レビュー

人気の小型・軽量ジンバル「DJI RS 3 Mini」レビュー! ライトユーザーにぴったりの良品

「DJI RS 3 Mini」は、ミラーレスカメラ向けに設計された小型・軽量な3軸ジンバル。「Ronin」シリーズの新製品だ

「DJI RS 3 Mini」は、ミラーレスカメラ向けに設計された小型・軽量な3軸ジンバル。「Ronin」シリーズの新製品だ

動画撮影時の手ブレの発生を抑え、安定した映像を記録するのに威力を発揮する「ジンバル(電動のカメラスタビライザー)」は、手持ちで高品位な動画を撮りたいなら、持っておいて損のない撮影アクセサリーだ。ただし、一眼カメラ用のジンバルは大きくて重くいものがほとんど。動画撮影をライトに楽しみたい人にとっては、撮影に対するモチベーションが高くないと使い続けるのが難しい製品でもある。

今回取り上げる「DJI RS 3 Mini」は、「一眼カメラ用のジンバルは大きく重い」という印象を覆すような小型・軽量モデル。価格.com「その他カメラ関連製品」カテゴリーの売れ筋ランキング1位(2023年3月6日時点)の人気製品だ。本記事では、実機のレビューを通して、その人気の秘密に迫りたい。

「Ronin」シリーズ最小・最軽量を実現! 延長用グリップを装着しても1kg未満

ご存じの人も多いと思うが、まずはDJIというメーカーについて簡単に紹介しておこう。DJIは、中国・深圳市に本社を置く、ドローンやジンバルの開発を手がける撮影機器メーカー。民生用のドローン市場で圧倒的なシェアを誇っているほか、ジンバルについても、プロ向けからスマートフォン用まで高性能なモデルを多数ラインアップしている。高い技術力を生かし、これまでにはなかったような革新的な製品を次々と生み出している、カメラ業界で今最も勢いのあるメーカーのひとつだ。

「DJI RS 3 Mini」は、そんなDJIが2023年1月10日に発売した3軸ジンバル。その人気は高く、発売から約2か月が経過した2023年3月6日時点でも、価格.com「その他カメラ関連製品」カテゴリーの売れ筋ランキングのトップに位置しているほどだ。

単焦点レンズ「FE 20mm F1.8 G」を装着したフルサイズミラーレスカメラ「α7 IV」を「DJI RS 3 Mini」に取り付けた状態。ジンバル本体に延長用グリップ/三脚を装着している

単焦点レンズ「FE 20mm F1.8 G」を装着したフルサイズミラーレスカメラ「α7 IV」を「DJI RS 3 Mini」に取り付けた状態。ジンバル本体に延長用グリップ/三脚を装着している

「DJI RS 3 Mini」がそこまで人気を集めるのは、最新技術を搭載する高性能モデルながら、DJIのジンバル「Ronin」シリーズとして最小・最軽量を実現したことが大きい。

そのサイズは、本体を折りたたんだ状態で195(幅)×323(長さ)×98(高さ)mmで、ジンバルとしては収納しやすいサイズ感に収まっている。実際、今回試用した際は、バックパック(容量50リットル)のフロントポケットに入れて持ち運べたほどだ。ジンバル用のバッグを用意せずに、カメラ・レンズとともにワンパックで収まったのは非常にありがたかった。

パッケージには、ジンバル本体のほかに、カメラに取り付けるクイックリリースプレート、延長用グリップ/三脚、USB-C充電ケーブル(40cm)、L型マルチカメラ制御ケーブル(USB-C、30 cm)、ねじキットが同梱されている(画像左)。小型・軽量なジンバルなのでバックパックのフロントポケットにも収まる(画像右)

パッケージには、ジンバル本体のほかに、カメラに取り付けるクイックリリースプレート、延長用グリップ/三脚、USB-C充電ケーブル(40cm)、L型マルチカメラ制御ケーブル(USB-C、30 cm)、ねじキットが同梱されている(画像左)。小型・軽量なジンバルなのでバックパックのフロントポケットにも収まる(画像右)

重量は一眼カメラ用のジンバルとしてはとても軽く、縦向き撮影時で約795g、横向き撮影時で約850g(いずれもクイックリリースプレートを含み、延長用グリップ/三脚を含まない)。延長用グリップ/三脚(重量約128g)を装着しても、縦向き撮影時で約923g、横向き撮影時で978gと1kgを切っている。上位機種の「DJI RS 3 Pro」と比べると約50%、「DJI RS 3」と比べると約40%も軽い。撮影時の負担が少ないジンバルと言っていいだろう。

左が「DJI RS 3 Mini」で、右が上位機種の「DJI RS 3 Pro」(いずれも、付属の延長用グリップ/三脚を装着した状態)。「DJI RS 3 Mini」のほうがひと回り以上コンパクトだ

