パナソニックは2023年1月5日、フルサイズミラーレスカメラ「LUMIX Sシリーズ」の新モデル「LUMIX S5II(DC-S5M2)」「LUMIX S5IIX(DC-S5M2X)」を発表した。今回、写真家のコムロミホさんが、ノーマルタイプの「LUMIX S5II」をいち早くレビュー。香港での撮影を通して、カメラとしての魅力を語ってもらった。
※本記事前半のスペック紹介部分は価格.comマガジン編集部が制作。後半のレビュー部分はコムロミホさんが執筆しています。
「LUMIX Sシリーズ」の新しいスタンダードモデル「LUMIX S5II」
「LUMIX S5II」は、同社のフルサイズミラーレスのスタンダードモデル「LUMIX S5」(2020年9月25日発売)の後継モデル。撮像素子と画像処理エンジンを刷新し、静止画撮影と動画撮影の両面で大幅な進化を遂げている。撮像素子は、従来モデルよりも読み出し速度を高速化し、ローリングシャッターの発生を抑えた有効2420万画素のCMOSセンサーで、画像処理エンジンは、従来モデル比で約2倍の演算性能を持つ「ヴィーナスエンジン」だ。
新開発の有効約2420万画素CMOSセンサーを採用
「LUMIX S5II」の進化点の中で特に注目したいのが、「LUMIXシリーズ」として初めて像面位相差AFを搭載したこと。これまで「LUMIXシリーズ」は、画質を優先し、フルサイズ機でもマイクロフォーサーズ機でも一貫してコントラストAFのみのAFシステムにこだわってきたが、本機ではついに像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッドシステムを採用。画面のほぼ全域をカバーする779点の測距点を持つシステムで、動体の追従性能が大幅に向上したほか、複数の被写体が存在するシーン、夕暮れなどの逆光/低照度シーン、イルミネーションなどの点光源を含むシーンといった、コントラストAFが苦手とするシーンに対しても、より高精度にピントが合わせられるようになった。
ダンスを踊る人物をAFCで追従している様子を記録した動画。高精度に人物を検出し続けていることがわかる。
※手持ちで撮影しているため映像にブレが発生しています。
像面位相差AFを搭載することで、従来モデル「LUMIX S5」と比べて、近づいてくる人物などへの追従性が向上している
「LUMIXシリーズ」は、「生命力・生命美」をコンセプトにした独自の絵作りに定評があるが、「LUMIX S5II」では、新しい撮像素子と画像処理エンジンを採用することで、定評ある画質も向上している。画像のフラット/ディテール/エッジ部分の領域を精緻に判別して処理を行う「新インテリジェントディテール」や、より自然で立体感のある描写を実現する「新2Dノイズリダクション」といった技術が進化し、さらに高い色再現性と微細な階調表現を実現している。低感度用と高感度用の2系統の専用回路による「デュアルネイティブISO」に対応し、高感度に強いのも特徴だ。
「デュアルネイティブISO」に対応。自動切り替えと手動切り替えが可能だ
バッファメモリーの容量を4倍に強化するなどして連写性能も向上。メカシャッター時の連写速度は、従来モデルの約7コマ/秒(AFS)/約5コマ/秒(AFC)から約9コマ/秒(AFS)/約7コマ/秒(AFC)にアップしている。電子シャッター時には最大30コマ/秒(AFS/AFC)の超高速RAW連写も可能だ。
最大30コマ/秒(AFS/AFC)の超高速RAW連写機能を搭載
「LUMIXシリーズ」が得意とする動画撮影機能も大きく強化されている。ボディ上面のファインダー部(軍艦部)にクーリングファンを搭載するなど放熱構造を徹底することでC4K 60p/50p 4:2:2 10bitの無制限記録を実現したほか、フル画角での6K 30p/25p 4:2:0 10bit記録も可能。複数のLUTをカメラに読み込み、カメラ内でのLUT記録が可能な「リアルタイムLUT」という新機能も搭載している。さらに、歩き撮り時や望遠撮影時の手ブレ補正効果を向上させる「アクティブ I.S.」を新たに装備。「アクティブ I.S.」では、従来モデル比で最大約200%の大きなブレまで補正できるとしている。
ファインダー部にクーリングファンを搭載
カメラ内でのLUT記録が可能な「リアルタイムLUT」を新搭載
操作性では、シャッターボタン近くにホワイトバランス/感度/露出ボタンを備える「LUMIX Sシリーズ」らしい操作性はそのままに、グリップの形状を見直すことでホールディング性が向上。背面のジョイスティックは4方向操作から8方向操作に改善されている。
上面の操作系は従来モデルを踏襲。電子ビューファインダーは約368万ドットの有機ELファインダーだ。細かいところでは、ストラップ取り付け部の構造が変更されている
