レビュー
フルモデルチェンジで凄まじい進化を遂げた!

“かっこよさ”が日本でウケているジープ「ラングラー」!11年ぶりの新型をオフロード試乗

ジープブランドを象徴する本格オフローダー「ラングラー」が、11年ぶりにフルモデルチェンジし、2018年11月23日より日本国内での販売が開始される。

11年ぶりのフルモデルチェンジで、全面的な刷新が施されたジープ 新型「ラングラー」。

11年ぶりのフルモデルチェンジで、全面的な刷新が施されたジープ 新型「ラングラー」。

グレードラインアップと価格については、以下の通りだ。搭載エンジンは、3.6リッターV6エンジンと、2.0リッター直4エンジンの2機種が用意されている。

今回のジープ「ラングラー」の発売に先駆け、一般路やダートコースを走行する試乗会が報道陣向けに開催された。当記事では、いまのジープの現状や歴史を振り返りながら、新型ラングラーの印象をお伝えしよう。

■ジープ 新型ラングラーのグレードラインアップと価格

※価格はすべて税込み


-ラングラー-
Sport(3.6L・8AT・2ドア):4,590,000円

-ラングラー アンリミテッド-
Unlimited Sport(2.0L・8AT・4ドア):4,940,000円
Unlimited Sahara Launch Edition(3.6L・8AT・4ドア):5,300,000円

■ジープ 新型ラングラーの主なスペック

全長×全幅×全高:4,320×1,895×1,825mm(Sport)/4,870×1,895×1,845mm(Unlimited Sport)/4,870×1,895×1,840mm(Unlimited Sahara)
ホイールベース:2,460mm(Sport)/3,010mm(Unlimited Sport・Unlimited Sahara)
最低地上高:200mm
車両重量:1,830kg(Sport)/1,950kg(Unlimited Sport)/1,980kg(Unlimited Sahara)
乗車定員:4名(Sport)/5名(Unlimited Sport・Unlimited Sahara)
搭載エンジン:3.6リッター V型6気筒(Sport・Unlimited Sahara)/2.0リッター直列4気筒ターボ(Unlimited Sport)
最高出力:209kW(284ps)6,400rpm(V6)/200kW(272ps)5,250rpm(直4ターボ)
最大トルク:347N・m(35.4kg・m)4,100rpm(V6)/400 N・m(40.8kg・m)3,000rpm(直4ターボ)
燃費(JC08モード):9.6km/L(Sport)/11.5 km/L(Unlimited Sport)/9.2 km/L(Unlimited Sahara)
最小回転半径:5.3m(Sport)/6.2m(Unlimited Sport・Unlimited Sahara)

実は日本で売れている「ジープ」

意外にも(?)ジープは日本における販売台数が多いことをご存じだろうか。2010年には約1,900台だった販売台数は、昨年2017年には年間で1万台に達しており、しかもその4割がラングラーなのだという。つまり、ラングラーはモデル末期にもかかわらず好調な販売台数を記録しているのだ。

さらにラングラーにフォーカスすると、北米市場の次に売れているのは日本市場だそうだ。いわゆる“四角いボディ”がほかにないために、ユーザーはラングラーのデザインを気に入って購入しているという。

米国の次に日本で売れているという、目下好調なジープブランド。2018年9月には、過去18年間の単月として最多販売台数を記録した

このように日本では、ラングラーをはじめとしたジープブランドは好調に伸びているが、地元であるアメリカのマーケットも非常に調子がいい。米国市場では、2017年末に新型ラングラーが導入されたのだが、直近となる2018年9月単月では過去18年間で最高の販売台数を記録した。ほかのモデルも売れているのだが、新型ラングラーが成功の一因となったことは間違いないだろう。

日本のSUVセグメント市場について、「2014年くらいから第2のSUVブームがやってきました。それが一時的に終わることなく、今後も50万台を推移していくことが予測されており、SUVセグメントが日本マーケットに定着しました」と分析するのは、FCAジャパン マーケティング本部プロダクトマネージャーの渡邊由紀さんだ。

セグメント分けを全長で決めている同社では、ラングラーは“ミッドサイズSUV”に位置付けられている。「同セグメントには日産 エクストレイルやトヨタ ハリアーがいて、この2台がトップ2として牽引しています。輸入車では、メルセデス・ベンツ GLC、BMW X3に次いで3番目にラングラーが売れているのですが、X3とは僅差で戦っています。ちなみに、ラングラーは発売以来11年目でモデル末期にもかかわらず、この台数が売れているということに我々も驚いているのです」と、ラングラーの人気のほどがうかがえた。

