的には購入前から注目する仕様でした。

「α7 IV」は、上部のカードスロットがCFexpress Type Aカードに対応しています。中級モデルでのCFexpress採用は比較的希少と言ってよいのではないでしょうか

「α7 IV」は、上部のカードスロットがCFexpress Type Aカードに対応しています。中級モデルでのCFexpress採用は比較的希少と言ってよいのではないでしょうか

しかも、CFexpressカードが使えるカードスロットはSDカードにも対応しているので、同じ規格のSDカードを上下スロットに差し込んで、安定した同時記録を行うこともできます。

上部はCFexpress Type AカードとSDカードに対応。SDカード2枚のダブルスロットとして使うこともできます

上部はCFexpress Type AカードとSDカードに対応。SDカード2枚のダブルスロットとして使うこともできます

CFexpressカード初心者にとっては、手持ちのSDカードを活用しながら、片方だけとはいえCFexpressカードも使えるというスタイルに優しさを感じ、初購入に踏み切れたというわけです。

ソニー「α7 IV」と同時にCFexpressカードを購入したワケ

ソニー「α7 IV」と同時にCFexpress Type Aカードを購入した理由は、連続撮影時のバッファの渋滞を解消したかったからです。ここでいう連続撮影とは、いわゆる連写に限らず、撮影現場で必要な被写体を、単写または露出ブラケットで、次々に撮るような状態を含みます。

以前使っていた「α7R IV」のような高画素機はもちろんですが、さらにその前に使っていた「α7 III」でも、撮影するシーンや枚数が多い現場では、すぐにバッファがいっぱいになってしまうことが多く、データ書き込み中を示す赤いランプが消えるのを空しく待っていたものでした。

そして、大きな期待を込めて購入したCFexpress Type Aカードは、どんなに連続で撮影してもまったく止まることのないすばらしい結果を見せてくれました。

と、個人の感想を述べていても仕方ありませんので、「α7 IV」を使って、CFexpress Type AカードとSDカードで、連続撮影時の止まり具合をテストしてみました。止まり具合というのは、わかりやすく言うと、パシャパシャパシャと連続で記録できていたデータが、バッファがいっぱいになることで、パシャン…パッシャン…と滞ってしまう状態のことです。

テストは、「α7 IV」と同時に購入したCFexpress Type Aカード「CEA-G80T」(ソニー)のほか、SDカードとしてはクラス最速となるUHS-II対応のSDXCカード「SF-G64T」(ソニー)と、規格が古くて比較がフェアでないのではないかと心配になる、UHS-I対応のSDHCカード(サンディスク製)を使って行いました。

エントリー(1)はソニーのCFexpress Type Aカード「CEA-G80T」。読み取り速度は最大800MB/秒です

エントリー(1)はソニーのCFexpress Type Aカード「CEA-G80T」。読み取り速度は最大800MB/秒です

エントリー(2)は同じくソニーの「SF-G64T」。UHS-II 対応のSDXCカードで、読み取り速度は最大300MB/秒と、SDカードとしてはトップクラスの速度を誇ります

エントリー(2)は同じくソニーの「SF-G64T」。UHS-II 対応のSDXCカードで、読み取り速度は最大300MB/秒と、SDカードとしてはトップクラスの速度を誇ります

エントリー(3)はUHS-I対応のSDHCカード(サンディスク製)。読み取り速度は最大95MB/秒。昔使っていたSDメモリーカードで、今は使っていません

エントリー(3)はUHS-I対応のSDHCカード(サンディスク製)。読み取り速度は最大95MB/秒。昔使っていたSDメモリーカードで、今は使っていません

これらのメモリーカードを使い、「α7 IV」の連写撮影で、何枚目に連写がストップするかを確認した結果が以下のとおりです。画質はJPEG(X.FINE、33M)+RAWで撮影していますので、記録されるデータ数は撮影枚数の2倍になります。

(1)CFexpress Type A カード「CEA-G80T」:1919枚(容量の限界まで連写が止まらず)
(2)UHS-II SDXCカード「SF-G64T」:32枚
(3)UHS-I SDHCカード:20枚

これをグラフにしてみると以下のとおり。

メモリーカードの違いで、連写が何枚目で止まるのかを視覚化してみました。CFexpress Type Aカードの1919枚は、メモリーカードの容量が上限に達したため。大容量なら枚数はもっと伸びたと思います

