連載
バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

今に続く「スーパーカブ」のルーツがここに! 最高の完成度を誇る新型「スーパーカブ110」

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この連載で前回、新型「スーパーカブ50」に試乗し、完成度の高さをスーパーカブの歴史とともに紹介したが、今回は、同時発売の「スーパーカブ110」の魅力に迫る。実は、新型を語るうえで初代「スーパーカブ110」は欠かせない存在。そんなスーパーカブ110のルーツをたどるとともに、新型に試乗したインプレッションもたっぷりとお届けする。


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新型「スーパーカブ」のルーツは「110」にあり!

現在、「50」と「110」のみのラインアップとなっているスーパーカブだが、半世紀以上の歴史の中には50ccモデル以外の派生モデルもいくつか存在した。初代モデル「スーパーカブC100」(50cc)が誕生した3年後、1961年には排気量54ccの「スーパーカブC105」が登場。「C105」は2人乗りニーズに応えるために生まれたモデルで、スーパーカブ初の原付二種車両となる。その後、1964年にリリースされた「スーパーカブCM90」はパワーを重視し、50ccモデルではなく、同社のスポーツモデル「90 C200」をベースに、クラッチを操作のいらない自動遠心式の3速ミッションが組み合わされた。その車体は50ccモデルよりもひとまわりほど大きく、排気量86ccを実現。このスーパーカブCM90がのちに90ccモデルとなる。

初代モデル「スーパーカブC100」との排気量の差はわずかだが、50ccを超えたことで原付二種区分となった「スーパーカブC105」。70ccモデルの元祖となったモデルでもある。なお、写真は同時に発売されたセル付きの「スーパーカブCD105」だが、見た目はスーパーカブC105と同じ

タンク容量を1.5L増やし、タイヤの幅もワンサイズ太い2.5サイズとすることで排気量をアップした「スーパーカブCM90」

そして「スーパーカブCM90」のすぐあとに、エンジンを「OHV(オーバー・ヘッド・バルブ)」から、より効率のよい「OHC(オーバー・ヘッド・カム)」に変更した「スーパーカブC65」(1964年発売)がリリースされる。「スーパーカブ50」の歴史を紹介した記事(2018年1月1日公開)でも記したが、スーパーカブの大きな転機と言っても過言ではないOHCエンジンへの変更は、50ccモデルよりも先に排気量の大きいスーパーカブC65(63cc)から始まったのだ。とはいえ、スーパーカブC65は初代C100系のボディのままエンジンだけOHCに変えるというイレギュラーなもの。ひとまずスーパーカブC65で新エンジンの生産ラインを整え、満を持して1966年に「スーパーカブC50」にOHCエンジンを搭載したのち、スーパーカブC65→スーパーカブC90(OHCエンジンを搭載したのを機に、車名がCM90からC90に変わった)の順でフルモデルチェンジされていった。ほかにも、1968年発売の「スーパーカブC90」が二輪初のポジションランプを採用し、その他モデルにも展開されるといったように、スーパーカブの新装備のいくつかは原付二種モデルから導入されていったのだ。

50ccモデルよりひと足先にOHCエンジンが搭載された「スーパーカブC65」。2人乗りできるシートを装備しているところが原付二種らしい。なお、この画像は当時のカタログの一部

その後、OHCエンジンを最初に搭載したスーパーカブC65は、1969年にリリースされた「スーパーカブC70」と統合され、以降、「50」「70」「90」でのラインアップがしばらく続くこととなるが、1998年モデルを最後に70ccモデルが姿を消す。そして2002年以降、これまでコンスタントに小さな改良などを行ってきたスーパーカブが、カラーリング変更も何も行わない停滞期へと入ってしまう。その長い停滞期を抜けるのは、2006年。もっとも厳しいと言われた排ガス規制に対応するため、燃料噴射が電子制御に変更されたのだ。ただ、90ccモデルには排ガス規制対応は行われず、実質、2002年発売「スーパーカブ90デラックス/カスタム」がラストモデルとなる。そんな90ccモデルに代わるように開発されたのが2009年に誕生した「スーパーカブ110」だ。