1941年に誕生した軍事用のジープが始まり

ここで少し、ジープとラングラーの歴史を簡単に振り返ってみよう。

ジープの歴史は、1941年に軍事用のジープとして誕生したのがスタートだ。その4年後の1945年に、初の民生ジープとして「CJシリーズ」(シビリアンジープの略)が登場。その10年後の1955年に誕生したのが「CJ5」だ。CJ5は30年もの長い間生産され、累計生産台数は60万台を超えるヒット車となる。

そして、1987年に初めてラングラーという名前で登場したのが「ラングラーYJ」だ。ジープブランドとしては初となる、角ばったヘッドライトを搭載したモデルである。その後、約10年スパンでモデルチェンジが繰り返され、1997年に登場したのが「ラングラーTJ」。TJは、CJシリーズのシルエットを継承したモデルだった。

その10年後にデビューしたのが「ラングラーJK」で、これが現行のモデルとなる。ここで初めて、実用性を考慮して4ドアモデルがラインアップに追加された。これによってラングラーの台数が飛躍的に向上し、マーケットに定着したのだ。

受け継がれる「台形ホイールアーチ」と「7スロットグリル」

初代ジープ誕生時から受け継がれているアイデンティティのひとつ、台形ホイールアーチ

初代ジープ誕生時から受け継がれているアイデンティティのひとつ、台形ホイールアーチ

1941年に誕生した軍事用のジープ以降、DNAとして必ず守られているものが2つある。ひとつは、“台形のホイールアーチ”だ。「これはどのモデルでもどんなデザインになっても今でも守られているものです」と渡邊さん。

ジープを象徴するのが、フロントグリルに7本の縦バーが入った「セブンスロットグリル」だ

ジープを象徴するのが、フロントグリルに7本の縦バーが入った「セブンスロットグリル」だ

そして、もうひとつが“セブンスロットグリル”だ。グリルにある7本のバーは、今のジープには絶対なくてはならないものなのだが、「実は、当時の軍事用ジープは9本の細いスロットグリルでした。この時のグリルの役割は、ラジエーターを保護するためだけのものだったのです。1945年に誕生した民生用ジープになった時に、初めてヘッドライトがデザインのエレメントとして取り入れられ、それによって両端のグリルが2本落とされ、初めていまのセブンスロットグリルが誕生したのです」と教えてくれた。

ちなみに、CJ5が初めてデザイナーが手を入れたモデルで、それまではエンジニアが設計していたのだそう。新型ラングラーを見ると、ヘッドライト横のグリルが少し食い込んでいることが見て取れるが、このデザインモチーフはCJ5にもあり、CJ5からインスピレーションを得てデザインされたのだ。デザイナーにとっても、CJ5がこだわりの1台であるのだろう。

実に77年間の長い歴史があるこのメーカーは、何度もオーナーが変わっている。ウィリスオーバーランド社から始まり、アメリカンモーターズ、クライスラー、ダイムラークライスラー、そして現在のFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)だ。しかし、この間4つのコアバリューは変わらず受け継がれている。渡邊さんは、

「自由であること。このクルマを持つことで精神的にも実際にもどこにでも行けて何でもできるといった自由。」
「本物。昨今いろいろなSUVは導入されていますが、実は我々がSUVのパイオニアなのです。」「冒険。」
「パッション。これはお客様が持っているものでジープユーザーは強いパッションを持っています。そういう方々に支えられて我々のブランドがあるのです」

と説明してくれた。

多岐にわたる11年分の進化

さて、今回導入される新型「ラングラー JL」の開発にあたって、FCA USラングラー・モデル開発部門シニアマネージャーのジョン・アダムスさんは、「オフロード性能のさらなる進化に、パワーや燃費効率のさらなる向上。テクノロジーやセーフティ装備の充実。もっとオープンエアを楽しめるような多様性や自由。品質や信頼性の向上。これらをすべてやりつつ、さらに軽量化を図りたい」と考えたという。

