新製品レポート
グローバル基準となった新型シビックは走りも欧州基準で楽しい!!

10年の時を超えて日本国内で復活するホンダの10代目「シビック」に試乗してきた!

ホンダの車種としては最も長い45年という歴史を持ち、同社を代表するモデルでもある「シビック」の10代目が今夏、国内発売される。海外ではすでに販売されており、北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、高い評価を得ている10代目シビックだが、その日本仕様のプロトタイプが試乗会にて初公開された。シビックの歴史を振り返るとともに、実際に走行した所感をレポートする。

北米での躍進から不遇の時代へ。そして復活

初代シビックが発売されたのは1972年のこと。コンパクトなボディに大人5人が乗れる設計のよさが評価され、翌年には「CVCC」と呼ばれる排ガス浄化装置を備えたモデルが追加された。当時、アメリカでは排ガス中に含まれる一酸化炭素や黒煙といった大気汚染物質の上限を定めた「マスキー法」と呼ばれる排出ガス規制が制定されたものの、施行には至らず。そんな折り、多くのメーカーが対応不可能だと主張していた「マスキー法」に世界で初めて対応したのがホンダだった。これを機に、ホンダは北米で躍進することとなる。

その後も、歴代のシビックにはバルブタイミング・リフト量を可変とした「VTEC(ブイテック)」エンジン(4代目)や、可変吸気量制御を導入し燃費を向上させる「i-VTEC」(8代目)など、先進的な機構や技術が積極的に採用された。レースでの活躍もあって、シビックはホンダの屋台骨を支える基幹車種へと成長していく。そして、6代目モデルからはさらにスポーティーさを高めた「タイプR」グレードも設定され、シビックといえば走りがよいというイメージを不動のものとした。日本カー・オブ・ザ・イヤーも3回(3代目、5代目、6代目)受賞しており、間違いなくホンダのブランドイメージを代表するシリーズだといえる。

1972年に発売された初期型シビック

1972年に発売された初期型シビック

1973年に追加された「CVCC」エンジン搭載モデルは、ホンダの技術的な知名度を飛躍的に高めた

1973年に追加された「CVCC」エンジン搭載モデルは、ホンダの技術的な知名度を飛躍的に高めた

とはいえ、シビックの歩んできた道は決して平坦なものではない。マスキー法に対応したCVCCエンジンも、もし実現されなければ4輪市場からの撤退も考えなければならないという背水の陣での挑戦であった。さらにこの後、日本国内での販売にも波乱が起こる。実は、日本国内では2006年発表の8代目モデルまでしかシビックは販売されていない(2011年まで販売)。続く9代目モデルは海外ではリリースされていたものの、ついに日本の販路に乗ることはなかったのだ。その背景には、リーマン・ショックや同社「フィット」の新型と販売タイミングが重なるといったさまざまな要因があったという。決して、完成度が低かったわけでもないのに日本で日の目を見ることがなかった9代目は、まさに“不遇”のモデルである。

2011年以降、唯一日本国内で発売された9代目の派生モデル「タイプR」(2015年発売)。750台の限定販売であったが、あっという間に売り切れる人気ぶりだった

シビックはその長い歴史の中で、販売地域ごとに独自の進化を遂げてきた。日本国内ではハッチバックボディのイメージが強く、ヨーロッパでもハッチバックの人気が高いが、北米ではセダンやクーペが圧倒的な支持を得ているといった具合だ。9代目モデルは、北米仕様のセダンと、欧州で作られるハッチバックでは同一の車名ながら異なるプラットフォームが用いられた。10代目モデルではこの状況を抜本的に改めるため、セダンとハッチバック、そしてそこから派生する「タイプR」に至るまで同一のプラットフォームを採用。グローバルで販売される文字通りの基幹車種として、統合して開発された。日本に先駆け、海外ではすでにリリースされている10代目モデル。2015年11月に北米で発売されたのを皮切りに、欧州、アジアでも販売が開始され、高い人気と評価を得ている新型シビックが、いよいよ今夏、日本国内に登場する。

