特別企画

表現の幅が広がる! クリップオンストロボ「Profoto A10」を使ってブツ撮りをしてみよう【前編】

今回は、撮影の幅を広げるアイテムとして欠かせない「ストロボ」を取り上げよう。プロフォトのクリップオンストロボ「Profoto A10」を使って、ブツ撮りでのストロボ活用方法を詳しく解説する。自然光では表現できないライティングテクニックを紹介しつつ、クリップオンストロボの潜在能力を前編と後編の2回にわたってお伝えしたい。平たく言えば「ストロボもっと使ってみようよ!」という企画である。

円形の発光部が特徴的な「Profoto A10」。減光部をなだらかに、自然な光で表現できるクリップオンストロボだ。最大出力は76Wsで、カメラメーカー純正のフラッグシップモデルと同程度のパワフルさを持っている

円形の発光部が特徴的な「Profoto A10」。減光部をなだらかに、自然な光で表現できるクリップオンストロボだ。最大出力は76Wsで、カメラメーカー純正のフラッグシップモデルと同程度のパワフルさを持っている

人気が高まるクリップオンストロボ。その中で存在感を放つプロフォト

近年、カメラのホットシューに取り付けて使用できるクリップオンストロボが盛り上がりを見せている。

その理由は、デジタルカメラの高感度画質が向上したことで、低出力のストロボが存在感を発揮するようになったのが大きい。もちろん、撮影の狙いや被写体にもよるが、それほど出力が高くないクリップオンストロボでも、実用的に問題なく使用できるシーンが増えてきているのだ。

ニーズの高まりを受け、カメラメーカーだけでなく、これまで大型ストロボをメインにしてきたストロボメーカーもクリップオンストロボを取り扱うようになってきた。その結果、光質や操作性にこだわった製品が数多く登場している。自分の撮影スタイルや予算に応じて選択肢が増えたことはすばらしく、ストロボの敷居を下げてくれる意味でも非常に歓迎すべき潮流だ。

その中で特に存在感を放っているのが、プロフェッショナル向けのストロボを手がけるプロフォトだ。同社は、プロ向けストロボの開発で培った技術を搭載する、高性能なクリップオンストロボを展開しており、2017年に初代モデル「Profoto A1」を、2019年発売に2世代目の「Profoto A1X」をリリース。そして、2020年に発売した最新モデルが、今回の撮影で使用した「Profoto A10」なのである。

左が最新モデル「Profoto A10」で、右が2世代目の「Profoto A1X」。ご覧のとおり、外観はほぼ同じだ。両モデルともリチウムイオンバッテリーを採用し、正面部分に取り付けて使用する

左が最新モデル「Profoto A10」で、右が2世代目の「Profoto A1X」。ご覧のとおり、外観はほぼ同じだ。両モデルともリチウムイオンバッテリーを採用し、正面部分に取り付けて使用する

2世代目の「Profoto A1X」は、初代モデル「Profoto A1」よりもバッテリー寿命が伸び、リサイクルタイム(発光後に、次の発光が可能になるまでのチャージ時間)も1.2秒から1.0秒に短縮。ヘッドの回転、角度調整がよりスムーズに行えるようになった。

最新モデル「Profoto A10」は、2世代目の「Profoto A1X」をベースに、Bluetoothによる「Profoto AirXシステム」を搭載しているのが特徴。スマートフォンからアプリ経由で機器を制御できるだけでなく、スマートフォンのカメラを使って撮影を行うこともできる。それ以外の性能は「Profoto A1X」と同じだ。価格.com最安価格は130,930円(キヤノン用、税込、2022年12月5日現在)で、クリップオンストロボとしては高額だが、光質と使い勝手にすぐれており、その価値は十分にある。

ちなみに、プロフォトは2022年6月、クリップオンタイプではないが、超小型の「Profoto A2」を発売した。最大出力は100Ws。多灯ライティングを行うならば、「Profoto A10」と併用するのもよいだろう。希望小売価格は144,980円(税込)

ちなみに、プロフォトは2022年6月、クリップオンタイプではないが、超小型の「Profoto A2」を発売した。最大出力は100Ws。多灯ライティングを行うならば、「Profoto A10」と併用するのもよいだろう。希望小売価格は144,980円(税込)

