交換レンズ図鑑
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広角レンズながらボケる!「SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art」実写レビュー

個性的な特徴を持つ交換レンズを多数ラインアップするシグマ。今回紹介する「SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art(以下、20mm F1.4 DG HSM)」は、シグマの高性能レンズの代名詞でもあるArtラインの単焦点だ。焦点距離20mmながら絞り開放F1.4で撮れるという、他にはないスペックを持つ大口径・広角レンズとなっている。キヤノン用、ニコン用、シグマ用がラインアップされているが、今回はキヤノン用を使ってレビューする。

シグマの広角レンズ、20mm F1.4 DG HSM。EOS 6Dを使って撮影した

シグマの広角レンズ、20mm F1.4 DG HSM。EOS 6Dを使って撮影した

焦点距離20mmで開放F1.4の大口径を実現した世界初のレンズ

シグマは2012年以降、交換レンズのラインアップを「Art」「Contemporary」「Sports」の3つのプロダクトラインに分けて展開している。Artは、最高の光学性能と豊かな表現力にこだわるアーティスティック・ライン。Contemporaryは、高い光学性能とコンパクト化を両立するハイパフォーマンス・ライン。Sportsは、高い運動性能を発揮し、スポーツや飛行機などの撮影に適したスポーティ・ラインとなっている。

いずれのラインもコンセプトにもとづいて開発されており、魅力ある製品がそろっているが、その中でも特にArtラインは、シグマを代表する高性能レンズとして人気が高い。Artラインではこれまでに、フルサイズ対応の単焦点レンズ(型番にDGが付くモデル)として「35mm F1.4 DG HSM」「50mm F1.4 DG HSM」「24mm F1.4 DG HSM」が登場しているが、いずれも、高価な純正レンズに匹敵する描写力を実現し、ユーザーからすぐれた評価を得ている。

20mm F1.4 DG HSMは、そんなArtラインの新モデル。最大の特徴は、フルサイズ対応で焦点距離20mmという広角でありながら、開放F1.4の大口径を実現したこと。シグマによると、35mmフルサイズをカバーするデジタルカメラ用交換レンズとしては世界初のスペックを実現した大口径・広角レンズとなる。確かに、フルサイズ対応の他の広角レンズを見てみると、14mm F2.8、20mm F1.8、24mm F1.4というスペックになっており、20mmで開放F1.4というものはない。近いものでは、ライカの「SUMMILUX-M 21 mm f/1.4 ASPH」というレンズがあるものの、こちらは90万円程度の価格となっている。

すぐれた光学性能と豊かな表現力が特徴のArtラインに属している

すぐれた光学性能と豊かな表現力が特徴のArtラインに属している

20mm F1.4 DG HSMは、Artラインのレンズらしく、描写性能にこだわって設計されている。レンズ構成は11群15枚で、非球面レンズ2枚、FLD(“F” Low Dispersion)ガラス2枚、SLD(Special Low Dispersion:特殊低分散)ガラス5枚を採用するなどして、周辺部の倍率色収差を徹底的に補正。レンズパワー配置の最適化により、軸上色収差も良好に補正する。また、レンズ第一面から光の入射角度を緩やかに調整したり、非球面レンズを適切に配置したりするなどして、画面全域で歪みが少ない描写を実現。スーパーマルチレイヤーコートを採用するなどして、フレア・ゴーストの発生も抑えている。シグマの持つ最新の光学技術が搭載されたレンズだ。サジタルコマフレアや周辺減光にも配慮した設計になっており、絞り開放から高性能を発揮するレンズとして、シグマは「Artラインの集大成ともいえるレンズ」と自信を持つ。

レンズ構成では、特に、20mm F1.4というスペックとArtラインの基準を満たす描写性能を実現するため、外径約59mmの大型両面非球面レンズを採用したのがトピック。シグマによると、これまでに従来にはなかったスペックの広角レンズをいくつも開発してきており、そこで培った高度な加工技術や設計・生産技術のノウハウを生かすことで、59mm両面非球面レンズの加工技術を確立できたとのことだ。

