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ソニーのフルサイズVLOGCAM「ZV-E1」誕生! 無償アップグレードで4K/120p記録に対応

ソニーは2023年3月29日の23時に、Vlogなどの動画の撮影に適した機能を搭載するデジタルカメラ「VLOGCAM」シリーズのフルサイズミラーレス「VLOGCAM ZV-E1」(以下、「ZV-E1」)を発表した。同シリーズの最上位モデルで、動画撮影に興味のある人にとって非常に魅力的なスペックを持つ注目製品だ。その特徴を紹介しよう。

「ZV-E1」は「VLOGCAM」シリーズ初のフルサイズ機。ウインドスクリーンが付属する。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色

「ZV-E1」は「VLOGCAM」シリーズ初のフルサイズ機。ウインドスクリーンが付属する。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色

重量500g未満のボディに「α7S III」に匹敵する動画撮影機能を搭載

ソニーは最近、デジタルカメラの静止画撮影機能だけでなく動画撮影機能にも力を入れている。「α7 IV」や「α7R V」など充実した動画撮影機能を搭載するフルサイズミラーレスをいくつもリリースしているし、動画撮影向きの「VLOGCAM」シリーズのラインアップも着実に拡充している。

今回登場した「ZV-E1」は、多くの動画撮影ユーザー(+動画撮影に興味のあるユーザー)が求めるスペックを備える、動画撮影向きのフルサイズミラーレスだ。光学式ボディ内手ブレ補正を持つフルサイズセンサー搭載のデジタル一眼カメラとして世界最小・最軽量(2023年3月29日時点、ソニー調べ)のコンパクトボディに、本格的な映像制作に活用できる、ハイレベルな機能を搭載している。

電子ビューファインダーを搭載しないこともあってボディはかなりコンパクト。サイズは121.0(幅)×71.9(高さ)×54.3(奥行)mmで、重量は、フルサイズミラーレスの下位モデル「α7C」(約509g)よりも軽い約483 g(バッテリーとメモリーカードを含む)。液晶モニターは3.0型のバリアングルタイプ(約103万ドット、タッチパネル対応)

電子ビューファインダーを搭載しないこともあってボディはかなりコンパクト。サイズは121.0(幅)×71.9(高さ)×54.3(奥行)mmで、重量は、フルサイズミラーレスの下位モデル「α7C」(約509g)よりも軽い約483 g(バッテリーとメモリーカードを含む)。液晶モニターは3.0型のバリアングルタイプ(約103万ドット、タッチパネル対応)

「ZV-E1」は、撮像素子に有効約1210万画素の35mmフルサイズ裏面照射型「Exmor R」CMOSセンサーを、画像処理エンジンに最新の「BIONZ XR」を採用している。この組み合わせを見てピンと来る人もいると思うが、ソニーから公式なアナウンスはないものの、映像制作のプロ向けのフルサイズミラーレス「α7S III」と同じ構成だ。15+ストップのダイナミックレンジ(S-Log3撮影時)や、ISO80〜10240の常用感度などのスペックも「α7S III」と共通である。

本体内の動画記録も「α7S III」と同等で、全画素読み出しによる4:2:2 10bitでの4K/60p記録に対応するほか、ソニーのクラウド制作プラットフォーム「Creators' Cloud」経由でライセンスキー(2023年6月以降の提供予定)を入手すれば、無償で4K/120p記録(※約10%クロップ)へのアップグレードも可能。豊かな中間色と自然な肌色が特徴のルック「S-Cinetone」にも対応している。

AFシステムは、759点(静止画撮影時)/627点(動画撮影時)の位相差測距点を持つ「ファストハイブリッドAF」。「α7S III」にない部分として注目したいのが、「α7R V」で初めて採用された最新のAF技術「AIプロセッシングユニット」だ。このユニットの搭載によって、「α7R V」と同様に、「人物」「動物/鳥」「動物」「鳥」「昆虫」「車/列車」「飛行機」の計7種類の被写体認識に対応する「リアルタイム認識AF」を駆使した、高精度な被写体追尾を実現。「AFトランジション速度」と「AF乗り移り感度」 の調整が可能なほか、対応レンズ使用時にフォーカス移動による画角変動を最小化する「ブリージング補正」も利用できる。

