“弾丸”試乗レポート
クルマ好きのための“弾丸”試乗レポート

【CES 2018レポート】未来の自動車は所有ではなく利用するものになる!?

2018年1月7日より12日にかけてアメリカのラスベガスで開催された「CES 2018」。最先端のエレクトロニクス技術や製品の集まるイベントに、最近では自動車系メーカーも積極的に参加している。その様子をモータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

自動運転や電動化などで情報技術との融合が進む自動車にとって、近年重要なイベントになっている「CES 2018」を、自動車関連技術という視点からレポートする

日系メーカーを中心に自動車メーカーやサプライヤーも数多く参加

毎年1月の上旬にラスベガスで開催される「CES」。ショーの主役はテレビやオーディオ、ゲームにスマートフォン、パソコンといった家電だが、最先端のエレクトロニクス技術を披露するイベントということで、最近では電子化の進む自動車のメーカーやサプライヤーの出展社も増えている。今年の「CES 2018」では、トヨタを筆頭に、ホンダ、日産、メルセデス・ベンツ、フォード、FCA、ヒュンダイ、キアがブースを構えた。さらにサプライヤー系では、コンチネンタル、ボッシュ、ヴァレオ、ZF、デンソー、アイシン、NVIDIA、日立オートモーティブ、ルネサス、ボーズなども参加。それぞれに最先端のエレクトロニクス技術を持ち込み、未来のカーライフを示唆する展示を見せてくれた。今年はドイツ系の出展が減ったため、日系自動車メーカーの存在感が大きくなったのが特徴だろう。

筆者にとってCESの取材は初。世界のあちこちのモーターショーの取材を重ねてきたが、CES 2018ほどユニークな展示会はなかった。まず、規模が大きい。メイン会場となるラスベガス・コンベンション・アンド・トレード・センターには3つの巨大なホールと野外展示スペースがある。しかし、CES 2018では、それ以外に2か所の展示エリアが、巨大なホテルに設定されていた。ちなみに3つのエリアは、それぞれ数km離れていて、クルマやモノレールなどで移動しなければならない。東京でいえば、東京ビッグサイトとメガウェブ、幕張メッセ(日本ほど離れていないけれど)の3つの会場を一度に使っているかのような規模感だ。さらに、展示スペースがオープンするのは9日から12日の4日間だが、その前の2日間に記者会見だけを近隣のホテルで行う。また、正式にエントリーせず、独自にホテルなどを借りて出展(?)するメーカーまである。こうした、いわばモグリの参加も許すユルさには驚くが、逆にモグリまでやって参加したいほどの影響力のある展示会ということなのだろう。今回は音響メーカーのボーズや、音声認識のニュアンスといったサプライヤー系は、独自会場を用意しての参加であった。その場合、事前予約していないと展示を見ることさえもできないのだ。

ちなみに、今回のCES 2018では雨が2日間降った。日本人的には「ああ本降りだね。でも、ごく普通の雨だね」と思う程度。しかし、砂漠のオアシス都市であるラスベガスでは、その程度の雨でも大騒ぎ。川は氾濫しそうになり、あちこちのホテルや展示会場は雨漏り。最後はメイン会場の2つの展示ホールが2時間ほど停電する事態となった。

離れた場所にある3か所の展示エリアのほか、ホテルを借りたモグリの展示会まで開催される。メーカーにそこまでしても参加したいと思わせる価値がCESにはあるのだろう

開催期間中に、砂漠の街ラスベガスでは珍しく、まとまった降雨があった。会場の停電や雨漏り、道路の冠水などのアクシデントにも遭遇した

クルマの存在価値を変えるトヨタの驚きの発表

数多くの自動車メーカーやサプライヤーが参加したCES 2018であったが、なかでも印象的だったのがトヨタ、ホンダ、日産の日系自動車メーカーであった。特に圧巻だったのはトヨタだ。
トヨタが発表したのは「e-Palette Concept(eパレット・コンセプト)」だ。これは、自動運転機能を備えた箱型のEVコンセプト。ポイントは、一般ユーザー向けの販売ではなく、商用として利用するところにある。しかも、人を送迎するだけでなく、荷物の配送や移動売店、移動ホテルなど、多様な使い方が想定されている。そして、驚いたことに、すでに利用するパートナーまで決まっていたのだ。それがアマゾン、ピザハット、ウーバー(Uber)にディディ・チューシン(Didi Chuxing)、そしてマツダだ。アマゾンとピザハットなら、荷物のデリバリーだろう。ウーバーとディディ・チューシンは、ライドシェアの会社だ。こちらで利用するなら人の送迎になる。そしてマツダは、EVの走行距離を伸ばすロータリーエンジンのレンジエクステンダー技術を提供するという。つまり、「e-Palette Concept(eパレット・コンセプト)」は、ただのアイデアではなく、リアルな新ビジネスの発表であったのだ。トヨタは2020年代前半にアメリカをはじめとした各地で、このサービスをスタートさせるという。このサービスが安価で便利であれば、あっという間に世界中で普及することだろう。そうなれば、「クルマは所有するものではなく利用するもの」という新しい価値観が強くなる可能性が高い。文字通り、画期的なビジネスとなるのだ。