より握りやすいグリップ形状を採用。ボディは防塵・防滴仕様のフルマグネシウムボディだ
約184万ドット表示のフリーアングルモニターを採用
SDメモリーカードのダブルスロットを搭載。両スロットがUHS-II対応している
左側面のインターフェイス類では、HDMI端子がType DからType Aに変更されている
従来モデルと同じ縦位置バッテリーグリップ「DMW-BGS5」を装着できる
また、今回の新モデルでは、ノーマルタイプの「LUMIX S5II」とあわせて、「LUMIX S5II」をベースに動画撮影機能を強化した姉妹機「LUMIX S5IIX」もラインアップされている。「LUMIX S5IIX」は、動画RAWデータ出力に対応するほか(※「LUMIX S5II」も有償ファームウェアアップデートで対応可能)、USB SSD記録、ALL-Intra動画記録、ProRes動画記録、無線/有線IPストリーミングといった機能を搭載している。
動画撮影機能を強化した「LUMIX S5IIX」もラインアップ。外観では「LUMIX」などのロゴが黒く塗られているのが特徴だ
ノーマルタイプの「LUMIX S5II」は2023年2月16日、動画強化タイプの「LUMIX S5IIX」は2023年6月下旬の発売が予定されている。製品のラインアップと市場想定価格(税込)は以下のとおり。
「LUMIX S5II」の市場想定価格(税込)
ボディ単体 248,000円前後
Kキット(標準ズームレンズキット) 281,000円前後
※「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」が付属
Wキット(ダブルレンズキット) 300,000円前後
※「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」「LUMIX S 50mm F1.8」が付属
「LUMIX S5IIX」の市場想定価格(税込)
ボディ単体 274,000円前後
Kキット(標準ズームレンズキット) 306,000円前後
※「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」が付属
Wキット(ダブルレンズキット) 334,000円前後
※「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」「LUMIX S 50mm F1.8」が付属
※本レビューで使用した「LUMIX S5II」は開発中の試作機です。製品版とは仕様が異なる場合があります。
今回、「LUMIX S5II」を持って香港へ行ってきた。香港は下町の活気ある市場やビル群が立ち並ぶ金融街など、少し移動しただけで街並みの雰囲気ががらりと変わる。そのため、歩きながらシャッターチャンスを探すのがとても楽しい街だ。
「LUMIX S5II」は、「LUMIX Sシリーズ」の最新ラインアップ中では最も小型・軽量なモデルで、旅スナップと相性がよい。静止画撮影と動画撮影の性能のバランスがよく、静止画も動画も楽しみたい人におすすめの1台だ。その進化点を香港で撮影した写真や動画とともに紹介していこう。
香港での撮影で「LUMIX S5II」の進化点をチェックした
私は、従来モデル「LUMIX S5」を発売当初から愛用しているが、「LUMIX S5II」で撮影した写真を見ると発色や抜けがさらによくなったと感じる。「LUMIX S5II」はベースの絵作りがとても自然で、被写体の色やグラデーションを肉眼に近いイメージで表現してくれるのだ。
まずは、下記の写真をご覧になってほしい。仕上がり設定の「フォトスタイル」をスタンダードにして撮影しているが、ハイライトからシャドウまでバランスがよく、自然な発色ながらクリアな写真に仕上がっていることがわかるはずだ。香港の情景を見た目通りに切り取ることができた1枚だ。
タクシーの赤色や黄色などが自然ながら美しい発色で再現されている
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、38mm、F4.6、1/800秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、13.0MB)
今回の撮影では、「LUMIX S5II」のキットレンズとして用意されている「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」と「LUMIX S 50mm F1.8」の2本を使用した。
「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」は、キットレンズとしては珍しい焦点距離20mmの超広角から始まる標準ズームレンズ。最短撮影距離が15cmと、ある程度のマクロ撮影に対応できるのも特徴だ。キットレンズとは思えないほど、さまざまな表現を楽しめる万能ズームである。