本体上面に、集音性能にすぐれるインテリジェント3カプセルマイクを装備。「オート」「前方」「全方位」「後方」から指向性を選択できる(※「オート」は環境に合わせて「前方」もしくは「全方位」を自動で選択するモード)。外部マイクを使って高品質なデジタル録音が可能な「マルチインターフェースシュー」も搭載している

本体上面に、集音性能にすぐれるインテリジェント3カプセルマイクを装備。「オート」「前方」「全方位」「後方」から指向性を選択できる(※「オート」は環境に合わせて「前方」もしくは「全方位」を自動で選択するモード)。外部マイクを使って高品質なデジタル録音が可能な「マルチインターフェースシュー」も搭載している

メモリーカードスロットはシングル仕様で、UHS-II対応のSDメモリーカードに対応。インターフェイスとしてHDMIマイクロ端子(タイプD)、USB Type-C端子、マイク端子、ヘッドホン端子が備わっている

メモリーカードスロットはシングル仕様で、UHS-II対応のSDメモリーカードに対応。インターフェイスとしてHDMIマイクロ端子(タイプD)、USB Type-C端子、マイク端子、ヘッドホン端子が備わっている

「ZV-E1」の撮影画面。タッチ操作を活用したユーザーインターフェイスを採用している

「ZV-E1」の撮影画面。タッチ操作を活用したユーザーインターフェイスを採用している

カメラにインポートしたLUTファイル(.cube)をユーザープロファイルとして使用できるPPLUTにも対応

カメラにインポートしたLUTファイル(.cube)をユーザープロファイルとして使用できるPPLUTにも対応

シネマティックな表現を楽しめる機能や、カメラワークをサポートする機能などの新機能を搭載

「ZV-E1」では動画撮影に関する新機能にも注目だ。カメラ1台でより簡単にシネマティックな表現が楽しめるように、これまでにはなかった機能がいくつも搭載されている。

「ZV-E1」に搭載された新機能
・マイイメージスタイル
・シネマティックVlog設定
・オートフレーミング
・フレーミング補正
・複数人物認識
・ダイナミックアクティブモード

「マイイメージスタイル」は、「おまかせオート」や「SCN(シーンセレクション)」での撮影時に、画面上のアイコンをタッチすることで直感的に背景のボケ具合や、明るさ、色合いを調整できる機能。タッチ操作を使った、初心者向けの操作性だ。

「マイイメージスタイル」の操作画面。背景のボケ具合や、明るさ、色合いをタッチ操作で調整できる

「マイイメージスタイル」の操作画面。背景のボケ具合や、明るさ、色合いをタッチ操作で調整できる

「シネマティックVlog設定」は、映画のワンシーンのような映像を一括設定で撮影できる機能。この設定をオンにすると、アスペクト比はシネマスコープ(2.35:1)、フレームレートは24p、「AFトランジション速度」はMidに固定される。さらに、「S-Cinetone」「CLEAN」「CHIC」「FRESH」「MONO」の5つのルックと、「AUTO」「GOLD」「OCEAN」「FOREST」の4つのムードを掛け合わせて画作りを追い込むこともできる。

「シネマティックVlog設定」をオンにした際の撮影画面。自動的にシネマスコープ(2.35:1)に設定されるほか、5つのルックと4つのムードの組み合わせも選択できるできる

「シネマティックVlog設定」をオンにした際の撮影画面。自動的にシネマスコープ(2.35:1)に設定されるほか、5つのルックと4つのムードの組み合わせも選択できる

「オートフレーミング」と「フレーミング補正」は、カメラワークをサポートする新機能だ。

「オートフレーミング」は、「AIプロセッシングユニット」による被写体認識機能を生かし、動画撮影時や動画配信時に認識した被写体を追尾しながら、動きにあわせて自動的にクロップし、構図を変更する機能。「フレーミング補正」は、被写体と並走して撮影するときなどに、被写体が構図内の同じ位置をキープするようにトラッキングし、自動で構図を補正する機能。いずれもクロップが前提のため画角が狭くなるうえ、4K記録時は解像感が落ちる場合があるが、撮影後の編集を必要とせず、カメラのみで安定した構図の映像を記録できるのが便利だ。

