2023年2月23日〜26日の4日間、パシフィコ横浜にて開催される、カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+2023」。コロナ禍の影響でここ数年はオンラインイベントとして開催されていたが、2023年は4年ぶりのオフライン開催だ。会場で見かけた、注目度の高いカメラ・レンズの新製品や参考展示を紹介しよう。
「CP+2023」の会場で展示されていた新製品を一挙紹介
高性能と小型・軽量を両立した「EOS R8」。キットレンズとして用意されている、沈胴式の新しい標準ズームレンズ「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」を装着している
「EOS R8」は、キヤノンのフルサイズミラーレスの中ではエントリー向けに位置する新モデル。
「EOS Rシリーズ」のフルサイズ機として最も軽い、重量約461g(バッテリー、カード含む)の小型・軽量ボディの中に、上位モデル「EOS R6 Mark II」の基本性能を搭載しているのが特徴だ。
AFは、「馬」「鉄道/飛行機」を含めた多彩な被写体検出に対応。電子シャッター時に最高約40コマ/秒の超高速連写が可能なうえ、AF追従(AEは1コマ目固定)で約30コマ/秒記録の「RAWバーストモード」も搭載している。動体撮影にも十分に対応できる性能だ。動画撮影もハイレベルで、6Kオーバーサンプリングによる高画質な4K/60p記録や、フルHD/180pハイフレームレート記録に対応している。
実際にカメラをホールドしてみたが、下位に位置する「EOS RP」(2019年3月発売)より約24g軽いボディは、想像した以上の“軽さ”だった。スナップや旅行などで軽快に撮影が続けられるフルサイズ機という印象だ。
価格は、価格.com最安価格(2023年2月23日時点)でボディ単体が237,600円、RF24-50 IS STM レンズキットが264,330円(いずれも税込)。カメラのグレードからすると若干高めの価格設定に感じるが、AFを中心にその性能の高さを考慮すると納得できる。発売は2023年4月下旬の予定。
発売から高い人気を得ている「LUMIX S5II」。充実した機能を持つフルサイズミラーレスだ
パナソニックのブースでは、2023年2月16日に発売になった新モデル「LUMIX S5II」が注目を集めていた。撮像素子と画像処理エンジンを刷新した、フルサイズミラーレスのスタンダードモデルだ。
本モデルは、「LUMIXシリーズ」として初めて像面位相差AFを搭載し、動体の追従性能が大幅に向上。動画撮影機能も強化されており、ボディ上面のファインダー部(軍艦部)にクーリングファンを搭載するなどの工夫によって、C4K/60p 4:2:2 10bitの無制限記録や、フル画角での6K(3:2比率)/30p 4:2:0 10bit記録を実現。カメラ内でのLUT記録が可能な「リアルタイムLUT」という新機能も搭載している。
静止画撮影も動画撮影も充実した内容で、付け入る隙のない完成度の高いカメラだ。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は、ボディ単体が247,500円、Kキット(標準ズームレンズキット)が281,160円、Wキット(ダブルレンズキット)が299,970円(いずれも税込)と、コストパフォーマンスも高い。
なお、派生モデルとして、「LUMIX S5II」をベースに動画撮影機能を強化した姉妹機「LUMIX S5IIX」がラインアップされているのも見逃せない。「LUMIX」などのロゴが黒く塗られた真っ黒なボディが特徴的で、動画RAWデータ出力に対応するほか(※「LUMIX S5II」も有償ファームウェアアップデートで対応可能)、USB SSD記録、ALL-Intra動画記録、ProRes動画記録、無線/有線IPストリーミングといった機能も搭載している。
左は2023年3月16日に発売される超広角ズームレンズ「LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO」。望遠端において最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能だ。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は97,020円。右は、2023年2月16日に発売になった、マイクロフォーサーズ用の大口径・標準ズームレンズ「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.」。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は103,950円
