レビュー

重量約215gの超広角レンズ! 富士フイルム「XF8mmF3.5 R WR」発売前レビュー

富士フイルム「XF8mmF3.5 R WR」は、同社のAPS-Cミラーレスカメラ「Xシリーズ」用の新しい超広角・単焦点レンズ。純正「XFレンズ」の中では、ズームレンズ「XF8-16mmF2.8 R LM WR」と並び、最も広い画角の1本です。2023年6月29日の発売に先駆けて試用することができたので、実写作例とともに特徴をレビューします。

「X-H2」と組み合わせて「XF8mmF3.5 R WR」を試用してみました

「X-H2」と組み合わせて「XF8mmF3.5 R WR」を試用してみました

12mm相当(35mm判換算)に対応しながら小型・軽量化を実現

「XF8mmF3.5 R WR」の大きな特徴は、焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)の超広角レンズながら、68(最大径)× 52.8(全長)で重量約215gという小型・軽量に仕上がっているところです。

最広角レンズとは思えないほどコンパクトな「XF8mmF3.5 R WR」。「X-H2」との組み合わせだと小柄なことがよくわかります

最広角レンズとは思えないほどコンパクトな「XF8mmF3.5 R WR」。「X-H2」との組み合わせだと小柄なことがよくわかります

レンズ構成は、非球面レンズ3 枚とED レンズ2 枚を含む9群12枚。超広角レンズは一般的に大型化しやすいものですが、非球面レンズとEDレンズを最適に配置することで、ここまでの小型化に成功したとのことです。

また、本レンズは、前玉が突出しないタイプなので、一般的なねじ込み式のフィルターが使用できます。小柄レンズらしくフィルター径も62mmと小サイズで、偏光フィルターやNDフィルターなどの出費を抑えられるのもうれしい点ですね。

フィルター径は62mm

フィルター径は62mm

絞りリングにはロックボタンを装備しています。最小絞りの「F22」から「A(オート)」へ、また「A(オート)」から「F22」へと、ロックボタンを押すことで変更できる仕組みで、不用意に設定が変更されないように工夫されています。

絞りリングのロックボタンを押すと「F22」から「A」に設定できます

絞りリングのロックボタンを押すと「F22」から「A」に設定できます

「A」から「F22」にするときもロックボタンを押します

「A」から「F22」にするときもロックボタンを押します

付属のレンズフードを装着したイメージ

付属のレンズフードを装着したイメージ

遠景撮影で解像性能をチェック

「XF8mmF3.5 R WR」の解像性能を確認するために、遠景の撮影を行ってみました。といっても焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)ともなると、画角が広すぎて画面全体を無限遠にできるようなシーンはなかなかありません。可能な限りの遠景撮影であることはご容赦ください。

絞り値F3.5で撮影

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F3.5、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、21.9MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F3.5、1/1250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、21.9MB)

絞り値を開放のF3.5にして撮影したのが上の写真です。画面の中央部から広い範囲で良好な解像感が得られていますが、周辺部になると若干の像の甘さを感じます。とはいえ、焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)の超広角を考慮すると、絞り開放でこの画質ならむしろ描写性能はすぐれていると言って問題ないと思います。

絞り値F5.6で撮影

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F5.6、1/500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、22.8MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F5.6、1/500秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、22.8MB)

F5.6まで絞ると開放の周辺部で見られた像の甘さは解消され、画面のほとんど全体で高い解像感が得られるようになります。この場合でも、四隅においては多少の像の乱れが残りますが、広大な画角の中に細かく写りこむ被写体の細部までを、緻密に描き分けることのできる解像性能は本物だと感じました。

コンパクトな設計でここまで実用的な描写性能を実現しているのは、さすが最新設計の「XFレンズ」だけあると言ったところ。個人的には本レンズの次に広い画角の単焦点レンズ「XF14mmF2.8 R」(このレンズは筆者自身が愛用しています)より画質がよいことに、うらやましさを感じてしまうほどです。

超広角でうれしい強力な逆光耐性

焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)もの広い画角となると、避けられないのが太陽などの強い光源が画面内に入ること。

