レビュー
ダイハツの軽のノウハウを生かしたトールワゴン

売れている!人気のトヨタ「ルーミー」ダイハツ「トール」に試乗

近年は、ダウンサイジングの高まりによって、小さなクルマへと乗り替えるユーザーが増えた。そのニーズに応えるかのように登場したのが、ホンダ「N-BOX」、ダイハツ「タント」、スズキ「スペーシア」など、全高が1,700mmを超え、かつスライドドアを備えた“軽トールワゴン”だ。軽トールワゴンが好調に売れたことによって、今では新車販売のうち実に35%以上が軽自動車になった。

日本の道路事情や生活環境を考えれば、背が高く実用的な軽自動車が好調なのは当然の成り行きといえるが、普通車を中心に扱うトヨタとしては喜ばしくない。

ダイハツ「トール」カスタムモデルのイメージ

ダイハツ「トール」カスタムモデルのイメージ

そこで、トヨタの傘下に収まるダイハツが開発したのが、コンパクトカーのトヨタ「ルーミー」「タンク」、ダイハツ「トール」、スバル「ジャスティ」(以下、ルーミー・タンク&トール)の4車種だ。これら4車種は、いずれも同型の姉妹車であり、ルーミー、タンク、トール、ジャスティはトールのOEM車ということになる。

ルーミー・タンク&トールのボディサイズは、全長が3,700mm(カスタムは3,725mm)、全幅は1,670mmと小さいが、全高は1,735mmと高く、後席ドアは両側スライド式になる。

トヨタ「ポルテ」には、左右非対称の片側1枚スライドドアが採用されている

トヨタ「ポルテ」には、左右非対称の片側1枚スライドドアが採用されている

ちなみに、トヨタには背が高くスライドドアを持つコンパクトカーとして「ポルテ」「スペイド」がラインアップされている。だがポルテ、スペイドは、左側こそスライドドアだが、右側は横開きドアとなる片側スライドドアだ。

さらに、その片側スライドドアは、前席と後席のドアが一緒となった1枚タイプの大型スライドドアになっている。この大型スライドドアは低床ボディと相まって荷物の積み込みやすさなどの利点もあったのだが、一般的には選びにくく、売れ行きが伸び悩んだ。そこで、ルーミー&トールを開発したという経緯もある。

ルーミー・タンク&トールのボディタイプは、標準ボディとエアロパーツなどを備えたカスタムの2種類がある。搭載エンジンは、1リッター直列3気筒NA(自然吸気)とターボが、2種類のボディタイプにそれぞれ用意されている。

なお、全長と全幅が小さく、背の高いライバル車としては、スズキ「ソリオ」があげられる。ソリオはこの分野の草分け的存在であり、ルーミー・タンク&トールのほうが後発だ。

今回、販売好調なルーミー・タンク&トールを改めてレビューし、以下の項目について5段階で採点して、評価したい。

・運転のしやすさ(取りまわし性/視界)
・内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)
・居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)
・走行性能(動力性能/走行安定性)
・乗り心地
・安全&快適装備
・価格
・総合評価
※上記項目について、それぞれ1〜5点の5段階で採点、評価

※当記事の画像は、ダイハツ「トール」のカスタムグレード「カスタムG SA II」になります。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの運転のしやすさ(取りまわし性/視界)

ダイハツ「トールカスタム」のフロントイメージ

ダイハツ「トールカスタム」のフロントイメージ

ダイハツ「トールカスタム」のリアイメージ

ダイハツ「トールカスタム」のリアイメージ

ボディが小さく、水平基調のデザインなので前後左右ともに視界がよい。混雑した市街地や狭い裏道などでも、運転しやすいのが特徴だ。

最小回転半径は、14インチタイヤ装着車が「4.6m」、ターボエンジンを搭載した15インチタイヤ装着車は「4.7m」。小回り性にすぐれていて、駐車場などの取りまわしなどの際にもとても便利だ。

評価:★★★★★(5点)
コメント:背が高いので立体駐車場は利用しにくいが、全長と全幅はコンパクトで視界がよく、運転しやすい。小回り性にもすぐれている。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)

ダイハツ「トールカスタム」のインパネ

ダイハツ「トールカスタム」のインパネ

コンパクトカーとしては、内装の質感は高い。とくにインパネなどは、樹脂でありながらもステッチや革の素材感がリアルに表現されている。手で触れれば樹脂だと分かるが、見栄えは本物の革や糸に近い。

ダイハツ「トールカスタム」のシフトノブ

ダイハツ「トールカスタム」のシフトノブ

ATレバーやスイッチ類は、シンプルに配置されていて操作性がよい。エアコンスイッチは位置が少し低いものの、手探りによる操作はしやすい。

ダイハツ「トールカスタム」インパネ上部に設置されている「マルチインフォメーションディスプレイ」

ダイハツ「トールカスタム」インパネ上部に設置されている「マルチインフォメーションディスプレイ」

時刻や平均燃費などを示す「マルチインフォメーションディスプレイ」が、インパネ中央の最上部に設置されている。そのため、カーナビゲーションの画面位置が少し低いのだが、見にくいほどではない。

