レビュー
歴代ジムニーオーナーも納得の完成度

新型ジムニー&ジムニーシエラ“速”試乗/悪路走破性はもはや最強!

スズキ 新型「ジムニー」の開発者へ、ユーザーからの評判を尋ねてみたら「今回の(新型)ジムニーは珍しい。歴代のジムニーを所有しているお客様から、ほとんど叱られずに済んでいる」と言う。これは、どういう意味なのだろうか。

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキの開発者いわく、「ジムニーは趣味性の強いクルマだから、それぞれのお客様に思い入れがある。1998年に発売された先代ジムニーでは、外観が丸くなって軟弱になったといった意見も聞かれた。だが、新型ジムニーにはそれがない」という。

新旧ジムニーでは、なぜユーザーの評価が異なるのか。「先代ジムニーは、外観から内装まで質感を高めて、全体的に乗用車感覚を強めた。しかし、新型では悪路を走るためのSUVというジムニー本来の特徴を際立たせ、プロユースに徹したクルマ造りをすることで、機能を向上させている。そこが、評価されたと思っている」と話す。

1998年発売の先代「ジムニー」

1998年発売の先代「ジムニー」

ジムニーの本質は、あくまでも生粋のオフロードSUVであることだ。だが、先代ジムニーでは、シティ派SUVが増える市場動向に沿って乗用車感覚を強めた丸いデザインを採用したことから、批判を浴びたらしい。とくに、2000年に発売された2WD(後輪駆動)の「ジムニー L」、2001年の発売で同じく2WDの「ジムニー J2」は、FRのかわいい軽自動車という新たな路線に挑んだものの、ユーザーからは猛烈にたたかれた。

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

このような経験を積んでいるからこそ、スズキは急速に増えているシティ派SUVの対極に位置するのがジムニーであることを、新型モデルで明確に打ち出したのだ。とくに外観は、角張った直線基調で仕上げられ、シンプルに徹している。昔ながらのオフロードSUVらしい機能美あるデザインで、フロントマスクなどは初代ジムニーの面影も見られる。

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

このボディ形状は、1982年に発売されて高い人気を得た三菱の初代「パジェロ(3ドア)」にも似ている。視覚的にバランスが取れており、一種の心地よさを感じさせてくれる。新型ジムニーのデザインには普遍性が備わっているから、歴代モデル以上に時がたっても古さを感じさせないはずだ。

スズキ 新型「ジムニー」「ジムニーシエラ」試乗会場にて撮影

スズキ 新型「ジムニー」「ジムニーシエラ」試乗会場にて撮影

ジムニーのモデルラインアップは、658cc直列3気筒のターボエンジンを搭載した軽自動車の「ジムニー」と、1.5L直列4気筒を積む小型車版の「ジムニーシエラ」の2種類となる。

スズキ 新型「ジムニーシエラ」

スズキ 新型「ジムニーシエラ」

ジムニーシエラは、オーバーフェンダーの装着などによってボディが拡大しているが、車内の広さはジムニーと同じだ。駆動方式は、全車がパートタイム式4WDを装着している。カーブを曲がるときに、前後輪の回転数を調節するセンターデフなどを持たないため、舗装路は後輪駆動の2WDで走行する。

今回、新型ジムニー、ジムニーシエラへ試乗して詳細をレポートするとともに、以下の項目を5段階で採点して評価したい。

・運転のしやすさ(取りまわし性/視界)
・内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)
・居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)
・舗装路の走行性能(動力性能と走行安定性)
・悪路の走破性能
・乗り心地
・安全&快適装備
・価格
・総合評価
※上記項目について、それぞれ1〜5点の5段階で採点、評価

新型ジムニーの運転のしやすさ(取りまわし性/視界)