オフカメラで使用できるのがクリップオンストロボの魅力

最新のクリップオンストロボは、小型・軽量で携行性にすぐれ、小回りが効くのが美点だが、もうひとつ押さえておきたい特徴がある。それは、カメラに取り付けて(オンカメラで)使えるだけでなく、カメラから取り外し、離れた場所にセットして(オフカメラで)使えること。突き詰めれば、オフカメラで使える点にこそクリップオンストロボの魅力があると言ってもいい。

オフカメラでのクリップオンストロボの使用例。バーンドアというアイテムを使って逆光を作っているところだ。このあたりは後編のレビューで詳しく解説する。いずれにせよオフカメラにすることで、さまざまなライティングを実践でき、使用できるアクセサリーの幅も広がる

オフカメラでのクリップオンストロボの使用例。バーンドアというアイテムを使って逆光を作っているところだ。このあたりは後編のレビューで詳しく解説する。いずれにせよオフカメラにすることで、さまざまなライティングを実践でき、使用できるアクセサリーの幅も広がる

各社がオフカメラでの使用に力を注ぎ、利便性を追求することで、最新のクリップオンストロボは使い勝手がかなりよくなっている。もちろん光質にもこだわっているが、操作性の向上や、オフカメラで使用するためのアクセサリーの充実を図り、その形をアップデートしてきたのである。

この流れはプロフォトが主導してきた側面もある。プロフォトのクリップオンストロボは大光量かつパワフルで、リサイクルタイムも非常に短い。操作がシンプルかつ直感的で、何と言ってもアクセサリーの選択肢が多い。さまざまな撮影に対応でき、その都度クリエイティブなライティングが楽しめる。ちょっとほめすぎかもしれないが、これは事実なので仕方ない。価格は割高に見えるが、それに見合うパフォーマンスを提供してくれる信頼できるアイテムなのだ。

「Profoto A10」の特徴をチェック。簡易な操作性に注目

続いて、「Profoto A10」の特徴を詳しく紹介していこう。

「Profoto A10」の主な特徴
・美しい光を作り出すラウンドヘッド
・最大出力76Wsでパワフル
・出力レンジ9f-stops(2.0-10)で大光量から微光量発光まで対応
・TTL発光、ハイスピードシンクロ(HSS)に対応
・モデリングライト:LED
・大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載、フルパワーで最大450回発光可能
・リサイクルタイム:フルパワー発光時1.0秒
・ヘッドは90度の角度調整と360度の回転が可能
・Profoto Clicライトシェーピングツールに対応
・専用アプリの使用で、スマートフォン(iPhone、Android)から操作・撮影が可能
・Bluetooth対応AirX搭載
・キヤノン、ニコン、ソニー、富士フイルムの各ホットシューに対応
・サイズ:約7.5(幅)×16.5(長さ)×10.8cm(高さ)mm
・重量:約560g(バッテリー含む)
・価格.com最安価格129,950円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

「Profoto A10」は、最大出力76Wsの大光量や短いリサイクルタイムなど、高い基本性能を持つモデルだ。個人的には、そうした性能の高さと合わせて、プロフォトのクリップオンストロボがすぐれているところとして強調したいのが、その簡易な操作性である。

「Profoto A10」の背面。大きな液晶画面にダイヤルとボタンだけの非常にシンプルな仕様で直感的な操作が可能。発光量を表す数字も見やすい。液晶がタッチパネルならさらに便利だが、ぜいたくは言わない

「Profoto A10」の背面。大きな液晶画面にダイヤルとボタンだけの非常にシンプルな仕様で直感的な操作が可能。発光量を表す数字も見やすい。液晶がタッチパネルならさらに便利だが、ぜいたくは言わない

サイドにはTTL発光とマニュアル発光の切り替えスイッチがある。変更したいときにすぐ切り替えられるのがよい

サイドにはTTL発光とマニュアル発光の切り替えスイッチがある。変更したいときにすぐ切り替えられるのがよい

プロフォトのクリップオンストロボは、TTL発光(カメラ側の設定値に合わせて、自動で最適な光量を割り出し発光する機能)とマニュアル発光を自在に切り替えながら使用できる。これも使い勝手のうえで大きなポイントだ。

特に便利なのは、TTL発光で割り出した光量を、そのままマニュアル発光に移行できる点。TTL発光はその都度測光しているため、同じシチュエーションで撮り続けるならば、光量を固定したほうが露出が安定して撮影は楽になる。クリップオンストロボの中にはTTL発光とマニュアル発光が連動しないものもあるので、メーカーを問わず、クリップオンストロボの購入を検討する際は、ぜひこの仕様に注目してほしい。

