レビュー

“異次元”の写りを見よ! ニコン「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」実写レビュー

ニコンから驚くほど高性能な中望遠・単焦点レンズ 「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」が2023年3月24日に発売された。筆者も発売日に購入したレンズだ。今回はリアルユーザーとしてさまざまな被写体を撮影してきたので、写真作例を掲載しながら本レンズの魅力を紹介したいと思う。

「NIKKOR Zレンズ」の高性能ライン「S-Line」に属する「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」。開放絞り値F1.2の大口径を実現した注目レンズだ

「NIKKOR Zレンズ」の高性能ライン「S-Line」に属する「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」。開放絞り値F1.2の大口径を実現した注目レンズだ

最高峰の性能を追求した開放F1.2の中望遠レンズ

ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」用の交換レンズ「NIKKOR Zレンズ」は、2023年5月18日時点で計34本(Special Editionバージョンを含む)+テレコンバーター2本のラインアップを誇っている。「Zシリーズ」が誕生した2018年9月から約4年半をかけて着実に拡張し、パンケーキレンズ「NIKKOR Z 26mm f/2.8」など個性的なレンズも増えてきている。

筆者は、気がつけばほぼすべての「Zシリーズ」のカメラボディを所有し、20本近くの「NIKKOR Zレンズ」を使って仕事と作品撮りをこなしている。「NIKKOR Zレンズ」はどれも本当に写りがよくて満足している。

数ある「NIKKOR Zレンズ」の中でも最高峰の位置付けで発売されたのが、今回紹介する
「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」だ。開放F値がF1.2の大口径・中望遠レンズで、同じく開放F1.2の標準レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」と同様、サイズや重量よりも写りを重視した設計を採用している。そのため、カメラに装着した画像を見てもわかるように、本レンズはかなり大きい。全長は141.5mmで最大径は102.5mmとかなり太め。重量は1kg越えの約1160gだ。

筆者愛用の「Z 9」と組み合わせると総重量は2.5kgに迫る。ただ、思いのほか重さは感じない。レンズとボディのバランスがよいのがその理由だろう。「Z 9」はAFの性能が高く、被写界深度の薄い開放F1.2での撮影でも高精度なピント合わせが可能だ。本レンズのポテンシャルを引き出すのに最適なカメラと言える

筆者愛用の「Z 9」と組み合わせると総重量は2.5kgに迫る。ただ、思いのほか重さは感じない。レンズとボディのバランスがよいのがその理由だろう。「Z 9」はAFの性能が高く、被写界深度の薄い開放F1.2での撮影でも高精度なピント合わせが可能だ。本レンズのポテンシャルを引き出すのに最適なカメラと言える

本レンズの外観は「NIKKOR Zレンズ」らしくシンプル。リング類は大きめのフォーカスリングとコントロールリングを搭載している。「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」ではコントロールリングに指が触れやすく、誤って設定を変えてしまうことがあるが、本レンズではコントロールリングに触れにくくなり誤作動もほとんど発生しない印象。ボタン類では、よく使う機能などを登録できるL-Fn(レンズファンクション)ボタンが備わっている。「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」とは異なり、レンズ情報パネルは非搭載だ。

大きめのフォーカスリングとともに、絞り値や感度、露出補正などを割り当てられるコントロールリングを搭載。筐体左手側にはL-Fnボタンも備わっている

大きめのフォーカスリングとともに、絞り値や感度、露出補正などを割り当てられるコントロールリングを搭載。筐体左手側にはL-Fnボタンも備わっている

また、本レンズは、しっかりとしたシーリングとレンズマウントゴムリングの採用によって、高い防塵・防滴性能を実現している。実際に雨の中、ストリートフォトの撮影を数時間行ったが、動作などに問題が起こることはなく快適に撮影できた。

このほか、非常に大きなレンズではあるが、AFアクチュエーターにSTMモーターを2個搭載したマルチフォーカス方式を採用し、スムーズなピント合わせが可能なのも押さえておきたい。近接域からシャープに結像するので、近接から遠景まで本レンズの写りをしっかりと味わうことができる。また、STMを採用しているため動画撮影時にもAF駆動音が録音されることなく撮影できるのもポイントだ。

