レビュー

ニコン「Z 8」発表! 写真家の上田晃司さんが香港で速攻レビュー

ニコンは2023年5月10日、フルサイズミラーレスカメラの新モデル「Z 8」を発表した。事前にティザーページが公開されていたため、どういったカメラが発表になるのか気になっていた人も多いことだろう。お目見えしたのは、多くの人が期待していた「Z 9」の下位モデルだ。ここでは、写真家の上田晃司さんによる、「Z 8」のファーストインプレッションをいち早くお届けする。

「Z 9」の機能をほぼすべて継承しつつ、小型・軽量化を実現した「Z 8」

「Z 9」の機能をほぼすべて継承しつつ、小型・軽量化を実現した「Z 8」

「Z 8」の主な特徴
・有効4571万画素の積層型CMOSセンサー(デュアルストリーム技術搭載)
・最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」
・メカニカルシャッターレス仕様
・最高1/32000秒の超高速シャッタースピードに対応
・9種類の多彩な被写体検出に対応するAFシステム
・最高約20コマ/秒のAF・AE追従連写(約11MPでの最高約120コマ/秒連写などにも対応)
・「美肌効果」やHEIF記録(HLG撮影)などの新機能
・常に被写体の動きが表示・更新される「Real-Live Viewfinder」
・縦横チルト対応の3.2型タッチパネル液晶モニター
・8.3K/60p記録や4K UHD/120p記録など充実の動画撮影機能
・サイズ:144(幅)×118.5(高さ)×83(奥行)mm
・重量:約910g(メモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)
・発売日:2023年5月26日
・市場想定価格:60万円前後(税込)

小型バッテリーながら「Z 9」と同等の機能を搭載

今回、幸運にも「Z 8」を先行して使用する機会を得たので、実際に使ってみて感じたことをレポートしよう。

最初に「Z 8」のポイントとしてお伝えしたいのは、「Z 9」のDNAを着実に受け継いだ、「ミニZ 9」と言っても遜色ない高性能なカメラだということ。

通常、上位機種のDNAを受け継ぐ場合でも、フラッグシップならではの機能は制限されることが多いが、「Z 8」は「Z 9」の機能をほぼそのまま受け継いでいる。そのため、多くの人は「Z 9を小さくしただけ」と思うかもしれないが、「Z 8」は、「Z 6」シリーズや「Z 7」シリーズでも使えるバッテリー「EN-EL15c」を採用していることを考慮してほしい。「Z 9」の「EN-EL18d」と比べて容量が少ないバッテリーにも関わらず、「Z 9」とほぼ同じ機能が使えるのだ。この点に、ニコンの技術力の高さがうかがえるというものである。

「Z 8」の付属バッテリーは「Z 6II」や「Z 7II」と同じ「EN-EL15c」

「Z 8」の付属バッテリーは「Z 6II」や「Z 7II」と同じ「EN-EL15c」

「Z 8」と「Z 9」のスペックを詳しくチェックして見てみると、静止画も動画もほぼ変わりないことがわかる。9種類の被写体を検出できるAFシステムや、最高約20コマ/秒のAF・AE追従連写に対応しているうえ、動画もN-RAW 8.3K/60pやProRes 422 10bit HQなどに対応。「Z 9」と差があるのは動画の連続撮影時間が少し短いくらいだ。

動画の連続撮影時間に関しては、バッテリー以外に熱放出の課題もあるので、さすがにボディが小さい「Z 8」では致し方ないところである。とはいえ、「Z 8」でも、4K UHD/60pで最長125分 、8K UHD/30pで最長90分の記録に対応しているので十分と言えるだろう。

12bit RAW記録としてN-RAWとProRes RAW HQに対応。N-RAWでは8.3K/60p記録が可能だ

12bit RAW記録としてN-RAWとProRes RAW HQに対応。N-RAWでは8.3K/60p記録が可能だ

このほかの細かい機能性についても、「Z 9」のほぼすべての機能を引き継いでいる。イメージセンサーシフト方式の5軸手ブレ補正はしっかりと手ブレを補正してくれ、手持ちでの夜のスナップ撮影などでも役立った。海外取材時などでは三脚を使わないこともあるので手ブレ補正が強力だととても助かる。ゴミ対策も「Z 9」と同様にセンサーシールドが搭載されているので安心感がある。

