DJIは重量249g未満の軽量ドローン「DJI Mini 3」を2022年12月14日より販売開始した。「DJI Mini 3」は、同社のコンシューマー向けドローンのエントリーモデル。上位モデル「DJI Mini 3 Pro」などに搭載されている障害物検知用の「前方/後方ビジョンシステム」などが省略されているが、そのぶん本体のみで65,120円、送信機付きで79,750円(いずれも税込)からという低価格を実現している。今回は、本製品の実機を借りることができたので、実機レビューをお届けしよう。
送信機付きで8万円切りの「DJI Mini 3」をレビュー
「DJI Mini 3」は重量249g未満の軽量ボディを実現。残念ながら日本は対象からはずれるが、特定の国や地域では250g以下のドローンは飛行させるのに登録や試験が必要ないため、比較的気軽に楽しめる製品である(海外でドローンを飛ばせる際には必ず現地の法規制を確認してほしい)。
「インテリジェントバッテリー」装着時の実測重量は247.5g
「DJI Mini 3」の本体サイズは、折り畳み時で148(幅)×90(奥行)×62(高さ)mm、展開時で251(幅)×362(奥行)×72(高さ)mm。冬物のジャケットなら折り畳んでポケットなどに入れて持ち運ぶことも可能なサイズだ。本製品には容量の異なる2種類のバッテリーが用意されており、機体重量は標準の「インテリジェントバッテリー」(2453mAh)使用時に249g、大容量の「インテリジェントフライトバッテリーPlus」(3850mAh)使用時に290gとなっている。なお、バッテリー容量によって最大飛行時間、最大ホバリング時間も下記のように大きく異なってくる。
インテリジェントフライトバッテリー
最大飛行時間:38分
最大ホバリング時間:33分
インテリジェントフライトバッテリーPlus
最大飛行時間:51分
最大ホバリング時間:44分
運用限界高度についてもバッテリーによって違っており、インテリジェントフライトバッテリー装着時は4000m、インテリジェントフライトバッテリーPlus装着時は3000mとなっている。機体の運動性能は、最大上昇速度が5m/s、最大下降速度が3.5m/s、水平方向の最大飛行速度が16m/sだ。
アーム展開時のサイズは251(幅)×362(奥行)×72(高さ)mm。天面には電源ボタンが配置されている
底面の中央やや上にあるのが「下方ビジョンシステム」
前面(上)と背面(下)。前面には3軸メカニカルジンバル(チルト、ロール、パン)と組み合わせたカメラ(1/1.3型CMOS、1200万画素)が、背面にはUSB Type-CポートとmicroSDメモリーカードスロットが用意されている
右側面(上)と左側面(下)。両側面後方にあるのはバッテリーを抜き出すためのボタンだ
カメラは、1/1.3型CMOS(1200万画素)のイメージセンサーと、焦点距離24mm(35mm判換算時)/F1.7/画角82.1度/フォーカス1m〜∞のレンズが組み合わされている。静止画は最大4000×3000、動画は4K(3840×2160 24/25/30fps)、2.7K(2720×1530 24/25/30/48/50/60fps)、フルHD(1920×1080 24/25/30/48/50/60fps)で撮影可能だ。フォーマットは静止画がJPEG/DNG(RAW)、動画がMP4(H.264)に対応している。
ジンバルは、3軸メカニカルジンバル(チルト、ロール、パン)を搭載。機械的作動範囲はチルト:-135度〜80度、ロール:-135度〜45度、パン:-30度〜30度、操作可能範囲はチルト:-90度〜60度、ロール:-90度〜0度となっている。この自由度の高いジンバルにより、解像度を変化させずに横向き、縦向きに撮影が可能だ。
3軸メカニカルジンバルを搭載することにより強力に揺れや振動を低減。また前方、下方だけでなく、180度、広角、スフィアなどのパノラマ撮影も可能だ
「DJI Mini 3」には下記の5種類のパッケージが用意されている。簡単に整理すると、送信機にはディスプレイのない「DJI RC-N1」とディスプレイを装備した「DJI RC」の2種類が用意されており、送信機セットモデルには各種アクセサリーが追加された「Fly MoreコンボPlus」がラインアップされているわけだ。ちなみに今回は、「DJI Mini 3 Fly MOREコンボPlus(DJI RC付属)」をDJIより借用している。
