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2017年上半期は最も売れたクルマだけど・・・

販売好調!? それとも不振!? よくわからないトヨタ 新型「プリウス」人気の理由を探る

トヨタ 新型「プリウス」の人気を判断するのは難しい。2017年上半期(1〜6月)における新型プリウスの登録台数は9万1,246台と、小型/普通車では1位を獲得している。軽自動車を含めると、フルモデルチェンジを控えたホンダ「N-BOX」が1位だが、新型プリウスは2位であることを考えても、人気車であることに変わりはないだろう。

2017年上半期、最も売れたのがトヨタ 新型「プリウス」。だが、前年対比で見ると発売からおよそ1年で販売台数は減少に転じている

ところが、新型プリウスの販売台数を前年対比で見ると、2017年上半期は64%にとどまっている。さらに、2017年7月は前年比で43.1%まで下落しており、直近の8月は盛り返したものの59.5%だった。2017年6月にトヨタ「アクア」がマイナーチェンジを受けたので、8月は小型/普通車の1位がアクアで、新型プリウスは僅差で2位となった。

つまり、新型プリウスは前年に比べると売れ行きを大幅に下げたが、2016年は絶好調に売れて1位だったから、今でも販売ランキングの上位に喰い込んでいるわけだ。新型プリウスの2016年上半期における販売台数は14万2,562台。2位のN-BOXは10万6,985台、3位のアクアは8万9,409台だから、前年までは2位以下に大差を付けていた。

ちなみに、3代目プリウスは発売からおよそ3年間、ほとんどの月で月販2〜3万台をコンスタントにキープしている。

こうしたことを考えると、新型プリウスの販売は“好調”なのか、それとも“不振”なのか、判断に迷ってしまう。そこで、まずは「新型プリウスの販売は好調」という観点から人気の理由を探りたい。

新型プリウスの魅力といえば、やはり「燃費」

売れ筋グレードでも37.2km/Lと、未だに高い燃費値を誇る新型プリウス

売れ筋グレードでも37.2km/Lと、未だに高い燃費値を誇る新型プリウス

新型プリウスの一番のセールスポイントは「燃費」だ。EグレードのJC08モード燃費の40.8km/Lは燃費スペシャル的な仕様だから除くとしても、売れ筋のSグレードやAグレードでも37.2km/Lを達成している。3ナンバーサイズのボディに1.8リッターエンジンをベースにしたハイブリッドを搭載しながら、国内で売られる乗用車では高い燃費値を誇る。

マイナーチェンジを受けたアクアは、装備の充実に伴う車重の増加に伴って、売れ筋となるGグレード、Sグレードの燃費は34.4km/Lだ。新型プリウスはアクアよりもボディが大きく、室内も広いのに燃費数値で勝る。これは社用車として使う法人を含めて、幅広いユーザーに対して強い説得力を持つだろう。

トータルでは「アクア」よりも割安!?

トヨタ「プレミオ」やトヨタ「アクア」にオプションを装着すると、新型プリウスのSグレードに安全装備を充実させた価格に近づいてしまう

2つ目のセールスポイントは「価格」だ。新型プリウス Sグレードの価格は247万9,091円。これに安全装備のトヨタセーフティセンスP(8万6,400円)、ナビレディセット(3万2,400円)、ディーラーオプションのカーナビ(25万円前後)を加えても総額275万円くらいに収まる。エコカー減税も免税の対象なので、諸費用を上乗せしても、値引きを含まずに約290万円で購入が可能だ。

昨今は、安全装備の充実などもあって車両価格が全般的に高くなってきており、トヨタ「ヴォクシー」や日産「セレナ」は、ノーマルエンジンを搭載した比較的ベーシックなグレードを選んだとしても、購入予算を300万円で見ておく必要がある。だが、新型プリウスであれば、ほぼ同等かそれ以下の予算で、先進的なハイブリッド車に乗り換えられる。

新型プリウスは、セダンと比べても割安だ。トヨタの主力車種とされる「プレミオ1.8X・Lパッケージ」(225万9,163円)にカーナビ(20万円前後)とバイビームLEDヘッドランプ(6万4,800円)を加えると、税金を含めた総額は約275万円に達する。新型プリウスならこれに20万円を加える程度で、低燃費かつ安全装備も充実するのだから、買い得といえるだろう。

トヨタ「アクア」

トヨタ「アクア」

そして実は、プリウスは「アクア」と比べても割安だ。アクアは新型プリウスと違ってオプションが多く、G(206万2,800円)にディーラーオプションのカーナビ(26万円前後)、ナビレディパッケージ(2万8,080円)、LEDヘッドランプパッケージ(10万8,000円)、アルミホイール(4万8,600円)、サイド&カーテンエアバッグ(4万3,200円)を加えて前述の新型プリウス Sグレードと購入条件を合わせると、総額は266万円くらいになる。新型プリウスと比べて、実質24万円程度しか安くない。

従って、子育ての時期を終えてミニバンが不要になったユーザーが、新型プリウスに乗り替えることも多い。このほかLサイズのSUVやセダンからのダウンサイジング、逆にコンパクトカーからのアップサイジング(プリウスならボディを大きくしても燃料代が増えない)、さらにフォルクスワーゲンゴルフのような輸入車からの乗り換えも含め、販売店によると「さまざまなお客様がプリウスを買っている」という。

