旅とカメラは人生を彩るスパイスのようなもの。そして、旅とカメラは相性も抜群。旅を楽しむ、カメラを楽しむことをコンセプトに、フォトグラファーの河野鉄平(通称テッピー)が、カメラ片手に旅に出る連載企画です。連載2回目は、OMデジタルソリューションズのマイクロフォーサーズミラーレスカメラ「OM SYSTEM OM-1」(以下、「OM-1」)を持って「大谷資料館」(栃木県宇都宮市)に行ってきました。
右から「OM-1」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」のセット、そして「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」。今回はこれらのカメラとレンズで旅に出ます。
こんにちは、テッピーです。
連載1回目の旅先「袋田の滝」はいかがでしたでしょうか? 月1のペースでこれからもカメラを持って旅をしますので、よろしくお願いいたします。
さて、2回目の旅先は、栃木県宇都宮市の大谷町という場所にある「大谷資料館」です。宇都宮ということで、どうしても“餃子を食べること”に期待が高まりますが、大谷資料館は被写体として以前より一度足を運んでみたいと思っていた場所です。
この資料館で公開されているのが、地下に広がる巨大空間。大谷で採掘される大谷石の採掘場跡で、それがとても広大でフォトジェニックです。写真だけでなく、映画やドラマなどのロケ地としても人気があるそう。今回の旅では、この巨大な採掘場跡を中心に、大谷や宇都宮の街並みもスナップしていきます。
掲載する写真について
JPEG形式(最高画質LSF)で撮影しています。一部、RAW現像ソフト「OM Workspace」を使ってRAW現像を行っています。
宇都宮駅に到着! 駅構内でまずはイチゴのオブジェが出迎えてくれました。栃木県はイチゴも有名ですね
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、12mm(35mm判換算24mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1/100秒、+0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:Vivid
撮影写真(3888×5184、11.0MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、12mm(35mm判換算24mm相当)、絞り優先AE、F11、1/1600秒、-1EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:Vivid
撮影写真(5184×3888、11.6MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、35mm(35mm判換算70mm相当)、絞り優先AE、F11、1/800秒、+0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:Vivid
撮影写真(5184×3888、12.5MB)
宇都宮駅前。さて、餃子の看板はいくつあるでしょう?
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、40mm(35mm判換算80mm相当)、プログラムAE、F7.1、1/500秒、+0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:Vivid
撮影写真(3888×5184、12.4MB)
今回の旅で利用したカメラはマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ「OM-1」。「OM SYSTEM」ブランドの中核を担うフラッグシップモデルで、軽量コンパクトながら高画質かつ高性能なのが魅力の、至高の一品です。
「OM-1」は有効約2037万画素の裏面照射積層型Live MOSセンサーを採用しており、高感度に強く、常用感度の上限はISO25600で、最大設定感度はISO102400。手ぶれ補正機能の効果はボディ単体で最大7段。大谷資料館は三脚撮影がNGです。暗い大谷資料館の地下空間を手持ちでスナップするには「OM-1」がピッタリなのです。
手ぶれ補正機能はS-ISAuto(手ぶれ補正オート)をはじめ、S-IS1(全方向補正)、S-IS2(縦ぶれ補正)、S-IS3(横ぶれ補正)から選択できます。S-IS2は横方向への流し撮りに、S-IS3は縦位置での流し撮りに最適。通常はS-ISAutoかS-IS1がおすすめ。今回はS-ISAutoに設定しました
手ぶれ補正の効き方も調整できます。このあたりは「OM SYSTEM」らしい充実感。今回は地下空間をしっかり構図を決めて撮りたいと考えているため、こんなシーンは「半押し中手ぶれ補正」が効果を発揮しそうです。以前からある機能ですが、シャッターボタン半押し中でも手ぶれ補正を有効にできるというもので、フレーミングを吟味している最中も、画像を安定させることができます
「OM-1」に搭載された新機能として「手持ち撮影アシスト」があります。シャッターボタンを半押ししたときや露光中に手ぶれの状態を画面に表示してくれる機能で、手持ちでの長秒撮影時に効果を発揮します。これも便利な機能ですね。
「OM-1」はこだわりのあるデザインも魅力。たとえば、ボディ上面左側に配置されている、レリーズなどを設定変更できるボタン。独特の凹みのあるデザインで、指触りがとてもよく操作しやすいです
液晶モニターはバリアングル式。今回もローアングルからバシバシ撮影しました
続いて、今回使用するレンズを紹介しましょう。
35mm判換算で焦点距離24〜80mm相当の画角をカバーする、F2.8通しの大口径・標準ズームレンズ。I型からのリニューアルモデルで、フレア低減を改良し、より抜けのよい描写を実現しているのが特徴です
フォーカスリングを手前に引くことで、瞬時にマニュアルフォーカスに切り替えできる「MFクラッチ機構」を搭載。接写時など、ピント合わせがシビアな場面で重宝します
撮影スタイルに合わせて機能を割り当てられる「L-Fn」ボタンも搭載しています