「Z 9」と比べて約430g軽い小型・軽量ボディ

「Z 8」のサイズは144(幅)×118.5(高さ)×83(奥行)mmで、重量は約910g(メモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。「Z 9」と同様にメカニカルシャッターレス仕様で、センサーシールドも搭載している

「Z 8」のサイズは144(幅)×118.5(高さ)×83(奥行)mmで、重量は約910g(メモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。「Z 9」と同様にメカニカルシャッターレス仕様で、センサーシールドも搭載している

「Z 8」の実機を触って感じたのは、思った以上に軽いということ。筆者は「Z 9」を3台購入するほどのニコンのヘビーユーザーで普段から「Z 9」をフル活用しているが、「Z 9」と比べると「Z 8」は本当に軽く感じる。

重量を見ると、「Z 8」は約910gで、「Z 9」は約1340g(いずれもメモリーカードを含む、ボディキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)。「Z 8」は「Z 9」より430gほど軽く、体積比では30%もダウンしている。もちろん、「Z 6II」や「Z 7II」と比べるとひと回り大きく、重量も205gほど重いが、性能の高さを考慮するとこのサイズ感は驚異的だ。

「Z 9」は仕事用のメイン機材であり、車移動などではまったく不満はない。ただ筆者は海外取材などが多く、時に「Z 9」のサイズ感が気になることもある。そうした場合、機動力を上げるために「Z 7II」や「Z 6II」に変更することもある。よく使う機材だからこそ、「Z 8」と「Z 9」の430gという重量差は大きいと感じる。

一体型のグリップがなくなるだけで、3cmほど高さ低くなるだけで、持って行くカメラバックがワンサイズ小さくなる。三脚もより軽いもので十分だ。「Z 8」と「Z 9」の両方を持ち運んだ経験から言うと、「Z 8」では、カメラバッグを含めたトータルで計算して1kg以上軽くなる。今回、「Z 8」を持って香港へ撮影に出かけたが、コンパクトに持ち運べるので気軽に撮影することができた。 

左が「Z 9」で、右が「Z 8」。体積で比べると「Z 8」は「Z 9」よりも約30%小さい

左が「Z 9」で、右が「Z 8」。体積で比べると「Z 8」は「Z 9」よりも約30%小さい

「Z 8」が気になっている人の中には、一眼レフの名機「D850」をお使いの人も多いだろう。「Z 8」は「D850」よりもコンパクトで、重量は約95g軽く、体積は15%減っている。軽さもさることながら、ボディがより薄くなっている印象が強い。

レンズとの組み合わせによっては、「D850」ではシステムとして明らかに大きく重くなる場合がある。「D850」と標準ズームレンズ「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」の組み合わせは総重量が2kgを超えてしまうが、「Z 8」と標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」の組み合わせなら2kg未満(約1715g)に収まる。この組み合わせでは「D850」と比べて約300gも軽いのだ。このようにシステム全体で見ると「Zシリーズ」ならびに「Z 8」に魅力を感じるという人も多いことだろう。

「Real-Live Viewfinder」などの操作性も「Z 9」を踏襲

ボディ周りの機能や操作性についても紹介しよう。

「Z 8」と「Z 9」の大きな違いとして触れておきたいのがメモリーカードスロットだ。「Z 9」はCFexpress Type Bカードのダブルスロットだが、「z 8」はCFexpress Type Bカード×1+SDカード(UHS-II対応)×1の仕様。SDカードを使えるのは、メディア資産を生かせるという点で「D850」などのユーザーから歓迎されることだろう。ただし、通常の静止画撮影などではSDカードで問題ないが、連写撮影やスペックの高い動画撮影など、カメラの性能をフルに引き出したい場合はCFexpress Type Bカードを使用したいところだ。

CFexpress Type BカードとSDカード(UHS-II対応)のダブルスロットを採用

CFexpress Type BカードとSDカード(UHS-II対応)のダブルスロットを採用

HDMI端子はタイプAに対応しているので安心感がある。さらに、USB端子は2個搭載されており、充電・給電と通信を別々に行うことが可能。給電しながらリモートグリップ「MC-N10」などさまざまなアクセサリーを使えるのが魅力だ。