「オートフレーミング」の設定画面。クロップレベル(クロップする範囲のレベル)やフレーミングの追従速度などの調整項目が用意されている。細かい点では、本体内記録とHDMI出力でクロップの有無を設定できるのが便利

「オートフレーミング」の設定画面。クロップレベル(クロップする範囲のレベル)やフレーミングの追従速度などの調整項目が用意されている。細かい点では、本体内記録とHDMI出力でクロップの有無を設定できるのが便利

「オートフレーミング」のクロップレベルは撮影画面からも選択できる

「オートフレーミング」のクロップレベルは撮影画面からも選択できる

「フレーミング補正」は、被写体が中央に位置するように構図を固定する「中央」と、手動で設定する「マニュアル」を選択できる

「フレーミング補正」は、被写体が中央に位置するように構図を固定する「中央」と、手動で設定する「マニュアル」を選択できる

「複数人物認識」は、「おまかせオート」で人物を撮影する際の新機能で、顔を認識した複数人にピントが合うように自動的に絞り値を調整するというもの。たとえば、画面に1人しかいない場合は絞りを開けて、画面に人が入ってきて2人以上になった場合には絞りを調整して被写界深度を深くするといった動作をする。

さらに、「ZV-E1」は、動画撮影時の手ブレ補正も強化されている。5.0段分の補正効果を持つボディ内5軸手ブレ補正を搭載し、強力な補正効果が得られる「アクティブモード」に対応しているうえ、「アクティブモード」から補正効果が約30%向上する「ダイナミックアクティブモード」という新モードも備えている。このモードを選択すれば、画角は「アクティブモード」からさらに狭くなるものの、より強力に手ブレを補正することが可能だ。

「αシリーズ」の最新フルサイズミラーレスと同じく、大容量の「Zバッテリー」(NP-FZ100)を採用。静止画撮影可能枚数は約570枚で、実動画撮影時間は約95分

「αシリーズ」の最新フルサイズミラーレスと同じく、大容量の「Zバッテリー」(NP-FZ100)を採用。静止画撮影可能枚数は約570枚で、実動画撮影時間は約95分

静止画撮影に関しては、連写が最高約10コマ/秒に対応。連写時の撮影可能枚数は、JPEG(Lサイズ/エクストラファイン)が1000枚以上、圧縮RAWならびにロスレス圧縮RAWが1000枚以上、圧縮RAW+JPEGが416枚、ロスレス圧縮RAW+JPEGが92枚、非圧縮RAWが85枚、非圧縮RAW+JPEGが57枚で、さすがに、高速なCFexpress Type Aカードに対応する「α7S III」と比べると、特にRAW+JPEG連写時の持続性で見劣りする。最高シャッタースピードは1/8000秒(電子シャッター時を含む)。

まとめ “ミニα7S III”と評せる充実した機能を搭載

「ZV-E1」は“ミニα7S III”と言っても過言ではないくらいの、充実した動画撮影機能を搭載する小型・軽量なフルサイズミラーレスだ。長時間撮影時の発熱が少々気になるところではあるが、無償で4K/120p記録に対応するアップグレードが用意されており、4K動画撮影機としてフル活用できるポテンシャルを持っている。「シネマティックVlog設定」や「オートフレーミング」「フレーミング補正」といった、本格的な動画撮影をサポートする新機能を備えているのは、これから動画撮影を始めたい人にとってうれしいポイントではないだろうか。

発売は2023年4月21日で、ボディ単体のほか、標準ズームレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」が付属するレンズキットも用意される。市場想定価格はボディ単体が330,000円前後、レンズキットが360,000円前後(いずれも税込)。

充実した動画撮影機能を考慮すると、この価格はコストパフォーマンスが高いと言ってよいだろう。これから本格的な動画撮影を始めてみたい人から、フルサイズミラーレスを活用して映像制作を行っている人まで、幅広い層から注目を集める動画撮影機になりそうだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。

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