レンズ構成は11群15枚。前玉2枚目に外径約59mmの両面非球面レンズを採用する。レンズフードは一体型。フィルターの装着は不可となっている

ボディは、シグマ製の他の高品位レンズと同様、金属や新複合材であるTSC(Thermally Stable Composite、※アルミニウムと同等の熱収縮率を持つポリカーボネートで金属との親和性が高い)などを使用。しっかりとした作りになっている。マウントも高品位で、高精度で堅牢な真鍮製マウントを採用。AFモーターには、高速かつ静粛なオートフォーカスを実現するHSM(Hyper Sonic Motor)を搭載する。AF駆動中でもフォーカスリングを回転させるとマニュアルフォーカスに切り替わる新フルタイムマニュアル機構の利用も可能だ。絞り羽根は9枚の円形絞り。

サイズは90.7(最大径) × 129.8(全長)mmで、重量は950g(※いずれもシグマ用)。最短撮影距離は27.6cm。

90.7(最大径) × 129.8(全長)mmで重量950g(※いずれもシグマ用)と、大口径・広角レンズであるため大きくて重いレンズとなっている。上面に距離指標窓を搭載する

Artラインの他の単焦点レンズと同様、鏡筒の後ろから右側面にかけてホールド感を高める加工(フォーカスリングと同様の細かい溝)が入っている

真鍮製のバヨネット・マウントを採用

真鍮製のバヨネット・マウントを採用

かぶせ式のレンズキャップが付属する

かぶせ式のレンズキャップが付属する

実写作例

※以下に掲載する作例は、EOS 6Dと20mm F1.4 DG HSMを使って撮影したものになります。JPEG形式で撮影したもの(JPEG撮って出し)、RAW形式のデータをJPEG形式に変換したもの(ボディ内RAW現像機能、もしくはAdobe Photoshop Lightroom CCを利用)になります。

※JPEG撮って出しの作例、ならびにボディ内RAW現像を行った作例については、いずれも、高感度撮影時のノイズ低減を「標準」、高輝度側・階調優先を「しない」に設定。また、サードパーティー製のレンズで補正データが用意されないため、レンズ光学補正(周辺光量補正、色収差補正)は無効となります。歪曲収差も補正していません。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行なっていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

EOS 6D、ISO100、F1.4、1/4000秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、3.86MB)

EOS 6D、ISO100、F2.8、1/2500秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、3.93MB)

EOS 6D、ISO100、F11、1/2000秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:強め、ボディ内RAW現像(※露出補正+0.3段)
撮影写真(5760×3840、2.94MB)

EOS 6D、ISO100、F1.4、1/30秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、3.64MB)

EOS 6D、ISO200、F1.4、1/40秒、Lightroom CCでRAW現像(WBは撮影時の設定・オートで、プロファイルに「Camera Standard」を選択。シャープネス、ノイズ低減、色収差補正は手動調整。ゆがみ補正、周辺光量補正は未設定)
撮影写真(5742×3648、5.36MB)

EOS 6D、ISO100、F11、1/60秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、6.78MB)

EOS 6D、ISO100、F1.4、1/250秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:ポートレート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、3.92MB)

EOS 6D、ISO160、F1.4、1/40秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、5.39MB)

EOS 6D、ISO100、F8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、5.05MB)

EOS 6D、ISO100、F8、1/15秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、ボディ内RAW現像(※露出補正+0.3段)
撮影写真(5742×3648、4.75MB)

EOS 6D、ISO100、F1.4、1/500秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、ボディ内RAW現像(※露出補正+0.3段)
撮影写真(5742×3648、3.90MB)

EOS 6D、ISO800、F1.4、1/40秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:風景、オートライティングオプティマイザ:標準、ボディ内RAW現像(※ピクチャースタイルを変更)
撮影写真(5742×3648、4.11MB)

