レビュー
ステアリングまで操作してくれるツーリングアシストはホントに便利!?

「アイサイト・ツーリングアシスト」で疲れは減る!? レヴォーグSTIスポーツで1,000km走って検証

レヴォーグといえば、筆者は過去にビルシュタイン製ダンパーを標準装備しているスバル「レヴォーグ 1.6GT-S」を試乗した経験があるが、その乗り心地の硬さにとまどった覚えがある。

スバル「レヴォーグ」の試乗イメージ

スバル「レヴォーグ」の試乗イメージ

だがその後、スバルのモータースポーツ部門を統括する「STI(スバルテクニカインターナショナル)」によってチューニングされ、走行性能が引き上げられた「レヴォーグ STIスポーツ」をサーキットという限定した場所ではあるものの試乗した際、乗り心地がかなりしなやかに仕上がっていたことに驚くとともに、大いに興味がわいていた。

そこで今回、そのレヴォーグSTIスポーツを裏磐梯方面へ2泊3日、約1,000kmという長距離テストに連れ出してみたのだ。

レヴォーグの最高位グレード「STIスポーツ」とは

まず、レヴォーグとSTIスポーツについておさらいしておきたい。レヴォーグは、“革新スポーツツアラー”をコンセプトとして2014年4月に発売された、スバルのステーションワゴンだ。アイサイトをはじめとする最先端の安全性能と、スバルが培ってきたツーリング性能を高次元で両立している。その魅力は何と言っても、比較的コンパクトなボディサイズだ。全長4,690mm、全幅1,780mmというボディは、都心はもとより郊外の路地などにおいての取りまわしにも有効だろう。

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」のエクステリア

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」のエクステリア

このレヴォーグへ、STIスポーツが追加されたのは2016年5月のことだ。スバルのモータースポーツ統括会社であるスバルテクニカインターナショナル(STI)とのコラボレーションにより、レヴォーグが持つ走行性能と走りの質感、内外装の質感を、これまでよりもさらに高めた最上級グレードだ。

走行性能の進化に加えて、走り始めからすぐにわかるほどの上質な乗り味と、高い操縦安定性を実現している。さらに、走りの質感にあわせて、内外装も専用のものが採用されていて、レヴォーグの魅力が最大限に引き出されている。

つまりSTIスポーツは、これまでのSTIのイメージから受けるような“ハードな走り”ではなく、多くのレースによって酸いも甘いもかみ分けたSTIが、これまでの知見をもとに走りを含めた「高品質感」と「スポーツ性能」を両立させるべく開発したクルマと言っていいだろう。

足回りは、専用のチューニングが施されたビルシュタインフロントストラット(DampMatic II、倒立式)&コイルスプリングと、同じく専用チューニングのビルシュタインリヤダンパー&コイルスプリングを採用し、走りと乗り心地を向上させた。

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」のインパネ

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」のインパネ

レヴォーグSTIスポーツで、乗り味とともに最も注力されたのがインテリアの質感向上だ。STIスポーツ専用のテーマカラーである「ボルドー」でコーディネートされたインテリアは、レッドステッチやピアノブラックのパネルと組み合わせることで、“大人のスポーティーさ”を狙っている。また、細かいところでは、ドアポケットに不織フエルトが貼られている点をあげたい。通常、ドアポケットは打ちっぱなしだが、こうすることによって、たとえばここにボトルを入れたときでも、カタカタと音がしなくなるのだ。このように、細かな配慮がほどこされていることも、レヴォーグSTIスポーツの大きな魅力につながっている。

アイサイトに追加されたツーリングアシスト

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」に搭載されているアイサイトのカメラ

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」に搭載されているアイサイトのカメラ

続いて、アイサイト・ツーリングアシストについて。アイサイトは、スバルが2008年に発表した、ステレオカメラによる前方状況認識と高度な制御を持つ、スバル独自の安全運転支援システムだ。ステレオカメラは常に車両の前方を監視し、人の目と同じように距離を測ることができる。