2009年に発売された「スーパーカブ110」は丸型ヘッドライトを採用し、好評を博した

2009年に発売された「スーパーカブ110」は丸型ヘッドライトを採用し、好評を博した

電子制御のインジェクションで排ガス規制に対応するという方法は50ccモデルと同じながら、スーパーカブ110は車体構造を刷新する新型フレームを採用。さらに、従来の車体は後部までフレームと一体になったプレス構造を採用していたが、スーパーカブ110は車体後部のパーツをフレームに取り付けた仕様に変更すると同時に、金属製だったフェンダーやシート下のボディシェルなどを樹脂製に改良した。外観のデザインは従来のイメージを踏襲しているが、車体の構造は別物に生まれ変わったのだ。さらに、フロントサスペンションが通常のバイクと同じテレスコピック式のフロントフォークとなったのもポイント。ピストンにオイルを噴射して潤滑性を高めるオイルジェット(国内仕様のスーパーカブでは初搭載)や、シフトショックをやわらげる2段クラッチなど、随所に新機構を取り入れている。そして、注目してほしいのは、この車体構造やフロントフォークが新型「スーパーカブ110」のみならず、「スーパーカブ50」にも受け継がれているということ。つまり、新型「スーパーカブ50/110」のルーツは2009年式のスーパーカブ110にあるといえる。

2009年式「スーパーカブ110」で新たに採用されたフレームは、新型「スーパーカブ50/110」に継承されている

2009年式「スーパーカブ110」で新たに採用されたフレームは、新型「スーパーカブ50/110」に継承されている

なつかしい丸型デザインに戻った新型「スーパーカブ110」

新型「スーパーカブ50」の記事にもあるように、2009年に誕生した「スーパーカブ110」も、2012年のモデルチェンジで直線基調の世界展開モデルとなってしまう。このデザインはスーパーカブ50同様に日本国内での人気はいまひとつで、現に筆者も2012年式を街中で見かけることはほぼなかったほどだ。そんなスーパーカブ110も新型では丸型デザインに復活。日本国内限定となりつつある50ccの排気量とは異なり、110ccは輸出もされているが、スーパーカブ50と車体を共通化することになったため、スーパーカブ110も日本で評価の高かった丸みを帯びたデザインに戻された。

グローバルモデルとなった、2012年式「スーパーカブ110」。基本設計は同様だが、流線型のフォルムは日本人にはあまり響かなかったようだ

曲線を基調とするデザインに戻った新型「スーパーカブ110」。やはり、こちらのほうが「スーパーカブ」らしく感じる

新型「スーパーカブ50」(左)と並べてみると、共通の車体を採用しているため、ぱっと見の違いはほとんどない

車体サイズはスーパーカブ50と同じ695(幅)×1,040(高さ)×1,860(長さ)mmだが、排気量は109c(最高出力8PS)

一見しただけでは気付きにくいが、排気量にあわせ、前後タイヤはスーパーカブ50よりも若干太くなっている

一見しただけでは気付きにくいが、排気量にあわせ、前後タイヤはスーパーカブ50よりも若干太くなっている

スーパーカブ50との外見上の大きな違いは、スイングアームにタンデムステップを装着している点。純正にはタンデムシートは装備されないので、2人乗りをしたい時にはシートを交換しよう

メーター表示もスーパーカブ50と異なる。60km/hまでだったスーパーカブ50に対し、スーパーカブ110のメーターは120km/hまで表示

91〜125ccの原付二種に区分されるスーパーカブ110は、ナンバープレートがピンク色となる。白色ナンバーのスーパーカブ50のほうがいいという人も多そうだ

なお、2012年式「スーパーカブ110」と新型を性能面で比較してみると、エンジンの最高出力は2012年式の8.2PSに対し、新型は8.0PSに若干低下している。これは、2017年からさらに厳しさを増した排ガス規制に対応した結果。排ガスをクリーンにするためにはエンジンに送り込むガソリンの量を絞るしかないのだ。むしろ、この規制のシビアさに生産終了するモデルが続出する中、規制に対応しながら馬力低下を0.2PSに留めたことは高く評価できる。