HDMI端子(Type A)を採用

HDMI端子(Type A)を採用

充電・給電専用と通信用の2つのUSB端子を搭載

充電・給電専用と通信用の2つのUSB端子を搭載

電子ビューファインダー(EVF)は「Z 9」と同等となる、ブラックアウトフリーの「Real-Live Viewfinder」。表示画素数は約369万ドットで、倍率は約0.8倍だ。「Zシリーズ」らしい自然でクリアな見え方のEVFに仕上がっている。液晶モニターは4軸チルト式を採用。縦位置でも横位置でも光軸がずれないのが使いやすい。

「Z 9」と同じ、常に被写体の動きが表示・更新される「Real-Live Viewfinder」対応のEVFを搭載

「Z 9」と同じ、常に被写体の動きが表示・更新される「Real-Live Viewfinder」対応のEVFを搭載

4軸チルト式の3.2型タッチパネル液晶モニター(約210万ドット)を採用

4軸チルト式の3.2型タッチパネル液晶モニター(約210万ドット)を採用

ボタン類に関しては「Z 9」とほぼ同じ操作感を実現しているので、「Z 9」ユーザーの筆者でも違和感なく使用できた。また、グリップもかなりしっかりしており、ホールド感にすぐれている。大きめの望遠レンズなどを使ってもバランスよく撮影できた。ボディは堅牢性の高いマグネシウム合金に加え、一部には、マグネシウム合金と同等の強度を持つ新素材「Sereebo P」シリーズを採用している。

背面のボタン類のレイアウトは「Z 9」を踏襲。縦位置を除けば、ほぼ同じような操作感で撮影できる

背面のボタン類のレイアウトは「Z 9」を踏襲。縦位置を除けば、ほぼ同じような操作感で撮影できる

ボディ右肩に表示パネルを搭載。シャッターボタン周りのボタンレイアウトも「Z 9」と同じだ

ボディ右肩に表示パネルを搭載。シャッターボタン周りのボタンレイアウトも「Z 9」と同じだ

画質と撮影機能をチェック

今回、「Z 8」を使ってさまざまなシーンで撮影を行った。まずは作例をいくつかご覧いただきたい。

「Z 8」は4軸チルト式の液晶モニターを採用している。モニターが縦位置にも可動するので、とても構図を作りやすい。この作例は水たまりギリギリにカメラを近づけてローポジション撮影したが、4軸チルトモニターのおかげで楽に撮影できたZ 8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/125秒、ISO900、WB:晴天、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(5504×8256、20.8MB)

「Z 8」は4軸チルト式の液晶モニターを採用している。モニターが縦位置にも可動するので、とても構図を作りやすい。この作例は水たまりギリギリにカメラを近づけてローポジション撮影したが、4軸チルトモニターのおかげで楽に撮影できた
Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/125秒、ISO900、WB:晴天、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5504×8256、20.8MB)

香港の金融街を長秒露光で撮影した。ここで見てほしいのは「NIKKOR Zレンズ」と有効4571万画素のセンサーによって得られるディテールの細かな描写だ。高層ビル群の細かいところまで描写していることがわかるZ 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F10、8秒、ISO64、WB:オート0、ピクチャーコントロール:風景、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、27.6MB)

香港の金融街を長秒露光で撮影した。ここで見てほしいのは「NIKKOR Zレンズ」と有効4571万画素のセンサーによって得られるディテールの細かな描写だ。高層ビル群の細かいところまで描写していることがわかる
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F10、8秒、ISO64、WB:オート0、ピクチャーコントロール:風景、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、27.6MB)

雨と霧で天気の悪い香港ではあったが、「Z 8」の画作りは非常に優秀。メリハリのある画質でカッチリと撮影できた。「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」との相性もよく、フェリーのリベット部分までシャープに描写しているZ 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、24mm、F4、1/400秒、ISO280、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ビビッド、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、21.8MB)

雨と霧で天気の悪い香港ではあったが、「Z 8」の画作りは非常に優秀。メリハリのある画質でカッチリと撮影できた。「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」との相性もよく、フェリーのリベット部分までシャープに描写している
Z 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、24mm、F4、1/400秒、ISO280、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ビビッド、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、21.8MB)