描写力をチェック

次に、「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」の描写を見てみよう。

本レンズの最大の魅力は、何と言っても圧倒的な描写力だ。開放F1.2ともなるとやわらかいフワフワとした画を想像する人もいるだろう。しかし、本レンズはそういったことはなく、絞り開放からカッチリと結像し、驚くほどシャープに撮影できる。開放から使えるのが本レンズの強みだ。

以下に掲載する写真作例はすべて開放F1.2で撮っているもの。いずれも、収差が少なく、本当にF1.2で撮影したのか疑いたくなるほどよく写っている。

バストアップで撮影。絞り開放にもかかわらずピント位置の目はとてもシャープで収差などは確認できない。背景のボケは非常に大きく、滑らかにボケているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、16.2MB)

バストアップで撮影。絞り開放にもかかわらずピント位置の目はとてもシャープで収差などは確認できない。背景のボケは非常に大きく、滑らかにボケている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、16.2MB)

前ボケを入れてウエストアップで撮影。前ボケの要素は手前にあった緑を活用。葉っぱなのでゴチャゴチャしそうだったが、とろけるようにボケてくれて品が感じられる。背景の丸ボケは、絞り開放のため口径食の影響で少しラグビーボール状になっているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、13.4MB)

前ボケを入れてウエストアップで撮影。前ボケの要素は手前にあった緑を活用。葉っぱなのでゴチャゴチャしそうだったが、とろけるようにボケてくれて品が感じられる。背景の丸ボケは、絞り開放のため口径食の影響で少しラグビーボール状になっている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、13.4MB)

少し引いて全身を絞り開放で撮影しているが、焦点距離85mmとは思えないほど大きく背景がボケてくれた。立体感があって被写体が浮き立っているように感じられる写真だ。背景の太い木の枝などが自然にボケてくれたのも好印象Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/4000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(5504×8256、16.0MB)

少し引いて全身を絞り開放で撮影しているが、焦点距離85mmとは思えないほど大きく背景がボケてくれた。立体感があって被写体が浮き立っているように感じられる写真だ。背景の太い木の枝などが自然にボケてくれたのも好印象
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/4000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(5504×8256、16.0MB)

街スナップで後ろ姿を撮影した。手前の柵もきれいにボケてくれて立体感がある。ピント位置を見てもびっくりするほどシャープに写っているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(8256×5504、13.5MB)

街スナップで後ろ姿を撮影した。手前の柵もきれいにボケてくれて立体感がある。ピント位置を見てもびっくりするほどシャープに写っている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(8256×5504、13.5MB)

大雨の中撮影したが、防塵・防滴性能のおかげで安心して撮影することができた。非常に暗いシーンではあったが、AFでしっかりとピントが合わせられたうえ、F1.2という明るさによって手ブレしない十分なシャッタースピードを確保できたZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/160秒、ISO2500、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(8256×5504、19.7MB)

大雨の中撮影したが、防塵・防滴性能のおかげで安心して撮影することができた。非常に暗いシーンではあったが、AFでしっかりとピントが合わせられたうえ、F1.2という明るさによって手ブレしない十分なシャッタースピードを確保できた
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/160秒、ISO2500、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(8256×5504、19.7MB)

本レンズは開放F1.2の描写に魅力があるが、少し絞ったときの解像感にも注目してほしい。絞り値をF2.0まで絞るとさらにシャープになり、F2.8で周辺までカッチリと写るようになる。F5.6まで絞れば驚くほど線が細くなり、肉眼では見えないようなところまでシャープに写してくれる。シーンによって被写界深度を考慮しながらさまざまな絞り値で楽しんでほしい。

F5まで絞り込んですてきな家を撮影した。画面周辺までしっかりと解像している。壁の細かな凹凸やドアの質感まで表現できているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F5、1/1000秒、ISO64、WB:曇天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(8256×5504、36.1MB)

F5まで絞り込んですてきな家を撮影した。画面周辺までしっかりと解像している。壁の細かな凹凸やドアの質感まで表現できている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F5、1/1000秒、ISO64、WB:曇天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(8256×5504、36.1MB)