ヘッドは90度の角度調整と360度の回転が可能。「Profoto A10」に限らず、ヘッドの向きを変えられるのもクリップオンストロボの特徴だ。エントリーモデルではヘッドが固定式で調整できない機種もあるので注意

ヘッドは90度の角度調整と360度の回転が可能。「Profoto A10」に限らず、ヘッドの向きを変えられるのもクリップオンストロボの特徴だ。エントリーモデルではヘッドが固定式で調整できない機種もあるので注意

発光部がマグネットになっているのも大きな特徴。対応アクセサリーが瞬時にセットできる。これはグリッドを装着しているところ

発光部がマグネットになっているのも大きな特徴。対応アクセサリーが瞬時にセットできる。これはグリッドを装着しているところ

オフカメラで使うならコマンダーは必須アイテム

ストロボをオフカメラでワイヤレス発光するのに欠かせないのが、離れたところにあるストロボと連携するコマンダーだ。コマンダーはカメラのホットシューに取り付けて使用し、撮影時にストロボを発光させる役割を担う。プロフォトでは「Air Remote」がこれに当たり、製品としては、「Air Remote TTL」「Profoto Connect」「Profoto Connect Pro」など4種類が用意されている。

Air Remote TTL

TTL発光やハイスピードシンクロ(HSS)に対応した「Air Remote TTL」。8チャンネルごとに最大3グループでストロボをコントロール可能。有効範囲は最大300m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、オリンパス/パナソニック用がある。価格.com最安価格は32,274円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

TTL発光やハイスピードシンクロ(HSS)に対応した「Air Remote TTL」。8チャンネルごとに最大3グループでストロボをコントロール可能。有効範囲は最大300m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、オリンパス/パナソニック用がある。価格.com最安価格は32,274円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

Profoto Connect

ボタンのないシンプルなコマンダー「Profoto Connect」。設定はオート、マニュアル、電源オフのみ。Profoto Controlアプリを使いスマートフォンから操作することでストロボを制御できる。最大100チャンネル利用可能。有効範囲は最大300m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、オリンパス/パナソニック用がある。価格.com最安価格は25,740円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

ボタンのないシンプルなコマンダー「Profoto Connect」。設定はオート、マニュアル、電源オフのみ。Profoto Controlアプリを使いスマートフォンから操作することでストロボを制御できる。最大100チャンネル利用可能。有効範囲は最大300m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、オリンパス/パナソニック用がある。価格.com最安価格は25,740円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

Profoto Connect Pro

2022年に発売された最新モデル「Profoto Connect Pro」。ストロボの光量を表示できるのが特徴。大型ディスプレイに表示される出力を確認、変更しながら撮影できる。100チャンネル各6グループに対応。Profoto Controlアプリからは設定内容の確認が可能。有効範囲は最大100m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、ライカ用、TTL非対応モデル用がある。価格.com最安価格は51,084円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

2022年に発売された最新モデル「Profoto Connect Pro」。ストロボの光量を表示できるのが特徴。大型ディスプレイに表示される出力を確認、変更しながら撮影できる。100チャンネル各6グループに対応。Profoto Controlアプリからは設定内容の確認が可能。有効範囲は最大100m。キヤノン用、ニコン用、ソニー用、富士フイルム用、ライカ用、TTL非対応モデル用がある。価格.com最安価格は51,084円(キヤノン用、税込、2022年12月12日現在)

コマンダーは、なるべく、使用するストロボと同じメーカーの互換性をしっかりと確保したものを揃えよう。プロフォトだったらプロフォトのコマンダーがおすすめということだ。異なるメーカーのものになると、TTL発光やハイスピードシンクロ(HSS)などの機能が利用できなくなったりするからだ。

自然光と「ライティングした光」の結果を比較する

では、実際に「Profoto A10」を使ってのライティングを紹介していこう。自然光で撮ったものと比較しながら、その効果を確認していく。

今回の撮影は、コマンダーに「Air Remote TTL-C」を、カメラにフルサイズミラーレス「EOS R6」を使用。新発売の「Clic OCF アダプター II」を使って「Profoto A10」をスタンドにセットし、「アンブレラ ディープ トランスルーセント(Mサイズ)」を取り付けた。このアンブレラは透過型で、窓際の自然光のようなやわらかな光を発光できるのが魅力だ。