「LUMIX S 50mm F1.8」は、開放F1.8の大口径・標準レンズ。「LUMIX S5II」ではこの標準レンズもキットレンズに加わっている。標準域の画角はスナップと相性がよく、ポートレートや風景、料理などでも万能に活躍してくれる1本だ。
下記の写真は、標準ズームレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」を使って撮影している。「LUMIX S5II」は従来モデルから撮像素子と画像処理エンジンが刷新されたことで画質が向上しているが、この写真では、船の細かなディテールや遠くに見えるビル群を鮮明に表現できていることが伝わるだろう。
写真を拡大してみると、船に書かれた「HONG KONG」の文字の立体感や、船に打たれた細かなリベットの凹凸なども細かく表現されている
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、33mm、F4.3、1/2000秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、10.1MB)
画質では高感度性能の高さにも驚かされた。「LUMIX S5II」は、低感度と高感度のベース感度を持つ「デュアルネイティブISO」に対応しており、高感度でもノイズが発生しにくいという特徴がある。さらに、ノイズが発生したとしても、「マルチプロセスNR」という機能が働き、ディテールがあるところは解像感を重視し、ノイズが目立ちそうな平坦な部分はしっかりとノイズ除去を行ってくれるのだ。
「デュアルネイティブISO」と「マルチプロセスNR」は従来モデルにも搭載されていたが、「LUMIX S5II」ではその性能が大きく向上している。
下記の2枚の写真はISO12800の高感度で撮影したものになる。平坦な部分とディテール部分をそれぞれご覧いただきたい。建物の細かなディテールはしっかりと解像しながら、ノイズが目立ちそうな平坦な部分はノイズが大きく抑えられており、ISO12800で撮影した写真とは思えないほど、夜の香港を美しく表現してくれている。
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F2.8、1/125秒、ISO12800、WB:晴天、フォトスタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、11.8MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F2.8、1/125秒、ISO12800、WB:晴天、フォトスタイル:スタンダード
撮影写真(6000×4000、12.1MB)
「LUMIXシリーズ」の魅力のひとつは、被写体の雰囲気や撮りたいイメージにあわせて、仕上がり設定の「フォトスタイル」を活用することで、撮って出しでさまざまな表現を楽しめる点だろう。
下記の写真は、標準ズームレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」を使って、フォトスタイルに「L.クラシックネオ」を設定して撮影したもの。カラーフィルムのような独特な色合いを楽しめる効果で、青や緑など鮮やかな色が落ち着き、やわらかくノスタルジックな印象に仕上がる。特に青空との相性がよく、晴れた日に使いたくなる効果だ。
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、33mm、F4.3、1/1000秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:L.クラシックネオ
撮影写真(6000×4000、8.6MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、20mm、F3.5、1/1300秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:L.クラシックネオ
撮影写真(6000×4000、6.1MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、20mm、F3.5、1/3200秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:L.クラシックネオ
撮影写真(6000×4000、8.3MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、48mm、F5.2、1/320秒、ISO100、WB:晴天、フォトスタイル:L.クラシックネオ
撮影写真(6000×4000、8.2MB)