いまだにハイブリッドカーの代名詞として存在し続けるプリウス

新型プリウスのインテリア

新型プリウスのインテリア

プリウスは、低燃費でありながら実用性が高いことも魅力だ。ミドルサイズの5ドアハッチバックだから前後席ともに居住性に余裕があり、大きく開くリヤゲートによって荷物も積みやすい。多人数で乗車したり自転車を積むニーズには適さないが、平均的なファミリーユースであれば問題ないだろう。

また、前述のように新型プリウスには歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動させる安全装備のトヨタセーフティセンスPが用意される。車間距離を自動制御するクルーズコントロールも備わり、高速道路を使った長距離ドライブでは、ドライバーの負担を軽減する。これらも、購買意欲に結び付く。

そして、「ハイブリッド車を買うならプリウス」という定番の選択肢になった影響も大きい。初代モデルは、1997年に世界初の本格的な量産ハイブリッド乗用車として登場しており、すでに20年の販売実績がある。フルモデルチェンジを3回も行って、すでに4代目となるような、長い歴史を持つハイブリッド専用車は、ほかにない。

そのために今までハイブリッド車を所有したことのないユーザーが「次のクルマは何にしようかな、ハイブリッド車に乗ってみたいな」と考えた時、真っ先にプリウスの名前が浮かぶ。こういったさまざまな理由で新型プリウスは好調に売れているのだ。

先代プリウスがあまりに売れすぎた!?

次に、売れ行きが前年対比で大幅に下がった理由を考えたい。

先代プリウス(3代目)

先代プリウス(3代目)

まずは、3代目の先代プリウスが爆発的に売れたことがあげられる。先代プリウスは2009年に発売され、販売系列はそれまでのトヨタ店とトヨペット店に、トヨタカローラ店とネッツトヨタ店を加えて全系列で販売された。しかも、ライバル車のホンダ「インサイト」の登場による実質的な値下げも行ったことから、販売台数が大幅に拡大した。

これに対して新型プリウスは、クルマを買い替えるサイクルが平均して7年前後に伸びたこともあり、2013年頃に先代プリウスを購入したユーザーが新型へ乗り替えずに使い続けていることもあって、3代目ほどの売れ行きとはなっていないのだろう。

選択肢が増えたハイブリッドカーのラインアップ

別の理由として、セールスマンから「ハイブリッド車のお客様がノーマルエンジン車に乗り替えるケースが増えている」という声も聞かれる。「一度はハイブリッド車に乗ってみたい」と考えて購入しながら、運転感覚が好みに合わないことに気付いたユーザーが少なからずいるらしい。1年間の走行距離が5,000km以下の使い方では燃料代の節約効果も乏しいため、ノーマルエンジン車に回帰しているというのだ。

トヨタ「C-HR」

トヨタ「C-HR」

さらに、ハイブリッド車の車種数が増えたことも見逃せない。トヨタ車だけをみても、先代プリウスが登場した時には用意されていなかった「アクア」「カローラアクシオ」「フィールダー」「シエンタ」「ヴォクシー」「ノア」などのハイブリッド車が加わっている。また、昨年末に登場した「C-HRハイブリッド」も、プリウスからの乗り換えが多い。

新型プリウス自体の事情としては、フロントマスクが個性的になり、このデザインは営業車に使う法人のユーザーを含めて受け取り方はさまざまだ。新型プリウスが好みに合わずオーソドックスな雰囲気を求めるユーザーはカローラフィールダー ハイブリッド、個性を求めるなら中途半端な新型プリウスよりもC-HRハイブリッドという選択もあるだろう。

内外装デザインを改めれば、今後も販売ランキングの上位に食い込めるはず

今の自動車メーカーは海外を中心にクルマを販売しており、トヨタも国内比率は18%程度にとどまるが、ハイブリッド車は例外的に国内比率が高い。新型プリウスでは累計販売台数の内、45%くらいは国内で売られている。

トヨタ 新型「プリウスPHV」

トヨタ 新型「プリウスPHV」

つまり、新型プリウスはミニバンほどではないが、国内市場としては重要な商品だから、今後のマイナーチェンジなどで、外観を日本で一般受けするデザインに修正する可能性が高い。新型プリウスPHVの方向に近づけるともいわれている。価格が割安なこともあって内装の質は高いとはいえないため、手直しを加える可能性が高い。これらの施策を行ったところで売れ行きが大幅に伸びる可能性は低いが、下落を食い止める手段にはなり得る。

先ごろ電気自動車の日産「リーフ」がフルモデルチェンジを行ったが、新型プリウスの売れ行きを脅かすとまでは考えられず、新型プリウスは今後も販売ランキングの上位に入り続けるだろう。

新型プリウス 走行イメージ

新型プリウス 走行イメージ

改めて振り返れば、先代プリウスが売れ過ぎであり、今の販売実績は妥当だろう。現行型は、先代型で感じた峠道などにおける曲がりにくさを解消している。乗り心地と後輪の接地性をもう少し向上させ、内外装のデザインを上質に改めれば、今後も継続的にユーザーの共感を得られる可能性は高いはずだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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