新型シビックはロー&ワイドの迫力あるデザイン

今夏日本に導入される新型シビックは、4ドア「セダン」、5ドア「ハッチバック」、そしてハッチバックをベースとしたスポーツグレード「タイプR」の3車種。同一のプラットフォームを採用したこともあり、セダンとハッチバックのシルエットやデザインは共通する部分が多い。ずばり、新型のデザインコンセプトは“ワイド&ロー”。幅は1,800mm(欧州仕様)と広く、全高やボンネットは高さを抑えた構成となっている。そのため、セダンとはいっても、いわゆる3ボックスタイプのイメージではなく、フロントからテールへ流れるラインはむしろクーペに近い。そして、ハッチバックもかつてのシビック(3〜6代目頃)のリアが切り落とされたようなデザインではなく、曲線でテールゲートに流れ落ちていくようなシルエットとなっている。ドアパネルまでのデザインは共通とされており、異なるのはリアドアから後ろと、フロントバンパーのデザインのみ。だが、外観でのイメージ戦略の違いは明確で、ハッチバックはよりスポーティーな雰囲気に仕上げられている。ちなみに、セダンは国内の寄居工場で生産され、ハッチバックはイギリスの工場から輸入されるという。

セダンという呼称だが、4枚ドアの「クーペ」と呼びたくなるような外観

セダンという呼称だが、4枚ドアの「クーペ」と呼びたくなるような外観

セダンとはフロントバンパーのデザインが異なるハッチバックは、よりアグレッシブな印象だ

セダンとはフロントバンパーのデザインが異なるハッチバックは、よりアグレッシブな印象だ

ハッチバックはリアのデザインもスポーティーなイメージを強調。センター出しとされたマフラーは排気効率も高く、セダンより若干だが出力も高められているという

ハッチバックのテールゲートの上部にはウイングが装着され、シャークフィンも設けられている

ハッチバックのテールゲートの上部にはウイングが装着され、シャークフィンも設けられている

車内を見てみると、着座位置は先代モデルより低く抑えられているが、ボンネットなどがその視界をさえぎることがないように見直されており、視界は良好。メーターの表示部分をできるだけ薄く抑え、両側への広がり感を打ち出しすといったように、インテリアも“ワイド&ロー”の外装と合わせたイメージとなっている。

内装のデザインは、基本的にセダンもハッチバックも共通。セダンとしてはややスポーティーだが、奇をてらったところのない落ち着いた仕上がりだ

メーターパネルの中央部は液晶モニターとなっている。外側に円を描くタコメーター、その内側にはデジタルでスピードを表示

シートはシンプルだが、ホールド性は高い。肩の部分の角が取れたようなデザインは、リアシートに腰かけた人が圧迫感を感じないための配慮だという

実際に座ってみると、リアシートは見た目よりもずっと広く感じる。フロントシートのデザインやシート下に足先が入るようにした構造などが、広く感じる要因かもしれない

エンジンは、セダンもハッチバックも1.5LのVTECターボを採用。正式なスペックは明らかにされていないが、セダンが127kW(173ps)/5,500rpm、ハッチバックが134kW(182ps)/6,000rpmという数値が、車内測定値としてあげられていた

なお、日本国内に導入される新型はCVTだが、海外では6速MTも用意されている

なお、日本国内に導入される新型はCVTだが、海外では6速MTも用意されている

スポーツモデルの位置付けとなるタイプRは、内外装ともにスポーティーというよりレーシーなイメージに仕上げられている。車体のベースはハッチバックだが、新型シビックが掲げるグランドコンセプト“操る喜び”を究極にかなえるためにエンジンをはじめとする動力に関する部分は別物。その差は圧倒的で、新型シビックの中で最高の性能だ。

今度のタイプRは、限定ではなく標準モデルとして発売される

今度のタイプRは、限定ではなく標準モデルとして発売される

迫力ある大きなリアウイングや縦に入ったルーバーが、タイプRの証

迫力ある大きなリアウイングや縦に入ったルーバーが、タイプRの証

シートはカラーリングがレッドになっただけでなく、ホール性にすぐれたバケットタイプになっている

シートはカラーリングがレッドになっただけでなく、ホール性にすぐれたバケットタイプになっている

ハンドルやメーター回りも、レッドのカラーをあしらった独自の仕上げとなっていた

ハンドルやメーター回りも、レッドのカラーをあしらった独自の仕上げとなっていた

タイプRのエンジンは2.0Lターボで、出力320psを発揮する

タイプRのエンジンは2.0Lターボで、出力320psを発揮する

欧州基準の走りのよさを体感した試乗レポート!