その背景には、ラングラーJKのオーナーの声があった。具体的には、「燃費性能を向上してほしいという声がもっとも大きかったのです」とアダムスさん。そこでまず、軽量化を図ることを考え、その一環として軽量材が採用された。たとえば、高剛性のアルミ製のドアヒンジ、フェンダーやスリムゲートフレームにはマグネシウムとアルミで作られたものが使われている。さらに、エンジンマウントとステアリングギアをアルミ化することによって、軽量化につなげている。

燃費については、電動油圧式パワーステアリングに変更することで貢献した。ラングラーJKに対して、新型ラングラーJLではフロントガラスの傾斜角を5.8°寝かせたことで、空力も最適化されている。

走破性から安全装備まで、新型ラングラーの11年分の進化は多岐に渡る

走破性から安全装備まで、新型ラングラーの11年分の進化は多岐に渡る

同時に、全体的なディメンションも見直され、アプローチアングルやデパーチャーアングルが改善。さらに、小回り性もラングラーJKよりもきくようになった(4ドアで7.1m→6.2m 2ドアで6.0m→5.3m)ことで、トレイルの走破性を改善。渡河水深性能は76cmを確保している。

また、新型ラングラーJLのトピックのひとつに、これまでと同様のパートタイム4×4に加えて、「フルタイムオンデマンド4×4システム」を追加で搭載したことがあげられる。このシステムに備えられている「4H AUTOモード」は、路面や天候状況に応じて駆動力を自動的に前後配分してくれるというものだ。また、オフロードでは4H、4Lのパートタイムモードに切り替えることで、センターデフのロックが可能となり、強力なトラクションを発揮する。

日本に導入されるエンジンは2種類。3.6リッターV型6気筒ペンスターエンジンと、新開発の2リッター4気筒直噴ターボエンジンで、どちらもエンジンストップスタート(アイドリングストップ)機構を持っている。3.6リッターは最高出力284ps、最大トルクは347Nmを発揮。2リッターは、最高出力272ps、最大トルクは400Nmだ。この両方のエンジンに8速オートマチックが搭載されている。

現在、ラングラーはアウトドア向けではあるものの、その新しいカスタマーの多くはファミリー層であるという。そのニーズに対応するために、70以上の新しいセーフティおよびセキュリティ装備が今回採用された。ブラインドスポットモニターやリアクロスパスディテクション、リアバックアップカメラも標準で装備されている。

新型ラングラーは、すべてにおいて「快適」

今回試乗したのは、オンロードは2リッターターボエンジンを搭載した「アンリミテッドスポーツ」。オフロードは、来春(2018年)導入予定の、3.6リッターV6ペンスターエンジンを搭載する「アンリミテッドルビコン」だ。

本格クロカンにもかかわらず、新型「ラングラー」は一般道や高速道路などのオンロードにおいて快適なドライブを提供してくれる

まずはオンロードを走り始めてみると、11年分の進化が見事に伝わってくる。つまり、すべてが洗練されており快適なのだ。アクセルをすっと踏み込むと、軽快な身のこなしでみるみる速度を上げ、2.2トン越えのボディにもかかわらず2リッターであることを感じさせない加速を見せる。十分以上の出力と、トルクを備えていることがわかる。

また、ターボエンジンなのでやや過給音はするものの、ラグなどはほとんど感じられない。これならば、一般道はもちろんのこと、悪路で繊細なアクセル操作が求められたとしても、それほど気を遣わなくて済みそうだ。

高速道路における静かさもなかなかのもので、ルーフ周りがすべて取り外せる(ちなみにドアも取り外せるし、フロントウインドウも倒すことが可能だが、公道では禁止)が、その割には車外からの音があまり侵入して来ず、意外にも静かな室内に保たれていた。

そして何より驚き、また感心したのは、前述した小回り性の向上だ。実は、ラングラーJKの4ドアを試乗したことがあるのだが、その時はたとえばコンビニから片側1車線の道路へ左折で出ようとしても“確実に”反対車線まではみ出るので、曲がる際は相当気を使って乗っていたものだ。しかし、新型ラングラーJLでは決してそういうことはない。まだまだ小回りはきいてほしいが、ラングラーJKを知っている身としては「ここまで進化したか!」とうれしくなってしまった。

