レビュー
フルモデルチェンジ並みの大幅改良が施されたフラッグシップ!

マツダ 新型アテンザ “速”試乗/改良なのに中身は激変!マツダ車らしい走りを手に入れた

2018年6月、マツダのフラッグシップモデル「アテンザ」に大幅な改良が施された。

2018年6月にフルモデルチェンジ並の改良が施された、マツダ 新型「アテンザ」

2018年6月にフルモデルチェンジ並の改良が施された、マツダ 新型「アテンザ」

改良の内容は、外観こそフロントグリルやヘッドランプなどの変更にとどまるものの、中身はエンジンの刷新やサスペンションの変更、新タイヤの開発にまで及んでいる。また、内装はインパネの質感が大きく向上したほか、シート形状が見直されることで乗り心地が改善された。これらの変更内容を見るかぎり、まるでフルモデルチェンジではと思わせるほど、多岐に渡る改良が施されている。

そこで生じてくる疑問が、「アテンザはなぜフルモデルチェンジされなかったのか?」ということだ。たとえば、「CX-5」は2012年に初代モデルが発売されてから、5年後の2017年にフルモデルチェンジを受けた。アテンザの現行モデルが発売されたのは2012年なので、同じ周期であれば、2017年には新型へフルモデルチェンジされているはずだった。

それを大幅改良とした背景には、アテンザの販売動向が関係してくる。2017年のアテンザの世界販売台数は約15万台で、そのうち日本国内は6,388台(1か月平均で532台)であった。対するCX-5の世界販売台数は約40万台で、日本国内では41,622台(1か月平均で3,469台)登録されている。アテンザは、CX-5に比べて世界販売台数で38%、日本国内では15%の販売台数にとどまるのだ。

左が新型「アテンザセダン」、右が新型「アテンザワゴン」

左が新型「アテンザセダン」、右が新型「アテンザワゴン」

そのような背景もあって、今回のアテンザは改良という名目になっているものの、その中身は前述のとおりフルモデルチェンジ並みの変更を受けている。

今回、そんな新型アテンザへ試乗したので、詳細をレポートするとともに、以下の項目を5段階で採点して評価したい。

・運転のしやすさ(取りまわし性/視界)
・内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)
・居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)
・走行性能(動力性能/走行安定性)
・乗り心地
・安全&快適装備
・価格
・総合評価
※上記項目について、それぞれ1〜5点の5段階で採点、評価

レポートに入る前に、新型アテンザのグレードラインアップと価格を確認しておこう。

■マツダ 新型「アテンザセダン」「アテンザワゴン」のグレードと価格
※価格およびグレード構成は、セダン、ワゴンともに同じ


-2.0Lガソリンモデル-
20S(2WD):2,829,600円
20S PROACTIVE(2WD):2,959,200円


-2.5 Lガソリンモデル-
25S L Package(2WD):3,542,400円


-2.2Lクリーンディーゼルモデル-
XD(2WD):3,240,000円(6AT)/3,294,000円(6MT)
XD(4WD):3,477,600円(6AT)/3,531,600円(6MT)
XD PROACTIVE(2WD):3,369,600円(6AT)/3,423,600円(6MT)
XD PROACTIVE(4WD):3,607,200円(6AT)/3,661,200円(6MT)
XD L Package(2WD):3,952,800円(6AT・6MT)
XD L Package(4WD):4,190,400円(6AT・6MT)

新型アテンザの運転のしやすさ(取りまわし性/視界)

新型「アテンザセダン」のフロントエクステリア

新型「アテンザセダン」のフロントエクステリア

新型「アテンザセダン」のリアエクステリア

新型「アテンザセダン」のリアエクステリア

新型「アテンザワゴン」のフロントエクステリア

新型「アテンザワゴン」のフロントエクステリア

新型「アテンザワゴン」のリアエクステリア

新型「アテンザワゴン」のリアエクステリア

アテンザの全長は、セダンが4,865mmでワゴンは4,805mmと、セダンよりもワゴンのほうが少し短い。全幅は、どちらも1,840mmとワイドだ。ホイールベースは、セダンが2,830mmでワゴンは2,750mmと、全長と同様にワゴンのほうが短い。ワゴンは、ボディ後部を伸ばすことによって荷室容量を確保している関係から、後輪がやや前寄りとなってホイールベースが短くなっている。