スズキ 新型「ジムニー」のフロントエクステリア

スズキ 新型「ジムニー」のフロントエクステリア

スズキ 新型「ジムニー」のリアエクステリア

スズキ 新型「ジムニー」のリアエクステリア

新型ジムニーのデザインが持つ普遍性は、運転席に座ることで実感できる。運転席からは、ほぼ真四角のボンネットがよく見えて、車幅やボディサイズがとてもわかりやすい。前後左右のウィンドウの下端は低く抑えられているので視界がよく、背の低い障害物なども視認しやすい。サイドウィンドウを開けて後方を目視すると、後輪が少し見える。これはウィドウが低い証拠であり、悪路を走る際にも都合がいい。最小回転半径は、ジムニーが4.8m、ジムニーシエラが4.9mと、小回り性能も抜群にすぐれている。

評価:★★★★★(5点)
コメント:新型ジムニーでは、外観をクラシカルなオフロードSUVの手法でデザインしたことによって、視界がとてもいい。ボディは小さく、市街地から林道、悪路までどのような道であっても運転しやすい。

新型ジムニーの内装(質感/スイッチの操作性とメーターの視認性)

スズキ 新型「ジムニー」のインパネは、シンプルながらスズキの最新のデザインが採用されている

スズキ 新型「ジムニー」のインパネは、シンプルながらスズキの最新のデザインが採用されている

インパネは少し武骨な印象で、ジムニーの性格に合っていて質感も満足できるものとなっている。インパネ形状は水平基調で、エアコンのスイッチなどは高い位置に装着されているので操作性はよく、メーターも見やすい。

スズキ 新型「ジムニー」のインパネには、乗用車のインパネによく使われるシボが採用されていない

スズキ 新型「ジムニー」のインパネには、乗用車のインパネによく使われるシボが採用されていない

一般的な乗用車のインパネは、革シボ(革風の模様)をあしらうことで質感を高く見せている。だが、ジムニーはこの手法を用いていない。その代わりに、表面に細かな凹凸が施されていて、光の反射を抑えてくれるのと同時に、キズなどが付いても目立たないようになっている。

開発者は「本物指向のクルマだから(革風に見せる模造品の)革シボは採用しなかった」という。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:質感が格段に高いということではないが、機能性にすぐれている。割り切りのよさが感じられるあたりは、ジムニーにぴったりの内装だ。

新型ジムニーの居住性&荷室(前後席の居住性/荷室の広さと使い勝手)

スズキ 新型「ジムニー」のフロントシート

スズキ 新型「ジムニー」のフロントシート

フロントシートは、頭上に十分な空間があって快適に座れる。特に、フロントシートのつくりや座り心地は、新型になって大幅に向上した。サイズに余裕があり、背もたれは肩の周辺までしっかりとサポートしてくれる。座面の奥行寸法も長いので、膝の裏側まで確実に支えてくれる。

そして、背もたれの下側までしっかりと造り込まれていて、背中から座面にかけて、体の支え方も絶妙だ。これなら長距離の移動でも疲れにくく、上級クラスの車などと比べても見劣りしないシートへと仕上げられている。着座位置の高さを調節しても、座面の前側が常に少し持ち上がり、着座姿勢を安定させられることもメリットだ。

スズキ 新型「ジムニー」のリアシート

スズキ 新型「ジムニー」のリアシート

対するリアシートは、あくまで補助席と考えたい。座ると膝が大きく持ち上がって、窮屈な姿勢になってしまう。座面は適度に柔軟ではあるものの、シートサイズそのものは小さい。リアシートに座った乗員の足がフロントシートの下に収まりやすいので、短時間であれば大人4名の乗車も可能だが、ファミリーカーとしては適さないだろう。

スズキ 新型「ジムニー」のラゲッジルーム(リアシートを立てた状態)

スズキ 新型「ジムニー」のラゲッジルーム(リアシートを立てた状態)

スズキ 新型「ジムニー」のラゲッジルーム(リアシートをたたんだ状態)