広い空間を撮るのにピッタリの大口径・超広角ズームレンズをチョイス。35mm判換算で焦点距離14〜28mm相当の画角をカバーします。本レンズにも「MFクラッチ機構」や「L-Fn」ボタンが備わっています。なお、レンズフードは組み込み式で取り外しはできません
暗所への対応のため、念のため明るい単焦点レンズも持参。35mm判換算の焦点距離は40mm相当。標準レンズに近い画角で、スナップ撮影に最適です
大谷資料館には宇都宮駅から路線バスが出ています。だいたい30分の道のりです。
大谷資料館のある大谷町は、古くから石材の採掘が盛ん。大谷石は、軽くて加工しやすく、それでいて耐火性や防湿性にすぐれていると言います。その歴史は約1400年前の古墳時代で、この地域の石材で石室を作るようになったのがはじまりなのだとか。
採石は江戸中期から本格的に行われるようになり、大正時代中期に地下掘りの技術ができて現在にいたるそうです。これから向かう地下空間は、過去の採石の歴史を象徴する場所でもあるのですね。
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、35mm(35mm判換算70mm相当)、絞り優先AE、F11、1/125秒、-0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:デイドリームII
撮影写真(5184×3888、12.8MB)
バスの車窓から石材店がちらほら目に入るようになって、大きな岩山がたくさん現れるようになると、目的地への到着はまもなくです。最寄りのバス停から5分ほど歩くと大谷資料館です。
この大谷地区は奇岩群が数多く点在しています。宇都宮からそれほど離れていませんが、まるで山の中の霊場に迷い込んできたかのようです。
大谷資料館近くの駐車場。岩壁が圧倒的で迫力いっぱい
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、21mm(35mm判換算42mm相当)、プログラムAE、F11、1/1000秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、12.5MB)
遠くから見ると汚れているようにしか見えなかった自販機。石造りをイメージしたものでした
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、12mm(35mm判換算24mm相当)、プログラムAE、F9、1/640秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:晴天、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、13.8MB)
大谷資料館は地下採掘場の入口に隣接して作られています。そのまま受付を済ませて地下へと続く長い階段を下りていくと、採掘場に到着です。
カラフルにライトアップされていて、とても幻想的です
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、7mm(35mm判換算14mm相当)、絞り優先AE、F4、1/4秒、-0.7EV、ISO800、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ポップアートI、RAW現像時にトリミング
撮影写真(5169×3876、5.4MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、12mm(35mm判換算24mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1/8秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ドラマチックトーンII
撮影写真(3888×5184、5.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、7mm(35mm判換算14mm相当)、絞り優先AE、F4、0.4秒、-0.7EV、ISO800、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish(強)
撮影写真(3888×5184、4.9MB)
眼前に大きく開ける採掘場跡は圧倒的! 広さは2万平方メートル、深さは30mにも及ぶと言います。まるで秘密の地下要塞のようです。1960年ごろまでは手掘りで、それ以降は機械で掘り進めたそうです。
ここでは広いスペースを撮るのに超広角ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」が大活躍! スペースの広さを再現できるだけでなく、寄り引きしながら遠近感を強調できるので、さまざまな画作りを楽しめました。35mm判換算で焦点距離14mm相当の超広角域が、このコンパクトサイズで利用できるのですから、撮り手の負担は大きく軽減されます。
さらに、標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II」では、高い逆光耐性を実感。地下採掘場はスポットライトによる逆光下での撮影が多かったのですが、フレアやゴーストをまったく気にせず構図に集中できました。I型の本レンズを所有し、日頃から利用している自分としては、II型レンズのバージョンアップぶりに驚きを隠せませんでした! 目で見たとおりに自然な描写が、高い解像感で表現できます。
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO、20mm(35mm判換算40mm相当)、絞り優先AE、F1.4、1/60秒、-1.7EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ドラマチックトーンI+フレーム効果
撮影写真(5184×3888、5.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、9mm(35mm判換算18mm相当)、マニュアルモード、F2.8、1秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ラフモノクロームII+ピンホール効果+フレーム効果
