「スペックからは見えない違いを徹底比較」をテーマに、ハイエンド向けミラーレスカメラ6機種のAFや操作性、画質の特徴を動画で解説します。
今回の動画の見どころは、素早く動くダンサーを被写体にしたAF(オートフォーカス)の検証。実際の撮影画面を記録した映像で、各機種のAF速度・精度をチェックしてください。
ニコン「Z 8」、キヤノン「EOS R3」、ソニー「α1」、富士フイルム「X-H2S」、OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1」、パナソニック「LUMIX GH6」の計6機種をピックアップ。動画では、フルサイズミラーレス3機種とAPS-Cミラーレス/マイクロフォーサイズ3機種に分けてレビューしています
6機種のAF(被写体検出機能)を徹底検証しました
以下に、動画の内容をダイジェストでご紹介します。
最初のお伝えしておきたいのは、ハイエンドモデルだからといって画質が劇的に向上するわけではないということ。最近のミラーレスカメラはエントリーモデルでも高性能で、十分に高画質な撮影が可能です。
では、ハイエンドモデルは何が秀でているのでしょうか? スタンダードモデルやエントリーモデルとの違いは大きく以下の3点があげられます。
・使い勝手
・レスポンス
・堅牢性
ハイエンドモデルの大きな特徴として押さえておきたいのが「使い勝手」です。隅まで明るくクリアなファインダーだったり、大きなレンズを装着しても安定したホールド感が得られるグリップだったりと、細かいところまで使い手のことを考えて設計されています。
ハイエンドモデルはファインダーやグリップの品質が高く、撮影しやすいです
また、ハイエンドモデルは「レスポンス」にすぐれているのも特徴です。AFや連写速度だけでなく、撮影後の画面の切り替えなど、ちょっとした操作を含めてキビキビと動作するのがポイント。フィーリングよく撮影を楽しめます。
レスポンスがよいのもハイエンドモデルの特徴
そして「堅牢性」の高さもハイエンドモデルだからこその部分です。すぐれた防塵・防滴構造を採用しており、故障しにくく、安心して使うことができます。
防塵・防滴性能にすぐれるのも見逃せません
「Zシリーズ」のフラッグシップモデル「Z 9」のスペックをそのまま搭載した下位モデル。下位モデルは上位モデルと比べてどこか性能・機能が落ちるところがあるのが一般的ですが、「Z 8」は違います。
「Z 9」のメカニカルシャッターレス仕様をそのまま引き継ぎ、撮像素子(有効4571万画素の積層型CMOSセンサー)や画像処理エンジン「EXPEED 7」も「Z 9」と同じ。8.3K/60p記録を実現するなど動画撮影機能も充実しています。
「Z 8」の特徴
「EOS Rシリーズ」のハイエンドモデルで、縦位置グリップ構造を持つのが特徴。フラッグシップに近い位置づけのカメラです。
性能面では、有効最大約2410万画素の裏面照射積層型CMOSセンサーを採用し、最高約30コマ/秒の高速連写を実現。視線入力機能が備わっているのも、このカメラならではの部分です。
「EOS R3」の特徴
有効約5010万画素の高画素な撮像素子(積層型CMOSセンサー)を搭載しつつ、最高約30コマ/秒の高速連写を実現した、「αシリーズ」のフラッグシップモデルです。
最大120回/秒の演算によるAF/AE追従や、動体歪みを抑えたアンチディストーションシャッターなど、フラッグシップだけあって細かいところまで高い性能を誇っています。8K/30p動画の撮影も可能です。
「α1」の特徴
APS-Cミラーレスカメラ「Xシリーズ」のフラッグシップモデル。同シリーズ初の積層型センサー搭載モデルで、最高約40コマ/秒の超高速連写を実現しています。動画撮影機能も充実しており、4K/120p記録が可能です。