「EOS Rシリーズ」最小・最軽量モデルとして登場する「EOS R50」。ホワイトとブラックのカラーバリエーションが用意されている。ブラックモデルに装着しているのは、新しい望遠ズームレンズ「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」だ
キヤノンはこの春に、フルサイズミラーレス「EOS R8」とあわせて、APS-Cミラーレス「EOS R50」も発売する。
「EOS R50」は、エントリー向け一眼カメラ「EOS Kissブランド」のコンセプト「かんたん・きれい・コンパクト」を継承した、「EOS Rシリーズ」の入門機。非常にコンパクトなボディに収まっており、そのサイズは約116.3(幅)×85.5(高さ)×68.8(奥行)mmで、重量はブラックが約375g/ホワイトが約376g(バッテリー、カード含む)。「EOS Rシリーズ」として最小・最軽量を実現している。
実際にカメラを持ってみたところ、小型・軽量ながらグリップのホールド性を確保しているのが印象に残った。ホールドした感じは「EOS Kiss M2」に近く、「EOS Kissブランド」を受け継いでいるというのも納得のフィーリングだった。
性能面も妥協がなく、この小型・軽量ボディに、上位モデル「EOS R10」ゆずりの基本性能を搭載。AFは人物や動物など多彩な被写体の検出に対応している。連写は、電子シャッター時で最高約15コマ/秒、電子先幕シャッター時で最高約12コマ/秒と、エントリーモデルとしては十分な速度を達成。動画は、6Kオーバーサンプリングによる4K/30p記録や、フルHD/120pハイフレームレート記録が可能だ。
価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は、ボディ単体が99,990円、RF-S18-45 IS STM レンズキットが113,850円、ダブルズームキットが140,580円(いずれも税込)。上位モデルの「EOS R10」と比べるとボディ単体が15,000円ほど安く、より手に入れやすくなっている。2023年3月下旬の発売予定だ。
連写やAF性能に特徴を持つフラッグシップモデル「X-H2S」。ファームウェアアップデートでAFが進化した
2023年春の新製品というわけではないが、「CP+2023」に展示されていたミラーレスの中で改めて注目したいモデルがある。それが、富士フイルムの「X-H2S」だ。
「X-H2S」は、「X-H2」と並んで、富士フイルム「Xシリーズ」のダブルフラッグシップに位置付けられているAPS-Cミラーレス。富士フイルムのミラーレスとして初めて裏面照射積層型の撮像素子「X-Trans CMOS 5 HS」を採用し、約40コマ/秒のブラックアウトフリー超高速連写や、4K/120p記録に対応する動画撮影などを実現したハイエンドモデルだ。
ポイントは、2023年1月12日に公開された、「X-H2S」のファームウェアVer.3.00。昨今のハイエンドミラーレスは、発売後のファームウェアアップデートで機能が強化されるのがトレンドだが、「X-H2S」もその流れに沿っており、ファームウェアVer.3.00でAF性能が大幅に進化しているのだ。
具体的には、被写体検出機能が拡張し、新たに「昆虫」と「ドローン」の検出に対応。逆光下で撮影する場合や、横を向いている被写体・小さな被写体を撮影する場合などでの検出精度も大きく向上している。さらに、動体予測アルゴリズムを更新し、高速に移動する被写体に対するトラッキング性能も進歩。実際にファームウェアVer.3.00にアップデートした「X-H2S」を使ってみたが、AFの食い付き・追従性ともに明らかによくなっていた。以前よりもピントが背景に抜けることが減り、より確実性の高いAFに進化を遂げている。
さらに価格も下がっており、ボディ単体の価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は256,888円。2022年7月の発売直後から比べると5万円くらい安い。裏面照射積層型センサー搭載機としては購入しやすい製品だ。
開放F1.2の明るさを実現した、大口径・中望遠レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」
ニコンの新製品の中では、大口径・中望遠レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」が話題を集めている。
このレンズは、高性能な「S-Line」に属する、高い解像力と美しいボケを両立した高級品。「NIKKORレンズ」としては初の「開放F1.2の85mmレンズ」ということで、ニコンファンから注目を集めている。
本レンズは、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」(2020年12月発売)と同じ設計思想のもと、ボケの描写に徹底的にこだわって開発されており、EDレンズ1枚/非球面レンズ2枚を採用した10群15枚のレンズ構成によって、ボケのエッジ部分の色づきを抑制しつつ、大きくてやわらかなボケ味を実現している。「S-Line」のレンズらしく、近接撮影で高画質が得られるマルチフォーカス方式を採用しているのも特徴だ。
