レビュー
日産 ノートe-POWERにNISMO最上位モデルが登場!

日産「ノートe-POWER NISMO S」|3L V6並みのトルクとジェット機のようにスムーズな加速感

日産「ノートe-POWER」にNISMOがラインアップされたのは、昨年2016年12月だった。それ以降、ノートe-POWER NISMOは順調に販売台数を増やし、現在ではノートe-POWER全体の販売の約13%を占めるまでになった。そして2018年9月25日、ノートe-POWER NISMOへ、スポーティーを指す“S”モデルが新たに追加された。

日産「ノートe-POWER NISMO S」のフロントイメージ

日産「ノートe-POWER NISMO S」のフロントイメージ

日産「ノートe-POWER NISMO S」のリアイメージ

日産「ノートe-POWER NISMO S」のリアイメージ

「ノートe-POWER NISMO S」は、NISMO専用に施されたボディ補強やサスペンションはそのままに、パワーを約25%向上させているという。そこで、日産が保有する追浜のテストコースにて発売直前に試乗する機会を得たのでレポートしよう。

■日産 ノート e-POWER シリーズのグレードラインアップと価格

e-POWER NISMO S:2,671,920円
e-POWER NISMO:2,488,320円

ノートe-POWER NISMOとNISMO Sの違い

ノートには、ガソリンエンジンを搭載したモデルと、エンジンで発電してモーターで駆動する、シリーズハイブリッドを搭載したe-POWERモデルの2種類がある。ノートの販売割合は、実に7割近くがe-POWERで占められていることから、ノートe-POWER NISMOの存在価値も大きい。いっぽう、NISMOブランドとしても、NISMO全体における販売台数の68%がこのノートe-POWER NISMOであるというのだから、ノートe-POWER NISMOは、日産としても、NISMOとしても、重要なモデルに位置付けられていることは間違いないだろう。

試乗レビューの前に、まずはNISMOが定めるユーザー層について少し述べておきたい。オーテックジャパンNISMO CARS 事業部 NISMO CARS 商品企画部チーフプロダクトスペシャリストの成田剛史さんによると、「基準車(つまり日産が販売しているNISMOのベースとなるカタログモデル)を購入するお客様に対して、“High life seeker”と呼ばれるターゲットがあります」と言う。これは、パフォーマンスを志向するというよりも、他のオーナーとの違い、たとえばファッションの違いなどを楽しむユーザーマインドのことだ。つまり、「NISMOのパフォーマンスがすごいから買うのではなく、このデザインがかっこいいから買うといったようなお客様を指します」とのこと。したがって、ノートe-POWER NISMOも、そこに位置付けられる。

左が日産「ノートe-POWER NISMO S」のフロントグリル。NISMOとNISMO Sの外観上の違いはバッジくらいだが、走りのパフォーマンスはかなり異なる。

いっぽう、今回設定されたノートe-POWER NISMO Sが属するポジショニングは、「Performance seeker」というもの。「動力性能を含めて、NISMOに対する期待値がやや高く、より速いクルマを好むお客様に対して設定した」と説明する。このセグメントの上限には、モータースポーツをみずから楽しみ、究極のクルマが欲しいといったような、もっとも尖った層も含まれる。NISMOとしては、GT-R NISMOをはじめとしてさまざまなラインアップがそこに位置付けられるという。

NISMO Sはセレナe-POWERのコンポーネントも一部採用

さて、ノートe-POWER NISMO Sだが、基本的にはノートe-POWER NISMOをベースに、出力を向上したクルマと考えていいだろう。

日産「ノートe-POWER NISMO S」のエンジンルーム。NISMOに比べ、モーター出力が20kW(27ps)向上している。

日産「ノートe-POWER NISMO S」のエンジンルーム。NISMOに比べ、モーター出力が20kW(27ps)向上している。

具体的には、モーター出力をノートe-POWER NISMOの80kw(109ps)、254Nmから100kw(136ps)、320Nmに向上させた。オーテックジャパン常務執行役員NISMO CARS開発部チーフビークルエンジニアの中澤慎介さんによると、この出力値は、ミニバンの「セレナe-POWER」と同じだという。つまり、セレナe-POWERで使った技術が、ノートe-POWER NISMO Sに織り込まれたということだ。