「フォトスタイル」には4種類のモノクロの効果があるが、私がいちばん好きなのが「L.モノクロームD」だ。黒が締まり、力強いモノクロ表現を楽しむことができる。そこに粒状を追加することによって、モノクロフィルムで撮影したような味わい深い写真に仕上がる。
下記の写真は、夜の市場をドラマチックに表現したいと思い、「L.モノクロームD」を選び、粒状を「強」に設定。レンズには標準レンズ「LUMIX S 50mm F1.8」を使用している。モノクロで撮影すると色の情報がなくなるため、光で照らされたところだけが浮き上がって、主題が際立ちやすくなる。
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F1.8、1/60秒、ISO800、WB:晴天、フォトスタイル:L.モノクロームD(粒状 強)
撮影写真(6000×4000、13.4MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F1.8、1/200秒、ISO640、WB:晴天、フォトスタイル:L.モノクロームD(粒状 強)
撮影写真(6000×4000、13.6MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F1.8、1/60秒、ISO160、WB:晴天、フォトスタイル:L.モノクロームD(粒状 強)
撮影写真(6000×4000、13.6MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F1.8、1/60秒、ISO160、WB:晴天、フォトスタイル:L.モノクロームD(粒状 強)
撮影写真(6000×4000、13.5MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F5、1/400秒、ISO12800、WB:晴天、フォトスタイル:L.モノクロームD(粒状 強)
撮影写真(6000×4000、13.6MB)
「LUMIX S5II」の新機能で注目なのが、「フォトスタイル」に「リアルタイムLUT」という効果が新たに追加されたことだ。あらかじめLUTをカメラ本体に登録しておくことで、その絵作りを使用しながら、写真や動画を撮影できるという画期的な機能である。LUTはいろんな種類があり、自分で作ることもできるため、お気に入りの絵作りを登録すれば表現の幅を大きく広げられる。
下記の写真は、私が動画編集時によく使っているLUTをカメラに登録して撮影したもの。動画だけでなく、静止画でも「リアルタイムLUT」を使用できるため、撮って出しで映画のワンシーンのような写真を撮影することが可能だ。
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F5、1/100秒、ISO640、WB:日陰、フォトスタイル:リアルタイムLUT
撮影写真(6000×4000、8.0MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F4、1/250秒、ISO640、WB:日陰、フォトスタイル:リアルタイムLUT
撮影写真(6000×4000、9.4MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6、33mm、F4.3、1/800秒、ISO640、WB:晴天、フォトスタイル:リアルタイムLUT
撮影写真(6000×4000、8.1MB)
LUMIX S5II、LUMIX S 50mm F1.8、F4、1/4000秒、ISO640、WB:晴天、フォトスタイル:リアルタイムLUT
撮影写真(6000×4000、6.8MB)
続いて、「LUMIX S5II」の動画機能を紹介していきたいが、その前に「LUMIXシリーズ」としては初となる像面位相差AFの搭載について触れておきたい。
動画撮影時に求められるのは安定したAF性能だ。これまでの「LUMIXシリーズ」はコントラストAFを採用していたが、コントラストAFは被写体のコントラストのピークを探って合焦するため、ピントが前後するような動きになるのが気になる場合があった。これまでは、その気になる動きが発生しないように「空間認識AF」で補っていたが、背景のコントラストが強いと、どうしてもピントが背景に張り付いてしまうこともあった。
「LUMIX S5II」は像面位相差AFを搭載したことで、高速かつ正確に、安定したピント合わせができるようになっている。さらに人物認識を組み合わせることによって、自分撮りなどワンマンオペレーションでも安心して撮影を行うことができる。