筆者はストリートフォトグラフィーでは手持ち撮影が基本。ミニバスの横を歩く人々をブラしたかったのでシャッタースピードを1/8秒に設定した。5軸手ブレ補正の効果は絶大で余裕で手ブレを防ぐことができたZ 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F2.5、1/8秒、ISO100、WB:晴天、クリエイティブピクチャーコントロール:トイ、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、19.6MB)

筆者はストリートフォトグラフィーでは手持ち撮影が基本。ミニバスの横を歩く人々をブラしたかったのでシャッタースピードを1/8秒に設定した。5軸手ブレ補正の効果は絶大で余裕で手ブレを防ぐことができた
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F2.5、1/8秒、ISO100、WB:晴天、クリエイティブピクチャーコントロール:トイ、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、19.6MB)

インスタグラムでも有名な香港のアパートで撮影。カラフルな運動広場にバスケットゴールが置いてあったのでシャッターを切った。発色のよさもさることながら、ディテールまでシャープに描写していることに驚かされる。パンフォーカス気味の写真ではあるがバスケットゴールが立体的に感じられるだろうZ 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、41mm、F8、1/160秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ビビッド、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、23.6MB)

インスタグラムでも有名な香港のアパートで撮影。カラフルな運動広場にバスケットゴールが置いてあったのでシャッターを切った。発色のよさもさることながら、ディテールまでシャープに描写していることに驚かされる。パンフォーカス気味の写真ではあるがバスケットゴールが立体的に感じられるだろう
Z 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、41mm、F8、1/160秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ビビッド、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、23.6MB)

10秒感の長秒露光で橋の間から見える香港の九龍側を撮影。ちょうど大型のフェリーが出発の準備をしていたので運よく撮影できた。「Z 8」と「NIKKOR Zレンズ」の組み合わせは非常に性能が高く、数キロ先の風景のディテールまで驚くほどカッチリ表現できた。細かな部分まで表現できることで平面的な写真から立体感が感じられるZ 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、120mm、F8、10秒、ISO64、WB:自然光オート、クリエイティブピクチャーコントロール:ソンバー、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、JPEG撮影写真(8256×5504、20.0MB)

10秒感の長秒露光で橋の間から見える香港の九龍側を撮影。ちょうど大型のフェリーが出発の準備をしていたので運よく撮影できた。「Z 8」と「NIKKOR Zレンズ」の組み合わせは非常に性能が高く、数キロ先の風景のディテールまで驚くほどカッチリ表現できた。細かな部分まで表現できることで平面的な写真から立体感が感じられる
Z 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、120mm、F8、10秒、ISO64、WB:自然光オート、クリエイティブピクチャーコントロール:ソンバー、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、JPEG
撮影写真(8256×5504、20.0MB)

「Z 8」の画質は、「Z 9」と同じく有効画素数が4571万画素と高いこともあり、「NIKKOR Z レンズ」の魅力を最大限に引き出すことができると感じた。「NIKKOR Z レンズ」は画質重視のものが多いので、細かな描写が必要な、香港のマンション群のような被写体の撮影にピッタリだ。画像周辺までディテールをシャープに写してくれる。

高感度性能に関しても「Z 9」と同じような感じで、暗部からハイライトまでしっかりとしたノイズコントロールに加えて、ノイズを消しすぎないバランスが心地よい。筆者の場合、スナップ撮影などでは感度自動制御を使って上限をISO6400に設定することが多いが、「Z 8」ならこの撮り方でまったく問題なく使えると感じた。

また、「Z 8」はメカニカルシャッターレス仕様のため、電子シャッターでの撮影になるのもポイントだ。センサーの読み出し速度が高速で1/32000秒の高速シャッタースピードに対応しており、開放F1.2や開放F1.8などの明るいレンズを使用する場合でもNDフィルターを付けずに開放撮影が楽しめる。天気のよいときのポートレート撮影などでは本当に便利だ。