最小回転半径は、ホイールベースの長いセダンが5.6m、ワゴンは5.5mと、どちらも少し大きめだ。

アテンザは、フラッグシップモデルということもあってボディが大きく、東京のような混雑した市街地ではやや窮屈に感じる。

また、アテンザのサイドウィンドウは下端が高く、後方へ向けて持ち上げたデザインとなっている。ボディ後端のピラーが太く、真横や斜め後方の視界はあまりよくない。

評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:ボディが大柄なこともあって、混雑した市街地では取り回ししにくく、ボディ形状からサイドやリアの視界はあまりよくない。もし購入を検討するなら、縦列駐車や車庫入れなどを試しておいたほうがよいだろう。

新型アテンザの内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)

新型「アテンザ」のインパネ

新型「アテンザ」のインパネ

新型アテンザでは、インパネ形状が大きく変更されている。直線基調となり、ワイド感を強調したデザインが採用された。インパネには、随所にアルミが配置されているが、デザインにうまく溶け込むように使い方が工夫されていて、洗練された印象を受ける。

新型「アテンザ」最上級グレードのLパッケージには、真横に貫くアルミ加飾の下に新開発のスエード素材が採用されているなど、質感の高さを醸し出すインパネが採用されている

さらに、最上級の「Lパッケージ」グレードには、インパネトリムに「ウルトラスエード ヌー」と呼ばれる新開発のスエード素材が採用されていたり、本杢(本木目)のパネルがあしらわれているなど、フラッグシップモデルならではと言える高い質感となっている。ちなみに、本杢が使われているマツダ車は、日本国内ではアテンザと「CX-8」のみだ。

また、インパネデザインの変更の影響によって、エアコンの送風口がスリムな形状となった。ただ、この送風口は、デザインはいいのだが送風角度が操作しづらく、先代と比較して風が車内に分散されにくいように感じられる。

さらに、インパネにはアルミ装飾が横一直線に入れられていて、こちらも見た目はいいのだが、中央の送風口に近いアルミ加飾が冷風で冷やされて結露していた。車内が冷えれば次第に収まるものの、インパネの目立つ部分に水滴がたまるというのはフラッグシップモデルということを考えると少し気になってしまう。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:エアコン送風口など、細かな使い勝手で気になる点があるものの、全体的には改良前に比べて相当に上質なインパネデザインへと改良された。

新型アテンザの居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)

新型「アテンザ」のフロントシート

新型「アテンザ」のフロントシート

新型アテンザでは、シートデザインも見直されている。改良前のシートと実際に乗り比べてみると、フロントシートはやや座り心地が硬めになったものの、体の保持性能については向上している。背もたれから座面にかけて、シートが体に沿ってデザインされているからだ。

新型「アテンザ」のリアシート

新型「アテンザ」のリアシート

リアシートは、サポート性はそのままに、背もたれと座面が少しやわらかくなっている。路面からの振動が腰に直接伝わりにくくなり、乗り心地は良好だ。

居住空間やラゲッジルームの広さは、改良前後で変わっていない。身長170cmの大人4名が乗車したとすると、リアシートに座ったときの膝先空間は、ワゴンが握りコブシ2つ分で、ホイールベースの長いセダンはクラウンと同等の2つ半ほどだ。リアシートに座ると、腰が少し落ち込んで膝が持ち上がるが、セダン、ワゴンともに4名乗車でも快適な空間が提供されている。ワゴンはラゲッジルームが広くて、使い勝手がよい。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:スポーティーなセダン&ワゴンでありながら居住空間は広く、座り心地もよいので、ファミリーで長距離を移動するなどの用途に適している。