左が「DJI RS 3 Mini」で、右が上位機種の「DJI RS 3 Pro」(いずれも、付属の延長用グリップ/三脚を装着した状態)。「DJI RS 3 Mini」のほうがひと回り以上コンパクトだ

クイックリリースプレートは上部と下部に分かれており、上部(左手で持っているプレート)はカメラに装着して使用する

クイックリリースプレートは上部と下部に分かれており、上部(左手で持っているプレート)はカメラに装着して使用する

最新モデルとして充実した性能・機能を搭載

続いて、「DJI RS 3 Mini」の性能・機能の特徴を見ていこう。小型・軽量化を図りつつも充実したスペックを持つジンバルに仕上がっている。

高出力モーターと最新アルゴリズムを採用し、基本性能が高い

まず押さえておきたいのが、「DJI RS 3 Mini」のジンバルとしての基本性能の高さだ。チルト/パン/ロールの3軸に強力な高出力モーターを搭載するうえ、上位機種「RS 3 Pro」などと同じ第3世代安定化アルゴリズムを採用することで、小型・軽量ながら、ジンバルとして最も重要な安定性を確保している。

第3世代安定化アルゴリズムを採用し、安定した動作を実現。スタビライザーの重心が中心に位置する設計になっているのも安定性を高めている一因だ。バッテリーは内蔵タイプ(容量2450mAh)で、駆動時間は最大10時間。1日かかる撮影にも十分に対応できるバッテリー性能だ

第3世代安定化アルゴリズムを採用し、安定した動作を実現。スタビライザーの重心が中心に位置する設計になっているのも安定性を高めている一因だ。バッテリーは内蔵タイプ(容量2450mAh)で、駆動時間は最大10時間。1日かかる撮影にも十分に対応できるバッテリー性能だ

今回、単焦点レンズ「FE 20mm F1.8 G」などを装着したフルサイズミラーレス「α7 IV」に「DJI RS 3 Mini」を組み合わせてみたが、走りながらの撮影や、ジンバルのグリップを水平に持つライトモードでの撮影、グリップを逆さに持ってカメラの位置を下げる吊り下げモードでの撮影など、ジンバルに負担がかかる使い方をしても動作はとても安定していた。期待以上の安定性で、安心して使えるジンバルだと感じた。

さすがに、小型・軽量な分、最大積載量は2kgに抑えられているものの、コンパクトなミラーレスカメラとレンズの組み合わせなら必要十分なスペックではないだろうか。DJIによると、各メーカーのフルサイズミラーレス(※縦位置グリップ未装着)と開放F2.8通しの大口径・標準ズームレンズの組み合わせでも安定した動作が可能とのこと。ちなみに、上位機種の最大積載量は、「DJI RS 3 Pro」が4.5kg、「DJI RS 3」が3kgだ。

「DJI RS 3 Mini」を使って撮影した4K動画作例。使用したカメラは「α7 IV」で、レンズは「FE 20mm F1.8 G」。カメラ側の手ブレ補正モードをオン(スタンダード)にして、4K/60pで記録している。「DJI RS 3 Mini」で使用した動作モードはパンフォロー、パン&チルトフォロー、3Dロール360カメラの3種類(※フォロー速度は高速を選択)。オーディオはFLASH☆BEATさん制作のフリー素材『Time_of_Happiness』を使用している

5種類の動作モードに対応

「DJI RS 3 Mini」で利用できる動作モード(フォローモード)は、以下の5種類。上位機種が搭載するポートレートモード(チルト軸90度上向き+パン軸90度回転の組み合わせで縦向き撮影を可能にするモード)は備わっていないが、最新ジンバルとして基本的な動作にひと通り対応している。

パンフォロー:パン軸のみグリップの動きに追従するモード
パン&チルトフォロー:パン軸とチルト軸の両方がグリップの動きに追従するモード
FPV:3軸すべてがグリップの動きに追従するモード
カスタム:3軸の追従を任意に選べるモード
3Dロール360:カメラを360度回転できるモード(チルト軸が90度回転してレンズが上を向いた状態になる)