ちなみに、「Xシリーズ」はダブルフラッグシップでラインアップを構成しています。高速性に特徴のある「X-H2S」とは別に、高画素センサー(有効約4020万画素)を搭載する「X-H2」もフラッグシップモデルとして用意されています。
「X-H2S」の特徴
マイクロフォーサーズシステムを採用する「OM SYSTEM」ブランドのフラッグシップモデル。積層型センサー(有効約2037万画素)を採用することで画質と高速性が大幅に向上しているのが特徴です。特に連写はAF・AE追従で最高約50コマ/秒という圧倒的なスピードを実現しています。
強力な防塵・防滴性能を搭載しているのも特徴で、ネイチャー系の撮影に向いたカメラと言えるでしょう。
「OM SYSTEM OM-1」の特徴
マイクロフォーサーズシステムを採用する「LUMIX Gシリーズ」のフラッグシップモデルで、本格的な動画撮影機能を搭載するのが特徴です。5.7K/60p、5.8K-A/30p、C4K/120pなどさまざまなフォーマットの動画をクロップレスで記録できます。
使い回しのよい機材として映像制作のプロやクリエイターから選ばれているカメラです。
「LUMIX GH6」の特徴
ダンサーを被写体にして、AFの被写体検出機能の精度と追従性をチェックしたところ、「Z 8」「EOS R3」「α1」の3機種は、いずれも非常に高いレベルで被写体を認識することがわかりました。特に、「Z 8」と「EOS R3」は頭ひとつ抜けている印象。いずれも、カメラまかせのAFで人物の顔や瞳を高精度に検出してくれました。
「Z 8」「EOS R3」「α1」の被写体検出精度は上々
「Z 8」は、フラッグシップモデル「Z 9」のAFをそのまま搭載しているだけあって、動く被写体を的確に認識し続けました。テストする前は「EOS R3」や「α1」と比べると少し劣るかもしれないと思っていましたが、実際に試しているとかなり高性能なことがわかりました。
「Z 8」は「Z 9」と同様に高精度な被写体検出を実現
「EOS R3」は、胴体や頭などを認識しながらきっちりと人物にピントが追従しました。3機種の中でAFの食いつきがいちばんよい印象です。
「EOS R3」はAFの食いつきがよく、検出精度・追従性も非常に高いです
「α1」は、一瞬ちょっとピントが抜けたり、顔を検出しなかったりしたことがありました。ただ、被写体追尾機能「リアルタイムトラッキング」を働かせると、「Z 8」「EOS R3」とほぼ同等の結果になりました。
「α1」は「リアルタイムトラッキング」を使うことでより高精度な検出が可能
「Z 8」の操作性はファインダーがポイントです。光学系に徹底的にこだわっており、非常にクリアで自然な見え方を実現しています。細くて深いグリップも握りやすく、心地よく撮影できるカメラです。
高品位なファインダーを搭載する「Z 8」
縦位置一体型ボディの「EOS R3」は、横位置と縦位置のボタンレイアウトが基本的に同じなので、横・縦のどちらに構えても同じ操作で撮影できるのが使いやすいです。ファインダーもクリアな表示で好印象です。
「EOS R3」は縦位置でも横位置と同じような操作が可能
「α1」は、上面と背面に多くの操作性を搭載しているうえ、ボタンのカスタマイズ性にもすぐれており、自分好みの操作設定に追い込むことができます。ファインダーは944万ドットの高画素タイプでとてもシャープな見え方です。
操作性が多く、かつカスタマイズ性も高い「α1」
撮像素子の画素数を見ると「α1」の有効約5010万画素が最も高いですが、実用的には、この3機種で画質の差はあまりありません。ただ、撮影した写真をトリミングする場合は、「EOS R3」よりも画素数が多い「α1」や「Z 8」が有利です。
色やトーンは3機種とも自然で忠実な印象です。オートホワイトバランスも正確で甲乙付けがたいです。1点知っておいてほしいのは、ニコンの「Zシリーズ」は、大口径の「Zマウント」を採用しているため、光学性能にすぐれているということ。一眼レフとはレベルの違う画質を楽しめます。