スズキ 新型「ジムニー」のラゲッジルーム(リアシートをたたんだ状態)

ラゲッジルームも狭い。リアシートに乗員が座った状態では、荷物を積む空間はほとんど残されず、リアシートをたたんでもさほど広くはならない。

リアゲートの部分で測った路面とラゲッジルーム床面の間隔は760mmと大きく、重い荷物を高い位置まで持ち上げる必要がある。ラゲッジルーム床面の地上高が510mmの「スペーシア」に比べると、使い勝手はかなり異なる。

評価:★★☆☆☆(2点)
コメント:ジムニー、ジムニーシエラはコンパクトな3ドアボディだから、いわばクーペのようなSUVだ。リアシートやラゲッジルームが狭くても、大きな欠点にはならない。

新型ジムニーの舗装路の走行性能(動力性能と走行安定性)

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

軽自動車であるジムニーは、重いボディに対応するために搭載するエンジンはターボのみだ。2,000rpm以下では駆動力が下がるが、それ以上であればターボの過給効果によって運転しやすい。車重と動力性能のバランスは取れている。ノイズは少し大きめだが、エンジン音の音質には不満はない。

スズキ 新型「ジムニーシエラ」の舗装路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニーシエラ」の舗装路における走行イメージ

対するジムニーシエラが搭載する1.5Lエンジンは、最高出力がジムニーの1.6倍、最大トルクが1.4倍にもなるので、ジムニーに比べて加速力は活発だ。実用回転域の駆動力に余裕を持たせており、4,000rpmから5,500rpm付近は吹け上がりもなかなかに鋭い。これならば悪路のみならず、市街地や高速道路までさまざまなシチュエーションで扱いやすい。

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

ジムニーは、悪路の走破力と耐久性を重視したSUVだから、ステアリングはSUVを含めて幅広く普及したラック&ピニオン式ではなく、ボール&ナット式が採用されている。そのために、操舵感は鈍いものの、先代ジムニーに比べて正確性は高められている。舗装路の峠道などを走ったときの曲がりにくさは、大幅に払拭された。腰高なオフロードSUVの中では、走行安定性も満足できるものだ。

スズキ 新型「ジムニーシエラ」の舗装路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニーシエラ」の舗装路における走行イメージ

ジムニーシエラは、ジムニーに比べて軽快感こそ削がれるが、4輪のグリップ性能が高まって直進安定性は向上している。ジムニーシエラの乗り味は、ジムニーよりも重厚だ。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:新型ジムニーの動力性能は、パワフルさはないが不満は感じない。操舵感は鈍いが、先代に比べれば自然なフィーリングへと改善されている。新型ジムニーシエラは1.5Lエンジンを搭載していることもあって、ジムニーに比べて加速は力強い。高速道路などの高いスピード領域でも、安定して快適に走行することができるだろう。

新型ジムニーの悪路の走破性能

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

新型ジムニーでは、新たに「ブレーキLSDトラクションコントロール」と呼ばれる、悪路走破性を高める機能が採用された。これは、悪路で空転が生じて車輪の駆動力が失われた際に、空転した側の車輪にブレーキをかけることで、もう片方の車輪に駆動力を確保するというものだ。これにより、悪路での脱出性能が大幅に高められている。

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

さらに、滑りやすい下り坂では、アクセルとブレーキをクルマにまかせてしまい、安定して下れる「ヒルディセントコントロール」や、登り坂での発進の際に約2秒間ブレーキをかけてくれる「ヒルホールドコントロール」が装備された。これらの機能は、とくにジムニーのようなクルマを購入するユーザーにおいては、使い勝手が高く、安全にもつながる機能として高く評価できる。

また、フレームやサスペンションも刷新されるなど、悪路における走破力の高さは、日本で購入できるSUVとしてはナンバーワンといって間違いない。

評価:★★★★★(5点)
コメント:フレームやサスペンションの改良のみならず、悪路における使い勝手の高い機能が多く搭載されたことで、走破性は先代よりもさらに高められた。もはや、本格派SUVとして不動の地位を築いていると言っても過言ではないだろう。