本レンズを使ってみてとても感心したのが、どんなに厳しい逆光条件でも、少なくとも試用期間中にゴーストやフレアの発生がほとんど見られなかったことでした。うまく利用すれば効果的な演出にもなるゴースト・フレアですが、多くの場合、むやみに発生してほしくないものです。

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F5.6、1/480秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト撮影写真(7728×5152、17.0MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F5.6、1/480秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
撮影写真(7728×5152、17.0MB)

そのほかの特徴

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F8、1/56秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド撮影写真(7728×5152、22.1MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F8、1/56秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド
撮影写真(7728×5152、22.1MB)

対角画角121度の世界は、肉眼からは想像もできない強烈なパースペクティブを有します。画面にあふれる情報をまとめるのは簡単なことではありませんが、うまく決まったときに得られるよろこびはほかでは得がたいものがあります。レンズがコンパクトなので持ち歩くのも苦にならないため、本レンズ1本で街に切り込むというのも楽しそうです。

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F4、1/120秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード撮影写真(7728×5152、23.0MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F4、1/120秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード
撮影写真(7728×5152、23.0MB)

上の写真は、岩屋に祀られた海神様を撮ったものです。狭い岩屋内でしたが鉄格子の隙間から内部を広々と写すことができました。焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)と言われると使い初めは「一体何を撮るとよいのだろう?」と考えてしまいますが、実際に使ってみると何でもないものが意外に印象的に写すことができるので、思ったよりも楽しく被写体と向き合うことができました。

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F7.1、1/60秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト撮影写真(7728×5152、18.8MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F7.1、1/60秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ASTIA/ソフト
撮影写真(7728×5152、18.8MB)

近寄って写すことで、被写体を大きく写しながら広く背景を入れる、いわゆるワイドマクロですが、焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)ともなると並みの広角レンズとは一味違った迫力があります。最短撮影距離18cmと近接撮影性能が高いため、被写界深度の深い超広角レンズながら、絞ってもそれなりにボケるのは面白いところでした。

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F6.4、1/250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ACROS撮影写真(7728×5152、17.3MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F6.4、1/250秒、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、フィルムシミュレーション:ACROS
撮影写真(7728×5152、17.3MB)

富士フイルムのデジタルカメラは、仕上がり設定の「フィルムシミュレーション」を選んで撮るのも楽しみのひとつ。上の写真では、同社モノクロフィルムをイメージした「ACROSS」を使ってみました。海岸に落ちていた流木ですが、本レンズの強烈なパースペクティブと良質なモノクロの仕上げ設定のおかげで印象的な表現になったのではないかと思います。

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F3.5、1/70秒、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド撮影写真(7728×5152、25.2MB)

X-H2、XF8mmF3.5 R WR、8mm(35mm判換算12mm相当)、ISO125、F3.5、1/70秒、ホワイトバランス:日陰、フィルムシミュレーション:Velvia/ビビッド
撮影写真(7728×5152、25.2MB)

ホワイトバランスを「日陰」、フィルムシミュレーションを「Velvia/ビビッド」にすることで、日没の夕景感を強調してみました。超広角レンズはそれで撮ったとは思わせないように、さりげなく自然にまとめるのがうまい撮り方のひとつと言われます。それに成功しているかどうかはともかくとして、やはり肉眼をはるかに超えた画角でお気に入りの写真が撮れたときの達成感はひとしおでした。

まとめ 機動力の高さを生かし、静止画・動画の両方で活躍する1本

「XF8mmF3.5 R WR」は、焦点距離8mm(35mm判換算で12mm相当)の超広角レンズながら小型・軽量で、しかも高画質という、富士フイルムのレンズ開発力の高さを感じる1本に仕上がっています。

最新技術が詰め込まれただけあって、AFは非常に速く正確で、しかも静か。機動力を生かした風景撮影や建築撮影、あるいはスナップ撮影などに幅広く活用できるレンズです。さらに、動画撮影用としても使いやすいのではないかと思います。アクションカム的に、「Xシリーズ」のカメラと組み合わせるのにも最適な選択ではないでしょうか。

「XFレンズ」の今後の展開としては、本レンズ(35mm判換算で12mm相当)と「XF14mmF2.8 R」(35mm判換算21mm相当)の間を埋めるような焦点距離の超広角・単焦点レンズが追加されると、ファンとしては誠にうれしいところです。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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