トヨタの豊田章男社長みずから、「e-Palette Concept」のプレゼンテーションを行った。もし軌道に乗れば、車の所有から利用へというパラダイムシフトをトヨタが先導することになる

ホンダの提案は、AI技術をモビリティ技術と組み合わせたロボットであった。人とのコミュニケーションを行うロボットや、自律走行を行うモビリティ型のロボットなどだ。AI技術が完成した未来の社会をイメージさせるものであった。

ホンダの発表したコミュニケーションロボットのコンセプト「3E-A18」。人の表情を読み取り、表情、音、動きで応答する

手前のロボティクスデバイス「3E-C18」は上部がモジュール構造になっており、物販や移動広告などの機能を備えることができる。左後ろの「3E-D18」は、オフロードユースを想定している

日産はドライバーの脳波をモニターして、運転を支援する「Brain to Vehicle(B2V)」を発表した。人間は、実際に考えてから手足を動かすまでに時間差がある。そこで脳波を調べて、人の動きよりも先にクルマの動きを制御。よりドライバーの望むような走りを実現しようというアイデアだ。自動運転にも利用できる興味深い技術であった。

日産の発表した非侵襲式ブレイン・マシン・インターフェイス「Brain to Vehicle(B2V)」。脳波で車をコントロールするという、まさにSF世界の技術だ

シミュレーターを使った「B2V」の実演も行われていた。脳の判断を行動より先回りして感知することで、よりスムーズな走りを実現する

自動運転技術から次世代HMIまで幅広い最新技術も展示

その他の自動車関連のブースを歩けば、自動運転や次世代ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)など、幅広い新技術の提案を見ることができた。メルセデス・ベンツは、近く新型車に採用されるという次世代のインフォテイメント・システムである「MBUX」を発表。コンチネンタルは、フロントコンソール一面をモニターにした次世代コクピットのコンセプトを展示。デンソーは、数学的なアプローチでセンサーなどのデータをよりクリアに抽出する次世代技術「CS-SIGHT」。日立オートモーティブは、ドライバーの運転操作を覚えて、その後に同じ場所に自動で駐車するバレーパーキング技術。ルネサスは、自動運転車が故障したときに、自動で道のわきの空いている駐車スペースを探して停まるというデモ走行を披露。ボーズはカーオーディオが大音量で鳴り響く車内から、ドライバーの話声だけを抽出する技術「ClearVoice(クリアボイス)」を展示していた。また、ニュアンスは、サーバーを使わずに、クルマのシステムだけで高い音声認識を実現する「ドラゴン・ドライブ」を披露。また、アップルの「Siri」やグーグルの「Google Home」、アマゾン「Alexa」のような複数のAIアシスタントを、クルマ側のシステムが自動で選択し、ドライバーは車内から、自由に複数のAIアシスタントを利用できる技術もニュアンスは見せてくれた。

メルセデス・ベンツのインフォテイメント・システム「MBUX」。NVIDIAの開発したCPUの強力なパワーを生かし、最新のPCやタブレットのようなリッチなメディア環境をもたらしている

コンチネンタルは、ダッシュボード一面を覆う横長の液晶ディスプレイを展示。左右の隅にサイドミラーを配置している

ルネサスの行った走行デモは、故障を感知して道路わきの安全な駐車スペースに停車するというもの

ルネサスの行った走行デモは、故障を感知して道路わきの安全な駐車スペースに停車するというもの

ボーズの「ClearVoice」は、車内の雑音を打ち消して本来の会話音声だけを抽出するというもの。自動車分野でも今後普及が予測される音声認識を下支えする技術になりそうだ

車に搭載されたシステムだけで高い音声認識精度を実現したニュアンスの「ドラゴン・ドライブ」。インターネット回線の届きにくい道路でも音声認識が利用できる

AIアシスタントの普及の日は近い

最後に「CED 2018」全体の印象を述べたいと思う。まず、ショーの本筋である家電系では次世代通信の5Gや、VRを使った次世代の3Dエンターテインメント、ドローン、ゲームなど、それこそ数えきれないほどの新技術や新製品が並んでいた。しかし、そんな中でも強い存在感を放っていたのが「スマート・ホーム」であった。アマゾン「Alexa」や「Google Home」といったAIアシスタントに対応する家電類だ。オーディオにはじまり、モニターやカメラ、鍵、エアコン、水道関係、コンセントなど、種類も数も豊富に用意されている。未来の技術ではなく、製品としての展示というのもインパクトが強い。アメリカでは、こうしたAIアシスタントの普及が進んでいるということが実感できた。日本でも、すぐにAIアシスタントが普及するだろう。そして、それはいずれ自動車にも波及するはずだ。それを強く予感させるCES 2018であった。

CES 2018全体では、「スマート・ホーム」関連の製品が豊富だった。AIアシスタントが自動車にとって大きな意味を持つのも、もはや時間の問題かもしれない

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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