価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は364,320円。同じ開放F1.2の「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」と比べると10万円ほど高い価格設定だが、最新設計の85mm/開放F1.2レンズとしては妥当なプライスではないだろうか。発売は2023年3月24日の予定だ。
ニコンの新製品としては、薄型の広角・単焦点レンズ「NIKKOR Z 26mm f/2.8」が2023年3月3日に発売される。フルサイズミラーレスのAFレンズとして最薄(2023年2月7日時点、ニコン調べ)の全長約23.5mmを実現した、いわゆるパンケーキレンズと呼ばれる薄型レンズだ。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は65,340円
価格.comで詳細をチェック
クラシカルなデザインが人気のAPS-Cミラーレス「Z fc」のブラックモデルも2023年3月3日に登場する
開放F1.4の大口径と小型・軽量を両立した「FE 50mm F1.4 GM」
ソニーは、プレミアムレンズ「Gマスター」シリーズの新モデルとして大口径・標準レンズ「FE 50mm F1.4 GM」をこの春にリリースする。
本レンズの特徴は、「Gマスター」基準の高い解像力とボケ描写を小型・軽量設計で実現していること。「Gマスター」ではおなじみの超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズを2枚採用した11群14枚のぜいたくな光学設計を採用しながらも、筐体はサイズが80.6(最大径)×96(長さ)mm、重量が約516gに抑えられている。「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」と比べると、体積は約15%、重量は約33%減っている。ジンバルやドローンを使った動画撮影時にも使い勝手がよさそうな標準レンズだ。
さらに、最新のXDリニアモーターを2基搭載し、高速・高精度なAF駆動を実現。120fpsのハイフレームレート動画を撮影する際にも、なめらかな動作のAFが可能だ。ソニー独自の高性能な手ブレ補正「アクティブモード」や、最新の「αシリーズ」が搭載する「ブリージング補正機能」にも対応している。
市場想定価格は210,000円前後(税込)。2023年4月21日の発売が予定されている。
ソニーの新製品としては、高性能「Gレンズ」シリーズの標準ズームレンズ「FE 20-70mm F4 G」が2023年2月10日に発売された。重量約488gの小型・軽量ながら焦点距離20mmの超広角に対応するのがポイントで、静止画撮影だけでなく動画撮影でも安定した性能を発揮する1本だ。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は154,000円
よりコンパクトなサイズに最新の光学性能を搭載した「50mm F1.4 DG DN | Art」
シグマは開放F1.4の標準レンズ「50mm F1.4 DG DN | Art」を2023年2月23日に発売した。
描写力にこだわる「Artライン」の代名詞的な存在であった「50mm F1.4 DG HSM | Art」(2014年4月25日発売)のリニューアルモデル。シグマの最新技術を投入し、ミラーレスに求められる最適なサイズの中に、最高クラスの光学性能と高速なAF性能を搭載した注目製品だ。
特に注目したいのは描写力で、非球面レンズ3枚、SLDガラス1枚を含む11群14枚のレンズ構成を採用し、カメラ側で補正できない非点収差や像面湾曲などの諸収差を効果的に抑制。サジタルコマフレアを限りなく抑えることにも成功しているという。
さらに、フルサイズミラーレス専用設計の「Artライン」としては初めてリニアモーター「HLA(High-response Linear Actuator)」を採用しているのもトピック。フォーカスレンズを両面非球面レンズ1枚にする設計を組み合わせることで、高速・静粛なフォーカシングと高い追従性を実現している。
本レンズのLマウント用のサイズは78.2(最大径)×109.5(全長)mmで、重量は670g。従来モデルと比べると最大径は約7.2mm、全長は約14.4mm、重量は約135gも小さくなっている。従来モデルは一眼レフ用をミラーレス用に再設計したため、やや大きめの筐体だったが、それを差し引いても新モデルはコンパクトにまとまっていると言ってよいだろう。
ラインアップされるのはLマウント用とソニーEマウント用。価格.com最安価格(2023年2月23日時点)はLマウント用/ソニーEマウント用ともに123,750円。