新型アテンザの走行性能(動力性能/走行安定性)と乗り心地

新型アテンザでは、クリーンディーゼルエンジン、ガソリンエンジンともに改良を受けて、「CX-5」や「CX-8」に搭載されるエンジンと同様のものになった。

2種類のエンジンのうち、より大きく変更を受けたのはクリーンディーゼルエンジンだ。クリーンディーゼルエンジンにおける実用回転域の駆動力は、改良前に比べてさらに高くなった。4.5Lのノーマルガソリンエンジンにも匹敵するほどだ。1,800rpm付近から駆動力が力強く立ち上がり、アクセル操作に対する反応も機敏だ。

2.2Lクリーンディーゼルエンジンを搭載する新型「アテンザワゴン」の走行イメージ

2.2Lクリーンディーゼルエンジンを搭載する新型「アテンザワゴン」の走行イメージ

Dレンジでフル加速すると、4,800rpmで1速から2速へとシフトアップする。最高出力は4,500rpmで発生するが、高回転の吹け上がりも良好だ。ディーゼルやターボ特有のクセは抑えられていて、NAのガソリンエンジンに近いフィーリングでドライブすることができる。

新型アテンザでは、床面パネルを変更するなど、ボディの騒音は入念な対策が施されている。さらに、エンジンも改良されたことから、ノイズが大幅に抑えられた。新型アテンザの静粛性はCX-5をはるかに上回り、高い評価を得ている「CX-8」に迫るほどだ。

2.5Lガソリンエンジンを搭載する新型「アテンザセダン」

2.5Lガソリンエンジンを搭載する新型「アテンザセダン」

2.5Lのガソリンエンジン搭載モデルにも試乗した。パワフルなクリーンディーゼルエンジンとは異なる魅力をもつガソリンエンジンは、NAらしくなめらかできれいに吹け上がる感覚が好印象だ。この運転感覚はなじみやすい。

乗り心地は、改良前のアテンザも悪くはなかったのだが、少し突っ張る印象があった。だが、改良後の新型アテンザでは、そこが抑えられている。19インチタイヤは、さすがに硬さが若干残るが、重厚感があってこれもまた快適だ。

2.5Lガソリンエンジンを搭載する新型「アテンザセダン」

2.5Lガソリンエンジンを搭載する新型「アテンザセダン」

足回りがやわらかめになったことで、コーナーリング時のボディの傾きはやや大きくなったが、挙動の変化が穏やかなので不安はない。峠道に持ち込めば、いかにもマツダ車らしくよく曲がり、かつ後輪の接地性も高いので安心感がある。

ちなみに、新型CX-5は足回りがやわらかめに設定されたことによって、走行安定性はやや不安定であった。とくにCX-5の「25S・Lパッケージ」グレードは、カーブを曲がっている最中にハンドルを切り込みながらアクセルペダルを戻すような無理な操作を強いられると、後輪の接地性が損なわれやすい。この点はCX-5の開発者も認めていたが、新型アテンザでは、乗り心地が向上しても安定性を欠くようなことはなかった。

この、CX-5との違いこそがアテンザならではのメリットだろう。新型アテンザの低重心かつ高剛性なボディによる走行安定性の高さ、乗り心地のよさは、CX-5のようなSUVでは得られない魅力だ。

新型「アテンザセダン」の走行イメージ

新型「アテンザセダン」の走行イメージ

新型「アテンザワゴン」の走行イメージ

新型「アテンザワゴン」の走行イメージ

新型アテンザのセダンとワゴンを比較試乗してみると、走行安定性、乗り心地ともにセダンがすぐれる。峠道などでは、セダンのほうが操舵に対してクルマが正確に反応するのだ。下りのコーナーで、ブレーキを踏んだ際などの後輪の接地性も、セダンが少し勝る。

セダンは、ワゴンに比べてラゲッジルームの容量や使い勝手が劣る代わりに、リアシートの後部に隔壁があり、ワゴンのようなリアゲートがないからボディ剛性が高い。さらに、ワゴンに比べてボディの後ろ側が軽く、セダンのほうが20kgほど軽い。