おもしろいのは、セレナe-POWERのものをそのまま載せ替えることができないため、コンポーネントの中身のみをうまく組み合わせて搭載したという点だ。したがって、インバーターは外から見るとノートe-POWER NISMOだが、中身はセレナe-POWERのものであったり、減速機も一見するとノートe-POWER NISMOなのだが、耐久性を向上させるためにベアリングが強化されていたりといった工夫がなされている。その結果、価格アップを最小限に抑えながら出力アップを実現できたのだ。

同時に、エンジンに関しても最高出力回転数を上げることで、58kw(79ps)から61kw(83ps)まで出力が向上している。さらにバッテリーについても、制御ソフトウェアに手が加えられている。

いっぽう、「リーフ」や「セレナe-POWER」には使われておらず、ノートe-POWER NISMO Sにだけ採用されているチューニングがある。それは、モーターの最高回転数のアップだ。この回転数によって、最高速度が決まると言っていいだろう。たとえば、リーフやセレナe-POWERは約10,000rpmまで回り、最高速は155km/hほど。これに対し、ノートe-POWER NISMO Sは約11,000rpmまで回転数を上げた結果、170km/hくらいまで出るようになったとのことだ。これは、サーキットなどで“もう少し出ないのか”というユーザーの声に応えるためだったと言う。この技術は、リーフやセレナe-POWERにも応用可能であり、今後実際に使われる可能性も大きいという。

これらの改良によって、ノートe-POWER NISMO Sは50km/hぐらいまでは最大トルクである320Nmが発揮され、3リッターV型6気筒並みの走りを楽しむことができる。さらに、ノートe-POWER NISMOと比べて、0-100km/h加速でも1.7秒短縮しているとのことだ。

「NISMO S」ならではのドライブモードが追加

日産「ノートe-POWER NISMO S」のドライブモードは、Bポジションに「S」と「ECO」モードの2つが新たに追加された。

今回、ドライビングに関してノートe-POWER NISMOから大きく変更されたものがある。それは「ドライブモード」だ。ノートe-POWER NISMOでは、Dポジションの「S」「ノーマル」「ECO」の3つのモードと、Bポジションの「ノーマル」の計4つのモードがある。そこへ、ノートe-POWER NISMO SではBポジションにも「S」「ECO」の2つのモードが新たに追加され、トータル6パターンのモードを楽しめるようになった。

まず、ノートe-POWER NISMO Sならではと言えるのが、BポジションのSモードの追加だ。「スポーツドライビングを堪能できるようなモード」と中澤さんが言うように、このモードではかなり走りに振っている。

ハイブリッドモデルの多くは、減速時にはエンジンを止めて燃費を向上させるが、その状況から一気にアクセルを踏み込むと、バッテリーで少しは加速をするものの、あらためてエンジンが始動してアシストを開始することになる。つまり、そこでタイムラグが生じてしまうのだ。それを踏まえて、このモードではエンジンをなるべく止めないようにすることで、ドライバーがアクセルを踏んだ時にすぐにエンジンが発電し、レスポンスよく加速が開始できるようになっている。

さらに、常にエンジンが始動しているので、元気よく走らせて充電容量が減ったとしても、その減る量を制限できるというメリットもある。もちろん、つねにエンジンが始動しているので燃費効率は悪化するが、「今は燃費を気にしないでワインディングを元気に走りたいという時にこのモードを選ぶことで、本当に気持ちのいい走りができるよう提案しているのです」と中澤さんは説明した。

また、Bポジションのノーマルモードは、ノートe-POWER NISMO Sの320Nmという大トルクでは、雪道や低ミュー路においてはトルクが出すぎてしまい、発進が難しいシーンが想定される。そのときに、新たに追加されたBポジションのECOモードを選べば、トルクの出方を“遅開き”にすることで、雪道などでも発進しやすくしている。

これら以外には、基本的にシャシーの剛性アップなどはすべてノートe-POWER NISMOと共通だ。

アクセルとタイヤが直結しているかのような走り

では、ノートe-POWER NISMO Sで走り出してみよう。今回は、クローズドのテストコースをわずか2周しかできなかったものの、ノートe-POWER NISMOにも試乗ができたので、両車の比較を中心としてレビューしたい。なお、走行モードは、前述で新たに追加されたBポジションのSモード(ノートe-POWER NISMOはDポジションのSモード)を選択した。

