バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
憧れの「Ninja H2」の衝撃が味わえる!?

スーパーチャージドエンジンの加速感が衝撃的! カワサキ「Ninja H2 SX SE」が過激で楽しい!!


200馬力を発揮するエンジンを搭載したカワサキのモンスターバイク「Ninja H2 SX/Ninja H2 SX SE」は、ツーリング向けにもかかわらず、レース向けマシンに勝るとも劣らない過激な加速性能を誇る。そんなマシンで公道を走っても、楽しめるのだろうか。実際にツーリングや街乗りに使用して検証してみた。

より扱いやすく調律されたスーパーチャージドエンジンで、あの衝撃が蘇る!

カワサキ「Ninja H2 SX」は、その名だけでハンパじゃないマシンであることがわかる。まず、ベースとなった「Ninja H2」がとんでもないマシンなのだ。2015年に主に欧州や米国で発売されたNinja H2は、ただでさえハイパワーな1,000ccのエンジンに、エンジンの動力で過給を行う「スーパーチャジャー」を組み合せた「スーパーチャージドエンジン」を備えることで、公道仕様のNinja H2でも200PSの馬力を実現。310PSを有するレース専用モデル「Ninja H2R」もラインアップされていたが、そもそもスーパーチャージドエンジンを搭載したマシンで出場できるレースはなく、「どこで乗るバイクなのだろうか」と話題となっていた。このNinja H2が日本で発売されることはなかったのだが(レース専用車のH2Rのみ販売)、日本国内の公道では使い切れるシーンはほぼないであろうハイパワーに「乗ってみたい」と憧れのような気持ちを抱くライダーも少なくなかったはずだ。

一般的な乗り方では、まず使い切れないほどのパワーを備えた「Ninja H2」(2015年発売)

一般的な乗り方では、まず使い切れないほどのパワーを備えた「Ninja H2」(2015年発売)

そんなユーザーの思いを受けてか、「Ninja H2」同様にスーパーチャージャーを採用したマシンが日本国内で2018年に発売された。それが、「Ninja H2 SX」と装備が充実された上級グレード「Ninja H2 SX SE」だ。1,000ccのパワーユニットとスーパーチャージャーを備えている点はNinja H2と共通だが、「スーパーチャージドエンジン」は日常での使い勝手も向上させた「バランス型スーパーチャージドエンジン」に改良。このエンジンにより、低中回転域ではNinja H2を凌ぐパワーを発揮するとともに、すぐれた燃費性能も実現した。

「Ninja H2 SX SE」のサイズは2,135(全長)×775(全幅)×1,260(全高)mmで、車重は260kg。リアにあるパニアケースはオプションとなる

ちなみに、日本国内でスーパーチャージャーを搭載しつつも公道が走れるバイクは、現在、Ninja H2 SXとNinja H2 SX SEのみ。エンジンの回転を利用してコンプレッサーを作動させ、燃焼室により多くの空気を送り込む機構であるスーパーチャージャーは、通常の自然吸気エンジンに比べ、大きくパワーアップでき、かつ、排気ガスの流速に関係なく効果を得ることができるため、低速段階からハイパワーを発揮できる。シビアにパワーをコントロールする必要があるバイクでは、アクセル操作に対してリニアにパワーが立ち上がるスーパーチャージャーは、非常に相性のいい機構なのだ。

「バランス型スーパーチャージドエンジン」はスーパーチャージャーだけでなく、エンジンの燃焼室の形状や圧縮比といった部分も見直すことで、扱いやすさや燃費などを兼ね備えたバランスのよいエンジンとなったという

スーパーチャージャーに空気を導く吸気口は、車体左側に設けられている

スーパーチャージャーに空気を導く吸気口は、車体左側に設けられている

スーパーチャージャーによるブーストのかかり具合は、メーターの左下で確認可能。なお、メーターパネルの横に液晶ディスプレイが装備されているのはNinja H2 SX SEのみとなる

また、パフォーマンスを重視したスーパースポーツモデルだったNinja H2とは異なり、ツーリングも視野に入れたスポーツツアラーという位置付けとなったNinja H2 SXは2人乗りやパニアケースの装着に対応するため、リア周りは新設計され、ライディングポジションもやや上体が起きたツーリング向けに変更されている。サスペンションやブレーキといった足回りもセッティングが変えられるなど、Ninja H2 SXは単なるエンジンをデチューンしただけのマシンではなく、細部にいたるまで手が加えられたカワサキ渾身のマシンなのだ。

