夏の夜空は、天の川や夏の大三角などがきれいで天体観測や撮影にもってこい! 今回は、夏の夜空の撮影に活用したい、ケンコー・トキナーの新しいフィルター「スターリーナイト プロソフトン」をご紹介します。
ケンコー・トキナーから2023年7月7日に発売された、円形フィルター「スターリーナイト プロソフトン」。49mmから82mmまで9サイズのフィルター径が用意されています
まずは、星空の撮影に必要な機材をおさらいしておきましょう。
星空の撮影は数十秒の長いシャッタースピードで撮影するため、しっかりとした三脚の利用が必須です。さらに、あると便利なのが「光害カットフィルター」「ソフトフィルター」という2つのフィルターです。
光害カットフィルター
星景撮影において色かぶりの原因となる街明かりなど不要な光を除去してくれます。
ソフトフィルター
光を拡散して描写をやわらかくする効果があるフィルターです。星の光をにじませることで、1つひとつの星を大きく写せます。
星空を撮影する際に、この2枚のフィルターを重ねている人もいることでしょう。ただ、2枚のフィルターを重ね付けするのは、手間がかかることに加えて、広角レンズでは周辺がケラれる原因になります。また、フィルター間での光の乱反射によってフレアやゴーストが発生することもあります。
「光害カットフィルター」と「ソフトフィルター」を重ねると、このようにフィルター部分の厚みが増します。こうしたフィルターの重ね付けは広角レンズではケラれの原因になりますし、フレアやゴーストも発生しやすくなります
今回紹介する「スターリーナイト プロソフトン」は、「光害カットフィルター」と「ソフトフィルター」との2つの効果を1枚のフィルターで得られるというすぐれもの(※ソフト効果は「PRO1D プロソフトン クリア(W)」に相当)。このフィルターを使えば、フィルターの重ね付けによる問題を解消しながら撮影できます。
「スターリーナイト プロソフトン」を装着したイメージ。従来は2枚重ねる必要があった光害カット効果とソフト効果を1枚のフィルターに集約しています
それでは、「スターリーナイト プロソフトン」の効果を検証していきましょう。
以下に掲載する作例は、「スターリーナイト プロソフトン」を装着して撮影したものと、フィルターを装着せずに撮影したものになります。使用したカメラはニコンのフルサイズミラーレス「Z 7II」、レンズは広角・単焦点レンズ「NIKKOR Z 20mm f/1.8 S」です。
なお、「スターリーナイト プロソフトン」を装着すると0.3〜0.7段分ほど減光するため、「スターリーナイト プロソフトン」付けて撮影した写真は、付けていないものよりも感度を0.7段高くしています。
「スターリーナイト プロソフトン」を付けて撮影した写真です。明るい星が滲み、星の像が大きく撮影できています。また、色かぶりも抑えられ、きれいな星空を撮影できました
Z 7II、NIKKOR Z 20mm f/1.8 S、F1.8、15秒、ISO4000、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
撮影写真(8256×5504、23.4MB)
「スターリーナイト プロソフトン」を付けて撮影した写真と比べて、星が小さく細かい印象。全体的にマゼンタに色かぶりしています
Z 7II、NIKKOR Z 20mm f/1.8 S、F1.8、15秒、ISO2500、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、ヴィネットコントロール:標準、自動ゆがみ補正:する、回折補正:する
撮影写真(8256×5504、23.5MB)
上記の比較作例を見ると、まず、空の色が違うことに気づくのではないでしょうか。この作例は、長野県野辺山周辺の街明かりが少ない場所で撮影しましたが、それでも「スターリーナイト プロソフトン」を付けずに撮影した写真はマゼンタに色かぶりしています。対して、「スターリーナイト プロソフトン」を付けて撮影した写真は適切な色に仕上がっています。
また、以下に掲載する切り出し画像(等倍50%)をご覧いただきたいのですが、フィルターの有無によって1つひとつの星の大きさも違います。「スターリーナイト プロソフトン」を付けたほうは、明るい星をにじませることで星が大きく写っていますし、星の色も強調できています。
左が「スターリーナイトプロソフトン」を装着して撮影したもので、右がフィルターを使わずに撮影したもの。「スターリーナイトプロソフトン」のほうが星を大きく、かつ色を強調して撮影できています
星空の撮影で絶大な効果を発揮する「スターリーナイトプロソフトン」ですが、フィルターによる減光には注意が必要です。今回使用してみて、0.3〜0.5段分ほどの減光を感じました。慣れるまでは少し明るめで撮影したり、露出ブラケットなどを利用したりするとよいかと思います。
先に掲載した、「スターリーナイト プロソフトン」を使った作例をRAW現像で仕上げたてみました。シャドウ部の明るさを上げることで、小さく見えづらかった星も浮き出て、ダイナミックな印象になりました。全体的にコントラストも強くしています。星空を撮影する場合は、RAWデータで記録して現像することでクオリティがアップします
撮影写真(8256×5504、59.9MB)
「スターリーナイト プロソフトン」は、満天の星空が動き輝くタイムラプス動画の撮影にもぜひ活用いただきたいです。
動く星をソフト効果で大きく表現できるのもポイントですが、タイムラプス動画の編集においては、光害カット効果によって色かぶりを抑えられるのが大きいです。タイムラプス動画は膨大な写真をつなげて生成するため、RAW現像で大量の写真の色を調整するのはとても大変。撮って出しで完成された状態であれば、撮影後の編集がなく、より手軽にタイムラプス動画を作成できます。
カメラによってはタイムラプス撮影の際に写真を1枚1枚保存できないものもあるので、撮って出しでより正確な色が出ると安心して撮影できますね。
星空の撮影は、暗い中で三脚を立てたり、カメラの設定を入念に確認したりと労力がかかる撮影です。撮影前に確認することが多い分、ミスが発生する可能性も高いと思います。
特に、登山で撮影を楽しむ場合、日中はフィルターを外しておいて、星空の撮影時にフィルターを付けるという人も多いのではないでしょうか。その際、複数のフィルターを使うことを想定していると、「フィルターを持ってくるのを忘れてしまった」「違うフィルターを重ねてしまった」ということも起こりかねません。
「スターリーナイト プロソフトン」は、1回のフィルター装着で星空の撮影に必要な2つの効果を得られるため、そうしたミスが起こりにくいと感じました。より高いクオリティの星空写真を撮りたい人だけでなく、これから星空の撮影を始めたい人にもおすすめできる製品です。
某カメラメーカーのショールームで約3年間従事したのち、MONO GRAPHYに入社。写真、動画撮影をしながら、MONO GRAPHYではディレクターとしてコンテンツ制作にも携わる。週に1、2回はお店のスタッフとしても勤務中。