新型ジムニーの乗り心地

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の舗装路における走行イメージ

乗り心地は、市街地を時速40〜50kmで走ると硬めに感じるが、オフロードSUVとあって足回りの伸縮性は良好だ。クルマの動きが鈍い代わりに、ゆったりとリラックスできる運転感覚を味わえる。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:ボディはコンパクトだが、その乗り心地はSUVらしく快適に仕上げられている。

新型ジムニーの安全&快適装備

スズキの安全装備「デュアルセンサーブレーキサポート」が、新型ジムニーの幅広いグレードに採用されている。単眼カメラと赤外線レーザーを併用して、衝突の危険が生じると警報を発したり、緊急自動ブレーキを作動させる。さらに、歩行者の検知も可能だ。また、サイド&カーテンエアバッグが全車に標準装着されているなど、安全性能は高い。

評価:★★★★☆(4点)
コメント:新型ジムニーでは、スズキの最新の安全機能やエアバッグの全車採用など、安全性能は大きく高められている。

新型ジムニーの価格の割安感

スズキ 新型「ジムニー」のエクステリアイメージ

スズキ 新型「ジムニー」のエクステリアイメージ

新型ジムニーとジムニーシエラのグレードラインアップや価格は、以下のとおりだ。

【新型ジムニー&ジムニーシエラのグレードと価格】


- 新型ジムニー -

XG:1,458,000円(5MT)/1,555,200円(4AT)
XL:1,582,200円(5MT)/1,679,400円(4AT)
XC:1,744,200円(5MT)/1,841,400円(4AT)


- 新型ジムニーシエラ -

JL:1,760,400円(5MT)/1,857,600円(4AT)
JC:1,922,400円(5MT)/2,019,600円(4AT)

新型ジムニーは、専用開発されたラダーフレームを備えたシャシー、耐久性にすぐれたサスペンション、悪路で駆動力を高めてくれる副変速機を備えた4WDなどを搭載している。それらの機能を使いこなすユーザーにとっては、買い得と言えるだろう。

おすすめのグレードは、機能や装備の割に価格を抑えた「ジムニー XC」(184万1,400円/4速AT)、「ジムニーシエラ JC」(201万9,600円/4速AT)だ。

ジムニーシエラの価格は、ジムニーに比べて17万8,200円高い。この価格差で、エンジンは1気筒/802ccの増量だ。さらに、オーバーフェンダーなどの外装パーツも加わる。損得勘定を競えば、ジムニーが少し割安で税金も安いが、高速道路を使う機会が多いユーザーや、一般道を長距離走行するユーザーなどは、動力性能に余裕があって走行安定性も高いジムニーシエラを積極的に検討してほしい。

評価:★★★☆☆(3点)
コメント:低価格とは言えないが、機能や装備内容を考えれば十分に納得できる価格だ

新型ジムニーの総合評価

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

スズキ 新型「ジムニー」の悪路における走行イメージ

ジムニー&ジムニーシエラは、ひとたび悪路を走らせれば、国内SUVでは最強と言っていい。さらに、新型では舗装路における走行安定性、操舵感、乗り心地が快適になって、カラフルなボディカラーが採用されるなどで、より幅広いユーザーが購入しやすくなった。だが、ジムニーの基本は生粋のオフロードSUVであることを忘れないでほしい。あくまで、悪路を走る機会のあるユーザーに推奨したい。

なお、2018年7月下旬の時点で、納期はメーカー側でも正確に把握できていないという。スズキの販売店に聞くと、「お客様には、半年以上と案内している。ジムニーシエラはそれ以上に伸びる可能性もある」という。購入するなら、納期には十分に注意したい。

総合評価:★★★★☆(4点)

[Photo:島村栄二]

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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