ダイハツ「トールカスタム」脇にあるカップホルダーは、500mlの紙パックも入るサイズだ

ダイハツ「トールカスタム」脇にあるカップホルダーは、500mlの紙パックも入るサイズだ

収納設備は豊富だ。インパネに装着されたカップホルダーは、手前に引き出すとサイズが拡大して、500mlの紙パックも収まるようになっている。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:コンパクトカーとして質感は高いので満足できるだろう。操作性もおおむね良好だ。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)

ダイハツ「トールカスタム」のフロントシート

ダイハツ「トールカスタム」のフロントシート

フロントシートの座り心地は快適だ。シートサイズに不足はなく、背もたれは腰の近辺を包むような形状に仕上げられている。柔軟性もあって、快適性とサポート性がよい。座面と床の間隔は、広めに確保されている。身長が比較的高いユーザーであればちょうどよく、高く座るから、運転席のスライド位置はあまり後退しない。そのため、リアシートとラゲッジルームのスペースを広げやすい。

ただし、小柄なドライバーが座ると、着座位置を下げてもペダルの操作がしにくく感じる場合があるだろう。

ダイハツ「トールカスタム」のリアシート

ダイハツ「トールカスタム」のリアシート

リアシートは、フロントシートに比べると座面の柔軟性は乏しく、座り心地とサポート性はよくない。フロントシートとは逆に、座面と床の間隔が不足しているので、足を前方に投げ出す座り方になりやすいのだ。

だが、リアシートの足元空間は広い。リアシートを最も後ろまでスライドさせると、身長170cmの大人4名が乗車した場合、リアシートに座る乗員の膝先に握りコブシ3つ少々もの余裕が生まれる。前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔も1,105mmで、リアシートの足元空間は、前後方向について言えばLサイズセダン並みである。さらに、天井にも十分な空間があるから、座り心地をもう少し柔軟にして足を投げ出す姿勢さえ改善されれば、かなり快適だろう。

リアシートは、脇にあるフックを引っ張って車両前方へ動かすことで、リアシートの足元へダイブインさせることができる

リアシートをダイブインさせる前(左)とダイブインさせた後(右)。ダイブインさせることでフラットなラゲッジルームとして使うことができる

ラゲッジルームの使い勝手も良好だ。リアシートは、タントと同じように床面へ落とし込むようにたたむタイプとなる。少し面倒ではあるのだが、床へ落とせば低床で平らなラゲッジルームとなるので、大きな荷物を詰めるなど使い勝手がいっそう高くなる。

リヤゲートを開いた時の、地面からラゲッジルームの床面までの高さは527mm。これは、タントを約70mm下まわり、低い部類に入るだろう。これならば、たとえば自転車を積む時なども、前輪を大きく持ち上げる必要がなく積み込める。また、ラゲッジルームの床に装着されたボードを反転させれば、汚れを拭き取りやすいシートになる。自転車を積む時など、ラゲッジルームを汚さず、便利に使うことが可能だ。

リアシートのスライド機能は、前後に240mm調節できるから、チャイルドシートを装着した時は前に寄せれば、フロントシートに座る親との距離を縮められる。信号待ちの時などに子供のケアをしやすいだろう。さらに、この時にはラゲッジルームの床面積が拡大するので、ベビーカーなども収納しやすくなる。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:フロントシートは快適で、リアシートは座り心地はいまひとつだが、Lサイズセダン並みの広さをもっている。ラゲッジルームはフラットになるので、低床ボディということもあって、荷物の積み込みやすさなどの使い勝手は高い。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの走行性能(動力性能/走行安定性)

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

1リッター直列3気筒NA車は、登坂路などのシチュエーションでは動力性能が不足しており、市街地向けという印象を受ける。この1リッターエンジンは、トヨタ「パッソ」やダイハツ「ブーン」などに搭載することを目的に開発された。だが、ルーミー・タンク&トールの車重は標準ボディでも1,070kgと、パッソやブーンよりも160kgも重い。そのため、登坂路ではパワー不足に陥ってしまう。

さらに、この1リッターエンジンが高回転指向であることも、マイナス要素のひとつだ。4,500rpm付近の高い回転域から、速度の上昇が活発になる。現状では、最大トルクの9.4kg-mを4,400rpmで発生しているが、できれば4,000rpm以下に抑えたいところだ。また、エンジンの負荷が大きいこともあり、2,000〜3,000rpmではノイズが大きめに感じる。

いっぽう、ターボ車は1.4Lのノーマルエンジンに匹敵する性能を発揮するから、パワー不足は感じない。だが、2,000〜2,500rpm付近でのノイズの大きさが若干気になるところだ。

走行安定性は、1リッターNA車は操舵に対する反応が鈍めに抑えられている。峠道などを走れば、ボディの傾き方も大きい。しかし、車両の動きを抑えたことで、後輪の接地性は失われにくい。ルーミー・タンク&トールのプラットフォームはパッソやブーンと同じなので、160kg重くて背の高いボディを組み合わせれば走行安定性に無理が生じるはずだが、バランスは取れている。