倒立式のフロントフォークにラジアルマウントのブレーキという、ハイパワーなエンジンに見合った制動力を確保。マスターシリンダーもラジアル式でコントロール性も高い

リアは、片持ち式のスイングアームに190/55 ZR17Mサイズのタイヤを履く。容量が大きそうに見えるマフラーは、Ninja H2に比べて軽量化されているという

最後に、Ninja H2 SXとNinja H2 SX SEの違いに触れておこう。Ninja H2 SX SEには、液晶ディスプレイのほか、クラッチを切らずにシフト操作ができるクイックシフター、コーナーを曲がる際に進んで行く方向を照らしてくれるコーナーリングライトなど、Ninja H2 SXにはない装備が標準で備えられている。3種類のエンジン出力モードや調整可能なトラクションコントロールなど電子制御も充実しているマシンだけに、それらの情報がより多く表示される液晶ディスプレイはかなり便利。クイックシフターやコーナーリングライトも、より快適で安全にツーリングを楽しむのなら、あったほうがいい装備といえる。このほかにも、大型のフロントスクリーンやプレミアムシート、DC12Vの電源が取れるソケットも搭載。メーカー希望小売価格はNinja H2 SXが199万8000円でNinja H2 SX SEは237万6000円だが、装備の充実度を考慮すれば、妥当な価格差だろう。

大型の液晶ディスプレイの横には、シガーソケットタイプの電源を配置

大型の液晶ディスプレイの横には、シガーソケットタイプの電源を配置

ヘッドライトとは別に、左右のカウルに車体の動きを感知して点灯するコーナーリングライトが装備されているのもNinja H2 SX SEならでは

シフトレバーを操作すると圧力を感知して点火を調整し、ノークラッチでシフトチェンジができるクイックシフターも搭載されている

シートとタンデムシートにプレミアムシートが標準装備されているのも、Ninja H2 SX SEのみ。Ninja H2 SXはオプション設定となっている

恐ろしいほどの加速。だが、それが楽しい

今回は、上級グレードのNinja H2 SX SEに試乗するのだが、実は、いつになく緊張していた。というのも、ベースとなったNinja H2について、「時速300kmは余裕で400kmも出そう」とか「振り落とされそうな加速」といったモンスターマシンらしいうわさをいくつも耳にしていたからだ。いくらツーリング向けに改良されているといっても、もともとの素性がそれである。筆者の腕では扱い切れないのは仕方ないにしろ、まともに走らせることすらできないのではないかという不安がぬぐいきれないでいた。そんな気持ちのまま、またがってみると、Ninja H2に比べてやや高めに配置されたハンドルのおかげもあって、ライディングポジションはそれほど前傾を強いられることもなく、足つきも良好。走行する前段階であるが、思ったよりも扱いやすそうな印象に少し緊張がやわらいだ。

シートは高めだが、両サイドが大きくえぐられたような形状となっているため、足つきもまずまず(筆者の身長は175cm)。ライディングポジションはスーパースポーツモデルほど前傾していないものの、ツーリングモデルと考えるとちょっときつめだ

エンジンをかけると、かなり迫力のある排気音が響く。続けて、軽くアクセルを開けて空ぶかししてみると、排気音の中に耳慣れない「キュルキュル」というか「ギュワー」という感じの音が混じって聞こえてきた。これが、スーパーチャージャーが作動している音のようだ。この聞き慣れない音に試乗前の不安が呼び起こされ、恐る恐るクラッチをつないで、まずは低回転で走り出す。すると、これが意外なほど乗りやすい。低い回転数でのトルクは十分なものの、アクセル操作に対して敏感すぎてギクシャクしてしまうようなこともなく、渋滞している街中でも扱いづらさを感じることはなかった。そして、少々慣れた頃、道が空いたタイミングで少しだけアクセルを大きめに開けると、これまでに味わったことがないような加速感が! 同程度の最高出力を持つスーパースポーツモデルにも乗ったことはあるが、そういった自然吸気のエンジンは回転数の上昇にともなってパワーが盛り上がっていく感覚なのに対し、Ninja H2 SX SEは回転数など関係なく瞬時に車体がスピードを増すため、その反応に体というか脳が付いて行けていない感覚を体感した。

きちんと車体をホールドしていないと体が置いていかれそうなほどの今まで味わったことのないダッシュ力は、衝撃的!