フルサイズミラーレス3機種は色再現性が高く、どれも高画質
「X-H2S」「OM SYSTEM OM-1」「LUMIX GH6」の3機種は、被写体検出の精度に違いが出ました
フルサイズミラーレスと同様、ダンサーを被写体にして、AFの被写体検出機能を検証してみました。「X-H2S」「OM SYSTEM OM-1」「LUMIX GH6」の3機種の中で期待を超える結果だったのが「X-H2S」。思った以上に正確に人物の瞳を認識し続けてくれました。フルサイズミラーレス3機種に匹敵する性能だと思います。
フルサイズミラーレス3機種に匹敵する追従性を発揮した「X-H2S」
マイクフォローサーズの2機種は、「X-H2S」と比べて検出精度で少し差が出ました。「OM SYSTEM OM-1」は、人物にピントは合いますが、瞳の検出能力がそれほど高くない印象。「LUMIX GH6」は激しい動きに対して人物の顔を認識しないときがありました。
「OM SYSTEM OM-1」は瞳の検出能力が少し落ちる印象。カメラに近づかないと瞳が認識されませんでした
「LUMIX GH6」は素早い動きの被写体に弱い印象。認識できないタイミングがありました
「X-H2S」は、背面に十字キー、上面に撮影モードダイヤルを備えたスタンダードな操作性で、使い始めから操作に悩むようなことは少ないと思います。グリップは少し指があまる感じはありますが、奥までしっかりホールドできます。「Xシリーズ」史上最高をうたうファインダーも見やすいです。
高品位なファインダーを搭載するのも「X-H2S」の魅力です
「OM SYSTEM OM-1」は、コンパクトなボディながら、背面のAFセレクターなどハイエンド機として十分な操作性を搭載しています。少し細い形状のグリップはとても持ちやすく、よく考えて作られていると思います。ファインダーは自然な見え方です。
「OM SYSTEM OM-1」はバランスのよい操作性を実現しています
「LUMIX GH6」は、上面のドライブモードダイヤルや背面のAFモード選択レバーなど、フラッグシップモデルらしく充実した操作性を持っています。今回紹介した6機種の中で、動画の録画ボタンが最も大きく、動画撮影に力を入れているカメラであることがわかります。
「LUMIX GH6」は、動画撮影での使いやすさを考慮し、大きな録画ボタンを採用しています
「X-H2S」の画質面では、富士フイルム独自の仕上がり設定「フィルムシミュレーション」を使えるのが魅力です。多彩な色合いの写真・動画を撮って出して撮ることができます。設定を追い込むことで、いろいろな楽しみ方ができるのも魅力です。
富士フイルム独自の「フィルムシミュレーション」を搭載する「X-H2S」
マイクロフォーサーズの2機種については、センサーサイズが小さい分、フルサイズに比べると階調性やノイズでは差がありますが、実用的にはまったく問題ないレベルです。「OM SYSTEM OM-1」は、裏面照射積層型CMOSセンサーを採用しており、マイクロフォーサーズとしては高感度に強いのが魅力。「LUMIX GH6」は、忠実な色合いながら力強さを感じるチューニングで、プロの写真家からの評判も高いです。
裏面照射積層型CMOSセンサーを採用する「OM SYSTEM OM-1」。高感度に強いのが特徴です
「生命力・生命美」をコンセプトに画質をチューニングしている「LUMIX GH6」
ハイエンド向けのカメラを選ぶ場合は、スペックだけでなく、外観デザインにも注目してほしいです。また、メーカーの開発思想やコンセプトに共感できるのかどうかも重要なポイント。本動画で紹介した内容を製品選びの軸にしてもらえればと思います。
パソコン・家電からカップ麺に至るまで、何でも自分で試してみないと気が済まないオタク(こだわり)集団。常にユーザー目線で製品を厳しくチェックします!