EOS 6D、ISO100、F1.4、1/160秒、ホワイトバランス:太陽光、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、3.67MB)

EOS 6D、ISO1600、F1.4、1/25秒、ホワイトバランス:白色蛍光灯、ピクチャースタイル:オート、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(5742×3648、5.25MB)

描写力と操作感をレビュー

このレンズを使ってみてもっとも魅力を感じたのが、20mmというワイドな画角ながら、非常に良質なボケ味を楽しめることだ。シグマの高性能レンズらしい解像力の高さも魅力ではあるが、このレンズに関しては、「広角ながらボケ味のいいレンズ」であることが最大の特徴だと思う。

特に、開放F1.4でのボケ味がとてもいい。焦点距離20mmの広角レンズとは思えないような、大きくてなめらかなボケ方をしてくれる。20mm前後の焦点距離のレンズで、ここまでボケるレンズはほかにないのではないだろうか。ピント位置ではシャープな写りをするので、ワイドが画角ながら主題が浮き立つような立体感が得やすい。この表現がとても面白く、上の自由作例では絞り開放の作例ばかり掲載してしまったが、このレンズを選択・購入するのであれば、ぜひ絞り開放での撮影を楽しんでほしいと思う。

もちろん、カメラ側のレンズ補正機能を利用できないこともあり、絞り開放だと周辺光量落ちが発生する。画面周辺部での倍率色収差はよく抑えられているものの、コマ収差はそれなりに出る。ボケのエッジ部の色ずれも残る。歪曲収差は20mmのレンズとしてはかなり抑えられていると思うが、わずかに残る。そうした細かい描写で気になるところがあるものの、ここまで大きくボケてくれるのは本当に楽しい。周辺光量落ちや各種収差が気になるようであれば、サードパーティー製レンズのプロファイルが用意されている「Adobe Photoshop Lightroom」などのRAW現像ソフトを活用して追い込めばいいだろう。

オートフォーカスは、HSMを採用しており、静かで高速だ。ただし、このレンズは、20mm F1.4という大口径であるため致し方ないが、けっしてコンパクトではない。Artラインの大口径・単焦点レンズ群の中では、もっとも大きくて重いレンズとなっている。

まとめ 広角でのボケを楽しめるシグマらしいオンリーワンなレンズ

シグマは、高度な光学設計と製造技術を生かして、これまでも描写力にすぐれる大口径・単焦点レンズを数多くリリースしてきた。従来にはなかったスペックを持つレンズの開発にもチャレンジしていて、ズーム全域で絞り開放F1.8を実現したAPS-C用ズームレンズ「18-35mm F1.8 DC HSM | Art」「50-100mm F1.8 DC HSM | Art」などがその代表的なモデルになる。20mm F1.4 DG HSMも、そうしたシグマのチャレンジ精神によって誕生したオンリーワンなレンズだ。

20mm F1.4 DG HSMは、焦点距離20mmというワイドな画角ながら大きなボケが得られるという、今までにはなかったような表現を楽しめるのが最大のポイント。風景撮影にも向いた画角だが、広角でボケるという描写特性は、特にスナップ撮影で活用したいと感じた。けっして小さなレンズではないので持ち運びには苦労するかもしれない。だが、それを払拭する表現を楽しめるはずだ。また、被写体の歪みには気をつけたいが、ポートレートでも面白い結果が得られると思う。

なお、星空の撮影用として使うのであれば、絞り開放だとコマ収差がそれなりに出ることは気にしておいてほしい。気になるようであれば少し絞って使うといいだろう。

価格は、価格.com最安価格で約11万円(2016年3月18日時点)。レンズのスペックと表現力を考慮すると、このプライスは妥当だと思う。焦点距離20mmの大きなボケの世界をぜひ手に入れてほしい。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

体力勝負ならそこそこ強い編集部デスク。カメラやAV家電を中心に製品のレビュー記事を担当しています。撮られるのは苦手ですが撮るのは好きです。

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