動作モードの切り替えは液晶モニター上のタッチ操作で行う。上位機種に備わっているモードスイッチは非搭載だが、本体のサイズを考慮すると致し方のないところ

動作モードの切り替えは液晶モニター上のタッチ操作で行う。上位機種に備わっているモードスイッチは非搭載だが、本体のサイズを考慮すると致し方のないところ

パンフォロー、パン&チルトフォロー、FPV、3Dロール360といった動作モードを選択できる。カスタム設定の利用も可能だ

パンフォロー、パン&チルトフォロー、FPV、3Dロール360といった動作モードを選択できる。カスタム設定の利用も可能だ

フォロー速度の選択は高速、中速、低速の3段階。速度の値を細かく指定することもできる

フォロー速度の選択は高速、中速、低速の3段階。速度の値を細かく指定することもできる

「DJI RS 3 Mini」のフォロー動作をチェックした動画。パンフォローとパン&チルトフォローの動作モードで左右および上下にカメラを動かしているが、動きに対してしっかりと追従していることがわかる(※フォロー速度は中速を選択)

追加アクセサリーなしで縦向き撮影が可能

ジンバルの機能としては、横向きだけでなく、縦向きでの撮影に対応するのが特徴だ。横向きから縦向きへの変更は、水平アームを取り外してから、垂直アームに下部クイックリリースプレートを装着すればよい。これだけでカメラを縦向きに装着して使用できる。

カメラを垂直に装着するためのマウントアクセサリーなどは使わずに、付属品のみで横向きと縦向きを切り替えられるのが便利。SNSのショートムービー用に縦向き動画を撮りたい人にとって注目の機能と言えるだろう。

追加アクセサリーを使わずに縦向きの撮影に対応できる

追加アクセサリーを使わずに縦向きの撮影に対応できる

縦向き撮影時の動作をチェックした動画。使用したカメラは「α7 IV」で、レンズは「FE 20mm F1.8 G」。動画の解像度は横2160×縦3840(※最後のスローモーション動画はフルHD素材をアップスケーリング)。オーディオはFLASH☆BEATさん制作のフリー素材『Happy_Island』を使用している

横向きから縦向きに切り替えるには水平アームを取り外す必要がある

横向きから縦向きに切り替えるには水平アームを取り外す必要がある

左が横向き撮影時、右が縦向き撮影時のセッティング。水平アームを取り外すしてから、垂直アームに下部クイックリリースプレートを装着すると縦向きに変更される

左が横向き撮影時、右が縦向き撮影時のセッティング。水平アームを取り外すしてから、垂直アームに下部クイックリリースプレートを装着すると縦向きに変更される

多彩な操作に対応できる必要十分な操作性

小型・軽量ながら操作性は充実しており、グリップ部の背面に1.4型カラー液晶モニター(タッチ操作対応)やジョイスティックなどを、前面にフロントダイヤルやトリガーを搭載。主な操作性は以下のとおりで、BluetoothもしくはUSBで接続した対応カメラ・レンズの制御を含めて、設定次第で多彩な操作が行える。

1.4型カラー液晶モニター:タッチ操作で各種設定の変更やステータスの確認が可能
ジョイスティック:ジンバルのチルト軸とパン軸の動きを制御し、装着したカメラの向きを変えられる
Mボタン:3種類のユーザープロファイルを切り替えられる。スポーツモードへの移行やオートチューンの開始などの操作も可能
カメラ制御ボタン:対応カメラのAF、録画開始/停止、写真撮影などの動作を実行できる
フロントダイヤル:対応レンズのフォーカス/ズーム制御が可能。ジンバルの3軸の制御も選択できる
トリガー:ロックモードへの移行、ジンバルの再セッティング、セルフィ―モードへの移行が可能

グリップ部背面に、1.4型カラー液晶モニター、ジョイスティック、Mボタン、カメラ制御ボタン(赤いマークの付いたボタン)を搭載。側面には電源ボタンと電源ポート(USB-C)を、前面にはフロントダイヤルとトリガーを備えている。なお、カメラと接続するためのUSB-C端子(RSSカメラ制御ポート)は、チルト軸アームの先端に用意されている

グリップ部背面に、1.4型カラー液晶モニター、ジョイスティック、Mボタン、カメラ制御ボタン(赤いマークの付いたボタン)を搭載。側面には電源ボタンと電源ポート(USB-C)を、前面にはフロントダイヤルとトリガーを備えている。なお、カメラと接続するためのUSB-C端子(RSSカメラ制御ポート)は、チルト軸アームの先端に用意されている

モニター画面を下から上にスライドするとジンバルの設定画面に移行する。この画面では、ジョイスティックの速度やダイヤルに割り当てる機能を設定できる

モニター画面を下から上にスライドするとジンバルの設定画面に移行する。この画面では、ジョイスティックの速度やダイヤルに割り当てる機能を設定できる

ジョイスティックを操作する様子を記録した動画

専用アプリからの設定・操作に対応

DJI製の最新ジンバルと同様、Bluetoothで接続したスマートフォンから専用アプリ「DJI Roninアプリ」を使ってジンバル本体の各種設定や操作が可能だ。「DJI RS 3 Mini」では、このアプリからジンバル本体のアクティベートやバランステストなどを行うようになっている。「DJI RS 3 Mini」を使いこなすうえで、このアプリの利用は必須だ。