新型「スーパーカブ110」のメリットを試乗で実感

すでに試乗した新型「スーパーカブ50」との乗り心地の差を、新型「スーパーカブ110」に乗って検証してみる。同じ車体を使用しているため、またがった際の足つき性などには相違はない。だが、ギアを1速に入れて走り出すとトルクの違いは明確! スーパーカブ50はエンジンの回転を上げていくと“速い”と感じたが、スーパーカブ110はアクセルを開けた瞬間に速さを実感したのだ。さらに、ギアを1速から2速に上げた時の挙動もスーパーカブ110のほうがスムーズ。スーパーカブ50はトルクが薄いため(「50」の最大トルクは3.8Nmで、「110」は8.5Nm)、1速のギア比をかなり低くしており、1速と2速のギア比が離れてしまうことが影響していると思われる。

走り出してすぐに低回転でのトルクの違いを感じる。スーパーカブ50に試乗した後に乗ると、少し驚くくらい発進加速は鋭い

アクセルをがんばって開けなくても交通の流れに乗れるので、同じ距離を移動するにもスーパーカブ110のほうが疲れが少ない

急な坂道を登るシーンでは、スーパーカブ110の大きな排気量のありがたみを実感。坂の途中から発進すると、スーパーカブ50ではスタート時に「ちゃんと登れるかな」という不安を抱いてしまうが、スーパーカブ110は最初からグイグイと上ってくれるので、不安をまったく感じなかった。

スーパーカブ50でも問題なく上れるが、エンジンが高回転になるまで少し待たなければいけない感じ。坂道の多い地域に住んでいるなら、スーパーカブ110のほうが絶対にラクだ

そして、コーナリングの安定感もすばらしい! 自然なハンドリングで曲がれて楽しい点はスーパーカブ50/110ともに共通するが、スーパーカブ110のほうが安定しているので安心してバンクさせることができる。これはタイヤサイズが太くなっていることと、アクセルを開けて車体を安定させる操作に対してトルクの出方の反応がいいことが影響しているといえるだろう。

スーパーカブ110のほうが普通のバイクと同じように曲がるのを楽しむことができる

スーパーカブ110のほうが普通のバイクと同じように曲がるのを楽しむことができる

試乗を終えて

スーパーカブの顔は「50」なので、新型のインプレッションは「スーパーカブ50」だけでいいのでは? と価格.comマガジンの編集者に言われたものの、筆者は2009年に発売された「スーパーカブ110」に試乗したことがあり、その際の乗り味に惚れていたので、どうしても新型「スーパーカブ110」にも乗ってみたかった。今回、念願がかない試乗できたワケだが、2009年式で感じた“普通のバイクに近い乗り心地”は健在。高速道路には乗れないものの一般道であれば交通の流れをリードできるパワーとコーナリングの特性は、バイク乗りでも満足できるだろう。

ちなみに、新型スーパーカブの「50」と「100」のどちらを選ぶべきかと問われたら、「免許があるなら110を選ぶべき」となる。しごく当たりまえの答えになってしまうが、スーパーカブ110のほうが乗っていておもしろいのだ。速いのはもちろん、コーナリングの挙動などから考えても、この車体と相性がよいのはスーパーカブ110のほうだと感じる。ただ、従来モデルであれば「小型自動二輪免許を取ってでもスーパーカブ110を選んだほうがいい」と答えたが、新型であれば「免許の都合でスーパーカブ50しか選べないとしても十分に楽しめる」と言えるほど、電子制御のインジェクションを搭載したスーパーカブ50の完成度は高い。なお、価格はスーパーカブ50が23万2200円で、スーパーカブ110は27万5400円。どちらも値段に対しての満足感が相当高いことは間違いない。

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増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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