・「DJI Mini 3(機体単体)」65,120円
・「DJI Mini 3(DJI RC-N1付属)」79,750円
・「DJI Mini 3 Fly MOREコンボPlus(DJI RC-N1付属)」115,170円
・「DJI Mini 3(DJI RC付属)」97,570円
・「DJI Mini 3 Fly MOREコンボPlus(DJI RC付属)」132,990円
価格はすべて公式サイトの実売価格、税込表記
「DJI Mini 3 Fly MOREコンボPlus(DJI RC付属)」の同梱品一覧。ショルダーバッグ、本体、送信機、レンズプロテクター、2WAY充電ハブ、インテリジェントフライトバッテリー×1、インテリジェントフライトバッテリーPlus×2、USB-C to USB-Cケーブル、USB-A to USB-Cケーブル、ドライバー(プロペラ交換用)、予備プロペラ、説明書類が同梱されている
送信機の最大伝送距離は、電波干渉のない場合でFCC:10 km、CE:6 km、SRRC:6 km、MIC(日本):6 km。電波干渉がある場合は、強い干渉(都市部の景観)時で約1.5〜3 km、中程度の干渉(郊外の景観)時で約3〜6 km、弱い干渉(郊外/海辺)時で約6〜10 kmとされている。5.5インチ(1920×1080ドット、700cd/m²)のディスプレイを備えた「DJI RC」のライブビューの品質は720p/30fpsだ。
送信機「DJI RC」には5.5インチ(1920×1080ドット、700cd/m²)のディスプレイが内蔵されている
本体奥側には録画ボタン、フォーカス/シャッターボタン、ジンバルダイヤル(チルト制御用)、カメラ制御ダイヤル(ズーム制御用)を配置
手前にはホスト端子(「DJIセルラードングル」の接続に使用)、microSDメモリーカードスロット、USB Type-Cポート(充電、PCとの接続に使用)を用意
背面にあるC1ボタンには前方/下方、C2ボタンには横向き/縦向きの切り替え機能が割り当てられている。前面のレバーは取り外して背面の凹みに収納できる
「DJI Mini 3」を飛ばした感想は、軽量ボディながら、とにかく安定しているということ。「離陸」アイコンをタップすると自動的に高度1.2mまで上昇するが、ほとんど静止位置からずれることがない。最大風圧抵抗10.7 m/sを実現していると謳われているので、電動エアダスターを至近距離で吹きかけたりしてみたが、わずかに機体が揺れるぐらいで位置はほぼ変わらない。重量249g未満と非常に軽量な「DJI Mini 3」だが、機体飛行時の安定性はトイドローンとは比べものにならない。
左側の「離陸」アイコンをタップしたのちに、画面中央に表示される「離陸」ボタンを長押しすると、自動的に高度1.2mまで上昇して静止する
ホバリングは非常に安定している。この写真は機体にかなり近寄って撮影したが、ぶつかってしまうような不安感はまったくなかった
戯れに電動エアダスターの風をホバリングしている「DJI Mini 3」に至近距離で吹きかけてみたが、ほとんど位置がずれない。軽量ドローンとは思えないほどの安定ぶりだ
ホバリング中の「DJI Mini 3」の様子は以下の動画から確認していただきたい。下方ビジョンシステムにより正確に同じ位置に留まり続ける安定性に注目してほしい。
「DJI Mini 3」の操作は比較的簡単だ。デフォルトの操作モード(スティックモード)は、左レバーで上昇/下降と左旋回/右旋回、右レバーで前移動/後ろ移動、左移動/右移動する「モード2」に設定されている。スティックモードにはモード1、モード3も用意されており、カスタマイズも可能だ。
まったくドローンを操縦したことがない人は、まずはモード2を試してみるといいだろう。右レバーだけで前後左右に移動できるので操作が直感的だ。