さらに、クルマや歩行者、区画線などを識別できるほか、広い視野角と視認距離、カラー画像によるブレーキランプの把握など、高い認識性能を誇る。そして、その目から得た情報と走行状況をもとに、頭脳にあたるソフトウェアが必要な制御を判断し、状況に合わせてクルマの各ユニットを手足のように、適切に制御する。また、ステレオカメラのポテンシャルをベースにさまざまなセンサーが組み合わされており、あらゆるシーンで高度な運転支援を実現している。

「アイサイト・ツーリングアシスト」の作動イメージ

「アイサイト・ツーリングアシスト」の作動イメージ

そのアイサイトに、新しく加えられた機能が「ツーリングアシスト」だ。アイサイト・ツーリングアシストでは、車線中央を維持するステアリング制御の作動領域を、従来の60km/h以上から0km/h以上へと拡大した。さらに、「先行車追従操舵」機能が追加され、全車速域追従機能付クルーズコントロールと組み合わせることで、高速道路でのアクセル、ブレーキ、ステアリング操作を自動制御して、ドライバーをアシストしてくれる。アイサイト・ツーリングアシストは、2017年6月に改良が加えられたレヴォーグから採用され、順次他車種への展開が予定されている。

ツーリングアシストは疲労軽減、安全運転支援に有効だが

では、さっそくアイサイト・ツーリングアシストを使って高速道路へと繰り出してみよう。

まず、結論から述べると、アイサイト・ツーリングアシストを起動させているほうが疲労軽減には大きく貢献していると言っていいだろう。アイサイト・ツーリングアシストでは、ステアリングに軽く手を添えているだけで走行レーンをトレースしながら前車を追従、あるいは指定速度近辺でクルージングしてくれて、ドライバーはリラックスして道中を楽しむことができる。

では、ツーリングアシストを起動させよう。起動は、ステアリングホイール右側にあるスイッチにて行われる。

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」ステアリング右側にあるスイッチ類

スバル「レヴォーグ STIスポーツ」ステアリング右側にあるスイッチ類

(1)メーターが描かれているボタン(右下)を押す
(2)バータイプのスイッチ(右上)を下に押して速度を設定
(3)ステアリングマークのボタン(左上)を押す
(4)車間距離調整ボタン(左下)を推して、好みの車間距離を調整する

アイサイト・ツーリングアシストがもっとも有効なシーンは、高速道路における渋滞時だ。アイサイト・ツーリングアシストによって、完全停止から再発進まで前車追従が可能となったメリットは大きい。

アイサイト・ツーリングアシストによる前車追従のイメージ(実際のテスト画像とは異なります)

アイサイト・ツーリングアシストによる前車追従のイメージ(実際のテスト画像とは異なります)

高速道路を走行中に、渋滞に遭遇するシーンに沿って説明しよう。まず、前方のクルマが徐々に減速していくと、レヴォーグもそれに合わせて設定した車間距離を取りながら減速していく。そして、前車の停止とともにレヴォーグも停止するのだが、完全停止の際に若干ブレーキ圧を抜くようで、いわゆる「カックンブレーキ」にならずに非常にスムーズに停車するのは見事である。

その後、前方のクルマが発進した時は、アクセルを踏むか、前述の(2)で説明したバータイプのスイッチを上もしくは下に押すだけで発進できるのだが、これがとても便利だ。さらに、前方車の発進に気付かない場合にも、警告音が鳴って知らせてくれるのはとても親切だ。ただし、発進してからの追従加速はやや急で、ぎくしゃくした印象をともなうことがあった。

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

ツーリングアシストは基本的に車線の中央を走るとうたわれているが、(個体差なのか)テスト車はキープレフトでの走行だった。そこで、ドライバーがステアリング操作で修正しようとすると、およそ10km/h以下の場合、ステアリング制御が入ってかなり強引にステアリングを戻されることもあった。