撮影はTTL発光を利用し、その都度最適な光量をストロボ側で割り出している。

スタンドに取り付けた「Clic OCF アダプター II」。アンブレラやソフトボックスなどをセットできる。プロフォトのクリップオンストロボを使う際にぜひ利用したいアイテムだ

スタンドに取り付けた「Clic OCF アダプター II」。アンブレラやソフトボックスなどをセットできる。プロフォトのクリップオンストロボを使う際にぜひ利用したいアイテムだ

「Clic OCF アダプター II」はマグネット式のため、同じくマグネット式の「Profoto A10」をそのまま装着できる

「Clic OCF アダプター II」はマグネット式のため、同じくマグネット式の「Profoto A10」をそのまま装着できる

さらに、「Clic OCF アダプター II」に「アンブレラ ディープ トランスルーセント(Mサイズ)」を装着。アンブレラの中心付近に向けて光が照射され、透過したやわらかい光が被写体に当たる。ストロボが向いている方向に被写体を配置する格好になる

さらに、「Clic OCF アダプター II」に「アンブレラ ディープ トランスルーセント(Mサイズ)」を装着。アンブレラの中心付近に向けて光が照射され、透過したやわらかい光が被写体に当たる。ストロボが向いている方向に被写体を配置する格好になる

トランスルーセントを使用する際は、別売のバックパネルも一緒に使いたい。背後に漏れる光をしっかり防ぎながら撮影できる。光量も落ちない

トランスルーセントを使用する際は、別売のバックパネルも一緒に使いたい。背後に漏れる光をしっかり防ぎながら撮影できる。光量も落ちない

「アンブレラ ディープ トランスルーセント(Mサイズ)」を使って撮影

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/160秒、ISO100撮影写真(5472×3648、7.2MB)

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/160秒、ISO100
撮影写真(5472×3648、7.2MB)

向かって右サイドから「アンブレラ ディープ トランスルーセント(Mサイズ)」をセットしてストロボを照射した。美しい陰影とともに、小物が立体的に撮影できている。背景紙のゴツゴツとした質感も表現されている。

ストロボなしで撮影

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/25秒、ISO800撮影写真(5472×3648、9.1MB)

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/25秒、ISO800
撮影写真(5472×3648、9.1MB)

やわらかい質感だが、室内灯がやや黄色く、被写体にそのまま色が被っている。立体感は乏しい。

オンストロボで撮影

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/200秒、ISO100撮影写真(5472×3648、7.6MB)

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/200秒、ISO100
撮影写真(5472×3648、7.6MB)

光が固く、まるで順光を受けたかのような全体的にのっぺりとした仕上がりになった。

バウンス光で撮影

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/160秒、ISO100撮影写真(5472×3648、6.7MB)

EOS R6、RF24-105mm F4 L IS USM、105mm、F11、1/160秒、ISO100
撮影写真(5472×3648、6.7MB)

オンストロボで発光部を天井に向け、バウンス光にして撮影。天井に向けてストロボを照射することで、やわらかい光が天井から降り注ぐ格好になり、陰影のないフラットな仕上がりになった。

この4枚の写真を見て注目してほしいのは、ストロボを用いることで、ライティングを変えながら印象の違う写真を撮影できるということ。どの写真がいいかということではなく、自分の表現意図に応じて仕上がりを選べるということだ。ストロボを使えば、表現の幅が広がるのである。

ストロボ光と自然光のバランスを考えよう

ストロボライティングでは、100%ストロボ光のみで照射することもあるが、自然光とうまくなじませながら描写することも多い。これはブツ撮りだけでなく、ポートレートでも同じだ。なじませたほうが、ライティングはうまくいきやすい。

以下に掲載する写真は、自然光をベースに天井バウンス(天井にストロボの光を当てて光を拡散させる方法)で「Profoto A10」を1灯照射したものになる。まず自然光のみで露出を決め、少しずつストロボの光量を上げながら、最適な露出になる地点を探った。発光量はマニュアル発光で固定している。つまり、ストロボを照射した写真はすべて同じ発光量というわけだ。

天井バウンス+自然光

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/320秒、ISO100撮影写真(3648×5472、5.9MB)

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/320秒、ISO100
撮影写真(3648×5472、5.9MB)

自然光のみ

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/320秒、ISO100撮影写真(3648×5472、5.9MB)