着陸方法には、飛行している場所からそのまま下降する「着陸」と、安全な高度まで上昇したあとにホームポイント(離陸した地点)に帰還する「Return-to-Home」が用意されている。Return-to-Homeのほうが簡単そうだが、初めてドローンを飛行させた人は想像以上に上昇するので驚くことになると思う。まずはあまり高度を上げずに、離着陸に慣れたほうがいいだろう。
着陸には、そのまま高度を下げる「着陸」に加えて、安全な高度まで上昇したあとにホームポイント(離陸した地点)に帰還する「Return-to-Home」が用意
また、「DJI Mini 3」には「クイックショット」と呼ばれるいくつかの撮影機能が用意されている。具体的には、機体が後方に下がりながら上昇する「ドローニー」、被写体周囲を螺旋上に旋回する「ヘリックス」、カメラを下に向けた状態で上昇する「ロケット」、被写体周囲を旋回する「サークル」、楕円状に被写体周囲を旋回する「ブーメラン」などの撮影機能だ。
非常に面白い機能だが、使用上は、いくつか注意喚起しておきたいことがある。まず、いずれも広いスペースで安全を確保したうえで使用できる機能であるということ。特にヘリックス、サークル、ブーメランはかなり広いスペースを必要とするので注意したい。また、「DJI Mini 3」は、全方向に衝突回避用のセンサーが搭載されていないため、障害物があればそのまま激突して、破損、もしくは思わぬ事故になりかねない。ヘリックス、サークル、ブーメランについては、周囲に障害物がまったく存在しない開けた場所で試すことを強く勧める。
比較的狭い場所でも利用できる、カメラを下に向けた状態で上昇する「ロケット」が以下の動画だ。初めてドローンを使う人は、まずはこのクイックショットから試してみてほしい。
エントリー向けの「DJI Mini 3」はどの程度の画質なのだろうか? 下記に今回撮影した動画と写真を掲載しているが、個人的にはデフォルトの設定でニュートラルな発色で記録できていると思う。多少露出を調整したほうがよい写真もあったが、気になったのはそのぐらいだ。65,120円(税込)から購入できるエントリードローンでこれだけの画質を得られるのであれば、満足感は高いと言えよう。
以下の動画は、「DJI Mini 3」で撮影した動画をカット編集したもの。一部モザイクを入れているが、露出や色、ホワイトバランスは変更していない。
「DJI Mini 3」で撮影4000×2250、35mm判換算の焦点距離24mm、1/3200秒、F1.7、ISO100、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
「DJI Mini 3」で撮影4000×2250、35mm判換算の焦点距離24mm、1/1600秒、F1.7、ISO100、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
「DJI Mini 3」で撮影4000×2250、35mm換算の焦点距離24mm、1/1600秒、F1.7、ISO100、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
「DJI Mini 3」で撮影2250×4000、35mm判換算の焦点距離24mm、1/2500秒、F1.7、ISO100、露出モード:Program(auto)、測光方式:Center weight
180度、広角、スフィアなどのパノラマもオートで撮影できる。ただし、microSDメモリーカードには個別に記録されており、撮影後に「DJI Fly」アプリなどで合成する必要がある
「DJI Mini 3」はDJIのエントリー向けドローンであり、上位機種の「DJI Mini 3 Pro」と比べるとイメージセンサーの画素数が低く、障害物を検知する前方、後方のビジョンシステムも省略されている。しかし、送信機付きのモデルで比較すると、「DJI Mini 3 Pro」が116,380円なのに対して、「DJI Mini 3」は79,750円(いずれも税込)と約69%の価格で入手可能だ。ドローンを飛ばす場所を探すのは大変だが、初めてのドローンとして絶好の1台と言えるだろう。
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。