メモリーカードの違いで、連写が何枚目で止まるのかを視覚化してみました。CFexpress Type Aカードの1919枚は、メモリーカードの容量が上限に達したため。大容量なら枚数はもっと伸びたと思います

以上の条件であれば、CFexpress Type Aカードは圧倒的に速い書き込み速度で、少なくとも容量80GBでは連写撮影が止まることなく、容量の限界まで撮り続けられることがわかりました。UHS-I対応のSDHCカードはともかく、SDカードとしてはクラス最速の「SF-G64T」はもう少し健闘するかと思ったのですが、CFexpres Type A カードとSDカードには越えられない壁があるようです。32枚とか20枚で連写がストップとなると、正直「フィルムですか?!」と思ってしまいます。

撮影後にデータを保存するたびに幸せを感じる

連続撮影が止まらないことを願って購入したCFexpress Type Aカードですが、書き込み速度だけでなく読み取り速度が速いことも大きなメリットでした。撮影から帰宅後、PCへのデータ保存がとても楽です。

撮影が終わったらカードリーダーを使ってPCにデータを保存。この作業がスムースに進むと楽ですよね

撮影が終わったらカードリーダーを使ってPCにデータを保存。この作業がスムースに進むと楽ですよね

これも、メモリーカードの種類でどのくらい速度が違うか、つまりPCへの保存作業がどのくらい早く終わるかをテストしてみたいと思います。

テストは、「α7 IV」で撮影したRAW+JPEG 500枚(RAW+JPEGなので計1000ファイル)を、CFexpress Type Aカードの「CEA-G80T」と、UHS-II対応のSDXCカード「SF-G64T」、UHS-I対応のSDHCカードの3種類それぞれにコピーし、それぞれPCへの転送にかかる時間を測定しました。

なお、メモリーカードリーダーとPCは、USB3.2 Gen2で接続しています。また、転送にかかった時間は3回の計測の平均で求めています。

(1)CFexpress Type A カード「CEA-G80T」:41秒
(2)UHS-II SDXCカード「SF-G64T」:80秒(1分20秒)
(3)UHS-I SDHCカード:221秒(3分41秒)

これをグラフにしてみると以下のとおり。

メモリーカードの違いでPCへのデータ転送時間がどのくらい変わるかを視覚化してみました。測定値は3回計測した平均値になります

メモリーカードの違いでPCへのデータ転送時間がどのくらい変わるかを視覚化してみました。測定値は3回計測した平均値になります

これまた非常にわかりやすい結果となりました。CFexpress Type AカードはRAW+JPEG 500枚をわずか41秒で転送できるのに対し、UHS-II対応のSDXCカードは約2倍となる1分20秒かかり、UHS-I対応のSDHCカードに至っては5倍以上の3分41秒もかかっています。RAW+JPEG 500枚程度ならこのくらいの差で済みますが、もしCFexpress Type Aカードで転送時間に30分かかる大容量データですと、計算上は、SDXC UHS-IIカードなら約1時間、SDHC UHS-Iカードだと2時間半以上もの時間を要することになってしまいます。

撮影旅行などに出かけた際には、大量のデータを宿に戻ってPCに保存することになりますが、へとへとに疲れたときは少しでも早く保存作業を終わらせたいものです。そこまで大げさでなくとも、日々の撮影で保存作業が「ヒュン!」と一瞬で終わるさまを見るたびに、「買ってよかった」と幸せな気分になれます。

さらに高速なCFexpress Type Bカードの使用で注意したいこと

以上のテスト結果は、ソニー「α7 IV」と、それに対応したCFexpress Type Aカードを使い、PCとの接続をUSB3.2 Gen2で行った場合の話です。

それなら、CFexpress Type Aカードより最大転送速度が速い、CFexpress Type Bカードを使えるデジタルカメラならもっと快適なのではないかと思うかもしれません。なにしろ同じソニー製のメモリーカードでも、CFexpress Type Aカードの最大転送速度が800MB/秒なのに対し、CFexpress Type Bカードは1700MB/秒と倍以上の速さを誇っています。

