レビュー
全長5m、1ナンバーのピックアップトラックを試乗!

トヨタ 新型「ハイラックス」試乗&燃費レポート/前時代的でも沢山の“夢”を積める

2004年に日本市場から撤退したピックアップトラック、トヨタ「ハイラックス」が復活した。バブル期に青春時代を送った人々にとっては、懐かしいネーミングであり、若い人たちにはダブルキャブピックアップという珍しいボディタイプが新鮮だろう。

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」リアイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」リアイメージ

そもそもハイラックスは、1968年にピックアップトラックとして登場。それ以来、約180の国や地域で販売され、累計世界販売台数は約1,730万台と、日本よりもアジアをはじめとした、海外の多くの国で愛用されている。日本でも現在、主に業務で使用する保有者が9,000名ほどおり、「復活して欲しい」という声が多かったことから、再導入につながった。

さらに、「モノの“機能的価値”のみならず、モノを所有することで得られる特別な体験や時間といった“意味的価値”をお客様に提案したい」というトヨタの思いもあった。たとえ1ナンバークラスで毎年車検が必要であることや、高速道路での料金が高いなど、実用面から選択されにくいクルマであったとしても、「人とは違うモノを所有する喜びや、世界中で鍛え抜かれたタフさを持ち合わせているクルマという魅力が、それらよりも上回っている」と開発担当者は言う。

そこで、「“はつらつとした人生を楽しみたい”という思いを抱いている団塊世代のお客様に対し、アクティブなライフスタイルを送っているという表現の一助になることを期待して導入した」と語る。

ターゲット層はともかく(開発担当とは違い、少なくともカタログ上は決して団塊世代ではなく20代から30代を想定しているようだ)、前述の“意味的価値”には共感を覚える。ハイラックスを所有することで、何ができるのか、どこへ行けるのかといった“夢”が広がる、そういうクルマなのだ。乗り心地や走行性能は前時代的なところもあり、単純にジャーナリスティックに評価をすればダメ出しはいくらでもできる。しかし、それ以上に大きな魅力を持っているクルマであることも事実なのだ。

今回訪れた「中伊豆ワイナリーヒルズ」の乗馬イメージ

今回訪れた「中伊豆ワイナリーヒルズ」の乗馬イメージ

そこで今回は、通常の試乗記ではなく、実際に使用シーンを想定して遊びに連れ出してみた。残念ながら、テスターである筆者にはアウトドアやレジャーの趣味はなく、また、さすがに広報車両とはいえ悪路を走ることに抵抗を覚えるので、ちょっと遠出して東京から中伊豆まで、馬を見にいくことにした。ハイラックスはダブルキャブピックアップなので、ウエスタンな雰囲気も醸し出していると感じたからだ。ハイラックスを持つと、こんなことをしたくなるという一例にとらえていただければ幸いである。

その「ボディサイズ」にはやはり驚きを隠せない

前夜はそれほど感じなかったが、改めて新型ハイラックスと自宅駐車場で対面すると、その大きさに驚きを覚える。特に全長は5,335mmと、たとえば「プリウス」の4,540mmと比較をすると、約80cmも長いのだ。この長さは、コインパーキングなどに停めるときは注意が必要だなと肝に銘じながらドアを開けて、運転席によっこらしょとよじ登る。全高は1,855mm、シートポジションもそれなりに高いので、サイドステップに右足をかけ、Aピラーにあるアシストグリップにつかまりながらシートにたどり着いた。

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

さぁ、出かけよう。もう、昔のハイラックスのようにキーではなく、生意気にも(?)エンジンのストップボタンがある。ボタンを押し込むと、少し長めにクランキングした後、「ガラガラガラ」という音とともに、2.4リッターディーゼルターボエンジンは目覚めた。

トヨタ 新型「ハイラックス」のインパネ

トヨタ 新型「ハイラックス」のインパネ

トヨタ 新型「ハイラックス」のシフトノブ

トヨタ 新型「ハイラックス」のシフトノブ

改めて室内を見渡すと、シンプルで使いやすそうなメーターの配置やスイッチ類が目に入る。いっぽう、シフトレバーが助手席寄りに配されているのは気に入らない。左ハンドル市場がメインで、日本では年間2,000台の販売目標、さらにタイで生産されていることなどから致し方ないとは思うが、それでもこういった使い勝手に関してはきちんとした対応を望みたい。