下記の動画は、C4K 60P 4:2:2 10bitで記録した映像を2倍スローで編集したものになる。また、「フォトスタイル」に「リアルタイムLUT」を設定し、先ほどの静止画と同じLUTを使用した。「リアルタイムLUT」を使えば撮って出しで理想の絵作りができるため、カット編集だけでクオリティーの高い動画を撮影することができた。
「リアルタイムLUT」を使い、カメラ内でLUTを適用して撮影した4K動画。C4K 60P 4:2:2 10bitで記録し、2倍スローで編集した。
「LUMIX S5II」はC4K 60P 4:2:2 10bitを時間無制限で撮影できるうえ、6K 30P 4:2:0 10bit記録も追加されている。連続動作による発熱で撮影を中断されないように独自の放熱設計を取り入れているが、従来モデル「LUMIX S5」とほぼ大きさの違いがないのが驚きだ。
左が「LUMIX S5II」で、右が「LUMIX S5」。ぱっと見た感じはあまり大きさの違いもなく、カメラを構えてみても、大きな違いがないように感じた
「LUMIX S5II」と「LUMIX S5」の外観で大きく変わったのは、ファインダーの大きさだ。「LUMIX S5II」のほうがひと回りほど大きくなっているが、これは、ファインダー部に放熱用のファンを搭載しているため。このファンの位置はかなりユニーク。液晶モニターの裏側ではなく、ファインダー部に搭載することによってカメラ全体の小型化を実現しているのだ。
ファインダー部に放熱用のファンを搭載し、「LUMIX」のロゴの下部分とファインダー部の左右には吸排気口が設けられている
「LUMIX S5II」はボディ内手ブレ補正が進化し、電子補正と組み合わせることで従来以上の性能を発揮することも押さえておきたい。今回撮影した動画はすべて手持ちで撮っているが、手ブレがほぼ気にならない動画に仕上がった。また、定点で動画を撮影する際は「手ブレ補正ブースト」を使用すると、三脚を使用したかのように強力に手ブレを補正してくれるので、ぜひ活用してほしい。
歩き撮りでの手ブレ補正のオフ・オンを比較した動画。オンにすると強力に手ブレを補正してくれることがわかる。
「LUMIX S5II」には、クロップを活用することでスムーズなパン/ズームイン/ズームアウト映像を撮影できる「ライブクロップ」機能が搭載されている。従来モデルではフルHDでの収録しかできなかったが、「LUMIX S5II」は6K記録に対応したことで4Kでの「ライブクロップ」が可能になった。フルHDで撮影すれば、さらにパン/ズームイン/ズームアウトの可動域を広げられる。
今回、「LUMIX S5II」を使ってみて感心したのは、機動力と表現力の高さだ。斬新な放熱設計によって従来モデル「LUMIX S5」とほぼ変わらないボディサイズを実現しながらも、撮像素子と画像処理エンジンが進化したことによって、解像感やダイナミックレンジ、高感度性能などが大きく向上している。
さらに、表現の幅が大幅に広げる「リアルタイムLUT」を搭載したのも見逃せない特徴。これまでは、ホワイトバランスや露出補正、「フォトスタイル」などを使用しながら、カメラの中で絵作りの方向性を決めて撮影し、最後に画像編集ソフトなどで細かいところを調整していたが、「リアルタイムLUT」を使えば撮って出しで作品レベルの写真・動画を撮影できる。このカメラを皮切りに今後のミラーレスカメラのあり方が変わるのではないかと思うほど、斬新な機能だと感じた。
今回は静止画撮影と動画撮影の主な特徴から「LUMIX S5II」の魅力をダイジェストで紹介したが、豊富な機能を搭載する「LUMIX S5II」を使いこなすことで、どんな作品を撮影できるのか今から楽しみで仕方がない。まずは発売日を心待ちにしたいと思う。
なお、今回の新製品は、ノーマルタイプの「LUMIX S5II」とあわせて、USB SSD記録やProRes動画記録に対応する、よりハイレベルな動画撮影機能を持つ動画強化タイプ「LUMIX S5IIX」も同時に発表されている。「LUMIX S5IIX」は「LUMIX」のロゴが黒くなっているなど、よりスタイリッシュな印象のボディが魅力的。より本格的な動画を撮影したい場合は「LUMIX S5IIX」を選びたいところだが、ノーマルタイプの「LUMIX S5II」も動画撮影性能は十分に高い。「LUMIX S5II」でも、静止画と動画をハイブリッドに楽しめるので安心してほしい。
文化服装学院でファッションを学び、ファッションの道へ。撮影現場でカメラに触れるうちにフォトグラファーを志すことを決意。アシスタントを経て、現在は広告や雑誌で活躍。街スナップをライフワークに旅を続けている。カメラに関する執筆や講師も行う。
また、YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」「カメラのコムロ」でカメラや写真の情報を配信中。カメラや写真が好きな人が集まるアトリエ「MONO GRAPHY Camera & Art」をオープン。