新型「ラングラー」のインパネ

新型「ラングラー」のインパネ

また、今回から新規採用された電動油圧式パワーステアリングは、適度な重さとクイックさで、路面のトレース性もよくスムーズにコーナーを抜けることができた。

そのほか、ラングラーJKで気になっていた乗り降りの際のドアの開閉も、途中に段階的にロックができるようになったほか、以前のように室内のドアハンドルをしっかりと握ってドアを閉めないとすぐに半ドアになるようなこともなくなった。

乗り味自体はしなやかさが増え、はるかに一般的になったが、先代から引き続き、右ハンドルに関しては若干ペダルがオフセットしており、またフットレストがついてないという点は残念だ。フットレストだけでも取り付けられれば、かなり疲れが軽減されるだろうし、何より悪路走破時に役に立つことだろう。

新型「ラングラー」のフロントシート

新型「ラングラー」のフロントシート

また、シートは若干ホールド性が弱く、また、背面が張りすぎているからか少々疲れやすく、腰が痛くなりそうな印象が残った。

悪路でも感じる乗り心地のよさ

結構な悪路にもかかわらず、4L(四輪駆動の低速)に入れる必要すらないほどにラングラーの走破性能は高い

結構な悪路にもかかわらず、4L(四輪駆動の低速)に入れる必要すらないほどにラングラーの走破性能は高い

オフロードでは、20°以上のアップダウンやガレ場等を含んだ悪路を試した。といっても、ラングラーにとっては朝飯前だ。その証拠に、シフトは常にDレンジで4H(四輪駆動)に入れっぱなしで済んでしまったからだ。

オフロードでは3.6リッターに乗り換えたのだが、このエンジンの印象もトルクフルで、スムーズと2リッターターボと印象は大きくは違わなかった。ただし、2リッターのほうが回りたがる印象はあった。

先代のラングラーJKに比べて、ステアリングからのキックバックが少なく感じる。

先代のラングラーJKに比べて、ステアリングからのキックバックが少なく感じる。

恐る恐るダートコースに出てアップダウンを繰り返すうちに、先代よりもステアリングにキックバックが来ないことに気付いた。もちろんフィールは常に手のひらに感じるのだが、ラングラーJKでは石や段差などを乗り越えた際に結構なキックバックを“くらった”ものだが、それをほとんど感じなくなったのだ。この辺りは、新しいステアリング機構がうまく働いているのだろう。

悪路を走行しているのに乗り心地のよさを感じるのも、11年分の進化のひとつだ

悪路を走行しているのに乗り心地のよさを感じるのも、11年分の進化のひとつだ

もうひとつ驚いたのは、乗り心地のよさだ。かなりの凸凹をクリアしているはずなのだが、足回りがショックをきれいに吸収し、直接体に突き上げてこないのは優秀だ。

オフロード性能は十分以上で、かつ、フールプルーフ。妙な気を遣わず、適当にアクセルとブレーキを使い分けるだけで、こんなところも!というところまでさらりとクリアしていく。もちろん、そこには小回りがきくようになったことが大きく貢献し、狙ったラインを十分にトレースできることが大きな利点にはなっている。

もっとも気になったのは、オンロードでも述べたがやはりフットレストがないことだ。足が踏ん張れないためにどうやっても体を支えることができず、ときにはステアリングにしがみつかなければならないことがままあった。やはりぜひフットレストは用意してもらいたい。

実力あるSUVが話題となった2018年

ラングラーを含め、2018年は実力派の本格SUVが数多く登場した。

ラングラーを含め、2018年は実力派の本格SUVが数多く登場した。

オンロードとオフロードの両方をテストして、ラングラーの進化をまざまざと見せつけられた思いだ。2018年は、メルセデス・ベンツ「Gクラス」が大幅改良し、スズキ「ジムニー」がフルモデルチェンジ、そしてラングラーが11年ぶりにフルモデルチェンジした。4WDモデルにとって、2018年は記念すべき年と言えるだろう。Gクラスを悪路で走らせると、さまざまな機構を駆使してじわじわと攻め込んでいく。ジムニーは、軽さと小ささを武器にひょいと乗り越えていくイメージ。ではラングラーはどうかというと、とにかく押せ押せで、急な上り坂はアクセルを踏んであとはクルマに任せておけば何とかなるという、実に豪快なタイプだ。実力ある各社のSUVは、それぞれ明確な“味”があるので、あとは読者諸氏のお好み次第だ。もちろん、どれを購入しても裏切られることはないだろう。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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