少しアクセルを大きめに開けただけで、これほどの加速力を見せつけるNinja H2 SX SEの能力は、とてもじゃないが一般道では堪能できない。高速道路に乗ってみよう。遠慮なく、さらにアクセルを開けスピードを出してみるが、スピードに乗っても車体は何ごともなかったかのようにピシッと安定している。最高速度が300km/hを超えようかというマシンだけあって、高速道路の法定速度など平和そのものだ。だが、アクセルを開けた際の獰猛さは相変わらず。どんな速度域からでも追い越し車線に出てアクセルを一開けすれば、ワープしたかのような加速が味わえる。これは、今までに試乗したどのスーパースポーツマシンをも凌駕するもの。この加速を味わうだけでも、Ninja H2 SX/Ninja H2 SX SEを所有する価値はあるだろう。

エンジンの回転数に関係なく、どこからでもパワーが出てくるので、交通の流れを圧倒的にリードするのも余裕だ

そして、コーナリングでも最高の味わいは続く。過去のカワサキのマシンの中には“直線番長”などと呼ばれ、ハイパワーでストレートは速いけれどもコーナリングは得意でないモデルもあったが、Ninja H2 SX SEはそんな心配もいらない。むしろ、今回の試乗で一番楽しかったのはコーナーの連続するワインディングだった。近年のスーパースポーツに比肩するほど高さのあるシートの左か右に軽く体重をかけるだけで、重量級の車体がいとも簡単にバンクして軽快なハンドリングを味わえる。もちろん、立ち上がりでアクセルを全開にすることはできないが、どんな回転域からでも路面を蹴り出すようにダッシュしてくれるスーパーチャージドエンジンは、軽くアクセルを開けるだけで車体を加速させてくれるため、それだけで十分に楽しい。もっと大きくアクセルを開けたいと思うなら、出力モードを「F(フルパワー)」ではなく、「M(ミドル)」や「L(ロー)」にしておけば、大きめにアクセルをひねっても怖い思いをすることはないだろう。万が一、パワーをかけすぎてタイヤが滑り出すようなことがあっても電子制御のトラクションコントロールが働いて、グリップを回復させてくれるはずだ。

パニアケースまで装備した車体はかなり大柄に見えるが、車体を傾ける操作はかなり軽快

パニアケースまで装備した車体はかなり大柄に見えるが、車体を傾ける操作はかなり軽快

あまりに楽しいので、気付けば、高速道路を使って郊外に出て峠道を走って帰ってくるショートツーリングを堪能してしまっていた。高速道路を長時間走っていると、シートのえぐられた部分に当たっている足が少し痛くなってしまったが、時折、追い越し車線に出て加速を楽しみながらの移動は快適そのもの。ライディングポジションの前傾度も適度で、疲れることもなかった。そのため、帰路につく頃にはすでにあたりは真っ暗。ここで、コーナーリングライトの秀逸さに感動することとなる。街灯もないような峠道でも、コーナーで少し車体を傾けるとそちら側のライトが点灯して曲がって行く方向を照らしてくれるのだ。実によくできたマシンだと、乗れば乗るほど感心する。

試乗を終えて

幹線道路を少し走り始めた時くらいは、スーパーチャージドエンジンによるここまでの加速感は必要なのか?と思っていたが、長距離を走ってみると、Ninja H2 SX/Ninja H2 SX SEの魅力はパワーだけでなく、基本性能の高さにあると感じた。その気になれば、どんなバイクや自動車も置き去りにできそうな加速力を持ちながら、ゆっくりしたペースでワインディングを流すのも楽しい。街乗りでは、さすがにこのマシンの面白さを引き出すことは難しいだろうが、それでも乗りづらさを感じたり、余計な気を遣って疲れてしまったりすることもない。高速道路でのワープ感覚も、コーナリングの味わいも、とにかくNinja H2 SX/Ninja H2 SX SEでないと堪能できない乗り心地で、すべてが最高レベルに楽しいのだ。これだけの懐の深さを持つマシンに出会えたことに、感謝するほどすばらしい仕上がりであった。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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