シグマは2023年2月17日に超望遠ズームレンズ「60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」を発売した。標準域の焦点距離60mmから超望遠の焦点距離600mmまで対応する、光学10倍の高倍率を実現したのが特徴だ。リニアモーター「HLA」を搭載し、高速・高精度なAFを実現しているのも見逃がせない。Lマウント用とソニー Eマウント用が用意され、価格.com最安価格(2023年2月23日時点)はいずれも297,000円
なお、シグマは、同社初のニコンZ マウント用レンズとして、「Contemporarライン」の「16mm F1.4 DC DN | Contemporary」「30mm F1.4 DC DN | Contemporary」「56mm F1.4 DC DN | Contemporary」の3本の発売を、「CP+2023」の開催にあわせて発表した。いずれもニコンとのライセンス契約の下で開発・製造される製品で、2023年4月の発売される予定だ。
等倍を大きく超える4倍のマクロ撮影が可能な「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」
OMデジタルソリューションズは、35mm判換算で焦点距離180mmの望遠マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」が2023年2月24日に発売する。
このレンズの魅力は、レンズ単体で最大撮影倍率4倍(35mm判換算)という驚異的な近接撮影性能を実現していること。一般的なマクロレンズの最大撮影倍率は等倍(1倍)なので、いかにこのレンズの性能が高いかがわかるだろう。マクロレンズながら、別売の2 倍テレコンバーター「MC-20」の装着に対応しているのも特徴で、「MC-20」装着時の最大撮影倍率は8倍(35mm判換算)に達する。
高性能な「PROシリーズ」らしく光学性能にすぐれ、スーパーEDレンズ 2 枚、EDレンズ 4 枚、スーパーHRレンズ1枚、HRレンズ 1 枚使用した 13群18枚の光学系を採用し、近接撮影時の色収差やボケの色にじみを抑えている。
加えて、テレコンバーター装着時を含めて撮影距離全域でAFを利用できるのも押さえておきたい。フローティング方式のインナーフォーカスを採用し、2つのフォーカスレンズ群をそれぞれ独立して駆動することで、高速なAF駆動を実現している。
価格.com最安価格(2023年2月23日時点)は166,320円。
タムロンは「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD (Model B060)」の富士フイルムXマウント用の開発を発表した。APS-Cミラーレス用の小型・軽量な大口径・超広角ズームレンズで、すでにソニーEマウント用が発売されている。富士フイルムXマウント用は2023年春頃の発売予定だ
コシナは「CP+2023」にて「フォクトレンダー」ブランドのレンズをいくつか参考出品した。特に注目なのは、同ブランド初のキヤノンRFマウント用レンズ「NOKTON 50mm F1 Aspherical RF-mount」(画像左)。電子接点を搭載し、カメラボディとの情報通信が可能だ。このほか、富士フイルムXマウント用として、「NOKTON 35mm F0.9 Aspherical X-mount」と「ULTRON 27mm F2 X-mount」も参考出品。開発が発表された、一眼レフ用(CPU内蔵ニコンAi-Sマウント)の「NOKTON 55mm F1.2 SLIIS」(画像右)も並んでいた
ケンコー・トキナーのブースでは、2023年2月3日に発売された、APS-C専用の超望遠ミラーレンズ「Tokina SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」「Tokina SZ 600mm PRO Reflex F8 MF CF」「Tokina SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」の3本が展示されていた。いずれも圧倒的な小型・軽量を実現しているのが特徴だ
超広角レンズやマクロレンズなどユニークなスペックのレンズを多数揃える「LAOWA」。サイトロンジャパンのブースでは、「LAOWA」の新製品として、マイクロフォーサーズ用の超広角レンズ「LAOWA 6mm F2 ZERO-D MFT」(画像左、2023年2月23日発売)や、富士フイルムGマウント用の超広角レンズ「LAOWA 19mm F2.8 ZERO-D GFX」(画像右、2023年2月23日発売)などが展示されていた
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。