ドライブフィールは昔乗った「ハイラックスサーフ」のまま

今回の目的地は、中伊豆の修善寺。本来であれば、テスターの住む八王子からは圏央道、東名ルートという高速道路主体のルートになるのだが、レポートの都合上、八王子から高尾山を過ぎ、相模湖から道志みちというルートを取った。ここでは郊外での燃費計測が目的だ。信号が少なく、ワインディングも楽しめることから、テスターもよく使うルートである。アップダウンが多く、かつ、場所によっては道幅が狭いこともあって、新型ハイラックスの使い勝手を見るには適していると判断した。

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

乗り始めてまず最初に感じたのは、やはりというか「トラック」という印象だった。ちょっと職業ドライバーになった雰囲気でドライブを楽しんでいると、だんだんと懐かしい気持ちがこみ上げてくる。そう、はるか昔、大学のころに流行ったトヨタ「ハイラックスサーフ」とドライビングの感覚が一緒なのだ。

具体的には、ハンドルを切ってからワンテンポ遅れて曲がり始める様子や、路面から少しきつめに伝わる突き上げ感がそう感じさせるのだ。つまり、その頃から大きく進化していないともいえるし、必要にして十分な完成度を当時から保っていたとも言える。少なくとも、街中で使っている分には全長を気にする以外、視線の高さをメリットにスイスイと走ることができる。

また、信号からもディーゼル特有の大きなトルクで2トンのボディを軽々と発進させるので、街中でのかったるさは一切感じられなかった。

細い道でも意外と気にならない「車幅」

道志みちに入ってしばらく進むと、「スーパーインテリジェント6速オートマチック」と呼ばれる6速ATが最適なギア比を持っていることがわかった。比較的、頻繁にギアチェンジが行われ、エンジンのトルクを最適に引き出すのだ。そうすることで上り坂やコーナーでの立ち上がりでもたつくことなく、かつ下りでもシフトダウンするのでエンジンブレーキも積極的に使うことができた。また、その変速ショックもスムーズなので、助手席でエンジン音を気にしていなければ、いつ変速したか気にならないくらいだ。

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

もうひとつ、驚いたのは車幅が気にならないことだ。それは、これまで述べてきた車高の高さによる前方の見晴らしのよさとともに、左フェンダーから生えている補助確認ミラーが車幅の確認に大いに役立っている。その結果、すれ違いが難しい細い道などでもぎりぎりまで左側に寄せることができ、また、普通に走っていてもきれいに歩道の白線をトレースすることが可能なのだ。長さ方向も、リアのオーバーハングがむやみに長くはないため、気になることはなかった。

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」の試乗・走行イメージ

ひとつひとつのコーナーもきちんと減速をして、ゆっくりとしたステアリング操作を心がければ、ボディの重さも気にならない。もちろん俊敏にコーナーリングを楽しむとまではいかないが、前述のワンテンポ遅れるコーナーリングスタイルの癖さえわかっていれば、素直で気持ちがいい。ステアフィールも、電動パワーステアリングのように、むやみに軽かったり、路面からのフィールがほとんど感じられなかったりということはなく、よくできた油圧パワーステアリングで、とてもスムーズに操舵できる。

長時間乗ると身体が痛くなる「シート」は改善の余地が

トヨタ 新型「ハイラックス」のフロントシート

トヨタ 新型「ハイラックス」のフロントシート

トヨタ 新型「ハイラックス」のリアシート

トヨタ 新型「ハイラックス」のリアシート

いっぽう、気になる点もある。それはシートだ。最初の座り心地はよいのだが、座面の形状から尾てい骨が痛くなってくるのだ。また、腰の部分のホールドも決してよくはないため、腰もだるくなってしまった。

ただ、乗り心地は覚悟をしていたためか、それほど大きな負担にはならなかった。もちろん、突き上げなどはそれ相応に感じられるが、トラックと思えば十分に許容範囲だし、その雰囲気を楽しむのも一興である。

トラックドライバー達から多くの注目を浴びる新型「ハイラックス」

道志みちを過ぎて、御殿場まで一般道を走って来たので、本来であれば東名高速道路に乗る予定だったのだが、このクルマで淡々と高速を走るのはあまりにも味気ないと、そのまま一般道で中伊豆を目指すことにした。246号線から伊豆縦貫道を経て、現地に向かうルートだ。