新型アテンザの場合、セダンはワゴンに比べて全長が60mm長いが、ホイールベースは80mm拡大された。つまり、セダンはリア側のオーバーハングが少し短く、慣性の影響も受けにくい。これらの違いにより、乗り心地と安定性はセダンのほうがすぐれている。

評価(走行性能):★★★★★(5点)
評価(乗り心地):★★★★☆(4点)
コメント:新型アテンザを購入検討する際には、可能ならばアテンザ以外にCX-5も試乗してみるとよいだろう。そうすれば、アテンザがいかに正確で素直な挙動であるかがわかるからだ。

新型アテンザの安全&快適装備

新型アテンザでは、歩行者や車両を検知して緊急自動ブレーキを作動させる「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」が全車に標準装備されている。このシステムは、最新の「夜間歩行者検知機能」が採用されている点が特徴的だ。

また、0km/h発進から先行車を追従する全車速追従機能が付いたクルーズコントロール「MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)」が、AT車に搭載されている。

さらに、おもしろい快適装備が「Lパッケージ」グレードに標準装備されている、運転席と助手席に備わる「シートベンチレーション」機能だ。これは、背中と座面に吸い出し口が設けられており、熱を吸い出してくれて、その吸い出し量が3段階に調整できるというものだ。

評価:★★★★★(5点)
コメント:近年のマツダ車は、アテンザに限らず高い安全装備を備えている。これは、マツダが「危険な状況に陥ってから対処する」のではなく、「危険そのものを回避する」という思想を掲げているからだ。

新型アテンザの価格の割安感

新型「アテンザセダン」のイメージ

新型「アテンザセダン」のイメージ

新型アテンザのガソリンエンジンには、2Lモデルと2.5Lモデルが存在するが、2Lと2.5Lの装備の違いを補正して計算してみると、500ccの排気量の差が車両価格に反映されていない。実質的に同額なので、2.5Lが割安と言える。

ただし、2.5Lガソリンエンジンを搭載したグレードは、最上級の「25S・Lパッケージ」のみだ。これでは選ぶことができないので、「PROACTIVE」グレードも用意すべきだろう。

新型アテンザでもっとも買い得なグレードはと言うと、クリーンディーゼルエンジンを搭載した「XD PROACTIVE」(336万9,600円/2WD・6速AT)だ。クリーンディーゼルの価格はガソリンに比べて41万400円高いが、2018年度は1万7千円の補助金が交付され、エコカー減税(ディーゼルは免税)でも約12万円の差が生じる。これらを差し引くと、クリーンディーゼルエンジンとガソリンエンジンの最終的な差額は27万円少々に縮まる。

新型「アテンザワゴン」のイメージ

新型「アテンザワゴン」のイメージ

また、新型アテンザはセダンもワゴンも同じ価格だ。一般的なことを言えば、ワゴンはリアゲートを装着してラゲッジルームも広いため、セダンよりも価格が5〜15万円高いのが相場だ。この点を踏まえれば、ワゴンのほうが割安とも言える。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:新型アテンザは、価格が300万円を超えるので決して購入しやすいとは言えない。だが、クリーンディーゼルの「XD PROACTIVE」は、機能の割に価格が抑えられている。エコカー減税や補助金などの面でも有利だ。

新型アテンザの総合評価

新型「アテンザ」のイメージ

新型「アテンザ」のイメージ

新型アテンザは、日本では人気の低いセダンということから大きな販売増となることは難しいだろう。だが、アテンザはマツダが掲げる魂動デザインが最も色濃く反映される造形美を持ち、インテリアには日本の伝統を新たに注入しつつフラッグシップらしいインテリアへと昇華させた。

さらに、エンジンはCX-5やCX-8のものを受け継ぎながら、前述のとおりセダン&ワゴンという運動性能の高いボディを最大限に生かして、同社のSUVと同等以上の走りの高さを手に入れている。アテンザは、今回の改良によって熟成の域に到達したと言えるだろう。

総合評価:★★★★☆(4点)

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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