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/320秒、ISO100
撮影写真(3648×5472、5.9MB)

「天井バウンス+自然光」で撮影した写真は、ストロボで全体的に露出を補いながら、主題となる缶の右側面の暗部を明るく起こしている。まるで自然光のみで撮影しているかのような自然な仕上がりだ。


大事なのは、ストロボ光と自然光のバランス。これをシャッター速度で調整していくのがポイントだ。シャッター速度を速くすれば自然光の割合が減り、シャッター速度を遅くすれば自然光の割合が増える。絞りでコントロールするのは被写界深度が変わってしまうのでおすすめできない。また、感度を変えると、ストロボ光と自然光の両方に影響するので注意。感度を上げると写真全体が明るくなる。

天井バウンス+低速シャッター

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/160秒、ISO100撮影写真(3648×5472、5.2MB)

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/160秒、ISO100
撮影写真(3648×5472、5.2MB)

シャッター速度を1/160秒まで遅くして天井バウンスで撮影した。ストロボの光量は変わらないが、自然光の露出が増えた分、明るくなった。特に、ストロボがあまり干渉していない背後が明るくなっている。

天井バウンス+高速シャッター

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/1000秒、ISO100撮影写真(3648×5472、6.4MB)

EOS R6、EF85mm F1.4 L IS USM、F2、1/1000秒、ISO100
撮影写真(3648×5472、6.4MB)

この写真は、シャッター速度を1/1000秒まで速くして天井バウンスで撮影している。ストロボの光量は変わらない。自然光の割合が減少し暗くなったが、ストロボで照射された部分はきちんとコントラストを保って露出が補われている。

上に掲載した写真の撮影風景。被写体に対して前方右上から天井バウンスでやわらかく光を回している。背後の窓から自然光が降り注ぐシチュエーションで撮影した

上に掲載した写真の撮影風景。被写体に対して前方右上から天井バウンスでやわらかく光を回している。背後の窓から自然光が降り注ぐシチュエーションで撮影した

ちなみに、上に掲載した「天井バウンス+高速シャッター」の写真は、ハイスピードシンクロ(HSS)で撮影している。

HSSの仕組みについてはまた別の機会に解説したいと思うが、この機能は、シャッター速度が同調速度(ストロボとシャッターが同調する最速のシャッター速度)を超える高速域になっても、ストロボの利用を可能にするというものだ。

ストロボを使う場合は通常、同調速度を超えての発光はできない。同調速度はカメラによって異なるが、たとえば今回使用した「EOS R6」は、メカシャッター使用時で1/200秒だ。これ以上はシャッタースピードを高速に設定できないので、明るい屋外でのストロボ撮影時は被写界深度の浅い写真が撮りにくいのだが、HSSを使えばこれを解消できる。

HSSの利用は、ストロボとコマンダーの両方が対応していることが前提になる。「Profoto A10」と「Air Remote TTL-C」は、いずれもHSSの機能を搭載しているので、同調速度を気にせずに理想的なストロボ撮影ができる。HSSもよく使う機能のひとつなので、クリップオンストロボの購入を検討する際は、機能の有無をしっかりとチェックしておきたい。

まとめ クリップオンストロボを使えば、さまざまな画作りが楽しめる

写真はある意味、光を写す作業だ。それゆえ光にこだわると、写真がうまくなるし、撮影バリエーションも豊かになる。ストロボライティングはまさしく光を扱うテクニックであり、写真撮影の基礎が学べる要素でもある。

「Profoto A10」がそれを象徴しているように、最新のクリップオンストロボは非常に使いやすく、光もキレイだ。取り付けて使用できるアイテムも豊富で、さまざまな画作りが楽しめる。太陽光は偉大だが、ここに人工的な光を加えることで、さらに表現力は増していく。ぜひ、積極的に使ってみてほしいアイテムなのだ。

後編では、「Profoto A10」と専用のライトシェーピングツール「Clicシリーズ」のアクセサリーを使い、ブツ撮りライティングの魅力をさらに深掘りしていく。

河野鉄平

河野鉄平

フォトグラファー。写真家テラウチマサト氏に師事後、2003年独立。ポートレートを中心に活動。2022年1月に新著『上手い写真は構図が9割』(玄光社)発売。ポーラミュージアムアネックス(2015年/銀座)など写真展も多数。Profoto公認トレーナー。
Instagram:teppei_kono_eye
Twitter:@teppei_kono

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