CFexpress Type Bカード。スピード・容量ともCFexpress Type Aカードをしのぐ製品が多く登場しています

CFexpress Type Bカード。スピード・容量ともCFexpress Type Aカードをしのぐ製品が多く登場しています

結論から言えば、当然、CFexpress Type Bカードのほうが、撮影するにしてもデータ保存するにしても、より快適なことが多いでしょう。同じCFexpress Type Bカードでも、モデルによっては必ずしもCFexpress Type Aカードより速いわけではないので、その点は製品選びの際にチェックが必要ですが、特に撮影時は、CFexpress Type Bカードのほうがメリットを感じることが多くあります。

注意してほしいのは、PCへデータを保存するときです。試しにCFexpress Type AカードとCFexpress Type Bカードを使って、筆者のPCへの転送速度を測定してみました。転送するデータには、CFexpress Type AカードとSDカードの比較でも使ったRAW+JPEG 500枚のデータを用いています。

(1)CFexpress Type Aカード「CEA-G80T」:41秒
(2)CFexpress Type Bカード「CEB-G256」:39秒

グラフ化すると以下のとおりになります。

CFexpressカードの種類の違いで転送速度がどのくらい違うかを視覚化してみました。あくまで筆者のPCを使った場合で、CFexpressカード本来の速度を示すものではありませんので注意してください

CFexpressカードの種類の違いで転送速度がどのくらい違うかを視覚化してみました。あくまで筆者のPCを使った場合で、CFexpressカード本来の速度を示すものではありませんので注意してください

最大転送速度が1700MB/秒のCFexpress Type Bカードのはずですが、800MB/秒のCFexpress Type Aカードとほとんど変わらない結果になってしまいました。

なぜこんなことが起こるのかと言いますと、メモリーカードリーダーのインターフェイスがUSB3.2 Gen2であることと、筆者のPCもUSB3.2 Gen2までしか搭載していないからです。USB3.2 Gen2の最高速度の理論値は10Gb/秒(1250MB/秒)なので、今回使用したCFexpress Type Bカードの最大転送速度1700MB/秒ではそもそも利用できないというということになります。

今回使用したメモリーカードリーダーとPCは、ともにインターフェイスがUSB3.2 Gen2でした。CFexpress Type Bカードが持つ性能を生かしきれません

今回使用したメモリーカードリーダーとPCは、ともにインターフェイスがUSB3.2 Gen2でした。CFexpress Type Bカードが持つ性能を生かしきれません

CFexpress Type Bカードの性能を生かすためには、USB3.2 Gen2よりも転送速度の速いThunderbolt対応のメモリーカードリーダー、PC、ケーブルを用意する必要があります。デジタルカメラを買い、CFexpress Type Bカードを買い、メモリーカードリーダーも買ったうえで、さらにPCもとなると相当な覚悟が必要になります。

その点、ソニーのデジタルカメラは、当面はCFexpress Type Aカードを採用していくと思われますので、PCの新調はしばらくの猶予がもらえます。やや後ろ向きかもしれませんが、その意味でも、CFexpress Type Aカードを「買ってよかった」と思えるのです。

まとめ 撮影のモチベーションが上がる圧倒的な速さ!

初挑戦の心持ちで「α7 IV」と同時購入したCFexpress Type A カードですが、書き込むときも読み込むときも圧倒的に「速い!」というのが、ここまで便利だとは思ってもいませんでした。これは、SDカードがSDHCからSDXCになったときや、UHS-IがUHS-IIになったときとは別次元です。

「そんなに枚数を撮らないから高速なカードは必要ない」という意見もよくわかります。しかしながら、ここまで快適ですと「撮らないから必要ない」が「撮れるのでどんどん撮りたくなる」へと、撮影のモチベーションを変化させてくれるので驚きです。

本原稿では触れませんでしたが、購入したソニーのCFexpress TypeAカードは、「VPG400」(400MB/秒の最低書き込み継続速度を保証する規格)に対応しているので、動画撮影をメインとする人にとっても安心感の高いメモリーカードと言えます。

この秋、高画素フルサイズミラーレスカメラの新モデル「α7R V」が登場したことによって、「α7シリーズ」の上中位機はすべてCFexpress Type Aカード対応となりました。もしも、CFexpress Type Aカード対応の「α7シリーズ」を所有しているけど(または購入検討だけど)、CFexpressカードはまだ使ったことがないという人がいましたら、ぜひ手に入れて試してみてもらいたいと思います。カメラの性能をいかんなく発揮してくれることでしょう。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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