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なぜジムニーはこれほどの走破性を持つに至ったのか

スズキ「ジムニー」が生産終了!初代から3代目までのジムニーを振り返る

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ジムニー生産終了の理由は!?

根強い人気に支えられる長寿モデルのひとつに、スズキ「ジムニー」がある。軽自動車サイズの本格的なオフロードSUVで、初代モデルは1970年に発売された。初代の発売後は、悪路の走破力を重視するという基本コンセプトを変えず、フルモデルチェンジを繰り返しながら今に至る。

スズキ「ジムニー」(画像は3代目ジムニーの「LAND VENTURE(ランドベンチャー)」)

スズキ「ジムニー」(画像は3代目ジムニーの「LAND VENTURE(ランドベンチャー)」)

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このジムニーが、先ごろ生産を終えた。生産終了の直接の理由は、「横滑り防止装置」が非装着であることだ。横滑り防止装置は、効果的な安全装備として装着の義務化が進んでおり、軽乗用車の継続生産車も2018年2月24日以降は装着しなければならない。ジムニーは、この対応をしないために生産を終えた。

また、1.3リッター直列4気筒エンジンを搭載する小型車の「ジムニーシエラ」は、横滑り防止装置を装着していたが、歩行者保護などいくつかの要件を満たせていない。そのため、軽自動車のジムニーとあわせて生産を終えている。

新型ジムニーの発売もせまる

ジムニーとジムニーシエラが安全対策をせずに生産を終えたのは、4代目となる新型モデルの発売が迫っているためでもある。細かな日程は販売店にも伝えられていないが、2018年7〜8月頃には新型ジムニーが登場するのではとの噂だ。

ジムニーは、フルモデルチェンジの周期が長い。初代は「11年間」、2代目は「17年間」、先ごろ生産を終えた3代目は「20年間」にわたり作り続けられた。そのために、フルモデルチェンジする時には、機能を一足飛びに進化させる。新型ジムニーは、今後の安全基準の向上なども見越して開発され、衝突安全性、安全装備、走行安定性、乗り心地などが大幅に向上する。

そのいっぽうで、ユーザーがジムニーに強く求めるのは、今も昔も悪路の走破力だ。万が一、従来のジムニーが走破できた悪路を新型ジムニーが走れないなどといったケースが生じると、ユーザーに多大な迷惑をかけてしまう。そのため、従来のジムニーの走破力を維持したうえで、衝突安全性や走行安定性を向上させる必要があるわけだ。

また、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備と、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどは、急速にニーズが高まっている。フルモデルチェンジの周期が長いジムニーは、将来のマイナーチェンジで安全装備をバージョンアップする必要もあるから、多角的な車両開発が行われる。

そこで、ジムニーの歴史を改めて振り返ってみたい。今後登場する新型ジムニーは、クルマを取り巻く環境の変化に対応する意味も含めて、一種の転換点を迎える。そのいっぽうで、従来と変わらぬジムニーらしさも継続されるであろう。この足跡を振り返れば、ジムニーの今後の行方も見えてくるだろう。

初代ジムニー(1970〜1981年)

スズキは、1920年に「鈴木式織機株式会社」として発足した。初代ジムニーが登場した1970年は、創立50周年にあたる。スズキは1960年代の中盤から、販売面を強化できて、なおかつ創立50周年にふさわしい新型車を模索していた。

ちょうどこの頃、軽自動車の開発と製造を行っていた「ホープ自動車」が、自動車産業から撤退して産業機械メーカーに転換することになった。ただし、ホープ自動車は悪路向けの4WDとなる「ホープスターON型」の開発を進めていた。ボディはホープ自動車が製造するが、エンジンは富士自動車製(ブランドはガスデン)の搭載を予定していた。

ところが富士自動車は、3輪乗用車のフジキャビンなどで商業的に失敗し、小松ゼノアの汎用エンジンを手がけるようになる。この影響でホープON型はエンジンの入手に困り、三菱重工業から供給を受けたりしたものの、商業的に行き詰まった。

スズキ「ジムニー」(初代、LJ10型)

スズキ「ジムニー」(初代、LJ10型)

そこで、スズキがホープスターON型の製造権と設計図面など一式を買い取り、開発を行って商品化したのが初代「ジムニー」であった。供給を受けたホープスターON型にスズキ製のエンジンを搭載してテストを開始すると、悪路を意外なほどよく走り、商品化に懐疑的だったスズキ社内の人達を納得させることができたという。

それでもホープスターON型とジムニーでは、外観のデザインがまったく違う。軽自動車だから全長の2,995mmと全幅の1,295mmは等しいが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はジムニーが1,930mm、ホープスターON型は1,950mmだ。エンジン性能やギヤ比も異なる。

初代ジムニーのボディはオープン形状で、ドアも棒状の手すりになる。幌の装着も可能だが快適性は低く、4輪のモーターサイクルという印象だ。軽商用車として届け出されたから最大積載量は250kgと設定され、荷室には折りたたみ式の後席とスペアタイヤが備わる。後席は1名分で、乗車定員は3名だった。

エンジンは、空冷2サイクルの2気筒で排気量は359cc。最高出力は25馬力(6000回転)、最大トルクは3.4kg-m(5000回転)。トランスミッションは4速MTのみで、今日のジムニーと同じように、副変速機が装着されていた。車両重量は600kgと、3代目ジムニーの980〜1,000kgと比べて圧倒的に軽い。

最低地上高は235mmで、3代目ジムニーの200mmよりも余裕があり、ホイールベースは前述のように1,930mmだから、3代目ジムニーの2,250mmに比べると大幅に短い。つまり、初代ジムニーは、3代目ジムニーよりも悪路の走破に適したボディを備えていたといえる。