そこで面白かったのは、多くのトラックドライバーたちが真剣に新型ハイラックスに見入っていたことだった。大型トラックからは少し見下ろす程度の高さで、小型・中型トラックはほぼ同じ位置の目線なので、彼らの顔の動きがよくわかるのだ。ターゲットユーザーと思しき団塊世代の男性たちは、かなり興味を持っていたようなので、商品コンセプトはぴったり当たっていたということだろう。

トヨタ 新型「ハイラックス」のリアイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」のリアイメージ

途中、住宅街のパン屋さんに寄った際、改めて車体の長さを感じた。そう、駐車場に入らないのだ。バックモニターを使って後ろまでぴったり寄せても、フロントホイールから前が道路にはみ出してしまった。やはり、出先での駐車場はある程度考えておいたほうがよさそうだ。

もうひとつ、ブレーキングも気にしたい。道志みちではそれほど気にならなかった(スピードが出ていなかった)のだが、やはり2トンのボディは十分に重く、ブレーキング時は思った以上に強く踏み込むことが必要だ。なので、高い視界を有効に使って信号のタイミングを見極めた方が、より安全かつスムーズなドライビングにつながるだろう。

トヨタ 新型「ハイラックス」のホイール&タイヤ

トヨタ 新型「ハイラックス」のホイール&タイヤ

街中では2,500rpmくらいでどんどんシフトアップしていくので、エンジン音が急激に高まることもなく、タイヤも「DUNLOP GRANDTREK AT 265/65/17」を履いていたが、そのロードノイズもそれほど気にはならない。だが、静粛性が高いというわけではない。何かがむやみやたらとうるさいということではないのだが、速度に応じてさまざまな音が発生するものの、あまり気にならないと言ったほうが正しいだろう。

ハイラックスで乗馬を楽しむという「夢」

今回、目指した先は「中伊豆ワイナリーシャトーT.S」という、その名の通り広大なブドウ畑とワイナリー、そして見事な景観のシャトーがある場所だ。

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

中伊豆ワイナリーヒルズにある、ウエスタンスタイルステーキハウス「マーベリック」

中伊豆ワイナリーヒルズにある、ウエスタンスタイルステーキハウス「マーベリック」

先日、クラシックカーイベントの取材で訪れたときに、シャトーの横にウエスタンスタイルステーキハウスの「マーベリック」が完成して、そのテラスから放牧中の馬が見られるようになったので、訪れてみた次第だ。

中伊豆ワイナリーヒルズでは体験乗馬もできる

中伊豆ワイナリーヒルズでは体験乗馬もできる

現在、中伊豆ワイナリーヒルズでは15頭の馬が飼育されており、1頭を除きアメリカンクォーターホースというウエスタンの馬だ。アメリカンクォーターホースは従順かつ温厚な気質で、もともとはカウボーイが一緒に仕事をする馬なのだそうだ。ここでは実際に見るだけではなく、体験乗馬も可能。担当の中田さんによると、「あくまでも予約が優先ですが、天候などのコンディションがよく、予約がない状況であれば、乗馬が可能な場合もあります。ただし、服装などによっては本格的なレッスンでは乗馬ができない場合もありますので、前もってお電話でお問い合わせください」とのこと。

中伊豆ワイナリーシャトーT.Sの鈴木聡子さんと中田竜太郎さん

中伊豆ワイナリーシャトーT.Sの鈴木聡子さんと中田竜太郎さん

また、中田さんは「まずは乗ってもらうことが大事なのです。引き馬ではつかまって乗っているだけなので、手綱を握る感覚と全然違います。初めての方は、大きい馬は怖いというイメージもあるかもしれませんが、ウエスタンの馬は従順で温厚です。まずは乗ってもらい、一度自分で手綱を握って馬を動かしてもらいたいですね」と語る。そして、「時間に余裕のある方々にも乗馬というものの技術を一生涯かけてゆっくりとスキルアップしてもらえると嬉しいですね。ここは初心者から玄人の上級者の方までレッスンできる施設です」と紹介してくれた。

ここでは、初心者でもしっかりとした指導の下、そのレベルに合わせて30分のレッスンとブドウ畑の散歩を30分ほど楽しませてくれる体験乗馬コースもあるので、興味のある方は一度トライしてみてほしい。

長崎県の対馬から来た対州馬の優香ちゃん

長崎県の対馬から来た対州馬の優香ちゃん

そして、ここにはもう1頭、長崎県の対馬から来た対州馬(たいしゅうば)の“優香(ゆうか)ちゃん”がいる。現在49頭しか生存していない日本の固有種だ。小柄な農耕馬で、馬を使う作業に従事していたものの、機械化が進んで頭数が減ってしまったのだ。近年繁殖などでようやく49頭まで増えてきたが、関東近郊で見られるのはここだけであるというから、優香ちゃんに会うだけでも訪れる価値はあるだろう。