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

なお、ターボ車にはスタビライザー(ボディの傾き方を制御するパーツ)が、前輪だけでなく後輪にも装着されている。そのため、峠道ではボディは傾くものの、挙動の変化は穏やかになって運転しやすい。

評価:★★☆☆☆(2点)
コメント: 1リッターNAエンジンは動力性能が不足しており、ノイズが気になる。また、市街地向けといえども、もう少し安定性が欲しいところだ。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの乗り心地

ダイハツ「トールカスタム」タイヤは「エナセーブEC300+」が装着されている

ダイハツ「トールカスタム」タイヤは「エナセーブEC300+」が装着されている

乗り心地は、省燃費タイヤの影響によって全般的に硬めだ。特に、1リッターNA車の14インチタイヤは、燃費性能を重視しているので転がり抵抗が抑えられている。試乗車の銘柄はダンロップの「エナセーブEC300+」で、指定空気圧は260kPaと高い。そのため、市街地ではタイヤ接地面の硬さを感じてしまう。さらに、路上の細かな凸凹も伝わりやすく、少し粗い印象もある。

ターボ車は、エアロパーツを備えたカスタムの「G-T」を試乗した。タイヤサイズは15インチで、銘柄は同じ「エナセーブEC300+」だが、指定空気圧は250kPaと少し低い。硬めではあるが、粗さは少し抑えられている。

評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:省燃費タイヤの影響で、全般的に乗り心地は硬めだ。路上の細かな凹凸も拾ってしまう。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの安全&快適装備

ルーミー・タンク&トールの安全装備としては、「スマートアシストII」が搭載されている

ルーミー・タンク&トールの安全装備としては、「スマートアシストII」が搭載されている

緊急自動ブレーキを作動できる安全装備は、単眼カメラと赤外線レーザーを併用する「スマートアシストII」が搭載されている。歩行者を検知して警報を発するが、緊急自動ブレーキは車両のみで、歩行者は対象外だ。また、車両に対する緊急自動ブレーキの作動上限速度は、時速50kmにとどまる。

いっぽう、ダイハツの軽自動車の「タント」や「ムーヴ」には、進化した「スマートアシストIII」が装着されている。2つのカメラをセンサーとして使い、歩行者を検知して緊急自動ブレーキまで作動させる。車両に対する緊急自動ブレーキの作動上限速度も時速80kmに高められている。

「サイド&カーテンエアバッグ」は、ルーミー・タンク&トールでは全車にオプション設定されている。いっぽう、ダイハツの軽自動車はグレードを限定している。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:ダイハツの軽自動車には、先行して「スマートアシストIII」が装備されている。スマートアシストIII はスマートアシストIIと比べると安全性が大きく向上するので、ルーミー・タンク&トールにも刷新を求めたいところだ。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの価格の割安感

ルーミーの価格を見てみると、スマートアシストIIIや、両側スライドドアの電動機能などを装着したNA車のルーミー「G“S”」の価格が168万4,800円。これは、背の高い軽自動車の中心的な価格帯に収まっている。また、ターボ車の「G-T」は180万3,600円と、11万8,800円高い。G-Tには、フロントスタビライザーとATのスポーツモードが加わるので、ターボの価格としては約10万円だろう。割安とまでは言えないものの、動力性能は高くなるので、登坂路の多い地域のユーザーは積極的に検討するとよいだろう。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:1リッター3気筒エンジンを積んだコンパクトカーとしては妥当な価格で、装備も充実している。

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの総合評価

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

ダイハツ「トールカスタム」イメージ

開発者によれば、ルーミー・タンク&トールは2年少々で開発したという。発売されたのが2016年11月だから、逆算すれば2014年の中盤頃に開発をスタートさせている。

2014年1月には、スズキ「ハスラー」が発売されて売れ行きを伸ばし、ダイハツとの間で軽自動車の熾烈な販売合戦が行われた。販売会社が届け出をして中古車市場に放出する未使用中古車も増えており、それらを含めた統計ではあるが、2014年に国内で売られたクルマの41%は軽自動車になった。これに向けた対抗策として、急造されたのがルーミー・タンク&トールだ。

ライバル車のスズキ「ソリオ」に比べると価格は同等で、ラゲッジルームや収納装備などの使い勝手という面では、ソリオを凌いでいる。だが、走行安定性や乗り心地といった面では、ソリオに軍配が上がる。

走行性能の面ではソリオが勝るが、使い勝手や外観でルーミー・タンク&トールに魅力を感じる方もおられるだろう。このあたりは、実際に2車を試乗して比較していただければ幸いだ。

評価:★★★☆☆(3点)

トヨタ ルーミー・ダイハツ トールの採点結果

運転のしやすさ(取りまわし性/視界):★★★★★(5点)
内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性):★★★★☆(4点)
居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の使い勝手):★★★★☆(4点)
走行性能(動力性能/走行安定性):★★☆☆☆(2点)
乗り心地:★★☆☆☆(2点)
安全&快適装備:★★★☆☆(3点)
価格:★★★★☆(4点)
総合評価:★★★☆☆(3点)

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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