アプリでは、アクティベートやバランステストに加えて、3種類のユーザープロファイルやモーターパラメーターなどの設定も用意されている。アプリ上に仮想のジョイスティックを表示して、ジンバルの動きを制御することも可能。ジンバルの細かい動作をアプリ側で設定・制御してのパノラマ撮影やタイムラプス撮影、トラッキング撮影といったインテリジェント機能も利用できる。

「DJI Roninアプリ」の画面。バランステストはこのアプリ上から実行する。仮想のジョイスティックを使ってジンバルを動かすこともできる

「DJI Roninアプリ」の画面。バランステストはこのアプリ上から実行する。仮想のジョイスティックを使ってジンバルを動かすこともできる

パノラマ撮影、タイムラプス撮影、トラッキング撮影といった、ジンバルを細かく制御して撮影するインテリジェント機能も備わっている

パノラマ撮影、タイムラプス撮影、トラッキング撮影といった、ジンバルを細かく制御して撮影するインテリジェント機能も備わっている

上位機種とは異なり、前後の位置調整はアームで行う。バランス調整は少しシビアな印象

ジンバルは、使い始める前に、撮影可能な状態のカメラを取り付けて各軸のバランスを取る必要がある。バランス調整を行わないと、正確に動作しないというだけでなく、モーターなどに負担がかかり、故障にもつながる。少々面倒な作業なのだが、しっかりとやっておく必要がある。

「DJI RS 3 Mini」を使用するうえで留意しておきたいのが、このバランス調整だ。上位機種よりもジンバルのアームが短いため、その分、全体的にバランス調整が少しシビアな印象。小型・軽量化とのトレードオフの部分なので致し方ないが、ちょっとした調整に神経を使うことがあるのは事実だ。

特に注意したいのがチルト軸の調整。「DJI RS 3 Pro」などの上位機種は、下部クイックリリースプレートをダイヤルノブで動かして前後方向のバランスを調整する仕組みだが、「DJI RS 3 Mini」は、アームごと動かして調整する仕組みを採用している。使い比べてみると、アームを動かすのは細かい調整が難しく、慣れるのに少し時間がかかるという印象を受けた。

とはいえ、極端に扱いにくいということはないので安心してほしい。どのジンバルも同じだが、使い始めは難しいと感じるかもしれないが、慣れてくればスムーズに調整が完了するはずだ。

左が「DJI RS 3 Mini」で、右が上位機種の「DJI RS 3 Pro」。「DJI RS 3 Mini」は、クイックリリースプレートをダイヤルノブで動かす「DJI RS 3 Pro」とは異なり、チルト軸アームを直接動かして前後方向のバランスを調整する

左が「DJI RS 3 Mini」で、右が上位機種の「DJI RS 3 Pro」。「DJI RS 3 Mini」は、クイックリリースプレートをダイヤルノブで動かす「DJI RS 3 Pro」とは異なり、チルト軸アームを直接動かして前後方向のバランスを調整する

チルト軸アームを動かす必要があるため、上位機種と比べると調整が少しやりにくいところがある

チルト軸アームを動かす必要があるため、上位機種と比べると調整が少しやりにくいところがある

まとめ シンプルに使える高コスパなジンバル。「初めてのジンバル」にも買い替えにもぴったり

「DJI RS 3 Mini」は、「DJI RS 3 Pro」などの上位機の基本性能を継承しつつ、より小さくて軽い筐体を実現したモデル。人気を集めるのは、やはり、小型・軽量で持ち運びやすく、かつ取り回しやすい点に尽きる。最大積載量が2kgに抑えられているのが気になるかもしれないが、コンパクトなミラーレスシステムで使うのなら必要十分なスペックだ。

機能や操作性については、前後方向のバランス調整がアームを直接動かす方式だったり、より柔軟に軸のロックを解除・設定できる自動軸ロック機能が備わっていなかったり、映像トランスミッターやフォーカスモーターの取り付けに非対応だったりと、上位機種と比べると見劣りするところはある。ただ、そこまでの高性能は必要なく、シンプルにジンバルを使って安定した映像を記録するのなら、「これで十分」と思える内容でもある。

機能がシンプルな分、価格は抑えられており、2023年3月6日時点の価格.com最安価格は51,480円。コストパフォーマンスが非常に高く、「初めてのジンバル」として選びやすいモデルだ。ジンバルを所有しているものの「大きくて重いのであまり使っていない」という人にとっても、買い替え候補として魅力的な存在と言えるだろう。

撮影モデル:蒼田太志朗

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間まで、カメラやレンズのことを考えながら生きています。

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