次に、高速道路で試してみた。速度を100km/hに設定し、流れに乗って走っていると車線を忠実に読み、東北道などで見られるコーナー程度ではロストすることなくトレースしてくれる。

ここで気になったのは、前述したキープレフトでの走行だ。左側に大型トラックなどがいて、コーナーなどに侵入するとかなりの緊張を強いられるのだ。もちろんドライバーはステアリングで修正するのだが、もう少しレーンの中央での走行ができるとより安心できるだろう。

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

また、坂道に差しかかると、設定速度からずるずると5km/hほど低下し、そこからようやく加速体制に入るので、とくに後続車がいる場合にはかなり気になってしまう。そのため、システム介入前にアクセルを踏み込むことが多くあった。これは、場合によっては渋滞を発生させることにもなりかねないので、今後の改良ではよりきめ細やかな制御を望みたい。

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

アイサイト・ツーリングアシストによる走行イメージ

レーンのトレースに関しては、速度とコーナーの関係性からか微修正を加えながら曲がるため、少しぎくしゃくした印象で、コーナー途中からかなり強めにステアリングが切られることがあった。ただし、これはあくまでもクルマ任せであえて観察していたからこそ分かったものであり、通常であれば、ドライバーが少し遅いかなとステアリングを切り始めるはずなので、大きく気にすることはないだろう。あくまでも、アイサイト・ツーリングアシストは自動運転ではなく、安全運転支援システムなのだから。

このように、アイサイト・ツーリングアシストを使うことで、ドライバーがアクセル操作やステアリング操作からある程度解放されるのは疲労軽減に大幅につながる。そして、前述のようにもう少しきめ細かい制御が施されることによって、さらに快適性が向上されるだろう。

そうそう、ひとつ付け加えたいのは、これは他のアイサイト、たとえば以前、飛騨高山へのロングドライブでテストした「アウトバック」でもそうだったのだが、走行時に前方のクルマがいなくなった時などに“ピッ”と音がするのは何とかならないものだろうか。何らかの警告ではなく、お知らせ程度のものであれば、メーター内のモニターなどで表示すればいいだけのこと。車内にいる全員にわからせる必要はないだろう。

輝くワインディングロード、だが乗り心地は

アイサイト・ツーリングアシストについてじっくりと書き上げたので、ここからはレヴォーグSTIスポーツについての印象を述べてみたい。

裏磐梯の桧原湖付近のワインディングロードを走行するスバル「レヴォーグSTIスポーツ」

裏磐梯の桧原湖付近のワインディングロードを走行するスバル「レヴォーグSTIスポーツ」

もっともこのクルマが輝いたシーンは、裏磐梯の桧原湖周辺のワインディングロードだ。ほとんど信号もなく、美しい景色を楽しみながらの走行はレヴォーグのもっともよい面を見せてくれた。

まずは、ボディサイズだ。片側1車線、時にはセンターラインがなくなるような道でも、このサイズはとても扱いやすく、一度として不安を覚えることはなかったほどだ。

裏磐梯の桧原湖付近のワインディングロードを走行するスバル「レヴォーグSTIスポーツ」

裏磐梯の桧原湖付近のワインディングロードを走行するスバル「レヴォーグSTIスポーツ」

パワーも、1.6リッターエンジンとしては十分と言えるほどの加速力を発揮する。さすがに急な登り坂に差しかかると、CVTの遅れが感じられ、さらにアクセルを踏み込むなど、もどかしい思いをすることはあったが、アクセルレスポンスに対するエンジンのツキのよさは優秀で、ほぼオンザレール感覚でコーナーリングすることができる。試乗の最後のほうには、軽いアンダーステアを楽しみながらコーナーリングを満喫することができた。

そこに貢献しているのが、よくできた電動パワーステアリングだ。適度な重さと握りの太さ、そして路面からのフィードバックを適切にドライバーに伝えてくるので、自信をもってコーナーに侵入できる、まさにスポーツワゴンと言えるものであった。