日産「ノート e-POWER NISMO S」の走行イメージ。日産所有のクローズドコースのため、走行ラインを横断しています。

どちらの車両も、コースに出て一気にアクセルを踏み込むと、アクセルレスポンスが非常に高く、まるで“アクセルに車輪が直結しているような”イメージだ。その加速感は途切れることなく、ジェット機のようにスムーズと行ったら大げさだが、まさにそのようなイメージととらえてもらいたい。特に、ノートe-POWER NISMO Sは320Nmの大トルクを生かし、より上手の加速を手に入れている。

日産「ノート e-POWER NISMO」の走行イメージ。日産所有のクローズドコースのため、走行ラインを横断しています。

たしかに、この加速感は麻薬のようなもので、一度味わってしまうと、ノートe-POWER NISMOでは物足りなくなってしまうから困ったものだ。本来であれば、ノートe-POWER NISMOでも十分以上のパフォーマンスを持ち合わせているのに。

そういった加速を楽しんでいるときには、シリーズハイブリッドにも関わらず、きちんとエンジンと速度がリンクしているのがうれしく感じる。いくらアクセルを踏んでも、エンジン音が変わらなかったり、エンジン音が高まってから速度が追いつくなどの違和感はほとんど覚えず、思わずこれは本当にシリーズハイブリッドかと思ったほどだ。

このように、アクセルレスポンスが非常にいいことから、スラロームやコーナーの立ち上がりなどで、たとえアンダーステアが出たとしても、アクセルを一瞬戻してタックインさせることで容易にコーナーを抜けることができ、ここでもノートe-POWER NISMO Sの制御技術の高さに目を見張る思いであった。

高いボディ剛性

もうひとつ感銘を受けたのは、ボディ剛性の高さだ。ステアリングを切った瞬間、また、段差を越えた瞬間の安定性は、普通のノートe-POWERでは感じられない、とてもしっかりとしたものだ。そのうえ、パワーアップしたNISMO SがNISMOと共通の剛性や足回りということなので、元々の素性が非常に高いことがうかがえた。

乗り心地に関しても硬めではあるが、決して不快ではない。それは、ボディの剛性が高くきちんとショックを受け止めているので、サスペンションが本来のストロークをさせることができるからだ。

日産 ノート e-POWER NISMO、NISMO Sでは、レカロシートがオプション設定されている。

日産 ノート e-POWER NISMO、NISMO Sでは、レカロシートがオプション設定されている。

また、オプション設定のレカロシートは、ホールド性も高く、スポーティーな雰囲気を十分に楽しめるものであった。

スポーティーモデルとしては気になるエンジン音とブレーキ

いっぽう、気になる点もある、まずは音だ。アクセルを踏み込んで行くと、徐々に高まるエンジン音は間違いなく3気筒のそれで、少々味気なく、物足りない思いをした。この辺りはぜひ、知見を生かした音作りをしてもらいたい。雰囲気とはいえ、音は非常に重要なものだと思うからだ。

NISMO、NISMO Sともに、パワーがあるぶんブレーキにも強化を望みたいところだ。

NISMO、NISMO Sともに、パワーがあるぶんブレーキにも強化を望みたいところだ。

もうひとつは、ブレーキだ。ブレーキに関しては、NISMO、NISMO Sともにパワーに対して少々物足りなく感じた。これはクローズドテストコースでのことなので、そのあたりを勘案する必要はあるが、やはり、より一層の強化は望みたい。その点について、前出の中澤さんに聞いたところ、「最近のクルマはVDCなどの先進装備が満載なので、ブレーキのキャリパーひとつ変えても、すべてテストをしていかなければなりません。たとえば、北海道の寒地にいっても大丈夫かなどすべてにおいて再適合させる必要があるのです。我々のクルマは日産自動車が新車としてお客様に販売しているので、機能を含めて全てが破綻しないように作り上げなければならないのです」と語り、そのためには、「膨大な開発費もかかり、結果としてお客様への負担にもなります。そういったところのバランスも考えて今回は見送りました」と教えてくれた。しかし、先ほどの音も含めて、次の策は考えているようにも感じたので、その点は期待したい。

日産「ノート e-POWER NISMO」の走行イメージ。

日産「ノート e-POWER NISMO」の走行イメージ。

EVやハイブリッドは、走りの面で不満を持つことが少なくなかった。そのような中、このノートe-POWES NISMO Sは、そういった面での疑念を払拭し、EVやハイブリッドであっても、クルマの楽しさを享受できることを証明した1台と言える。特に、それが作り込んだわざとらしさなどではなく、自然に感じさせることに成功しているのが、まさにNISMOが手がけた大きな意味であると思う。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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