窓際に飾ってあった植物を撮影した。ピント位置を見るととても立体感が感じられる。線が太くなってしまいそうな背景の家なども自然にボケてくれているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F3.5、1/500秒、ISO64、WB:曇天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(8256×5504、15.6MB)

窓際に飾ってあった植物を撮影した。ピント位置を見るととても立体感が感じられる。線が太くなってしまいそうな背景の家なども自然にボケてくれている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F3.5、1/500秒、ISO64、WB:曇天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(8256×5504、15.6MB)

本レンズのレンズ構成はEDレンズ1枚と非球面レンズ2枚を含む10群15枚。EDレンズを使用することで軸上色収差を、非球面レンズを使用することで球面収差やディストーションを効果的に補正している。事実、先に掲載した絞り開放の作例を見ても、ハイライト部分で気になるような収差はほとんど発生していないし、丸ボケのエッジ部分の色づきもほぼない。ディストーションも少なく、非常にナチュラルな画が得られている。

さらに、レンズコーティングに「ナノクリスタルコート」を採用し、ゴーストやフレアの発生を抑制。筆者の場合は、街灯などさまざまな光源を画面に入れる夜の街スナップ撮影を行うことも多いので、逆光に強いのはとても助かる。フレアをコントロールしやすく、ポートレート撮影などで逆光を活用する場合に効果的な撮影ができる点も魅力だ。

ナノクリスタルコートが施されているため、多少の強い光源などを入れてもゴーストやフレアは最小限に抑えることができる。この写真を見てもわかるように、強い光源が入ってもしっかりコントラストをキープし、シャープに撮影できているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(5504×8256、13.0MB)

ナノクリスタルコートが施されているため、多少の強い光源などを入れてもゴーストやフレアは最小限に抑えることができる。この写真を見てもわかるように、強い光源が入ってもしっかりコントラストをキープし、シャープに撮影できている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2500秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(5504×8256、13.0MB)

本レンズの仕様では絞り羽根の数にも注目したい。一般的な7枚や9枚よりも枚数が多い11枚の円形絞りを採用しており、ワンランク上の丸ボケを楽しむことができる。ただし、さすがに開放F1.2の大口径なので、被写体までの距離にもよるが、絞り開放では口径食の影響で周辺の丸ボケがラグビーボール状になることがある。この描写が気になるようであれば、開放から少し絞るとよいだろう。実際に試してみたが、本レンズはF2くらいまで絞ると周辺まで丸ボケが得られる印象を受けた。

絞り値F2で撮影

大口径レンズでボケを真円に近づけたいなら少し絞るとよい。本レンズの場合、筆者の印象ではF2.0まで絞るとかなり真円に近くなる印象だZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F2、1/640秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.7MB)

大口径レンズでボケを真円に近づけたいなら少し絞るとよい。本レンズの場合、筆者の印象ではF2.0まで絞るとかなり真円に近くなる印象だ
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F2、1/640秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.7MB)

絞り値F1.2で撮影

こちらはF1.2で撮影したものだが、ボケが大きい半面、口径食の影響を受けているZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.7MB)

こちらはF1.2で撮影したものだが、ボケが大きい半面、口径食の影響を受けている
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.7MB)

本レンズの最短撮影距離は85cmで、最大撮影倍率は0.11倍。それほど近接に強いわけではないが、人物を撮影するのであれば問題ないだろう。マルチフォーカス方式によって近接でもしっかり写るのも本レンズの魅力だ。

本レンズの最短撮影距離は85cm。味のある南京錠を最短近辺で撮影してみた。近接域でも非常に解像感が高く、シャープに写すことができたZ 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/160秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:風景、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)撮影写真(8256×5504、17.2MB)

本レンズの最短撮影距離は85cm。味のある南京錠を最短近辺で撮影してみた。近接域でも非常に解像感が高く、シャープに写すことができた
Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/160秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:風景、アクティブD-ライティング:標準、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG(サンプル品で撮影)
撮影写真(8256×5504、17.2MB)