登坂能力は、副変速機の装着もあって27.5°とされる。これは相当な急斜面だ。エンジン自体は、当時のスズキ車に幅広く使われていたタイプだから、副変速機を備えた4WDと大径タイヤの効果に驚かされた。

スズキ「ジムニー」(初代、LJ20-2型)

スズキ「ジムニー」(初代、LJ20-2型)

その後、エンジンが空冷式から水冷式に変わり、1976年には排出ガス規制の実施に基づいて、軽自動車の排気量枠が550ccになった。これに対応してジムニーも排気量を539ccに拡大している。登坂能力も39°に増した。また、ボディサイズも軽自動車の規格変更にともなって、全長が2,955mmから3,170mmへ、全幅は1,295mmから1,395mmへと大型化された。

2代目ジムニー(1981〜1998年)

スズキ「ジムニー」(2代目、SJ30-1型、ソフトトップ)

スズキ「ジムニー」(2代目、SJ30-1型、ソフトトップ)

スズキ「ジムニー」(2代目、SJ30V-VC型、メタルトップバン)

スズキ「ジムニー」(2代目、SJ30V-VC型、メタルトップバン)

歴代ジムニーを通じて、最も飛躍したのが1981年に発売された2代目ジムニーだろう。外観は大幅に洗練され、ホイールベースは一気に100mm伸びて2,030mmとなった。

ボディタイプは、ソフトトップとメタルバンの2種類が設定された。この2代目も商用車として届け出されたが、内装の質も高まってなじみやすい印象になった。さらに、前輪のブレーキが従来のドラム式から放熱効果にすぐれたディスク式に変わっている。

1986年になると、4サイクルの直列3気筒SOHC(シングルオーバーヘッドカムシャフト)エンジンにターボを装着した仕様が発売され、1987年にはインタークーラーも併用された。1990年には軽自動車の規格が再び変更を受け、全長の枠が3,300mmに伸びてエンジンの排気量は現在と同じ660ccになった。これを受けてジムニーも排気量を657ccに拡大してターボも引き続き装着され、走行性能に余裕を持たせた。

1995年には、大幅な変更が施された。サスペンションは初代モデルの発売時点からリジッドタイプ(車軸式)を使い続けてきたが、この年にスプリングをリーフリジッドから今と同様のコイルに改めている。エンジンも変更され、直列3気筒DOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト/ツインカム)のK6A型ターボが搭載された。

さらに従来の4ナンバー車から5ナンバー車に変わり、商用車の規格に束縛されなくなった。そこで、後席の背もたれの角度を最適化するなど、居住性を少し向上させている。

3代目ジムニー(1998〜2018年)

スズキ「ジムニー」(3代目)のフロントイメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)のフロントイメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)のリアイメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)のリアイメージ

1998年10月には軽自動車の規格が変更され、全長が100mm拡大して3,400mm、全幅は80mm拡大して1,480mmになり、今日と同じ規格枠になった。ボディサイズの枠を拡大する代わりに、時速50kmの正面、側面衝突時の乗員保護、時速50kmの後面衝突における燃料漏れの防止という基準が課せられた。

つまり、ボディの規格枠を拡大したのは衝突安全性の向上が目的だったが、各車種ともに居住空間も広げられた。1998年の10〜11月には、16車種もの軽自動車が一斉にフルモデルチェンジを行って新規格に対応したから、未曾有の新車ラッシュとなった。

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

3代目のジムニーは、初代と2代目に比べれば大幅に乗用車感覚が強められた。特に、乗り心地が柔軟になり、2代目までの跳ねるような動きが抑えられている。走行安定性も高まり、従来のような唐突に傾く不安定な挙動が解消された。

ちなみに、初代と2代目のジムニーは、多少なりとも無理な運転をすれば、横転にいたる挙動が発生するのが当然だった。したがって、横転しないように悪路をスムーズに走らせるのが一種のコツになる。横転しそうになった時、接地している側に向けてすばやくハンドルを回すなどの配慮も必要だった。3代目ではそこも改善され、無理は禁物ながら、初代や2代目に比べると横転モードに入りにくくなった。比較的なじみやすい運転感覚だ。

スズキ「ジムニー シエラ」悪路における走行イメージ

スズキ「ジムニー シエラ」悪路における走行イメージ

しかし、それでもジムニーは生粋のオフロード4WDだから、基本的には悪路走破性は高い。1994年から2012年までは、ライバル車として三菱の初代、2代目「パジェロミニ」が製造されたが、硬派なオフロード指向ではジムニーのほうが上まわっていた。

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

そのため、舗装路の乗り心地は従来のジムニーに比べればマイルドになったが、「ワゴンR」などに比べると上下方向の揺れが大きい。操舵感もあいまいで反応が鈍く、峠道などでは曲がりにくく感じる。この特徴は、生産終了まで変わることがなかった。その代わり、悪路は抜群に走りやすい。凸凹の激しい場所でも、適度に硬めの足まわりが路上からの衝撃を確実に受け止める。

舗装路であいまいに感じる操舵感も、滑りやすい悪路ではちょうどよい。凸凹によってタイヤが左右に振られると、その動きがハンドルに伝わりやすいが、ジムニーはゆるいセッティングだからそれがない。

また、舗装路で感じた動きの鈍さも、それを見越してカーブの手前でハンドルを少し早めに切り込むと、自然に曲がれて旋回軌跡を拡大させにくい。工夫と慣れによって克服できる問題だった。

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

スズキ「ジムニー」(3代目)イメージ

新型ジムニーは、悪路の走破力を落とさずに舗装路での安定性と乗り心地を高め、安全装備も充実させることだろう。小型車版とあわせて、コンパクトなオフロードSUVのお手本となるに違いない。

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渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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