連写は「Z 9」と同等の最高約20コマ/秒を実現しているうえ、JPEG撮影のみにはなるが「ハイスピードキャプチャ+」では最高約30コマ/秒(45メガピクセル)、最高約60コマ/秒(DXサイズ)、最高約120コマ/秒(11メガピクセル)の超高速連写も利用できる。さらに、プリキャプチャ機能を使用すれば最大1秒までさかのぼって記録できるので、決定的瞬間を見逃さない撮影も可能だ。

以下に掲載する作例は、街中で見つけた鳥を、最高約60コマ/秒のプリキャプチャで撮影したもの。驚くほど簡単に飛び立つ瞬間を撮影できた。筆者の専門外の被写体もカメラのおかげで撮れるので撮影の幅がグッと広がる。このカメラなら専門外の被写体も撮りたくなってしまうというものだ。

街中で見つけた鳥が飛び立つ瞬間を狙って、最高約60コマ/秒のプリキャプチャで撮影。鳥が飛び立ったのを見てシャッターを押しているが、動きを的確に撮影することができたZ 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、120mm、F4、1/4000秒、ISO500、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、「ハイスピードフレームキャプチャ+」の「C60」で撮影、JPEG撮影写真(5392×3592、5.5MB)

街中で見つけた鳥が飛び立つ瞬間を狙って、最高約60コマ/秒のプリキャプチャで撮影。鳥が飛び立ったのを見てシャッターを押しているが、動きを的確に撮影することができた
Z 8、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S、120mm、F4、1/4000秒、ISO500、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:オート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、長秒時ノイズ低減:しない、「ハイスピードフレームキャプチャ+」の「C60」で撮影、JPEG
撮影写真(5392×3592、5.5MB)

「Z 8」の機能で筆者がうれしかったのは、「3D-トラッキング」の搭載だ。「3D-トラッキング」はスポーツや野鳥、動物などの撮影で活用する印象があるかもしれないが、これら以外でも多くの被写体で活用できる。今回はストリートフォトグラフィーで使ったが、街中の人などさまざまな被写体を確実にとらえてくれた。AFの食いつきもよく、「Z 9」と同じ感覚で撮影することができた。

さらに、「3D-トラッキング」は被写体検出とも組み合わせられるので、より精度よく撮影することが可能。ちなみに、「Z 9」では被写体検出の「乗り物」に「飛行機」が含まれていたが、「Z 8」ではより高い精度が担保されたため、「飛行機」のみを選択できるようになっている。

感度自動制御を使って撮影したスナップ写真。感度はISO2000まで上がっているがノイズ感はほとんど気にならないレベルだ。また、ピント合わせに「3D-トラッキング」を使ったが、精度が非常に高く暗い中でも被写体の後頭部をトラッキングしてくれたZ 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/125秒、ISO2000、WB:晴天、クリエイティブピクチャーコントロール:トイ、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、19.4MB)

感度自動制御を使って撮影したスナップ写真。感度はISO2000まで上がっているがノイズ感はほとんど気にならないレベルだ。また、ピント合わせに「3D-トラッキング」を使ったが、精度が非常に高く暗い中でも被写体の後頭部をトラッキングしてくれた
Z 8、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S、F1.8、1/125秒、ISO2000、WB:晴天、クリエイティブピクチャーコントロール:トイ、アクティブD-ライティング:しない、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、19.4MB)

「Z 8」は、新しい撮影機能として「美肌効果」を搭載している。肌を自然な仕上がりに整えてくれる機能で、「弱め」「標準」「強め」の3段階の効果を選択できる。効果は3人まで適応でき、画面内に人が4人いると無効になるそうなので複数人の撮影では注意が必要だ。また、基本的にJPEG撮影用の機能であり、RAW現像時に「美肌効果」を加えたり、「美肌効果」の設定を変更したりできない点にも注意したい。

「美肌効果」で撮影した写真を見ると、効果を強くしていくにつれて肌の細やかさが増してくる印象を受ける。効果を最大の「強め」にしても加工している感じはなく、とてもナチュラルな仕上がりだ。好みにもよるが、「標準」か「強め」をメインに使用してよいだろう。

「美肌効果」の効果をチェック

通常撮影

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、DXフォーマットで撮影、JPEG撮影写真(5392×3592、7.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、DXフォーマットで撮影、JPEG
撮影写真(5392×3592、7.2MB)