撮影写真(3888×5184、12.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、11mm(35mm判換算22mm相当)、マニュアルモード、F3.5、1/8秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:モノトーン、RAW現像時にトリミング
撮影写真(4696×3522、2.3MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO、20mm(35mm判換算40mm相当)、絞り優先AE、F1.4、1/10秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(5184×3888、10.6MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO、20mm(35mm判換算40mm相当)、絞り優先AE、F5、1/13秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、13.0MB)
イルミネーションが遠くでチカチカと形を変えながら光っていたので、「何だろう、あれ」と思って撮影。肉眼ではほとんど見えません。低速で光を流すことで、輪郭を浮き上がらせました
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO、20mm(35mm判換算40mm相当)、絞り優先AE、F1.4、1.6秒、-0.7EV、ISO800、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、13.8MB)
やはり地下空間ではボディ単体で最大7段の補正効果を持つ手ぶれ補正機能が大活躍しました。結局使用した感度の上限はISO800〜1600程度。もちろんレンズの明るさも大きなポイントでしたが、シャッター速度はどれも低速。通常であれば三脚を使いたくなる場面ばかりですが、手持ちでゆうゆうと撮影できました。
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、40mm(35mm判換算80mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1/3秒、-0.7EV、ISO200、ホワイトバランス:曇天、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、10.7MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、20mm(35mm判換算40mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1/15秒、-1EV、ISO800、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(5184×3888、13.6MB)
ところどころでアート作品が並んでいるエリアも
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、12mm(35mm判換算24mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1.6秒、-1EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ポップアートII
撮影写真(3888×5184、4.3MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、7mm(35mm判換算14mm相当)、絞り優先AE、F2.8、1/2秒、-0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:Vivid
撮影写真(5184×3888、5.1MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、14mm(35mm判換算28mm相当)、絞り優先AE、F2.8、0.3秒、-0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ネオノスタルジー
撮影写真(5184×3888、6.5MB)
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO、7mm(35mm判換算14mm相当)、絞り優先AE、F2.8、0.8秒、-0.3EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:ドラマチックトーンI
撮影写真(3888×5184、7.8MB)
この写真は手すりの上にカメラを置き、両手でカメラを固定しながら撮影した1枚です。手すりの上とはいえ、カメラをやや下向きに傾けているため、カメラはかなり不安定です。それにも関わらず、4秒(!)というシャッター速度で撮ってもぶれていません。「OM-1」と親和性の高いレンズ群との組み合わせだからこそ撮影できた写真と言えるでしょう
OM-1、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、12mm(35mm判換算24mm相当)、絞り優先AE、F11、4秒、-0.7EV、ISO400、ホワイトバランス:オート、仕上がり設定:i-Finish
撮影写真(3888×5184、13.0MB)
先ほど“秘密の地下要塞”と述べましたが、実際戦時中は、秘密の軍事工場として使われていた地下採掘場跡。現在ではコンサートや結婚式を行う会場としても利用されていると言います。
なお、広角ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」は、逆光下で利用するとフレアやゴーストが入りやすくなります。これはレンズの前玉が大きく手前に迫り出しているためで、35mm判換算14mm相当のワイドな画角を実用化するうえでは構造上致し方のないところ。フレアやゴーストが気になる場合は、カメラアングルを少し変更してみましょう。不要光を抑制できます。