85mmレンズ3本の画質を比較

最後に、せっかくなので、ニコンから発売されている中望遠・単焦点レンズ3本の比較を行った。

使用したのは、開放F値がF1.2の「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」、F1.4の「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」(Fマウントの一眼レフ用)、F1.8の「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」。焦点距離は85mmで開放F値が異なるので、これら3本の写りの違いが気になっている人も多いだろう。以下に比較作例を掲載するのでぜひ確認してほしい。

左から「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」

左から「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」

■「NIKKOR Zレンズ」2本を比較

「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」 開放F1.2で撮影

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.0MB)

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/2000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.0MB)

「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」 開放F1.8で撮影

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/1000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.7MB)

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/1000秒、ISO64、WB:自然光オート、ピクチャーコントロール:ポートレート、アクティブD-ライティング:弱め、ヴィネットコントロール:しない、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.7MB)

「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」と「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の絞り開放で撮り比べてみた。解像感の高さはさすがの「NIKKOR Zレンズ」で、ピント位置は両レンズとも収差が少なく、とてもシャープだ。ただし、ボケ感については、「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のF1.2のほうがボケが大きくて印象的。背景の丸ボケも「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のほうが大きい。

■3本を比較

「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」 開放F1.2で撮影

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/6400秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、13.8MB)

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.2 S、F1.2、1/6400秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、13.8MB)

「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」 開放F1.4で撮影

Z 9、AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G、F1.4、1/5000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.5MB)

Z 9、AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G、F1.4、1/5000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.5MB)

「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」 開放F1.8で撮影

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/4000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG撮影写真(8256×5504、14.5MB)

Z 9、NIKKOR Z 85mm f/1.8 S、F1.8、1/4000秒、ISO64、WB:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する、高感度ノイズ低減:標準、JPEG
撮影写真(8256×5504、14.5MB)

一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」を加えた3本で絞り開放の描写をチェックした。ボケ感に軍配が上がるのは「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のF1.2で、ほかのレンズとは立体感が異なる印象。絞り値が大きくなるにつれてボケ量が減り、立体感が落ち着いてくる感じで、「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のF1.2と「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」のF1.4を比べても、F1.2のほうが明らかにボケは大きい。なお、一眼レフ用の「AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G」に関しては、「NIKKOR Zレンズ」と比べてやや解像感が低く、やわらかめの印象。球面収差などの諸収差も確認できる。

まとめ 圧倒的なボケ感と立体感が楽しめる至極の1本

「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」のスペックで注目なのは、やはり開放F1.2という明るさだ。F1.2とF1.4/F1.8ではそれほど違いが出ないように感じるかもしれないが、撮り比べてみると、明らかに写りが違うことがわかる。数字だけでは伝わらない部分が多いので、ぜひ本記事で掲載した写真作例を見ていただきたい。

本レンズで撮影したからこそ得られる圧倒的なボケ感と、被写体との距離が離れていても浮き立つような立体感は格別で“異次元”と言っても言いすぎではない。大きて重いレンズではあるが、それだけの価値のあると言えるだろう。異次元の写りを堪能してみたい人は、ぜひ本レンズを手に取っていただきたい。

なお、焦点距離85mmの中望遠・単焦点レンズはポートレートレンズの王道なので、「85mm=人物用」という印象を持つ人もしれないが、85mmレンズは人物以外にもあらゆる被写体の撮影で活躍できることは覚えておいてほしい。今回、「NIKKOR Z 85mm f/1.2 S」を使用して街スナップからポートレート、風景までさまざまな被写体の撮影に挑戦してみたが、改めて幅広い使い方ができると感じた。

上田晃司

上田晃司

米国サンフランシスコに留学し、写真と映像を学び、CMやドキュメンタリーを撮影。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フォトグラファー/映像作家として活動開始。ドローンなど新しい技術をいち早く取り入れ、写真や映像表現に生かしている。現在は、雑誌、広告を中心に、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。講演や執筆活動も行っている。YouTubeチャンネル「写真家夫婦上田家」でカメラや旅について情報を発信中。ニコンカレッジ講師、LUMIXアカデミー講師、Hasselbladアンバサダー2015、プロフォトトレーナー。

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