美肌効果:弱め

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:弱め、DXフォーマットで撮影、JPEG撮影写真(5392×3592、7.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:弱め、DXフォーマットで撮影、JPEG
撮影写真(5392×3592、7.2MB)

美肌効果:標準

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:標準、DXフォーマットで撮影、JPEG撮影写真(5392×3592、7.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:標準、DXフォーマットで撮影、JPEG
撮影写真(5392×3592、7.2MB)

美肌効果:強め

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:強め、DXフォーマットで撮影、JPEG撮影写真(5392×3592、7.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO100、WB:晴天、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、美肌効果:強め、DXフォーマットで撮影、JPEG
撮影写真(5392×3592、7.2MB)

さらに、「Z 8」は、「人物印象調整」という機能も搭載している。これは人肌の色感を微調整できるというもの。必要ならば使ってみるのもよいだろう。

今回初搭載の機能として注目したいのがHLG撮影だ。スマートフォンなどでは使っている人もいると思うが、「Zシリーズ」としては初対応。通常では白飛びしてしまうようなシーンでもHLGであれば広いダイナミックレンジで撮影できるので、肉眼に近い印象に仕上がる。ただ、ダイナミックレンジが広くなるとメリハリは失われるので、好みで使い分けるとよいだろう。ちなみに、HLG画像はプリントして楽しむものではなく、HDRテレビやHDR対応スマートディバイス、HLG対応モニターなどで閲覧して楽しむものになる。

最後に、動画撮影についてもまとめておこう。

「Z 8」は、「Z 9」の動画機能を引き継いでおり、N-RAWで最大8.3K/60p記録に対応しているほか、ProRes RAW HQ、ProRes 422 10bit HQ、H.265 4:2:0 10bit、H.265 4:2:0 8bit、H.264 4:2:0 8bitといった多彩なフォーマットにも対応している。8K UHDもH.265 4:2:0 10bitとH.265 4:2:0 8bitで収録可能。もちろん、4K UHDやフルHDなどにも幅広く対応している。

先にも少し触れたが「Z 9」との違いは撮影可能時間の長さだ。「Z 8」は、バッテリーのサイズや熱によって、「Z 9」と比べると連続撮影時間が短いものの、筆者の主な使用用途である1〜2分くらいの短い素材を多数撮影したり、10〜15分くらいのインタビューを撮影したりした分には8Kで撮影してもまったく問題なかった。また、RAW以外のフォーマットであれば、動画でも「美肌効果」が使えるのもとても便利だと感じた。動画ではレタッチするのが大変なので撮影時に肌をきれいにしてくれるのはとてもありがたい。

動画撮影時のAFも「Z 9」と同等で、ストレスなく撮影できた。動画撮影のバッテリー持ちも思いのほか長く、丸1日撮影してもバッテリー3〜4本の使用で済んだ。とはいえ、動画を本気で撮る場合は1日の撮影が1本で済むということないので、最低でも2本は持っておきたいところだ。

まとめ 期待を裏切らない完成度の高いカメラ

今回、「Z 8」を使用してみて、非常によくできた完成度の高いカメラだと感じた。「Z 9」のほぼすべての機能を引き継ぎながら、このサイズ感に仕上げたのは驚かされる。筆者は「Z 9」を3台も持っているが、海外の取材ではよりコンパクトなシステムが求められることが多く、「Z 8」はそうした場面で活躍するカメラだと思う。海外取材など移動の多い撮影用のカメラとして購入する予定だ。

「Z 8」はオールマイティにこなせることが多く、風景はもちろん、ストリートフォトグラフィー、乗り物、動物、ポートレートなど幅広いジャンルの撮影で活用できるポテンシャルを持っている。「Z 8」の登場を待っていたというニコンファンも多いと思うが、その期待を裏切らないカメラであることは間違いないと言えそうだ。

上田晃司

上田晃司

米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー/映像作家として活動開始。ドローンなど新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に生かしている。現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っている。YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」でカメラや旅について情報を発信中。ニコンカレッジ講師、LUMIXアカデミー講師、Hasselbladアンバサダー2015、プロフォトトレーナー。

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