新型シビックのコンセプトが“操る喜び”であること、そして試乗会場がサーキットであることから走りの性能を極めたタイプRに乗ってみたいところだが、今回試乗できたのは一般的なグレードのセダンとハッチバック。欧州車のCセグメント(セダンやハッチバックが位置するランク)はエントリーグレードであっても走りを楽しめるモデルが多いので、新型シビックがどれほどそこに迫れているのかが気になる。

まず最初は、セダンに乗ってみた。

セダンはステアリングのホールド感もかなりいい

セダンはステアリングのホールド感もかなりいい

過去に国内販売されていたモデルに比べると明らかに大きくなったボディに対して、エンジンはターボとはいえ1.5Lという排気量であることから、車体重量に対して物足りなさを感じることを危惧していたが、ピットロードから走り出てすぐにそれは杞憂だったと思い知る。ゆっくりアクセルを踏み込んでもパワー不足を感じることなく車体を押し出してくれ、大きくアクセルを踏み込むと大柄な車体をものともしない加速を発揮。CVTの変速はアクセル開度に応じて高回転まで回すように設定されているようで、目が慣れていないうちは動体視力が追いつかないくらいの速度がすぐ出てしまう。

ボディサイズをまったく意識させないくらいの加速力。足回りは硬くはないが、サスペンションが縮んだ分、タイヤを地面に押し付ける力が増していくような安心感が味わえる

事前のブリーフィングで開発担当者が「グローバルで販売するため、欧州基準で仕上げた」と語っていたことは、確かであることを最初のコーナーで感じることができた。ハンドルを切った分、思った通りに曲がってくれる気持ちよさと路面をしっかりとらえる安心感は、タイトなコーナーでも高速コーナーでも同様。安心感があるので、ついついペースが上がってしまうことがむしろ怖かったほどだ。スポーツグレードでもないのに、「調子に乗るな。これは自分の腕ではなく、クルマの性能に助けられているだけだ」と自制しなければならないほど走れてしまうのは、それだけこのクルマの素性がすぐれている証拠だろう。

コーナーの手前で軽くブレーキを踏んで、ちょっと高めの車速のままハンドルを切ると、グイッと思った通りに鼻先が入ってくれる

この走りのよさを支えている要因のひとつは、新開発されたプラットフォームだ。セダンで前モデルに比べて25%(ハッチバックでは52%)の剛性向上と、22kg(ハッチバックは16kg)の軽量化を同時に実現。最高峰のタイプRはドイツのニュルブルクリンク北コースにて、“市販車FF最速”となるタイムを記録した。先代モデルで出したタイムを7秒以上も短縮する数値だったが、そんな記録を叩き出せたのも、このプラットフォームによるところが大きいという。タイプRの2Lターボエンジンが発揮する320psという大馬力をしっかりと受け止める性能を持っているのだから、1.5Lエンジンのパワーくらいは朝飯前なのだろう。

セダンの走り心地を存分に堪能したあと、ハッチバックにも乗ってみた。正直なところ、性能の違いはさほど感じず。
だが、味付けは外観のとおり、ハッチバックのほうがさらにスポーティーな印象だ。特に、排気容量の大きなマフラーがセンターに配置されているので排気音がより耳に届きやすく、気分が盛り上がる。マフラーの違いによる出力の差は残念ながら感じられなかったものの、より“走っている”気分にさせられるのはハッチバックのほう。よりアグレッシブに走りたいならハッチバックを、ややジェントルに乗りたいならセダンが適していると思われる。

センターレイアウトのマフラーから吐き出される排気音は元気がよく、やる気にさせてくれる

センターレイアウトのマフラーから吐き出される排気音は元気がよく、やる気にさせてくれる

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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