いっぽう、気になったのはやはり乗り心地だ。サーキットとは違って、一般道ではやはり硬さを感じるのだ。その硬さは、1.6GT-Sよりはしなやかさが感じられるものだが、路面からの突き上げや振動はかなり乗員に伝わり、結構体をゆすられるので、それが疲労につながってしまうのは残念だった。

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」のフロントシート

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」のフロントシート

シートの出来もあまりいいとは言えず、サイドサポートはよいのだが、座面と背面とのバランスや圧力の分布がいまいちで、3時間座り続けることはかなり難しく、最終的には腰が痛くなってしまった。

また、細かいことなのだが、AVH(停車時にブレーキペダルから足を離しても自動でブレーキがかかり続ける装置、アイドルストップも有効)はエンジンをオフにすると、デフォルトとして解除されてしまうのは非常に不便だ。たとえば、ガソリンを給油した後などでの再スタート後、信号などで停車した時に、解除されていることに気付かず、ブレーキペダルから足を離してしまい、ドキッとすることがたびたびあった。

たしかに、メーターパネル内に作動中はその表示がされるのだが、頻繁に確認することはまずないので、スイッチをオンにしたら、そのままの状態をキープしてもらいたい。BMWも一時この仕様だったが、近年ではスイッチをオンにしたらその状態をキープするようになっている。

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」のメーター。右側のスピードメーター内の左下に燃料計が配置されている

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」のメーター。右側のスピードメーター内の左下に燃料計が配置されている

また、メーター内の燃料計が見にくいこともあげておく。メーター内には左にタコメーター、右にスピードメーターが配されているのだが、その中にそれぞれ水温計と燃料計がある。そのどちらもが、左に位置しているのだ。通常であればそれぞれが左端と右端、あるいは右端と左端とシンメトリーに置かれるのだが、どちらも左にあるというのは違和感を覚え、また、燃料残を確認する際に一瞬位置を探して、前方から視線をそらせることもあるので、このあたりは危険回避も含めて一般的な配置を望んでおきたい。確かに慣れの問題もあろうが、常に慣れたドライバーのみが運転するとは限らないのだ。

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」の試乗イメージ

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」の試乗イメージ

最後に、燃費について触れておこう。今回1,000kmほど走った結果、高速道路をおとなしく流して「15km/L」ほど、少しペースを上げて第2東名の実験区間、110km/hほどになると急激に悪化し「12km/L」、郊外の空いたバイパスなどでは「14km/L」ほどまで伸びることがあった。また、渋滞時には「6km/L」あたりまで落ち込んでしまうので、エンジン回転数と走行状況が、かなり燃費に影響をもたらすクルマと言える。

今回、レヴォーグSTIスポーツを1,000kmテストしてみた結果、スポーツワゴンとしての性格は優秀だが、グランドツアラーとしては少々物足りないというのが結論だ。

とくに、足回りとシートに関してはより改良が必要で、単に足回りが硬いからスポーティーという考えではなく、もっと上手にサスペンションをストロークさせ、ブッシュ類も改良し、ステアリングやストラット周りの取り付け剛性を高めることで、スポーティーな走りはそのままに乗り心地の改善はかなりできるはずだ。さらに、疲労もかなり減ると想像する。

また、シートに関してもアウトバックで感じたような、長時間座っても疲れ知らずな感覚が、レヴォーグでは感じられなかったのは少々残念だった。

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」の試乗イメージ

スバル「レヴォーグSTIスポーツ」の試乗イメージ

疲労軽減による事故抑制を目指して、ツーリングアシストが採用されるのは喜ばしいことだ。しかし、クルマそのものが要因で疲労につながってしまっては意味がない。今回、気になった乗り心地とシートに関しては、どちらも今のスバルの技術をもってすれば十分に対応し、改良することが可能なはずだ。数少ない5ナンバーサイズのステーションワゴンという、大きな魅力を備えたクルマなのだから、これからの改良によって、ぜひグランドツアラーに成長してもらいたい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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