ビーフハンバーグステーキ(左)とビッグサイズ・カウボーイステーキ(右)

ビーフハンバーグステーキ(左)とビッグサイズ・カウボーイステーキ(右)

こういった話を聞きながら、マーベリックで美味しいビッグサイズ・カウボーイステーキ(1,980円)と、同行者はビーフハンバーグステーキ(1,780円)を食した。食レポは得意ではないが、どちらもしっかりとした肉の味を堪能できた。150km以上の一般道走行の疲れも吹き飛び、再び新型ハイラックスに乗り込んだ次第である。

中伊豆ワイナリーシャトーT.S  静岡県伊豆市下白岩1433-27
http://www.shidax.co.jp/winery/

帰路もせっかくならと一般道で帰ることにするが、同じ道ではつまらないと、県道12号を通り伊東へ抜けてそこから海沿いをひたすら走り、途中で少し裏道を抜けながら最終的には129号線で帰宅。トータル360kmほどの距離を走破した。

正直に言うと、少々疲れたというのが本音だ。しかし、それは十分クルマを楽しんだうえでの心地よい疲れであった。

燃費は「良好」

最後に、燃費について触れておこう。実燃費テストの走行パターンは、「市街地」「郊外路」「高速道路」の3種類でそれぞれ計測。「市街地」が新宿から八王子までの渋滞の激しい約30km。「郊外路」は、八王子から高尾山を過ぎ、相模湖から道志みちに入って奥相模湖付近から折り返す、信号が少なく快走路からワインディングまで変化に富む約50kmのルート。「高速道路」は、相模湖ICから新宿までの約60kmのルートとした。その結果は、

・市街地:9.9km/L
・郊外路:10.3km/L
・高速道路:15.7km/L
・JC08モード燃費:11.8km/L

というものだった。アイドルストップもない、ディーゼルターボエンジンでありながら、この結果は立派なものだ。確かに、渋滞につかまりっぱなしでは燃費はどんどん悪くなり、一時は5km/Lを割ることもあったが、少しでも流れるとたちまち8km/L台に回復。非常に効率のいいエンジンであることがうかがえる。

また、高速でもギア比が適切であることと、重量級であることから、下り坂を有効に使うことができるので、思ったよりも燃費が伸びたと思われる。実際に、上記のルート以外でも逐次燃費を計測したが、ほぼこれと同様の結果が得られた。

タンク容量は80リットルなので、高速では1,000kmを超える長い脚をもつことになる。

荷台いっぱいの夢を載せて

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」フロントイメージ

本文中でもいくつか触れたが、新型「ハイラックス」で気になるところの大半は設計年次の古さからくるものばかりだ。しかし、そこを改良することで信頼性や悪路走破性が揺らいでは本末転倒だ。また、海外生産というリスクから、十分なノウハウの蓄積が必要になるので、新たなトライは極力避けたいという思いはよくわかるし、そこがまたこのクルマの魅力にもつながっている。

トヨタ 新型「ハイラックス」リアイメージ

トヨタ 新型「ハイラックス」リアイメージ

冒頭にも書いたが、評価としては時代遅れのトラックを再び輸入・販売する意味があるのか?となってしまう。しかし、実際に総トータル700kmほど新型ハイラックスと付き合ってみて、今回のように、新型ハイラックスがあることによって、どこに行こうか、あるいはどこに行けるかという思いは果てしなく広がっていく。

これがもし、ほかのクルマであったならこういった気持ちになったかは非常に疑わしいし、そもそも、中伊豆まで馬を見に行こうなどとは思わなかったに違いない。そういう思いに駆られるクルマ、新型ハイラックスは実は今の自動車に求められている楽しさを表現できている重要なクルマなのかもしれない。

荷台には500kgの荷物が積めるし、キャビンには5人乗ることができる(後席は乗り心地を含めて厳しいだろうが)。

さて、貴方ならどこへ出かけますか?

text&photo:内田俊一(Shunichi Uchida)
photo:内田千鶴子(Chizuko Uchida)
photo&撮影協力:中伊豆ワイナリーシャトーT.S

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

紹介した製品の最新価格・クチコミをチェックする
関連記事
ページトップへ戻る